第43話 体力テスト6 終わりを告げる音
俺たちではあの空間にいられない…完全に日菜子さんと翔先生のタイマンになってしまった…。
翔「では早速行くぞ?『風魔蹴足』」
先生が日菜子さんに向かって猛スピードで向かってきた…。
日菜子「『雷鳴・天満雷』」
日菜子さんがそう言った後、雷を空に向かって打った…。その直後…
「ゴロゴロ…バチバチ!!」
「ドカン!」
空から雷がいくつも降ってきた…先生のもとにもいくつか降っている…。
翔「まだ避けれるぜ?」
日菜子「これが終わりなわけないでしょう!」
そう言い日菜子さんが天に手を掲げた…
日菜子「『滅・雷極玉』!!」
その直後、まばらに降っていた雷が一点に集中し、それが天にとどまった…。とどまっている雷の玉は降っている雷をどんどん吸収し、大きくなっている…
日菜子さんが出した雷を見て先生がブレーキをかけた。
翔「あれ食らうと…流石に死ぬな…いくら俺でも」
日菜子「あれが落ちてくるまでに私を倒せなければ先生が死ぬ…さ、どうします?」
翔「なら…やるっきゃねえだろ?」
先生が腕に風を纏わせた…そして両腕を上げ、そして…
日菜子「あの構えは…」
日菜子さんは先生が両腕を上げたことでどんな技が打たれるのかを察したのだろう…先生に向かって走った…
翔「ふん…」
だがそのとき先生は…笑ったのだ…。
真「日菜子さん!!何かやばい!!」
日菜子「…!!」
日菜子さんが俺の言葉でブレーキをかけた…。
翔「もう遅い!!『オメガ・ウィドウ』!!」
先生が腕をクロスさせ、その腕を地面に叩きつけた…その直後…
「ビュオン!!!」
日菜子「く!!」
真「日菜子さん!!」
結夢「お姉ちゃん!!」
日菜子さんの体を…赤色の竜巻が襲ったのだ…!日菜子さんが宙にいる…そして先生も竜巻の中に入り、日菜子さんのもとに向かった…!
翔「お前は空中戦は得意か?」
日菜子「そこ…まで…ですね…」
翔「そうか…なら…勝てるといいな?今の俺に」
日菜子「私は負けないと言いましたよ!」
日菜子さんが先生に向かって雷速で飛んだ…!それを先生が受け止める…!
翔「やっぱり…雷はきちいな。腕がしびれやがる…」
日菜子「私は先生に近づいて攻撃すればいい。先生は私に直接攻撃を与えることができない…この意味…分かりますよね?」
翔「たりめえだ。だから…こうするんだろ!『龍巻閃風』!」
先生が辺りに吹き荒れる風の一部を一つの形にまとめた…その形はまさに…
日菜子「風の…龍…か。…!!」
日菜子さんの顔から…鮮血が飛ぶ…それに切り傷がどんどんと日菜子さんの顔を襲う…
日菜子「く…!」
思わず日菜子さんは雷になるべく発光した…
翔「いいのか?この強風で雷になりゃあもう元の体に戻れねえぞ?」
日菜子「だからあなたは…この状況を…しかも真くんや結夢が横やりできないようにあの風の壁、そして真くんが鳥の姿になっても吹き荒れる風で機能を完全に停止させる…どこまで考えているのやら…」
翔「俺はそれで終わりだと思うか?今のお前の顔はどうなっている?」
日菜子「風で切られているんでしょう?それが…まさか…」
翔「ああ、その通りだ。お前も俺と同じくタイムリミットをつけてやった。これで同じ状況だな?」
日菜子「しかも私の雷化もこの風ではできない…私よりも質が悪い…」
翔「これが戦場だ。相手と対峙した時、自身が有利な状況をいかに作れるか。これだけで有利に戦局を傾けることができる…お前ならわかっていると思うが…あれで有利というのならまだ詰めが甘いな」
これが戦場…そしてその最前線で戦ってきた人間のする行動…!ここまでとは思ってもみなかった…
日菜子「なら私がするべきは一つですね?」
翔「なんだ?聞いてやる」
日菜子さんが息を吐き、先生に向けて睨んだ眼を向ける…!
日菜子「簡単ですよ…私があなたを倒せばすべて解決する…!」
日菜子さんが血をまき散らしながら先生に向かって再び移動した…!
