第39話 体力テスト2 2つの競技
200メートル走を終え、俺たちは次の競技である「ハンドボール投げ」の場所に向かった。
ハンドボール投げは前の世界でもやったものだ。こっちの世界では神気を使えることもあって感覚が違うだろうし、しっかりとこなさなければ。
翔「ここがハンドボール投げの会場だな。では説明をしていく」
ハンドボール投げの会場に着き、先生が説明をくれるらしい。
翔「やることは単純明快、このボールを投げるだけだ。投げて、そのボールの飛距離を測るものだ。もちろんこの競技でも神気は使っていい。能力もいいが、関係ない能力を無理に使うと記録が下がる可能性もある。自分の能力と要相談だな」
なるほど。前の世界とやってることは変わらないようだ。だがそこに神気が加わるのだ。ボールに神気を纏わせることで飛距離がアップするということだろう。
翔「あと、この円の中から出てはいけない。3メートルくらいだ。この円の中でなら助走をとっても構わん。これくらいかな?燕先生」
燕「はい。説明は以上で大丈夫です。あ、中学生で余裕がある子はみんながどれだけ飛ばしたのかを見る役割をしてほしいの。誰かやってくれる?」
日菜子「先生。私がやります」
燕「日菜子さんね。他にやってくれる子はいる?」
翠花「私もやります」
燕「あら、翠花さんも?ありがたいわ。なら2人に任せようかしら」
翠花姉と日菜子さんがお手伝いとしてやってくれるらしい。結夢といい日菜子さんといい率先して動くというのは見習わなければな。
燕「先に2人から済ませましょう。2人共円に入って」
翠花・日菜子「はい」
2人が円の中に入った。さっきあった200メートル走で神気を出していて、神気をそのまま出しっぱなしのようだ。確かに神気を使うこの場において神気の開け閉めは結構面倒だ。俺も次からそうしよう。
燕「2人は私たちが見るわ。少し待ってね。私が手を上げたら投げてね」
翠花「了解しました」
先生が神気を使ってどんどん離れていく。ある程度距離を離し、先生が手を挙げた。
翠花「お、よさそうだね。どっちから投げる?」
日菜子「なら私からいこうかな。翠花が先にやると気まずいし」
翠花「それは…どういうことかな?」
翠花姉が少し不機嫌そうな顔をした。
日菜子「まあまあ。じゃあ、お先に」
翠花「はいはい」
日菜子さんがボールを持ち、手を挙げた。先生も手を挙げた。日菜子さんが投げるようだ。
日菜子「ふう…。ふん!!」
日菜子さんがボールを投げた…!なんだ!?そのボールのスピードは!?しかもボールが雷を纏っていて、黄色の線を描きながらどんどん伸びていく…。そのまま先生たちの頭上をはるかに超え、奥にある校舎を超え、さらに奥にある大学生たちがいる校舎まで伸びた…。いくらなんでも伸びすぎじゃないか?これが神気と能力を合わせてできるものなのか…。
結夢「お姉ちゃんすっご。お姉ちゃんハンドボールやってるけど、それも相まっておかしい記録になってるんじゃ…」
日菜子「まあこんなもんでいいでしょ」
翠花「逆に伸びすぎて記録わかんないから0点になれ」
日菜子「うおい!」
翠花姉も結構言うね。体力テストで0点って、まずまずあるのか?いや知らんけど。
翠花「次は私だね。日菜子に負けないように頑張ろっと」
次は翠花姉が投げるようだ。神気が5兆とかいうもう俺ではわからない次元にいる翠花姉の投球は一体どうなるのか。
翠花姉がボールを持ち、手を挙げた。先生も手を挙げた。
翠花「せーの…ふん!!」
真「おー!」
めっちゃいい勢いで真上に上がっていった。これは期待が…ん?真上?ってことは…
「ドン!!」
翠花姉が投げた距離からほぼ動くことなくボールが落ちてきたんだ。翠花姉は…ちょっと球技が苦手なようだね。
翠花「えええ!!なんでよ~!!!」
日菜子「ふ!翠花~。負けない以前の問題じゃーん笑笑」
翠花「笑笑まで言うなー!!せんせーい!!もっかいやらせてー!!」
先生が手を挙げた。了承したようだ。
翠花「もう今度は能力を使ってやる!」
そう言い翠花姉は青白い帯を出し、ボールに巻き付かせた…!そして帯を大きく振りかぶる構えをした…!
