第29話 始まりの朝
「ちゅんちゅん!ちゅんちゅん!」
聞き慣れた鳥のさえずりが俺の耳に入ってきた。
真「朝か…」
朱雀「その通りじゃ。今日は入学式とやらじゃろう?いつもより早めに起こしてみたぞ!」
確か入学式は10時からスタートだ。それに合わせて起こしてくれたのかな?そう思い俺は時計を見た。時計の針がさしていた時間は…
真「5時半!?」
朱雀「早いに越したことはないと思ってな!わっはっはっは!」
いくらなんでも…早すぎやしないか?もちろん準備とかもあるだろうし早いに越したことはないのはもちろんだが…
「うーん…」
横から声がした。隣には翠花姉が眠っている。さすがに起きる声量だな…
翠花「すー…すー…」
…これでまだ寝れるって翠花姉結構眠り深いな?翠花姉は。いや、それでも俺が申し訳ないと思う。翠花姉の眠りを妨げてはいけないだろうからな。俺はベッドから出ようとした。…だが体を何かが締め付けているのか動きが制限されている。体の中でもお腹の方だ。お腹に目をやると…
真「ああ…やっぱり…」
俺のお腹周りを翠花姉の腕が囲っていた。しかもご丁寧に指を交差させてほどけにくくしているし。…これどうしよう…。無理に翠花姉を起こしたくもないし、俺は早く起きてしまったから(起こされたの方が正しいが)ベッドを出たい。どうすればいいんだろうか…。
朱雀「ほれ、早く出んか。寝覚めの悪いやつよのう」
真「翠花姉の腕がお腹にあるんだよ…。動けないんだ」
翠花「…ごめんね?真くん…今解くから…」
真「!!」
突然翠花姉の声が後ろから聞こえた…!翠花姉を起こしてしまった…。しかしおかげで翠花姉からの拘束から解放された。翠花姉も一緒に起きるようだ。
翠花「んー!いい朝だね。快晴だ」
真「そ、そうだね。翠花姉」
翠花「準備しよっかな。今何時かな…。え?5時半?」
やっぱりそうなりますよね。わかります。俺もあまりに驚いて声出ちゃったもん。
翠花「うわー。30分オーバーしちゃったよ」
ん?この人なんと言った?30分オーバーしちゃった?俺の聞き間違いでなければそう言ったな。ということはもしかして…この人は5時に起床するのか!?準備とかいろいろあるんだろうが…にしても早すぎないか?いや、女子の詳しい事情なんて男である俺が知る由もない。きっと詳しい事情があるんだろうな。
翠花「二度寝の時間減っちゃったな…あれが一番気持ちいのに…」
もうこの人はなんなのだろうか。準備するんじゃないのか?二度寝するのも準備の一つということか?これって俺が間違ってる?二度寝って準備のうちに入るのか?いっそアンケートでもしてやろうか。
真「翠花姉…もう一回寝ちゃうの?」
翠花「まあ早めに起きるのも悪くはないしいっか。じゃあリビングに行こうか」
源翠花という存在と2年近く同じ屋根の下で過ごしているけれど全然理解できそうにないな。この人は俺の常識を超えてくる存在ということだけがわかった。
俺たちはリビングに向かった。リビングには…あ、珍しいぞ。光がついていない。ということは蓮乃さんは起きてないようだ。蓮乃さんも起きないこともあるんだな。
翠花「蓮乃起きてないみたいだね。私が作ろうかな。パンでいいかな?」
真「うん。お願い」
翠花姉はパンをオーブントースターの中に入れ、その間にヨーグルトの準備をし始めた。中には果物でリンゴ、キュウリにバナナが入っている。とてもおいしそうだ。
「チン!」
翠花「あ、鳴ったね。真くん。お皿とってもらえるかな?」
真「お皿って…あ、ここか。はい」
翠花「ありがとう。じゃあこれ。机に持って行ってくれるかな?」
真「わかった」
俺はパンが乗った皿を机に乗せた。翠花姉はヨーグルトの準備も終わって持ってきてくれた。
翠花「それじゃあ」
2人「いただきます」
俺たちは朝ごはんを食べ始めた。パンにイチゴジャムを塗って食べるのがおいしいんだな。これが。
翠花「今日の入学式は少し早めに行こうか」
真「そうなの?」
翠花「うん。真くんがどんなところかわかっていないだろうし私が少しでも案内できればいいなって。そこで友達ができたら万々歳かなって」
それはごもっともだ。俺はどんなところか知らないし、友達だっているわけでもない。そういう機会を与えてくれるなら乗らないほうがだめだ。
真「じゃあお願いしようかな」
翠花「任されたね。しっかりと案内しなきゃね」
実際どんなところか気になっている自分がいる。小中高大全ての入学式を同時に執り行うなんて少なくとも俺は聞いたことがないからだ。
俺たちはそんな会話をしながら、朝ごはんを食べ終えた。
2人「ごちそうさまでした」
「ガチャ」
俺たちの完食と同時、リビングのドアが開いた。そこにいたのは蓮乃さんだった。
蓮乃「あ、2人とも起きてらしたのですね。おはようございます」
翠花「おはよう。蓮乃。私たちは食べ終わったから、準備してくるよ。食べ終わり次第蓮乃も準備を進めてくれると嬉しいな。今日は真くんに学内の案内とかをしたからさ」
蓮乃「なるほど。では急いだほうがいいですね」
真「ゆっくりで大丈夫だよ。急いだらのどに詰まっちゃうかも」
蓮乃「ふふ。そうですね。ではゆっくりと食べさせていただきましょうか」
翠花「じゃあ私たちは準備してくるね。行こうか。真くん」
真「うん」
俺たちはリビングを出て、歯磨きや寝ぐせを直すなどを終わらせた。そこで一つ疑問があった。
真「ねえ翠花姉。入学式っていつもの服装でいいの?」
翠花「小学生は大丈夫だよ。いつもの服で。ほら、こう書いてある」
そう言い翠花姉はプリントを俺に見せてくれた。本当だ。服装に関して、小学生は服装自由と書いてある。翠花姉が対象になる中学生は…制服を着用…か。制服ってどんなのだろうか?
