第40話 体力テスト3 それはもう体力テストじゃない!
俺の壁割りが終わり、俺に続く結夢の番になった。
燕「さて気を取り直して結夢ちゃんの番よ」
結夢「はい。頑張ります!」
結夢が壁の前に立ち、能力を使用した。ピンク色の五角形の巨大な花が壁の前に出現した。
翠花「結夢ちゃんの能力は『桜』か。いいじゃん。結夢ちゃんに合ってるいい能力だ」
日菜子「あの技は一点集中じゃないような。まあいいか。結夢の好きにさせれば」
結夢の能力は桜か。ピンク色で五角形はなにか見たことのあるような気がしたんだ。だがそうするともう一つの目が示す偉人能力はなんなのだろうか…。
真「ねえ翠花姉。結夢の偉人能力ってなんだろう?」
翠花「目を見ればわかるとは言ったけど、完全に能力の特定ってのは難しいの。結夢ちゃんの片目が偉人能力ということはわかるけど、その偉人が示すマークなんてわからないよ。どんなマークだった?」
真「えっと…十字架ってくらいしかわからなかった」
翠花「十字架か…。なら多分、宗教系の人かな?というか日菜子なら知ってるような気もするけど、ねえ、日菜子」
日菜子「ん?どうしたの?」
翠花「結夢ちゃんの偉人能力って何?」
日菜子「結夢の偉人能力)?ああ、確か『マザーテレサ』っていう偉人だよ」
マザーテレサか。彼女は俺が前の世界でいた時でも知っている偉人だ。確か修道院の人で、貧しい人々への奉仕に尽力をした人物。俺が知ってるのはこの程度だが、俺でも聞いたことのある偉人だ。
真「『マザーテレサ』…。能力ってどんなことが…」
俺は日菜子さんに聞いた。だが日菜子さんは首を横に振った。
日菜子「私にもわからない。まずまず能力を使うタイミングとかもわからないし、苦しんでいた人々を奉仕していた彼女が戦闘を望むわけもない。言い方はあれかもだけど…戦闘面だけで言えば…ハズレ能力と言わざるを得ない。けど、彼女の本質は支援や奉仕。サポートだったりには向いてる…のかも?」
この世界でもハズレと言える能力も存在するのか…。だが実際彼女の功績は素晴らしいものだ。苦しんでいる人々への支援などもあるし決してハズレではないと思うんだ。
結夢が大きな桜をまるでチャクラムのように回転させ始めた。
結夢「いきます!」
その回転させた桜を壁に向かって投げつけた…!回転する葉は壁をどんどん切り裂き、5枚目くらいで回転が遅くなり、7枚目で突き刺さって止まった。
燕「この場合は6枚ね。いい記録だわ」
結夢「ありがとうございます!」
結夢が終わったようで、こちらに向かってきた。
結夢「どうだった?」
真「良かったと思うよ。中学生の人でも3枚くらいの人もいたし十分だと思うよ」
結夢「だよね!ありがとう!真くん!」
結夢が終わり、残りのみんなも壁割りをこなしていった。俺は10枚全て割れたが、他に割れる子はいなかった。
そして最後の人も終わり、先生たちが戻ってきた。
燕「みんなお疲れ様。次の競技に移るわよ」
先生が俺たちを次の場所に案内してくれた。ついたのは…白線で囲まれた…広い空間だった。
燕「ここでやるのは…鬼ごっこよ」
真「へ?」
鬼ごっこ?あの鬼が逃げる人を捕まえるやつか?それが体力テストとどう関係があるのだろうか…。
翔「まあ聞け。鬼ごっこでは俺たちがみんなを捕まえる。制限時間内に捕まらなければ10点、時間内に捕まると捕まったその時間が点数になる。だがもちろん一人を集中狙いなんてしない。みんなを万遍なくいくからな。頑張って逃げまくれ」
燕「ちなみに能力の使用はもちろんOK。そして特別ルールも存在するよ。それは、鬼である私たちを倒すこと。それができた子にはもちろん10点。私でも翔先生でもいい。まあ倒せるのなら、ね」
それはルールが破綻しているような気もするけど…というかそれは先生たちが危ないんじゃないか?
