第36話 体力テストの前日
俺は翠花姉と手を繋ぎ、下校をしていた。
翠花「どうだった?身体検査は」
真「神気量検査が一番驚いたかな。僕よりも神気が多い子が2人もいたし、結夢の神気量もすごくて、この学年だけでも僕含めて4人もすごい人がいるのが分かって、これから楽しみだよ!」
翠花「ふふ。そっか。ならその子たちに負けないように頑張らないとね」
翠花姉に学校であったことを話した。神気量検査だけでなく、色目検査とか身長体重に握力などあったことすべてを。俺が一方的に話しているのに翠花姉は嫌な顔せずに、なんなら楽しんで聞いてそうで話している俺も楽しくなった。
俺たちは結夢たちの家を通り、結夢たちと別れ、屋敷に着いた。ドアを開けると蓮乃さんが洗濯かごを運んでいた。
翠花「ただいま、蓮乃」
蓮乃「翠花さま、真くん。おかえりなさい」
蓮乃さんが出迎えてくれた。そのまま蓮乃さんは洗濯機に向かった。俺たちはリビングで少しくつろいだ。翠花姉も初めての授業だったこともあり疲れが見えた。制服のままソファに寝転んでいる。
翠花「あ、そうだ。真くん。今日は何かプリントもらった?」
真「ううん。今日は何ももらってないよ」
翠花「そっか。まあそういう日もあるか。明日は体力テストっていうのは知ってる?」
真「うん。小学生、中学生、高校生が校庭に集まってやるんでしょ?」
翠花「そうだね。ちなみに小学校1年生は中学校1年生と一緒に、小学校4年生は高校1年生とやるって感じだよ」
真「それはどういう割り振りなの?」
翠花「えっとね、小学校は6年生まであるじゃん?」
真「うん」
翠花「それで、中学生と高校生には3年生まである。中学生が小学校3年生まで、高校からは4年生までを担当するって感じで、中高合わせて6学年として見るの」
真「う…ん?」
うーんと…わかるようなわからないような…。
翠花「何て言おうかな…。小学校で低学年と高学年って聞いたことある?」
真「うん」
翠花「低学年は1年生から3年生まで、高学年は4年生から6年生。それで、低学年は中学生が、高学年は高校生がやるの。そして小1が中1が、小2は中2がって感じ。小4は高校1年生、小5は高2がって感じ。これでわかるかな?」
なるほど。大体わかった。小学生の学年にあった学年の中高生が担当するってのが今の翠花姉の説明でわかった。
真「あ、そういうことか。わかったよ」
翠花「お、わかったか。だから明日はもしかしたら私たちのクラスが真くんたちのクラスの担当になるかもね」
真「え!?」
それは本当なのか!?もしも翠花姉と一緒に体力テストをできるなら…それはもう言葉にならないほどに嬉しいことだ。
翠花「まあ私たちがどのクラスを担当するかはもう決まってるけどね」
真「そうなの?」
翠花「うん。でも…教えな~い!♪」
真「えー!教えてくれてもいいじゃん!」
翠花「それは明日のお楽しみ♪」
真「むう…」
俺は教えてくれない翠花姉を見て頬を膨らませ、翠花姉のスカートを握った。そして俺は翠花姉を見た。翠花姉は…
翠花「…ふふ」
俺の頭を撫でたのだ。
真「わ…」
そして俺に微笑みを向けた。
翠花「大丈夫。明日になればわかるからね」
真「ほんとう?」
翠花「うん♪」
俺は翠花姉のその言葉と微笑みを見て、俺は翠花姉のスカートを離した。
翠花「明日も一緒に行こうね」
真「うん!」
俺は明日も翠花姉と一緒に学校に行くという約束をした。
翠花「着替えてくるね」
真「うん」
そう言い翠花姉は自室に向かっていった。制服姿の翠花姉も結構いいけど、部屋着の翠花姉も普通に美人だからどんな時の翠花姉も最高なのだ。
少し時間が経つと翠花姉が部屋から戻ってきた。部屋着に着替えていた。
翠花「ふう。明日は体力テストもあるし鍛錬は今日はいいかな」
真「うーん…」
翠花「何かあったの?」
