第30話 新しい出会い
正装をしている翠花姉と蓮乃さんと共に王医学校へと歩みを進めている。道中では2人ともリラックスをして歩いているようだ。俺は初めての入学式というのもあり緊張していた。
翠花「真くん緊張してる?」
真「うん。ちょっとね」
蓮乃「緊張するようなことはありませんよ。それよりも翠花さまの方が緊張していないといけないんですけどね」
真「スピーチがあるんでしょ?しないの?緊張」
翠花「だって紙に書いてることを読むだけじゃん。なーんにも緊張する要素がないよ」
この人は精神力強すぎるな。俺なら噛むことを恐れてめっちゃゆっくりになるか早く終わらせたいから早口にするかの2択だ。
そんな会話をしながら俺たちは王医学校へと歩いている。歩いていると、大きな建物が見え始めてきた。そして槍のような柵が建物群を囲んでいる。
翠花「着いたよ。ここが『ヒーディキュア王医学校』。これから真くんが通う学校だよ」
真「広いし…おっきい…!」
蓮乃「ヒーディキュア王国が誇る最大級の小中高大一貫校で、帝国唯一の国立学校です。医療に特化した人間が多く在籍し、皇帝である橘 仁本人が直接学生に教えを授けるということから医者や看護師を志望する人が全国から集まるんですよ」
皇帝が直々に授業をするのか。それは人気がある授業になるだろうな。専門的なことでもあるんだろうが、虹帝達一治療ができる人から教われるというのは価値あるものなんだろうな。
翠花「それじゃあ入ろうか」
真「うん。あ、もうすでに人が結構いるね」
翠花「開始2時間前でこんなにいるんだ。まあ入学者結構いるらしいしな~」
蓮乃「では入りましょうか。どんな人がいるかもわかりませんしね」
翠花「ここからは手を繋ごうか。迷子になっちゃうといけないからね。ほら」
そう言い翠花姉は俺に向けて手を伸ばした。俺は彼女の伸びた手を両手でしっかりと握った。
翠花「よし、じゃあ行くよ」
真「うん」
俺たちは人混みがあるこの場所に足を踏み入れた。
入学式の看板の前には見たこともない長蛇の列ができていた。
翠花「いつか撮りに行きたいけど…今は無理そうだね」
蓮乃「式が落ち着いたらでいいと思いますよ。今並ぶと式に間に合わないです」
翠花「そうだね。急いでるわけでもないし、最悪翠帝に言えば出してくれると思うしね」
翠帝をそんな風にやっていいのだろうか。まあ生徒のお願いを無下にするような人ではなさそうだし多分大丈夫だろう。そんな風に思っていたら…
真「ねえ翠花姉。あれはなに?」
俺が見たのは、おそらく一組の大家族が一人の生徒を囲んでいる。その生徒もおそらく家族の一人なんだろうな。だが威張っているような雰囲気はなく、逆に囲んでいる家族の方が威張っているように見える。
家族の祖父「源家の当主様がお通りになるぞ!そこをどけ!」
家族の祖母「そうよ!低俗な者たちよひれ伏しなさい!」
源家と聞こえた。源家…ということは翠花姉と関係ある人たちなのだろうか?翠花姉の顔を見ると…とても曇っていて、睨んでいるようにも見えた。その時、翠花姉がボソッとつぶやいたのが聞こえた。
翠花「やっぱり変わらねえんだな…ゴミ共が…」
俺は…我が耳を疑った…翠花姉が聞いたこともない口調で喋っていたからだ。俺は思わず聞いてしまった。
真「す…翠花姉?」
翠花「うん?どうしたの?」
真「今何か言ったかなって思ってさ」
翠花「そう?聞き間違いじゃないかな?」
真「そっか。ならいいや」
翠花姉がそんな口調で喋るわけがない。俺はそう思うしかなかった。
だが…その家族に俺たちは見つかってしまった…。
(これから家族の祖父、祖母の表記を 家族の祖父→源爺、家族の祖母→源婆と表記させていただきます。予めご了承ください。)
源爺「む?あれは…翠花ではないか!」