翠花「んー!ふん!」
帯を大きく振った!これは…
「ドン!!」
後方から音がした。着地地点には大きな煙がたっている。後方にある小学校の校舎から煙が…
翠花「もう!!なんでよ~!!」
だめだ…面白すぎる…!能力を使わなければほぼ真上に、能力を使えば後方に飛ぶとか…!
「源さん…!」
「ある意味すげえな。後方に投げるとかどういう風にやるのか教えてほしいな」
翠花「馬鹿にしないでよ!もう!!」
翠花姉が顔を膨らませて、不貞腐れている。…ちょっと、いや結構かわいい。
翠花姉たちが終わり、先生がこっちに向かってきた。
燕「2人が終わったわね。それで申し訳ないのだけれど…ちょっと翠花さんはやめておこうかしら」
翠花「先生まで!」
燕「あれ見て任せようと思う人は…ねえ」
翠花「わかりましたよ…」
燕「真くん、結夢ちゃん。2人はどうかな?結果次第ではお手伝いに回ってもらってもいいかな?」
結夢「はい!大丈夫です!」
真「僕も大丈夫です」
燕「そう言ってもらえて嬉しいわ。早速測っていくわね。あ、日菜子さん。お願いしていいかしら?」
日菜子「お任せを!」
日菜子さんが距離を離していく。俺は円の中に入り、ボールを持った。その時、朱雀が俺に話しかけてきた。
朱雀{真よ。ボールを投げるとき、わらわをボールに入れ込むイメージを取れ。よいな?」
真{わかった}
俺はボールに朱雀を入れ込んだようなイメージをとり、投げるため日菜子さんに向かって声を上げた。
真「いきまーす!」
声が聞こえたのだろう。日菜子さんが手を挙げた。俺はボールを投げる構えをした。
真「ふ!!」
声を上げながらボールを投げた。そのボールは赤い鳥の姿に変わった。そしてそのままの軌道を描きながら日菜子さんの頭上を越え、上限であろうネットに触れ、ボールは止まった。
「おー!すげえな。あの赤い髪の子」
「日菜子さんがすごすぎて霞むけど、あの子も十分にすごいね」
燕「では真くんに任せようかな。いいかな?真くん」
真「はい!頑張ります!」
俺は先生からの許可も得て、俺は日菜子さんの方に向かって走った。俺は日菜子さんに何をすればいいのかを教えてもらった。どれだけボールが飛んでいるかを見ること、ボールをみんなの方向に戻すこと。この二つをすればいいらしい。結構簡単だ。
俺のクラスメイト達がどんどんと投げていく。結夢も投げていたが、前の3人(俺も含む)のせいで印象が薄くなってしまった。
中学生の中でも筋肉がある2人やあの3人組でさえ、ネットに届いているものはいなかった。最初にやった日菜子さん、続いて俺が目立つ動きをした。
全員終わり、先生2人がこちらに戻ってきた。
翔「全員終わったな。では次は壁割りだ。移動するぞ」
さらっと言ったが…壁割りってなんだ?聞いたこともない…。
何をするかわからないまま俺は測定場所に着いた。会場には黒い壁が何枚だろう…大体10枚くらいあった。大きさは縦横共に日菜子さんくらいの大きさだ。大体…150センチ~160センチくらいだ。厚さは徐々に分厚くなっていて、最初は1センチ正方形の壁が、徐々に2センチ、3センチ、5cmとどんどん分厚くなっている。まさかこれを割るというのか?