真「いやさ、僕よりも神気が多い子がいたんだよ。その子たちに負けたくないなって」
翠花「あー。真くん負けず嫌いだもんね。でも一日でどうにかなるものじゃないよ。神気量は」
真「それはわかってるけど…」
会話をしながら翠花姉が俺に徐々に近づいてきた。そして俺を…持ち上げた…。
翠花「よいしょっと」
真「わ…」
そして持ち上げながらソファに座り、翠花姉の太ももの上に俺を座らせた。
真「す、翠花姉?」
翠花「ん?どうした?」
真「な、なんで僕を翠花姉の上に座らせたの?」
翠花「うーん…なんとなく?」
なんとなくって…そういうことをしたいお年頃なのかもしれないが…
だが、俺は違和感に気づいた。なぜか…体が熱い…。この感覚は…神気?いや、俺は流していない…。俺は翠花姉の方を見た。翠花姉は俺が見たことにキョトンとしたような顔をした。
翠花「どうかした?」
真「あ…ううん。なんでもない」
翠花「そっか」
違和感はある。だが翠花姉は気づいていないようだし、特に大きなことでもないんだろう。何か異常があれば翠花姉はいち早く気づき反応をしてくれる。だが反応がないということは特に問題なしということだろう。そう思っていると、ドアが開いた。蓮乃さんが入ってきた。蓮乃さんが洗濯かごを持っており、服を畳み始めた。
服を畳みながら蓮乃さんが翠花姉に話しかけた。
蓮乃「そういえば明日は体力テストでしたっけ?翠花さま」
翠花「うん。真くんと同じグラウンドでやる」
蓮乃「真くん。翠花さまと一緒に回れるといいですね」
真「うん!翠花姉と一緒に回れたら頑張っちゃうよ!」
翠花「それはどうかな~。まあ知ってるけど、教えな~い」
真「いいもん!明日になればわかるからね!」
蓮乃「それもそうですね。では今日は明日に向けて運動に適したものにしましょう」
運動に適したご飯?なにがあるんだ?
翠花「親子丼とか?」
蓮乃「よくわかりますね。あ、あと真くん。今日は早めに寝ることを推奨します」
真「どうして?」
翠花「睡眠がパフォーマンスを上げる一番な方法なんだよ」
真「あー。なら今日もお風呂に入ったらすぐ寝ようかな」
蓮乃「それがいいでしょう。ではもう作るとしますね」
翠花「早いね~。まだ4時半だよ?」
蓮乃「翠花さまはいいでしょうが、真くんは初めての体力テスト。実りあるものにしてほしいのですよ」
蓮乃さんも十分俺のことを考えてくれているんだな。体力テストがどんなものかを想像できないからこそ、しっかりと万全にしてやりたい。
翠花「それもそうだね。…てか私はいいってどういうことかな?」
蓮乃「翠花さまなら余裕で満点でしょう?」
翠花「まあそうだけど…」
蓮乃「翠花さまは特に心配はいりませんから、いいと言ったんですよ」
翠花「ふーん…まあいいや。じゃあご飯をお願いね。蓮乃」
蓮乃「お任せを」
翠花「じゃあ部屋に行こ、真くん」
真「あ、うん」
そんな会話を交わし、翠花姉の部屋に向かった。翠花姉が部屋のドアを開けて速攻ベッドに倒れた。
翠花「はあ~」
真「お疲れだね、翠花姉」
翠花「疲れたよ~。だってね?」
真「うん」
翠花「クラスメイト3人に告白されちゃったんだもん」
俺は翠花姉の言葉に口が開きっぱなしになってしまった…。今日だけで翠花姉は3人に告白されたというのか?俺は開いた口が塞がらない…。
翠花姉が倒れた状態から、天井をみる体勢になった。そして両手を伸ばした。
翠花「ねえ真くん。こっちに来てくれない?」
真「え?う、うん」
俺は言われた通り翠花姉のもとに向かった。翠花姉の両手の正面に立ったその時…
真「うわ!」
翠花姉が突然起き上がり、俺のことを抱きしめたのだ…。
翠花「はあ…やっぱり真くんが一番安心するな」
翠花姉が抱きしめながらそう言ったのだ。翠花姉にとって俺は安心できる…のか?俺はその言葉を聞いて、何も動かなかった。