源婆「おやまあ!一族の面汚しの!?なんでこんなところにいるのかしら!」
なんてことを…それもこんな大衆の面前で…俺の心には彼らに対して憎しみ…この感情しか湧かなかった。そんな奴らがこっちに向かってきている。
翠花「蓮乃、真くんをお願い」
蓮乃「承知しました」
そう言い翠花姉は俺を蓮乃さんに渡して、奴らに正面から向き合った。
真「翠花姉…」
翠花「大丈夫。何かあったら私が守るからね」
その時の翠花姉の顔は怒っているようにも見え、それと同時に守るという決意のような顔もしているように見えた。
源爺「なぜ貴様のような落ちこぼれが王医学校にいる?どうせ不正でもしたんだろう?」
源婆「そうよ絶対そう!じゃなきゃこんなところに来れるはずないもの!」
翠花「残念だけど私は翠帝から推薦をもらってこの学校に来たんだ。あなたたちのように才能がない人をすぐに追い出すような外道に理解できないかもしれないけど」
源婆「ふ!なに?私たちがあなたを追い出したことをそんなに根に持ってるの?才能がないあなたが悪いのよ。しかも能力も神話能力じゃない。完全に落ちこぼれじゃない!」
このババアは…なんなんだ?翠花姉を追い出したという事実だけでも俺の血が沸騰しそうなのに、才能がないことを追い打ちしていることに俺は怒りを隠せないでいた。
翠花「まああの時はね。今の私ならあなたたちに負けることもないしね。体の衰えって怖いよ?自分の体の限界、知った方がいいよ?おじいちゃんおばあちゃん?♪」
源爺「我らを愚弄するか!ふざけるな!貴様のような落ちこぼれを追い出して正解だったわ!」
源婆「私らが衰える?そんなわけないだろう!私らはいつだって全盛期なのよ!」
翠花「あ、大丈夫?そんなに叫んでると体壊しちゃうよ?血管破れないか不安でしょうがないよ~。あははは」
煽り全開でなんか気持ちがどんどん晴れている。翠花姉は…口喧嘩負け知らずなような気がするな…。
源爺「貴様!」
直後、源爺が刀を抜き、翠花姉に向かって突っ込んだ…!
真「翠花姉!」
翠花「そんな鈍で私を切ろうって?」
翠花「程度を知れ。脆弱者」
そう言い翠花姉は突っ込んできた源爺の腕を完全に切ったのだ…!源婆はその光景を見て腰を抜かしていた。
源爺「ぐっ!き…貴様!」
翠花「昔の私ならあなた達には勝てないだろうけどね、私には素晴らしい師匠に剣術を教えてもらった。今の私、剣単体なら負けるイメージが湧かないから」
源婆「剣術…誰に教えてもらったんだ!」
翠花「分家最強の剣士、源蓮乃に教えてもらったのよ」
源爺・婆「あの蓮乃に…!」
2人は体が震えていて、俺は2人の驚きようを見て、蓮乃さんがどれほどすごい存在なのかを改めて知った。蓮乃さんの方を見たら明後日の方向を見ていた。どこ見てるんだろうね。これ。
真「やっぱりすごい人だったんだね。蓮乃さん」
蓮乃「そんなことはないですよ」
ここは控えめにならなくていいと思うんだがな。まあまんざらでもなさそうだしいいか。
翠花「さてと、申し訳ないけど私はあなたたちを治すつもりはない。婆、あなた治癒を持っているでしょう?それで愛する旦那を治してやれば?」
源婆「く…」
源爺「婆さんや。お願いしてもいいか?こいつを…許してはおけんのだ…!」
源婆「そうよのう…こやつに痛い目を見せてやらんとな…!」
そう言い2人は怪我を治すべくどこかに飛び去った。
翠花「面倒なやつらだよ。全く」
真「翠花姉!大丈夫?」
翠花「うん。大丈夫だよ」
蓮乃「翠花さま。当主様が見てられています。いかがいますか?」
翠花「お兄ちゃんは何もしてないし、なんなら守ってくれたが側だし挨拶くらい行こうかな」
そう言い翠花姉は囲まれている家族の真ん中へと向かって行った。俺たちも一緒に向かった。真ん中にいた中学生の制服とはまた違う制服を着た青年に向かって翠花姉は話しかけた。