翔「この壁をぶっ壊せ。厚いから結構難しいぞ」
燕「まあコツとしては、神気を一点集中させることが多く割るコツかな。頑張ってね」
一点集中…俺そんなのやったことあるか?刀とかで直接切るとかはあるが、集中的にやったことはないぞ。できるかな…俺。
燕「ここは先に中学生がやってもらって、小学生のみんなに例を見せようか。いいね」
中学生たち「はい」
先に中学生がやってくれるらしい。わからないし助かった。
日菜子「では早速やっていいですか?」
翔「ああ。どんどんぶっ壊してくれ」
日菜子「了解」
日菜子さんが壁の前に立った。そして腕を円を描くようにすごいスピードで回している。その回っている腕の中心から…何か黄色の球体のようなものができている…。そしてその球体を日菜子が掴んだ…!
その瞬間…握っている手から雷の光が漏れ出した…!そして握っている光を壁に向かって投げつけた…!
日菜子「『雷光球極!!』」
日菜子さんが投げた光の玉が目にも止まらない速度で壁をどんどん突き抜けていく…!そのまま減速することなく10枚全ての壁を破り、全てを粉々にしたのだ…!
真「すごい…!日菜子さんの能力は…あんなに速いのか…!」
翠花「スピードも相まってすごい威力が出てる。スピードもあるし神気量も十分。10枚くらいなら容易だね」
翠花姉は日菜子さんと一緒にいるし知ってるかもしれないが…俺は知らないんだ。驚いてもいいよな?
日菜子「まあ壊しすぎると危ないし、これくらいでいいよね」
真「え…?翠花姉、日菜子さん今なんて言った?」
翠花「壊しすぎると危ないし、これくらいでいいよねって言ってたね」
真「ど、どういう意味?」
翠花「そのままの意味だよ。壊しすぎると誰かが怪我しちゃうかもしれない。10枚壊せるくらいに加減をしたってことだよ」
あれで…加減をしていない…だと…。日菜子さんの全力は一体どれほどのものなんだ…。
日菜子さんが終わり、日菜子さんと一緒に走った筋肉男子が次に立った。
筋肉男子「いくぜ!」
彼が声を発すると同時、大きな拳の形をした神気に満ちたものが出てきた。それを壁に向けて放った。その拳は…6枚くらいだった…。
真「あれだけ神気を纏わせた拳で…6枚…」
翠花「あれは当てる面積が大きすぎだね。今回だと神気を一点集中するのがコツ。先生も言ってたけどね。一点に神気を凝縮すれば多分真くんや結夢ちゃんでも10枚いけるよ」
翠花姉はそう言うが…結構難しいと思うんだ。凝縮なんてやったこともない…。
筋肉男子が終わり、どんどんと中学生が壁に向かって攻撃を当てていく。だが、俺が警戒していた男たちでさえ、10枚を破ることもできずに終わっている…。10枚を破ったのは未だ日菜子さんたった一人だ。
そして翠花姉の番になった。
翠花「10枚いかないと真くんにも日菜子にも面目が立たないね」
翠花姉が自身の能力である沖田総司の刀を取り出した。そして、”王羅の構え”をとった。あの時と同じ、翠花姉からとてつもない圧を俺は感じた…。おそらく、経験したことのない神気もあるのだろうな。
翠花「ふう…”覇王流”黎天!!」
翠花姉は強烈な突きを壁に向かって放った…!その突きが壁にぶつかったその一瞬、突きが全ての音を飲み込んだかのように感じた…。そして音が聞こえるようになったとき、轟音と共に突風が巻き起こったのだ…!
真「す…すごい…!」
翠花「こんなものかな。10枚いってるし十分でしょ」
十分すぎる…こんなの見せられたら…
真「翠花姉!僕もそれ使えるようになりたい!!」
そりゃあ扱えるようになりたいに決まってるよな!俺がそう言った時、翠花姉は微笑みを浮かべてくれた。今の俺がどんな顔をしているのかわからない。だが、俺は翠花姉に笑顔全開な顔をしたんだろうな。
翠花「ふふ。ならこれからの鍛錬、頑張らないとね」
真「うん!僕頑張るよ!!」
翠花姉が終わり、こちらに翠花姉が戻ってきて、俺の頭を撫でてくれた。
翠花「私がしっかりと教えるからね。剣術を」
真「はあ…!うん!!」
これからの鍛錬、頑張らなくちゃな!!