翔「来るか…だがさっきとはちげえようだな!」
日菜子さんの体からは大量の雷球が出ていた…!それら全ては日菜子さんの思い通りに動いている…!
日菜子「私もそれなりの頭があるんでね…無抵抗で終わるのは面白くない!」
翔「ふ…!この雷たちをどうする気だ?」
日菜子「こうするんですよ!」
日菜子さんが雷となった…だがそれでは…
翔「何を…雷になりゃあ…」
日菜子さんであろう雷は周りにある雷から電気を吸い続け、雷が先生に向かって届いたのだ…!そして雷は日菜子さんの人の状態に戻した…!
日菜子「こうするんですよ…!」
翔「く!!」
そして日菜子さんが雷を纏った足で先生を蹴った…
翔「ち…」
{こいつ…こうもすぐに頭が回るのか…機転が利くなんてレベルじゃねえな…}
日菜子「もう先生からは離れない…あの状態は…危険なんでね!」
そのまま日菜子さんと先生が近距離の殴り合いにもつれ込んだ…!
翔「このままだと…雷によって体が壊死する…俺も早期決着しねえと体が持たねえな…!」
日菜子「私もですよ…この体でここまでスピードを出すのは流石にきつい!」
そのまま2人は殴り合いを始めた…!そのスピードは…遠くからでは全く見えなかった…わかるのは黄色に光る人の形をしたものが動き続けているだけ…
俺はこの距離からでもなんとかできないか考えていた…。
真「何か…先生を追い詰めれないのかな…」
結夢「だってこの風があっては…」
真「それはもちろんわかってる…この風が邪魔すぎるんだ…」
結夢「なんていうか…こう、この風を超えるスピードのものがあればいいんだけど…私たちには…」
真「……結夢、今何て言った?」
結夢「え?この風を超えるスピードのものがあればなって…」
この風を超えるスピードのもの…。
真「…ある…!あるぞ!!結夢!!」
結夢「え!?本当!?」
真「ああ…ある!」
結夢「それは…なに?」
真「さっきあった壁割りで僕が何したか覚えてる?」
結夢「あの弓のやつ?」
真「ああ。あれなら先生に…」
結夢「でもその技はスピードはあるけど…」
真「ああ、多分先生の神気を纏ってるこの風自体が阻むんだよ。そこで結夢、桜で止めることができる対象を教えてもらってもいい?」
結夢「桜は神気を宿す動くもの全部だよ。それが…」
真「神気宿す動くもの全部!?」
そんなもの…!本当にチート能力じゃないか…!結夢の能力がハズレ?そんなわけがないぞ…!
真「な、なら、僕が結夢を連れて日菜子さんがいるところに行く。それで風を桜で止めれるか?」
結夢「頑張ればいけると思うよ…けど持って数秒、もしかしたら1秒もないかもしれないし最悪風を止めることすら…」
真「それでもいい!失敗は成功までの道だから!」
俺はそう言いながら結夢の手を握った。俺は自分が言ってる言葉が恥ずかしかったが、結夢を心配させないように当然のように言った。
その時の結夢の顔は…いや、目は…とても輝いていた…!
結夢「うん!私失敗しないように頑張るから!」
真「行こう!結夢!!」
結夢「うん!」
俺は朱雀の鳥の姿になり、結夢を背中に乗せ、日菜子さんと先生がいるところに向かって飛んだ。
日菜子さんと先生は異次元のスピードで殴り合いをしていた…。
そこに俺たちが風越しに近づいた…!
翔「な…あいつら…なぜいる…!」
日菜子「真くん!結夢!」
殴りあっている2人のところに着いた俺は結夢に向かって言った。
真「結夢!俺が大きな羽を落とす!それに乗ってくれ!」
結夢「わかった!」
俺は大きな羽を落とした。それに向かって結夢が桜を出し、その羽を空中に留めた。その羽に結夢が乗った。俺はその状況を確認し、俺は空高く飛んだ…!そして背中に翼を生やし朱雀の弓を構えた…!
翔「あの構え…それにあの光…まさか…」
俺は背中に温かい光を浴びながら弓を構えた…。そして両腕には時計回りをする環、逆時計回りをする環が出てきた。それを見た俺は弦を引いた。環がどんどんと近づいている…。俺は声を上げた…!