翠花「颯治兄!」
青年「翠花!」
翠花「久しぶりだね!颯治兄!」
颯治「強くなったね。翠花。あのジジババめんどくさいから追い払ってくれて助かったよ」
翠花「あいつらいなかったら私もお兄ちゃんと一緒に入れたのにな。ほんとあいつらなんなの?」
颯治「まあ知ってると思うけど源家の相談役だからさ、当主である僕に寄って来るんだ。あいつらだけだよ。源家の汚点はね」
2人の会話を聞く限り兄妹間の仲はよさそうだ。そして源家の相談役だったのか、あの老害どもは。俺はうざいと思っていたがそこは2人とも共通しててよかった。
後ろから和装の人が近づいてきていた。
源家父「あまり人のことを悪く言うことはだめだぞ?」
翠花「あ!お父さん!だって~…」
源家父「まあ翠花の迫害は完全に相談役の2人が仕向けたことだ。父さんだってかわいい我が娘を迫害などしたくはない。悪いのは完全にあの2人だ。申し訳なかったな」
翠花「もういいよ。腕切ってやったし。蓮乃と一緒に暮らせて剣も強くなったし能力もうまく扱えるようになった。今思えばって感じかな」
源父「そうか。翠花がいいならよかった。では我々は失礼しようか。颯治」
颯治「ええ。お父様。それじゃあ翠花。スピーチ楽しみにしてるよ」
翠花「知ってたんだ。お兄ちゃん」
颯治「ああ、僕も高校生代表スピーチだからね。翠帝様に先に教えられていたんだよ」
翠花「そうなんだ。私知らないけど…まあいっか。それじゃあまたあとでね。お兄ちゃん」
颯治「うん。またあとで」
そう言い翠花姉と翠花姉のお兄さんは別れた。兄妹仲がとても仲いいのがわかって俺は安心した。父親とも険悪なんてこともなく完全にあの老害2人だけが悪というのを知った。
翠花姉が俺たちのもとへ歩いてきた。
翠花「みんないろんな意味で変わってなくてよかった。時間をとらせちゃってごめんね?」
真「大丈夫だよ。翠花姉の家族はいい人ばっかりなんだね」
翠花「そうだね。お母さんは今いなかったけどいい人だし、相談役の二人以外はいい人だよ」
蓮乃「宗家は家族仲が良いのを知って安心しました。相談役の2人に関しては宗家分家問わず関わってきますから面倒でしたがあそこまでとは思いませんでした」
翠花「まあ軽くわからせたと思うし変に行動しないと思うよ」
蓮乃「なら安心ですね」
翠花「うん」
2人は源一族の関係を知っているからそういう会話ができるんだろうな。俺は何も知らないから何も話せないな…。そんな風に思っていたら…
「おーい!翠花ー!」
そんな声が聞こえた。こっちに向かって走ってきている…!手には小さな女の子も連れているようだ…!
翠花「あ!日菜子!おーい!」
翠花姉の知り合いのようだ。
翠花「蓮乃。多分だけど…会話できないかもだから予め言っとくね。ごめん」
蓮乃「大丈夫ですよ。私は先に体育館で座っておきます」
翠花「ごめんね」
蓮乃さんは俺たちと別れ、体育館に向かって行った。そして翠花姉の知り合いが俺たちのもとに到着した。
日菜子「おひさー!翠花!元気そうでなにより…だ!!」
少し溜めて爆ぜるような口調だ。しかもそのタイミングでこっちに首を曲げてきたし。あとウィンクもしていて完全に陽の雰囲気を感じた。
翠花「ふふ。変わらずだね。日菜子」
日菜子「もちろん!お?翠花、この子は?」
翠花「日菜子には言ってなかったね。真くん、自己紹介しようか」
真「えっと…」
突然俺にフォーカスが当てられ、翠花姉と蓮乃さん以外の年上の女性との関わりが初めてで、俺は翠花姉の後ろに回って、日菜子と名乗る女性から翠花で隠れるようになってしまった。
翠花「お?隠れられちゃったね。日菜子」
日菜子「えー?私そんなに怖いかなあ?」
翠花「そんなことないと思うよ。真くん、大丈夫。このお姉ちゃんは悪い人じゃないよ」
