第44話 体力テスト終了、異次元の上級生
真「んん…」
俺は目を開けた。見慣れない天井、だが少し温かい全身…どこだろうか、ここは。
「あ、起きたね。真くん」
聞き慣れた声が俺の耳に入った。俺はその声の主がいる方に視線を向けた。
翠花「普段の真くんは私が抱いてるからあれだけど、一人で寝てる真くんも可愛いね」
翠花姉だった。それにしても…男子に向けて可愛いというのは…なんか…複雑だな…。いやもちろんうれしいのはうれしい。今の俺が小1で翠花姉からしたら十分年下だ。可愛いというのもわからんでもないけれどな…。
真「翠花姉…」
翠花「結構寝てたね。真くん。もう下校の時間だよ」
真「え…?」
翠花「今…4時!」
そう言い翠花姉が時計を持ってきてくれた。短針は確かに4時を指していた。
真「翠花姉、僕どれくらい寝てたの?」
翠花「えーとね、テストが終わった時刻は12時ちょうど。それで今が4時。16時か。だとすると?」
真「えっと…4時間?」
翠花「せいか~い。そ、4時間。まああれだけの状況で心身ともに疲れてるだろうし驚きはないよ。お疲れ様、真くん」
結構な時間眠っていたんだな…だが体に違和感はない。あれだけ戦闘したのに意外とないものなんだな。疲労って。
翠花「真くんも起きたことだし帰る?それとももう少しゆっくりしていく?」
真「うーん…あ、じゃあ僕が寝ていた間高校生たちがどんなことがあったか教えてくれない?」
翠花「お、そこが気になるんだ。いいよ、教えてあげる」
上級生たちがどんなことをしていたのかが俺はとても気になっている。どんなことがあったのだろうか。
翠花「まず、4年生と高1グループで目立っていたのは2組だけだったね。というより、そのグループで強い人がいたのは2組だけだった。お兄ちゃんと小学生が活躍してた。それ以外の組は…まあいっちゃあれだけど…地味というか…」
…翠花姉からしたらほとんどの生徒が地味に分類されるんじゃないか?今年の高校生は強いってわけじゃないのか?
真「高校生って強いわけじゃないの?」
翠花「まさか!私よりも弱い人間がたくさんいるよ。けど忘れちゃいけないのはここは医療学校っていうところ。医療従事者で戦闘強いってなったらいよいよバケモンの誕生じゃん?だから今回の高1は頭脳派が多いらしいね」
…翠花姉はそれができるバケモンじゃねえか…自覚ない&天然とか質悪すぎん?この人。
真「そうなんだ。じゃあ翠花姉のお兄さんとその…小4の人はどんな感じだったの?」
翠花「まず200メートル走。お兄ちゃんが最速、小学生が次いでって感じかな。お兄ちゃんは『麒麟』っていう神獣。まず私たち源一族は神話能力を持ってて、兄弟姉妹で一番上の人が当主になるの。今回だとお兄ちゃんがそうだね」
さらっと言ったが…麒麟と言ったか?麒麟といえば一日に千里を駆けるという伝説で有名だ。神話能力には…神獣も該当されるのか…。それは知らなかったな…。
真「『麒麟』って神様?」
翠花「いや、神獣だね。麒麟は。麒麟の速いってイメージはお兄ちゃんの記録でわかると思う。けど、速いだけじゃないのが麒麟。この後話すけど、麒麟は雷も使える。それを使っての戦闘は見事だったね。で、200メートル走に戻るよ。麒麟を使っての移動は日菜子を超えるスピードでゴールをしたよ」
日菜子さんを…超えるスピード…異次元過ぎないか?俺は日菜子さんでさえ目に負えなかった。その彼女よりも速いとは…
真「日菜子さんを超えるなんて…颯治さんはすごいんだね…」
翠花「まあわたしのお兄ちゃんですから。それで、お兄ちゃんの後は小学生だったね。面倒だしその2人だけでいいね」
真「うん。お願いします」
翠花「りょーかい。でその子もすごかった。その子も能力は神話能力。それも…2つ持ち…」
神話能力を…2つ持ちだと!?そんなのありなのか…?