真「本当だ。あ、翠花姉。中学生は制服ってあるけど、制服ってどんなの?」
翠花「後で見せるよ。楽しみに待っててね~」
真「楽しみだ~!」
俺は張り切って準備を終わらせた。着替えも終わったし、さっき言った歯磨き等も終わらせ、後はリュックに筆箱とかプリントを入れる用のファイルも入れた。完全に行くだけとなったため、俺はリビングにいた。蓮乃さんはご飯を食べ終わって準備に入っていた。リビングには俺一人。ついているテレビを俺は見ていた。
翠花「よし、終わったよ」
後ろから翠花姉が準備を終わらせ、ドアの方向から声が聞こえた。俺は翠花姉の方を見た。制服を着た翠花姉がどんなものか…
真「わあ…!」
翠花「どう?似合ってるかな?」
真「似合ってるよ!翠花姉!」
翠花「ありがとう!」
制服を着た翠花姉はとても…とても美人だった。制服がとても似合っていて、翠花姉のための制服と言っても過言ではないほどに似合っていた。制服はブレザーで、白色を基調とした服に黄緑色と深緑色がところどころ入っていて、そこに金色の模様が散りばめられていた。少し薄い緑色のリボンもいい。スカートは膝上10センチくらいで、タータン柄に白色メインで黄緑色と深緑色だ。しかも下にも深緑色があって二層構造とでもいうのかな?そんな感じのやつもあって、文句のつけようがないものだった。しかも翠花姉の髪の右側に白百合の花の髪飾りがあって素晴らしい。薄い金色のような透明感ある枝もある。翠花姉のことだけで1時間くらい余裕で語れるが既に長いので割愛させてもらおうかな?生で見る翠花姉が一番だ!
翠花「じゃあ蓮乃を待とうか。蓮乃は蓮乃で大変だと思うしね」
真「そうなんだ。いつも通りの服装じゃないんだ?」
翠花「蓮乃は一応源一族だからある程度格式ある服装にしないといけないんだ。めんどくさいよね」
一族の関係で服装もしっかりとしないといけないのか。家の価値を下げるわけにはいかないというものなんだろうな。
俺たちはテレビを見つつ蓮乃さんを待っていた。
蓮乃「お待たせしました」
翠花「お、終わったか。流石は蓮乃。似合ってるね」
蓮乃「いえいえ、翠花さまの方がお似合いで」
翠花「ふふ。ありがとう」
真「……!」
俺は蓮乃さんを見て言葉が出なかった。豪華な振袖を着こなしている蓮乃さんが…すごかった。緑色と白色で構成されていて、帯が金一色でできていた。言語化が難しい…この魅力を伝えたいのに…!
蓮乃「うん?真くん?いかがしましたか?」
真「いや…すごくてすごかったから…」
翠花「ふふ。言葉が迷子になってるね~。でもそれくらい似合ってるってことだよ。蓮乃」
蓮乃「そう言われると恥ずかしいですね…」
蓮乃さんが顔を赤らめていた。この蓮乃さんもあまり見られないぞ…
蓮乃「早く向かうのでしょう?早く行きましょう!」
翠花「そうだね。真くん。行こうか」
真「う、うん!」
俺たちは玄関にある靴を履き、扉を開けた。見事なまでの快晴で俺たちの門出を祝ってくれているようだ。
翠花「それじゃあ行こうか!」
真「うん!」
俺たちは王医学校へ向かって歩みを進めた。これから始まる学校生活を楽しく想像しながら__