そんなことはわかっている。だが…それでも俺は慣れない人への対応の仕方がわからないんだ。
日菜子「ふっふっふ…少年よ…我がマジックを見たまえ!」
そう言い彼女はトランプをポケットから取り出し、マジックの準備をし始めた。…明らかにカードを仕込んでいてこれからそういうマジックをしますよと言ってるようなものだ。
真「…めっちゃ仕込んでるじゃん」
日菜子「は!ばれちゃった…うう…」
真「だ、大丈夫だよ。お、お姉ちゃん」
日菜子「ほんと!?やったー!」
そう言い彼女は俺の手を握ってきた。握っている彼女の目はこれでもかと輝いていて、俺はこの人に対し少しではあるが許せるようになった。
「お姉ちゃん…」
後ろから俺と同い年くらいの女の子が日菜子さんに話しかけた。
日菜子「ああ、ごめんね?結夢」
結夢と呼ばれた女子は日菜子さんの袖を引っ張っていた。
結夢「私…この人と仲良くなりたい…」
日菜子「いいじゃん。じゃあ結夢が先に自己紹介いっちゃおうか」
結夢「うん…」
そう言い結夢さんが俺に向かって歩みを進めてきて、自己紹介を始めた。
結夢「わ、私、一是結夢。よろしくね」
彼女はしっかりと自己紹介をした。なら…俺もしっかりとしないといけないな…。よし、腹を決めなきゃいけなければだ。
真「僕、赫星真。よろしく」
結夢「真くん…。いい名前だね。よ、よろしく…!」
たどたどしくもしっかりと挨拶をしている彼女がとても俺には輝いて見えた。この子が先にしてくれたからよかったが…俺も自己紹介をできるように人付き合いを克服しないとな…。
翠花「自己紹介、できたじゃん。2人とも、偉いぞ~」
そう言い翠花姉は俺と結夢さんの頭を一緒に撫でた。
日菜子「あ、もうこんな時間か。翠花、入学式始まりそうだよ」
翠花「うっそ。そんな時間たったんだ。じゃあ体育館に入っちゃお」
日菜子「ちゃんと真くんのクラスも確認してあげてね?」
翠花「さすがにね。そこは任せてよ。じゃあ行こうか」
そう言い翠花姉は俺と手を繋ぎ、日菜子さんは結夢さんを連れて体育館に向かった。クラスと名簿が大きく表示されている紙を見た。
翠花「ここは1組か…あ、真くん。1組みたいだよ。出席番号1番っぽい」
真「そうなんだ。1番って…なんか緊張するね」
翠花「そう?大丈夫だよ。出席番号でなにかあるわけじゃないと思うしね。日菜子、結夢ちゃんの名前はあった?」
日菜子「うん。結夢も1組。しかも…出席番号2番!」
真・結夢「え!?」
俺と結夢さんは同じ1組で、出席番号も並んでいるのか…!これはもう…一種の運命か何かか?
翠花「なんと!これはすごいね~。やったね。2人とも」
結夢「はい…!嬉しいです!」
結夢さんはとても喜んでいて可愛らしい笑顔をしていた…!この笑顔…とてもかわいいな…!
日菜子「それはよかった。翠花、2人を先に椅子に座らせてこよ?」
翠花「そうだね。後で見てこればいいしね。じゃあ2人共、体育館に入ろう。席まで案内するから」
そう言い俺たちは体育館に入った。体育館内は…とても広く、また全入学生がいることからこっちも人混みがすごかった。
翠花「これはすごいね。あ、小学生のところはあそこか」
日菜子「ぽいね。よし、行こう」
小学校と書かれた看板に向かって歩き、1組の一番前の椅子に俺たちは座った。
翠花「真くん。頑張ってね。座りっぱは結構きついから。じゃあ私たち行くね」
真「うん。翠花姉もスピーチ頑張ってね」
翠花「任せて」
そう言い翠花姉たちは人混みの中に消えた。俺たちは入学式が始まるまで緊張してなにも話せなかった。結夢さんも同じようだった。
少し時間が経ち、入学式が始まる時間になったようだ。人混みもなくなり、みんな椅子に座っているようだ。
「それでは入学式を始めます」
ついに入学式が始まる…!だがこの入学式が混沌と化す会場になるとは誰も思っていなかった__