真「結夢!!頼む!!」
結夢「わかった!!『満開・サクラサケ』!!」
結夢が風に向けて桜を放った…。
翔「あいつらなにを…。…なに!」
その時、日菜子さんが加速し、先生を俺の正面になるように捕えてくれたのだ…!
日菜子「一思いにやっちゃって!」
真「で…でもそれだと…日菜子さんまで…」
俺は…この状況で…打てなかったのだ…。失敗すれば…いや、成功したとしてももしかしたら日菜子さんを先生ごと貫いてしまうかもしれない…。
俺が迷っていた時、日菜子さんが声を上げた…。
日菜子「迷うな!!何も心配はいらない!!」
結夢「真くん!!やっちゃって!!!」
俺は日菜子さんの言葉で決心がついた。そして結夢が桜を一気に出した…。その桜は一瞬風を止めた…!
翔「な…」
俺は一気に弓を引いた…!そして、環が重なるその瞬間、弦を離した…!
真「『焼弓極光』!!!」
俺が放った矢は…
翔「ぐ…!」
先生の頭を貫通したのだ…!先生が衝撃で白目をむきながら空中にとどまった…!だが…
結夢「きゃあ!!」
真「結夢…うわ!!」
俺は完全に忘れていた…
朱雀{この技を打つと一時的にわらわが使えなくなる。この技はわらわを打ち出しているからな}
大事なことなのに…俺は先生を倒すことだけ考えていたせいでその後のことを考えていなかった…結夢も俺も地面に近づいていく…。
日菜子「させない…!頑張ったあの子たちを死なせない!!」
日菜子さんが俺たちに近づいてきている…。
真「うわあああ!!」
「ガシ!!」
俺を掴んでくれたのは…日菜子さんだ…!
日菜子「無茶だったけど…よくやった!このまま結夢のとこにいくよ!!」
真「は、はい!」
俺を懐の中に入れ、そのまま結夢のところまで加速した…
結夢「お姉ちゃん!!」
日菜子「もう大…」
「言ったはずだぜ?…俺が…この程度で…死なないと…!」
真「え…」
日菜子「な…」
聞こえてはいけない声が…その場に低く響き渡った…空中に止まっていた先生が…声を上げた…
翔「お前ら全員死ねよ…」
「パチン!!」
先生が…指を鳴らした…それは…
「ビュウオオン!!!!」
辺り一帯に合った竜巻が…俺たちの背中に強く押した…。その風を受けた俺と日菜子さんはあり得ない加速をしたのだ…。
日菜子「結夢だけは…!!」
その加速の中でも日菜子さんは結夢を抱きかかえ、俺と同じく懐に入れたのだ。
真「うわ!」
その直後、視界が回った…。何が起きた?俺は思わず目を閉じた…。
「ドン!!」
落下した感覚がなくなったと同時…俺の背中から聞きたくもない音が聞こえた…。
真「く…なにが…」
俺は日菜子さんの腕から離れた。そして…見てしまった…
日菜子「…ふた…りともぶ…じか…よか…った」
結夢「おねえ…ちゃん…お姉ちゃん!!!」
俺と…結夢を抱えた日菜子さんが…全身を地面に打ち付け…血を流し…目を閉じて…しまったのだ…。
結夢「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!!」
結夢がいくら声をかけようとも…日菜子さんが目を覚ますことはなかった…
「トン…」
さらに絶望の音が聞こえた…
翔「日菜子はいい姉だな。自分よりもかわいい妹を守る…か。だが…それも意味はない」
翔先生が俺たちの前に着地したのだ…頭からも首からも腕からも、体の至る所に血が流れている…
真「なんで…それで…生きてるんだ…」
翔「は…俺だってもう直に死ぬ…それでも…お前らだけはやらないといけない。その…執念だけだな…」
俺は思い知った…これが戦闘の最前線に立った男の執念なのだと…こんな人に俺が…勝てるわけが…
翔「さあ…終いだ」
先生が俺たちを両方狩ると言わんばかりに腕を広げた…そして俺たち目掛け…手を伸ばしてきたのだ…。終わった…俺にはこれを避ける術はもう…
真「え…」
俺の視界が…一気に下がった…。なにが…
そこに立っていたのは…
「勇気を出してあの2人に立ち向かったこと。それは誰でもできることじゃない。よく頑張った。真くん」
真「はあ…!!」
緑色のポニーテールをなびかせながら立つその人は…圧倒的な神気で翔先生の攻撃を受け止めるその女性は…毎日握ってもらっている優しい手で俺たちを守る…彼女は…!