真「神話能力を…2個?そんなの…ありえていいの?」
翠花「おいおい…君がそれを言うかい?」
真「え?言っちゃまずかった?」
翠花「君の両目…片方は琥珀金色で朱雀様だよね。それで…もう片方の目の色はなんだったかな?」
俺のもう片方の目…俺の目は「絶眼」だ。絶眼の特徴は黒色で龍の目、もしくは光が中にあることだ。
真「黒色だけど…」
翠花「うん。そうだね。黒色は何を表すって教えたっけ?」
真「神話能力でしょ?」
翠花「まあそうだね。正確には『絶眼』で、その色は黒色で、黒色は開花してない神話能力のこと。だから君も2個持ちだ。驚いてはいけないんだよ。2個持ちっていう点ではね」
真「あ…はい…」
なんで俺…萎縮してしまってるんだろうか…まあいいや。
翠花「それで、その子もほぼ瞬間移動と言っていい感じだった」
真「というと?」
翠花「その子は水と槍を使ってたんだけど、最初に水を出してそのあとに槍で水の中に突っ込んだって感じだった」
水と槍…俺は知ってる。前の世界でギリシャ神話の神に一人いるんだ。
真「もしかして…その人の能力って『ポセイドン』だったりする?」
翠花「よくわかったね。その通り。あの子は『ポセイドン』を能力として所持してる。けどあのスピードはとても水中とは思えないスピードだった。まさに神話能力と納得せざるを得ないよ」
やはりポセイドンだった。ギリシャ神話では代表的な神だ。水と地震を司る神でオリュンポス12柱の内の一柱だ。実力もさることながら、神としての威厳を誇示する圧倒的な神だ。
真「まあ僕もそんな感じだったような?」
翠花「真くんはスピード特化じゃないし、鳥の姿であれだけのスピードが出せてるんだしいいと思うよ。自信を持ちたまえ」
真「うん。ありがとうございます」
翠花「なーんで敬語になってるんだか。それで、200メートル走が終わって次は壁割りだったね。結果から言えば2人共10枚全部割ってた。お兄ちゃんは麒麟の力で、小学生の子もさっきの神様の力でね」
ずっと小学生の子って言うのはちょっと億劫だ。ちょっと聞いてみるか。まあ内容はそこまで驚きはない。神話能力であり、200メートル走のこともあったしな。
真「ねえ翠花姉。その人って名前はなんていうの?ずっと小学生の子って言うのはちょっと…」
翠花「まあそうだよね。まあ私は名前知ってるし教えとくか。その子は『青山花音』っていう名前。私がいつも呼んでるのは花音ちゃん。このあとは花音ちゃんと呼んだらその子って思ってね」
真「了解!」
彼女はおそらく相当に強いんだろうな。俺でも全く想像がつかない。ポセイドンとは別にもう一つの神話能力持ち。いつかあってみたいものだ。
翠花「お兄ちゃんは雷の力を一点にまとめて一気に開放したって感じ。日菜子のやり方に近いね。それで花音ちゃんはね結構神気を使ってだったね。というのも槍の先端に神気を集中させ、それを壁に向かって突き刺した。突き刺した神気がビームみたいにそのまま壁を全部突き破ったんだよ。壁にはひびがなかった。真くんと同じ感じ」
颯治さんは日菜子さんと、花音さんは俺と同じ感じで技を出したのか…しかもおそらく練度は俺よりも上。颯治さんももしかしたら日菜子さんの上をいくかもしれない…異次元だな…上級生…
翠花「壁割りが終わったら次はハンドボール投げだね。花音ちゃんはすごかったよ。ここでもう一個の神話能力を使った。もう先に名前を言っちゃうよ。驚いちゃだめだよ?」
真「う…うん…」
翠花「あの能力の名前は…『オーディン』」
オー…ディン…。花音さん…能力強すぎないか?確かオーディンは北欧神話の最高神…戦争になれば絶対に勝つとさえ言われる正真正銘の神だ。そんな神もいるし、さらにポセイドンも持っている…彼女…俺以上の化け物じゃないか…
真「オーディン…。その神様を使ってどんなことをしたの?」
翠花「なんとね…ボールが8本足の馬になって、そのまま花音ちゃんが指した方向に飛んで行ったの…」
真「え?ボールが…馬に?」
翠花「そう。しかもそれもゆっくりじゃない、まるでワープしたんじゃないかって思うくらいにね。気づいたらネットに触れていた。私もえ?ってなったよ」
そらそうなるだろ…異次元すぎる…8本足の馬…それってもしかして…「スレイプニル」のことじゃないか?だがスレイプニルはオーディンとは別の神獣のはず…どういうことだ?
朱雀{そんなお主の疑問にはわらわが答えようかのう!その疑問に対するアンサーはこうじゃ!神話能力に限らず、その能力を補助する役割をするものは能力の一つとして扱えるものがあるのじゃ!}
突然の解説が入ったな…んで?能力の補助をする役割をするものは能力の一つとして扱える?どういうことだ?