真「先生、本当にもしもなんですけど、何かの間違いで能力の暴走とかで先生をその…大けがさせちゃったりした場合って…」
燕「構わないわよ。私たち職員も、そして生徒のみんなも大けが、最悪死んでしまうようなことがあっても、この学校でのしょうがない怪我と判断されれば蘇ることができるの」
蘇る…だと?そんなことができるのか…。この学校はすごいな…。
翔「心配はいらない。まあこのテストの実態は体力と神気の継続力を見るものだからな。逃げてもらうことが一番だが、俺たちを倒すことはテスト以上の実績とされているらしいから、戦闘なら受けて立つ。その時は俺も加減しないぜ?」
…この人に関しては戦いたいだけじゃね?まあいいか。
燕「じゃあ、まずは小学生からね。私たちがシールを貼っていくから、動かないでね」
そう言い先生は俺たちの体操服に緑色のシールを貼っていった。
燕「よし、みんな貼れたね。あ、中学生は先に自分たちで貼っておいてね。じゃあみんな入ろうか」
先生の声で俺たちはその白線の中に入った。全員入ると、周りに半透明の緑色の壁ができた。これはなんだろうか?
翔「今できたのは結界な。みんなをこの場所から出さないようにするためだ。まあ逃げる過程ならぶつかることもあると思うが、これにぶつかっても特に何もない。まあこれ以上は逃げれないくらいに思ってくれ」
なるほど。それならやりやすい。しかもこの結界は上にも続いている。つまり…そういうことだ…。
燕「ではみんな。ちょっとだけ体をほぐしたら始めるよ」
そう言い先生は体をほぐす体操をした。先生の真似をしながら俺たちはストレッチをした。
そしてすべてのストレッチを終え、ついに鬼ごっこが始まる…。
燕「では始めようか。時間は10分。いくよ。よーいスタート!」
始まった…!みんな神気を使ってうまい具合に逃げている。その中の生徒の一人に、翔先生に向かって水の玉を放つ子がいた…!
「やってやる!」
先生に向かって水の玉を放った…!それが先生の目の前に来た…!それを先生は…
翔「ふん…。まあいると思ってはいたが、俺に攻撃してくる子もいるだろう。だがそれは…自殺行為だ!」
先生は水の玉を透明な何かで横にずらしたのだ…。あの能力はなんだ?目の色は緑単色…。
真「もしかして…風か!」
翔「気づくか!早えな!なら…君から行くぞ!エース!」
先生が方向転換をして俺の方向に猛スピードで向かってきた…!
真「やばい!」
俺はとっさに地面を神気で蹴り、ジャンプをした。そしてジャンプした状態から朱雀の姿になり、俺は空を飛んだ。今度は大きな鳥の姿で。
翔「まあ飛べるよな…だがそれは俺も一緒だ!」
先生が足元に風を纏わせ、上にジャンプをした…。それを何度も繰り返し…俺の方向に飛んできたのだ…。
真「うっそ!逃げなきゃ!」
俺は向かってくる先生から逃れるべく、さらに高く飛んだ…。先生は…もう追ってきていない。撒けたようだ…。
翔{あの高さなら…燕先生が向いてんな。後で2人で追い詰めるか…}
先生が地面に向かっていった。
下では燕先生が生徒たちを神気を使いながら少し捕まえている。結夢は…まだ捕まっていないようだ。なんなら先生の進路の妨害となるように桜をところどころに配置している。
燕「この桜は…結夢ちゃんね…。けれど、まだなんとかなるわよ!」
結夢の桜を避けながら先生が着々と生徒を捕まえている…。その時、結夢が腕を広げた…。
結夢「もう…捕まえさせない!『満開・サクラサケ』!!」
先生の周辺に桜の葉が吹き荒れる…!先生はその桜を避けた…。
燕「なにか嫌な予感がしたわね。避けてよかった」
結夢「あれを避けるなんて…。…!!」
避けた直後、先生が結夢の正面に、まるでワープでもしたかのように移動した…。
燕「あなたの桜は触るとどうなるのかしら?」
結夢「…!!」
先生が結夢に向かって手を伸ばす…。
真「させるか!!」
俺は結夢と先生に向かって急降下をした。そして先生に向かって弓を構えた…!
真「『焼弓光光』!!」
俺は先生目掛け矢を放った。その矢は先生を結夢から引きはがすことに成功した…!そして俺は結夢に向かった。
真「結夢!捕まれ!!」
結夢「…!!真くん!!」
結夢が俺の鳥の足を掴んだ。そのまま俺は再度空中に向かって飛んだ…!
燕「翔先生!あの2人がやはり一番だわ!一気に詰めますよ!!」
翔「了解!!」
先生2人が同時に俺たちのところに向かって飛んできた…!もちろん…来させるわけないだろう!