翠花「お待たせ」
真「翠花姉!!!」
翠花姉だった…!翔先生が驚きの顔を見せた…
翔「燕先生は…どうした…」
翠花姉は燕先生と戦っていた…彼女はどうしたのだろうか…
翠花「燕先生は神気切れですね。私とあれだけやりあったんですから。彼女には神気の回復方法がないけれど、私にはある。だから神気量で私が上回ったんですよ。それに燕先生は短期決戦型に対して私は長期戦型。私が耐えきり、先生が動けなくなった。あの状況ならもう私は戦わなくてもいいと停戦を提案したら先生も了承した。だから私が来たんですよ」
翠花姉は…あれだけ神気があった燕先生の攻撃を耐え続け…最終的に勝利してみせたのだ…
翔「そんな馬鹿な…」
翠花「本当ですよ。現に私がここに立っていること、そして燕先生があそこで倒れているのがいい証拠ですね」
翔「あの人は…翠国でも歴代最強の小隊長のうちの3人に入るんだぞ…その燕先生が…」
翠花「さて…」
翠花姉が…”覇世の構え”をとった…。そして…圧倒的な神気を開放したのだ…!
翠花「私は負けない…。そして私は負けるわけにはいかない…。親友が命を懸けて守ったこの2人を…私は必ず守り抜く…。これは…親友が残した意思なんだ…」
翠花姉が先生に向かって飛んだ…!そのスピードはもはや…速いなんて言える次元ですらなかった…神気だけで出せていいスピードじゃなかったからだ…
そして先生に向かって刀を振るおうとしたその時…
「ピピピピピピ!!」
辺り一帯に…タイマーの音が鳴り響いたのだ。
翠花「…あ」
翔「時間か…」
その時計はこの戦闘を終わらせる音だった…。
翠花姉は自身の刀を鞘に納め、刀を消した…。
翠花「んー!!今年の先生たちは強かったな~。どっちも倒せなかったな」
翔「いやいや、倒すのが目的ではないんだが?」
翠花「まあそんなこと言わないでくださいよ~先生~」
さっきとは全く違う、柔らかい空気を出す2人を見て俺は確信した。完全に戦闘が終わったのだと。翔先生がこちらに向かって近づいてきた。結夢のところに先生が向かった。
翔「申し訳ない。結夢さん。君のお姉さんを俺が殺めてしまった。本当に申し訳ない…」
結夢「…大丈夫」
結夢が顔を俯きながらそう言った。声は今にも泣きそうな声だった…。
翠花「結夢ちゃん。日菜子はね、結夢ちゃんを命を懸けて守った。それが今は蘇生という保証がある。だけど今後はそんな保証なんてない。厳しいようだけど、本当にもし今後身内の人が戦場で死んでしまったら、その人の意思を汲んで頑張らないといけない。だからこそ、戦場で立ち止まってはいけないの」
結夢「はい…」
翠花「結夢ちゃん。あなたがいなければ多分、先生にやられてたのはあなたと真くんだったかもしれない。だからこそ、よく腹を決め、あの場に飛び込んだ。よく頑張ったね。結夢ちゃん」
そう言い翠花姉は結夢をそっと抱き、胸に引き寄せた。
結夢「翠花…さん…うう…うわあああん!!」
翠花「ふふ、よく頑張った頑張った」
泣いている結夢に俺は声をかけられなかった…実際、俺は攻撃をしたからこそ先生を足止めできた…。だがそれをしたせいで俺も結夢も落下をした…日菜子さんがいなければ…死んでいたのは俺たちだったのだから…。俺はそのことを思い出しうつむいてしまった…。
翔「そう難しい顔をするな。今回は相手が俺だったからってのがある。普通なら死んでんだ。誇れ。お前は十分戦闘ができる」
真「先生…」
翔「なんだ?」
真「僕もそんな風に耐久力を上げれますかね…」
翔「うん!無理!!」
真「え~!そんな~…」
翔「はっはっはっは!」
先生の笑い声がその会場にこだました。改めて戦闘が終わったんだと実感した俺は、疲れもあったんだろう…意識を手放してしまった…。
翔「まあ、この環境で生き残るだけバケモンだ。お前も」
そんな声が俺の耳に入ったような気もしたが、俺の意識は闇の中に落ちた…。