真{もうちょい詳しく}
朱雀{さっきのオーディンがいい例じゃ。オーディンの愛馬『スレイプニル』。オーディンはスレイプニルを跨ぎ戦場を駆けたのじゃ。つまりオーディンにとってスレイプニルはもはや足のようなもの。ゆえに能力の一部として使えるというわけじゃ」
なるほど。神話上でのその神が活躍させた神獣、武器もおそらく対象なのだろうな。ポセイドンなら槍が該当するな。彼の場合は槍の中でも三又槍だがな。それを使って壁割りしたらしいし。
真{朱雀はないのか?お前が扱えるお前以外のものは}
朱雀{おいおい、わらわは再生じゃぞ?つまり怪我しても治すことができる。まあ神気は使うがな。じゃがよっぽどのことがない限り死ぬことはない。これだけでも他の神に引けを取らないと思うのじゃが?}
真{え?それってさ、朱雀は不死鳥的な感じなのか?}
朱雀{再生をそう解釈するならそれはそれでいいのではないか?}
真{そんな感じでいいんだ?}
朱雀{いいんじゃね?知らんがのう}
ちょっと俺の影響を受けたような口調になってる。まあそんなのはどうでもいいか。
朱雀{能力も使い手次第じゃ。火を人を殺めるために使うのか、もしくは人を救うために使うのか。それは使い手次第じゃ。そして偉人能力と神話能力はその能力の者の思いも背負うと同義と思うことじゃな。能力は道具の一つにすぎん。じゃが聖人であった偉人でも使い手次第ではその者とは関係なく非道な行動をすることもできる。能力である偉人の功績を知り、その行動に準ずる行動を自身がするのならその能力の偉人もよろこんで力を貸してくれるじゃろう}
そう…か。まあ確かにその通りだな。どんなに聖人だった偉人も道具の一つとして見るんだ。この世界は。そしてその偉人に畏敬の念があり、その偉人に認められる人間になりなさいということかな?翠花姉ならマリリン・ボス・サヴァントが偉人能力だ。彼女の頭脳を使って勉学に励んでいるということなのだろうな。それは能力である彼女も喜ばしいことと判断しているんだろうな。
真{一つの解説がこんなに発展するものとはな。まあいい。考え方も改まったような気もする}
朱雀{そうか!ではわらわに対する態度も…}
真{あ、それはない。安心したまえ}
朱雀{やはりお主わらわのことなめてるじゃろ}
真{そんなわけないじゃないか。汚いもん}
朱雀{そっちではないわー!!}
朱雀の会話があったから全然翠花姉との会話覚えてないな…
翠花「それで、先にお兄ちゃんが鬼ごっこをしたんだよ。私たちとは流れが違うみたいで、お兄ちゃんったら先生のこと完全にいじめと思うくらいにボコボコにしてたんだ。やっぱりお兄ちゃんは強いんだよ」
結構進んでいた。いや、そんなにかもしれない。だって俺がやった競技は200メートル走、ハンドボール投げ、壁割り、鬼ごっこだ。ならまあそこまで進んではいないっぽい。
真「それはその先生は災難だったね。源家の当主にあたるとは…」
翠花「その先生も十分強いんだけどね。お兄ちゃんが強すぎて何もできてなかった」
真「源家は強い人が多いね。翠花姉もそうだし蓮乃さんもそうだし、入学式の時のあの大きい人も」
翠花「城鎧さんのことかな。あの人も私が速攻で何とかしたけど実際にやりあうと厳しいだろうね」
真「すごい人ばっかなんだね。それで、颯治さんの後に花音さんがやったんだよね?どうだったの?」
翠花「花音ちゃんはまだ戦闘になってたよ。けど先生が抵抗してたけど最終的に槍で貫かれポックリ」
真「あれま」
花音さんは花音さんで十分に強すぎて翠花姉の説明もそこまで内容が薄い…。それほどまでに圧倒的だったということだろうな。
「カチャ」
俺がそんな風に思っていたら隣のカーテンが開いた音がした。そして…
「私の内容でそんなに盛り上がることありますか?翠花先輩」
カーテン越しに女性の声がしたのだ…。しかも…翠花先輩?もしかして…
翠花「いいよ。入ってきて」
「失礼します」
カーテン越しにいる女性が俺たちのカーテンを開けてきた…。そこに立っていたのは青い髪にバラのような髪飾りをつけた女子だった…。
「翠花先輩。私の内容でそんなに盛り上がらないでください」
翠花「ごめんごめん。あ、真くんのことは知らないと思うから自己紹介してもらってもいい?」
「わかりました」
そう言い彼女は俺の前に立った。
花音「はじめまして。私は青山花音。君の名前は?」
真「赫星真です。お願いします」
花音「いい名前だ。真か。私もそんな感じの名前がよかったな~」
翠花「花音も十分いい名前だと思うけど?」
花音「そうですか?ありがとうございます」
翠花「まあ私からの説明だと分かりにくいところもあると思うから、真くん。この際だ。花音にいろんな質問しちゃってよ」
真「え?」
おいおい…そんな無茶ぶりありか?
だけど…確かに気になる点もなくはない。俺は彼女を知るべく、様々な質問をすることにした__