翠花姉が終わり、残りの中学生も終わった。
燕「中学生は終わったね。では小学生のみんなの番だよ。真くんからどんどん入っていってね」
そして今度は俺たちの番になった。俺は壁の前に立った。
結夢「ファイトだよ!真くん!」
結夢はいつだって俺の応援をしてくれる…。いい子だ。本当に。なら俺はその期待にできる限り答えなければ。
…だが、俺は翠花姉のように一点集中できるものを持っていない…。どうしよう…。
朱雀{困ってるそんなお主にわらわから技を一つ伝授しよう!その名も『焼弓極光』じゃ!}
真{『焼弓極光』?『焼弓光光』じゃなくて?}
焼弓光光は以前俺が朱雀と戦った時に打ってきた技だ。あれとは違うようだ。
朱雀{うむ。『焼弓光光』はまだ神気に散らばりがあるのじゃ。じゃからそこまで威力はなかった}
…俺あの技で腹貫通してるんだが…。
朱雀{それと比較すると、『焼弓極光』は完全に一点集中に特化した技じゃ。わらわが弓を出す。そしたらそれを握れ。握ると右腕からは時計回りをする赤色の円が、左腕からは逆時計回りする金色の円ができる。弓の弦と呼ばれる引っ張るところを引っ張ると、円同士が弓の真ん中に向かってどんどん近づいてゆく。完全に重なるタイミングがくる。するとその環は重なったその瞬間のみ矢となる。そこで離すのじゃ。よいな?}
真{覚えること多いけど、とりあえずその円が重なるタイミングで離せばいいんだな?}
朱雀{そうじゃ。ちなみにこの技を打つと一時的にわらわが使えなくなる。この技はわらわを打ち出しているからな}
真{そうなのか?}
朱雀{うむ。傍から見ると、弓を構えてるお主の背に鳥のようなものが出てきておる感じじゃ。そしてその鳥を打ちだしたように見える。まあこれは覚えんでもよいがな。では健闘を祈る}
真{ああ、ありがとう}
朱雀は消え、その代わりに言っていた弓が出てきた。結構装飾品のようなものがあった。弓の弦は…これか。真っ赤な色をしている。俺は弓を壁に向かって構え、弦を少し引いた。弦は全く重くなく、少し張っているが、感覚は垂れている糸くらいだ。
そしてしっかりと引っ張ると、俺の腕には赤色の円の環と金色の円の環が出てきた。どんどん力を込めて引っ張ると円がどんどん近づいてきて、最終的に円が重なった。このタイミングか…!
「なんだよあれ…鳥か?」
「あの子…めっちゃ輝いてる!」
周りから声が聞こえたが、それに反応してる余裕はない。環が重なったその瞬間を俺は見逃さず、矢となったその瞬間、俺は弦を離した。
真「『焼弓極光』!!」
俺が放った矢は鳥の形となり、日菜子が放った技に引けを取らないスピードで壁をすべて突き破った。放った矢に当たった壁はひび割れることなく、指くらいの大きさの穴をあけた。
真「ふう…」
「す…」
ん?周りの人たちが一斉に俺のことを囲んだ…。
そして俺を胴上げしたのだ…!
「すげえよ!小1であれ全部やっちまうなんて!!」
「あれを割った小学生1年生、君が初めてだよ!!」
他にもいろいろな声が聞こえた。だが、俺は朱雀が一時的にいなくなり、少し体に負荷がかかっていた…。今の俺にはちょっときつい…。
真「は、離してくださーい!!」
そう俺が言うと、周りの人たちが降ろしてくれた。悪い悪いみたいな顔をして。
俺は翠花姉のもとに向かった。
真「翠花姉!どうだった?」
そう聞いた俺は翠花姉の顔を見た。翠花姉はまた微笑みを浮かべていた。そして俺を抱きかかえた。
翠花「よくやった」
翠花姉がそう言ってくれた…!俺は翠花姉が褒めてくれることがやる気になった。彼女から褒められることをやる気に、そして小学生の中ですべての競技で1番になるという目標を掲げ次なる競技に備えた。