真「なら…これならどうだ!!『金紅羽・積善』!!」
俺は翼を広げ、そして無数の羽を飛ばした…!
翔「いきなりえぐいねえ!!」
燕「避けれないものでは…ないわね!」
先生たちが神気を纏った技を使った…!
翔「『風魔蹴足』!!」
燕「『矢如光陰』!!」
翔先生は風を纏った足で空中をとてつもないスピードで蹴り、俺の技を突破した…。燕先生は光り輝き、俺の技にあるわずかな隙間を縫ってきて、俺よりも高い場所にいる…!
朱雀{真!変われ!久々の強者!!腕が鳴るのじゃ!}
真{えちょ…ま、負けんなよ!あと結夢のことも!}
朱雀{任せい!}
朱雀がそう言い体の主導権を握った。俺は完全に見てるだけだった。
燕先生が俺に向かってえげつないスピードで突っ込んできている…!
そしてつばぜり合いになった…!
朱雀は自身の翼で、先生は拳で殴り合っている…!
翔「あれは邪魔に入れやしねえな。なら…あの子だな!」
真{朱雀!翔先生が突っ込んできてる!}
朱雀{無論見えておる!}
朱雀と燕先生のつばぜり合いは翔先生が突っ込んできたことを見た朱雀が離れたことで終わりを告げた…!
だが今度は翔先生がいる…。
結夢「させない!『満開・サクラサク』!!」
先ほどとは文言が少し違う…何が起きる?
…なんだ!?俺の身体から桜が…
結夢「真くん!もっかいさっきの技を!」
真「わかった!『金紅羽・積善』!!」
俺はもう一度あの技を使った。俺の羽は…なんと桜になっていた…!だがこれだと殺傷能力は下がるのでは…
結夢「真くん!翔先生に近づいて!」
真「え!?わ、わかった!」
翔「俺の方に来るのかよ!!」
俺たちは翔先生に向かって進んだ…!先生が離れようとしている…。
燕「私を忘れないでよね!」
朱雀{それを待っておった!}
朱雀が燕先生の方に一気に振り向いた…!
燕「な…」
燕先生が一気に桜を全身に纏った…!
燕「なにこれ…動けない!?」
結夢の桜は…当たった人を止めるのか!?そんなの十分チートレベルの能力じゃないか!
真「結夢!何秒止めれる!?」
結夢「私の桜に触ってる間はずっと!!」
正真正銘の…チート能力キタコレ!!
燕先生が桜に触れていて、完全に宙にとどまっている…!
朱雀{真!あやつにとどめを刺す!結夢に向かって捕まるように指示せよ!}
真「結夢!飛ぶぞ!しっかり捕まれ!」
結夢「うん!」
結夢がしっかりと握ったのを確認し、俺は少し上空に飛んだ。そして、俺は燕先生に向かって嘴を燕先生に向かって突き刺そうとした。だがそこに…
翔「させるか!!」
翔先生が割り込んできたのだ…。そして風を纏った大きな壁を俺たちの前に作った…!
朱雀{ことがうまく運ぶのは…気持ちがいいのう!!}
真{どうする気だ!?あれを!}
朱雀{無論!突破じゃ!!}
そのままの勢いで朱雀は翔先生の壁にぶつかった…!ぶつかった衝撃でとてつもない風が巻き起こる…!
結夢「きゃあ!」
結夢が…宙に放り出された…!
真「結夢!」
{朱雀!結夢を!}
朱雀{いや、それよりも2人を突破する方が速い!}
朱雀が一気に翔先生の壁に力を入れた…その瞬間、壁が壊れ、そして先生2人を一気に突き刺したのだ…!