そして少し沈黙が訪れ、翠花姉が俺を離した。
翠花「ごめんね?真くん」
真「ううん。けどどうしたの?急に」
翠花「告ってきたやつらがね、私の顔とか胸ばっか見て、鼻の下を長くしてる奴ばっかでさ。気持ち悪くて」
それは…確かにそうかもしれない。一目惚れですらない。完全に翠花姉の身体が目的な奴らなんだろうな。そんな奴らが翠花姉の周りにいるというだけで反吐が出る。
翠花「それで、そんなこともあったから真くんはどうなのかなって。でも真くんは何も下心とかなさそうで安心したってだけ。同じ男の子でもこんなに違うんだってね」
真「う…ん…?」
翠花「いいの。忘れてほしいかな。やっぱりなし」
真「う…ん…。でも、また何かあったら言ってね?」
翠花「…うん。ありがとう」
そう言い翠花姉はまた俺を抱きしめた。少し時が経ち、翠花姉は俺を離した。
翠花「あ、ごめん。髪がぐしゃぐしゃになっちゃった。これで…よし」
翠花姉は俺の乱れた髪を整えてくれた。
真「ありがとう。翠花姉」
翠花「こっちこそだよ。ありがとう」
そんな会話をしてると、また翠花姉がベッドに倒れた。今度は…目をつむっている…。
真「翠花姉?」
翠花「すー…すー…」
寝息が聞こえる。翠花姉は寝たようだ。俺は彼女の邪魔はしないとそっと部屋から出た。
リビングでは蓮乃さんが夜ご飯の準備をしていて、俺は完全に一人になった。やることがない俺は道場に向かった。
真「朱雀。来い」
俺の声と共に朱雀が俺の前に来た。
朱雀「翠花は弱っておったのう。よくやった。真」
真「ああ。朱雀は人の状態だと女性だったな。そういうものなのかな?」
朱雀「ああ。わらわが現世にいた時代は女は完全に子を産む道具であった。今でもそう残っている文化や伝承があるところもある。源一族がどうだったのかは知らんが、翠花のあの感じは…そういうことじゃろうな」
真「でもお兄さんやお父さんはそんな風には…もしかして…」
朱雀「あのジジババじゃろうな。あれならそう思ってもなんら違和感はない」
俺は…そうであってほしくない。翠花姉がそんな扱いを受けていたということを…想像したく…ない。
朱雀「いいか?これは可能性の話じゃ。だが翠花にも蓮乃にも言うな。口が滑って言ってしまったなど、言語道断じゃ。よいな?」
真「わかってる。それにこんな話をしにお前を呼んだわけじゃない」
朱雀「じゃろうな。で、なぜわらわを呼んだのじゃ?」
真「今日の神気を開放した。その時に他のクラスに俺よりも神気が多いやつがいた。俺は負けたのが悔しい。お前の方法でいい。神気を増やす方法を教えてほしいんだ」
朱雀「そうか。じゃがわらわの増やし方は鳥類のそれじゃ。人では不可能じゃ」
真「鳥類の増やし方か…。確か前に朱雀の体の構造を教えてもらったな。それは活用できないのか?」
確か朱雀は鳥類に共通する気嚢と呼ばれる器官が存在する。それを介して神気を増やすことが可能だと聞いた。それを活用できないものか…。俺はそう考えていた。
そこで俺は一つ思いついた。結夢から教えてもらったことだ。
真「なあ朱雀、体を鍛えると神気を取り込みやすくなるって本当か?友達に聞いたんだが」
朱雀「ああ。本当じゃ。神気は一種の血液のようなものと思ってくれればいい。それがどうかしたか?」
真「体を鍛えて取り込める量を増やせば出せる神気量も増えるよな?」
朱雀「…考えていることはわかる。じゃがそれは真の増やし方だと相当な鍛えんとかんぞ?」
真「そんなの望むところだ。だから…」
朱雀「いや、それよりもいいやり方がある。取り込み方は変えずにな」
そんなやり方があるのか。朱雀は大体実践で教えてくれるイメージがあるが…
真「それはなんだ?」
朱雀「それは…ランニングじゃ」
真「へ?」
ランニング?走るあれか?そんなものをしてどうなる?