燕「ぐ!!」
翔「う!!」
そして2人が落下した…。
朱雀{とどめじゃ…ふん!}
朱雀が固まっている2人を…足で蹴り落としたのだ…。落ちている結夢よりも早く地面にぶつかった…。
「グシャ!!」
…あまり聞きたくはない音が聞こえた…。おそらく2人は…あのスピードだ…地面にぶつかり…死んだのだろう…。
朱雀{あの娘を救うぞ!}
真{あ、ああ!}
朱雀はその勢いのまま、結夢に向かって羽を広げた。結夢は落下中だが、それよりも先に下にたどりつき、羽を広げた。
「バフ!!」
結夢「真くん!」
真「もう大丈夫!」
柔らかい音と共に結夢の声が聞こえた。助かっているようで安心した。
俺は地面に着いた。主導権はもう俺に戻っていた。俺は先生たちが地面にぶつかった方を見に行った…。
そこには…赤色に染まった地面があった…。俺が…俺が殺した…のか。先生2人を…。
真「う…!おえ!!」
俺はその事実に吐いてしまった…。それを結夢や他の生徒は黙って見ていた…。
「トン!」
後ろから軽やかに着地をした音がした…。誰だ?こんな時に…。
「この2人をやるとは、見事だ。赫星真、一是結夢」
それは…
仁「我が国の小隊長を経験したこの2人を相手に勝つとはな。流石だ」
翠帝、橘仁だった…。
結夢「どうして翠帝様がここに…」
仁「反応があってな。学校の職員の絶命反応が。それで出向いた。見たところ、体力テストの鬼ごっこで逃げるために真が能力を使用し、2人がかりで追い、そのまま戦闘となり、2人が勝った。そして職員2人が死亡…でいいな?」
結夢「は…はい…」
仁「そう難しい顔をするな。先に言われたであろう?我が学校の人間が絶命し、俺が確認して問題なければ蘇生すると」
結夢「あ、そ、そうでしたね。すみません。完全に頭から…」
仁「構わん。して、真。大丈夫か?吐いてしまったようだが…」
真「すみません…2人の遺体を見たのと僕がやってしまったというのが…」
仁「なるほどな。では少し休憩の時間を与えよう。翠花に治してもらうといい。彼女は傷も心も癒す子だ」
真「はい…」
仁「結界はすでに解いている。翠花のもとへ行くといい」
俺は翠花姉のもとに向かった…。翠花はのほほんとした顔をしていた。
真「翠花姉…」
翠花「お疲れ様、真くん。吐いちゃったね。一緒に保健室に行こうか」
真「うん…」
俺は翠花姉に連れられ、保健室に向かった。その道中で会話をした。
真「翠花姉…僕…人を…殺しちゃったんだよね…」
翠花「ん?いや、そういう…まあそうだね…。殺したことに変わりはない。けど、今回はそういうケースもあるってことだよ。それにこの経験は糧になるよ。殺しをしてしまったということ以上に、あの2人に勝ったっていうね。正直、私も日菜子も勝てると思ってなかった。すごいよ。真くんは」
翠花姉が俺を抱擁した。包み込むような優しい温かみだ…。
真「翠花姉…」
翠花「よく頑張ったね。真くん。君は自慢の弟だよ」
真「翠花姉…!う…うわあああん!!」
俺は…抱かれている翠花姉の腕の中で…声を上げて泣いてしまった…。翠花姉に認められたことが…嬉しくて、泣いてしまった…。
リーラ「おーい。こっちに来なよ。廊下で泣くものじゃないぞ~」
翠花「あ、はーい。行こうか、真くん」
真「うん…」
俺は翠花姉に抱きかかえられたまま保健室に向かった。そしてリーラ先生のもとで治療を受けた。
リーラ「怪我は特になし、けど吐いちゃったらしいじゃん。大丈夫?とりあえず口をゆすいできてね。源さん、お願いしていい?」
翠花「はい。任せてください」
俺は翠花姉に連れられ、口をゆすいだ。なんなら翠花姉も口をゆすいでいた。…なんで?
リーラ「まあ今回は戦闘だったこともあるし、君が殺したことは変えようのないこと。でも病む必要はないよ。君はそれ以上にあの2人に勝ったという実績がある。自信を持ってね」
真「は…はい…」
翠花「リーラ先生、2人は…」
リーラ「ああ、そこのベッドですでに起きている。おーい、翔先生、燕先生」
真「え?」
燕・翔「はい」
何事もなかったかのように2人がベッドから出てきたのだ…。これが…蘇生か…。俺が殺した2人が起き上がっているというのは…慣れないな…。
翔「全く、強すぎだぜ。赫星くんよ」
燕「結夢ちゃんのおかげで完全に詰み状況にされちゃったし、完敗ね。私もこれから頑張っていかないと。真くん、源さん。会場に戻るわよ」
真「先生たち…ごめんなさい!」
翔「謝る必要はない。これも想定内だ。まあ…小1にやられたってのは初だがな」
翠花「お二人に特に異常はなさそうですし、行きますか」
燕「ええ」
俺たちは保健室を出て、会場に戻った。この後の競技に備え、俺は翠花姉のもとで休んだ。