真「走るランニング?」
朱雀「うむ。そうすることで肺活量が増える。わらわは呼吸によって神気を増やす。吸える空気が多いほど増え方も多くなるのじゃ。先に吸える空気を増やし、取り込める神気を増やす。そこからでも体を鍛えるのは遅くない。翠花との鍛錬がない日は走り体力を、肺活量を増やせ。よいな?」
真「わかった。今からか?」
朱雀「いや、もう遅い時間じゃ。わらわの力も弱まっておる。今外を走るのは危険じゃ」
真「そうか。なら継続的に走っていくとするよ」
これからやるトレーニングも決まり、俺はリビングに戻った。朱雀はすでに消えていた。
蓮乃「あ、真くん。もうそろそろご飯です。翠花さまを呼んできてくれますか?」
真「うん。呼んでくるね」
俺は翠花姉の部屋に向かった。翠花姉はまだ寝ているのだろうか。俺は翠花姉の部屋のドアをゆっくりと開けた。
真「翠花姉…」
翠花「うん?」
翠花姉はすでに起きていた。
真「ご飯できたよ」
翠花「そっか。なら行こうか」
真「うん」
俺は翠花姉を連れてリビングに向かった。蓮乃さんは準備を終わらせていた。
蓮乃「来ましたね。では座ってください」
翠花「うん」
蓮乃「では…」
3人「いただきます」
俺たちは晩御飯を食べた。翠花姉は未だ疲れが見える。蓮乃さんは気づいているかはわからないが、いつも通りのスピードでみんな食べている。
時は過ぎみんな食べ終わった。
3人「ごちそうさまでした」
真「お風呂って…」
蓮乃「もう沸いていますよ」
真「翠花姉は…」
翠花「うーん…今日はもう私寝るよ。明日シャワー浴びてく」
真「そっか…。なら一人で入るね」
翠花「うん。ごめんね」
真「大丈夫だよ」
そう言い翠花姉は部屋に戻っていった。蓮乃さんが少し不機嫌そうな顔をしていた。
蓮乃「真くん。翠花さまは何かあったのですか?」
真「学校で気持ち悪いやつに告白されたんだって」
蓮乃「気持ち悪いやつ?異形なものですか?」
異形?それはどういうものなのかわからない。前の世界だと妖怪だとかに該当するんだろうが、こっちの世界だとどういうものかわからないな。
真「異形?ってなに?」
蓮乃「異形は文字通り我々のような人の形でも、普段見る動物とも違う完全に化け物のことです。真くんは関わってはほしくない者たちです」
真「聞いた話だけど、顔とか胸を見てくる人なんだって」
蓮乃「なるほど、そういう意味の気持ち悪いやつですか。それで翠花さまはあんなに疲れているのですね」
やっぱりわかっていた。蓮乃さんがわかっていないはずがない。何年も蓮乃さんは翠花姉を見ているのだからな。
真「そうだね」
蓮乃「これからそういうこともあるでしょう。その時は助けになれなくとも支えてあげてほしいのです」
真「うん…翠花姉が元気ないのは嫌だし…頑張るよ」
蓮乃「はい。よろしくお願いしますね」
真「うん。任せて。じゃあお風呂入ってくるね」
蓮乃「ええ。ごゆっくり」
俺は風呂に入り、そこで少し考え事をしていた。
翠花姉を狙う奴は翠花姉が好きではないって思ってるけど…実際どうなんだろうか。翠花姉は美人だ。これは天変地異が起きても覆らない事実だ。それによく翠花姉に抱き着かれる俺は確かに翠花姉の胸が大きいことも知っている。だが俺はその大きな胸は包容力があるから大きくなったと思っている。汚い考えをしたことは一度もない。
真「翠花姉を…俺はどうしたらいいんだろう…」
迷っていた。だが翠花姉に対して俺はそんな考えをしたこともないし、育ててくれた恩がある。尊敬に近い感情というのが正しい。だからそういう感情で見たことがない。奴らの感情が…俺はわからなかった。
そう考え事をしていたら…
蓮乃「真くん?のぼせていませんか?」
蓮乃さんが声をかけてきた。のぼせていませんか?という言葉だ。ということは結構な時間入っていたんだろうな。
真「もうそろそろ出るよ」
蓮乃「そうですか」
そう言い蓮乃さんは出ていった。俺は浴槽から出て、髪と体を洗い、浴室から出て体をふいた。そして着替え、リビングに向かった。
真「出ました。蓮乃さん」
蓮乃「わかりました。では入ってきますね」
真「うん」
蓮乃さんがお風呂に向かった。俺はソファに横になった。明日の体力テストもあるし寝ないといけない。俺は歯磨きをして翠花姉の部屋に向かった。ドアを開けると、翠花姉がいた。
翠花「あ、真くん。どうしたの?」
真「もう寝ようかなって」
翠花「そっか。なら私も寝ようかな」
真「いいの?」
翠花「なにが?」
真「お風呂は…」
翠花「明日シャワー浴びるって言わなかったっけ?」
あ、そうだった。言ってたな。完全に忘れていた。
真「そういえばそんなことも…」
翠花「もう~。ほら、寝ようか」
真「うん」
俺は翠花姉のいるベッドに入った。目を閉じた俺の意識は…すぐに闇に落ちた…




