第31話 ヒーディキュア王医学校入学式
入学式が始まり、いろいろな手順を踏んでいる。小学生だけが礼をするもの、中学生だけが礼をするもの、全員が礼をするものなどいろいろあった。
それらの手順をしていると、聞き慣れた言葉が耳に入った。
「校長先生からお話をいただきます。では校長先生、お願いします」
校長先生の話って…大体長いイメージがあるな…。というかこの学校の校長先生って誰だろうか。まあいい年くらいのおじいちゃん先生ってとこか。そして校長先生が体育館のステージへ立ったのだが…。
仁「新入生のみんな、入学おめでとう」
そこにいたのは…翠帝、橘仁であった…!彼の登場によって会場にいる学生たちはザワザワし始めた。そりゃあそうだ。彼に憧れている学生が多い中での彼の登場は学生たちに衝撃を与えている。
仁「何をそんな騒いでいるのかわからないが…静粛に」
その言葉と同時、騒がしくなっていた会場が静かになった。まさに鶴の一声…これが権力あるものだけができることなんだろうな…。
仁「まず、小学生のみんな。君たちは原石だ。王医学校では様々な分野を勉強をしていく。本当にいろいろな分野だ。そんな中で君たちの得意なものを見つけてほしい。そしてそれを伸ばせるよう尽力してくれ。そのうえで、実りある学生生活を送ってほしい」
自身の才能を見つける…か。俺の才能…ここで知り、それを伸ばせるように頑張っていきたいな!
仁「そして中学生のみんな。君たちは選ばれた人間たちだ。受験戦争の勝者である君たちは能力という点でも頭脳という点でも優れている。そんな君たちの才能をここではどんどん伸ばしていってほしい。その才能を活かせる行事も数多く存在する。存分に発揮してくれ!」
受験戦争とか結構懐かしい言葉が出てきたな。そしてここにいる中学生はそんな才能ある人間の巣窟…か。まあ俺たちは小学生だし中学生らと関わることはないだろうがな…あ、翠花姉は別だぞ?
そして翠帝は高校生、大学生に向けての挨拶を終え、全員に向けての言葉になった。
仁「さて、各学生に挨拶を終えたところで、最後かな。改めて新入生のみんな、入学おめでとう。これからの学生生活、困難が立ちはだかることもあるであろう。だが、そんな困難も、これからの未来で役立つであろう。信頼する仲間と共に乗り越え、満足いく学生生活を送ってくれ。以上だ」
翠帝の締めの言葉。みんなの満足いく学生生活を願ってくれているのがよくわかる。困難を乗り越えれるような信頼する仲間…俺にもできるといいな。
「校長先生、ありがとうございました。続いては中学生以上の各学生による新入生代表スピーチです。各代表生徒は登壇してください」
ついに新入生代表スピーチだ。翠花姉が出るんだ。しっかりと聞かないとな。
「大学生、高校生、中学生の順で行いたいと思います。では大学生代表の生徒は演台にどうぞ」
大学生が前に立ち、翠帝は演台で聞く姿勢に入っている。高校生と中学生の代表もとい颯治さんと翠花姉が椅子に座った。順番が大学生から中学生へと下がっていくのか。下から上ってイメージがあるけど…まあいいか。
大学生「桜咲くこの佳き日に、ヒーディキュア王医学校大学部に入学できますことを、心より光栄に思います。私たちはこれから、専門的な医療系統の能力の知識をより深めるとともに、実りある生活を送っていきたく思っております。時には苦難にぶつかり、悩むこともあるかと思います。しかし、切磋琢磨できる仲間と共に乗り越えていきたいと思います。そして医者を志す者として相手に寄り添えるような姿勢と高い倫理感を持ち、社会に貢献できるよう精進して参りたいと思います」
これが大学生のスピーチか。大人の気品を感じつつ医者を目指す人間という存在感あるスピーチだった。大学生が礼をし、みんなが拍手をした。そして用意してある椅子に向かい、颯治さんの横に着席した。
「ありがとうございました。次に高校生代表スピーチです。代表生徒は前に」
次は高校生代表の颯治さんが登壇した。
颯治「本日、憧れであったヒーディキュア王医学校高等部に入学できたことを、大変うれしく思います。
これから始まる高校生活では、勉強だけでなく、学校行事や部活動にも全力で取り組み、仲間たちとたくさんの思い出を作っていきたく思っております。また、将来医療に携わる者として、人を思いやる心や責任感を身につけられるよう、日々努力してまいります。仲間と支え合いながら、充実した三年間を築いていくことを誓います」
颯治さんのスピーチは大学生のような堅い感じではなく、これから始まる高校生活を満喫するわくわく感を感じる。
「ありがとうございました。最後に中学生代表スピーチです。代表生徒よろしくお願いします」
ついに翠花姉が登壇した。俺は彼女のスピーチだけはしっかりと聞くんだ。
翠花「暖かな春の日差しに包まれる中、私たちはヒーディキュア王医学校中等部に入学できますことを、大変うれしく思います。これから始まる中学校生活では、勉強や部活動、学校行事など、たくさんの新しい経験が待っていると思います」
やっぱり翠花姉が一番だ。身内ってのもあるだろうがそれでも一番気品を感じる。
翠花姉を見ていた…その時…
「ふん!」
真「ぐ!?」
「暴れるな!」
何かが…俺の口を抑えた…。それも相当な神気を持っている…。老人の声が…する…。
結夢「真くん!?大丈夫!?あなたたちは誰ですか?」
翠花「真くん!?」
結夢さんが反応をして、それに呼応するように翠花姉が振り向いた。
翠花「なにを…なにをやってるんだ!!お前ら!」
翠花姉が俺に向かって叫んだ。刀を出し、構えて飛んだ。俺の後ろにいる老人たち目掛けて振り下ろそうとしている。その時の翠花姉は…今までで見たこともないくらいの覇気を纏っていて、とても怖かった…。
そして刀を振った…。だがその時…
「ガキーーン!!」
辺り一帯に金属音が鳴り響いた。そして…強烈な神気同士がぶつかり、空気が爆ぜたようかのように一気に周りを威圧した…。俺はその光景を見ることはできないが…誰かが翠花姉の刀を受けたのか…?俺は横目に翠花姉の方を向いた。そこにいたのは…大きな刀を持つ巨漢が翠花姉の刀を受け止めていた…。翠花姉の刀を受け止めるなんて…何者なんだ…?
巨漢「ふん。主に刀を振るうとは…宗家の落ちこぼれに相応しいな」
翠花「お前は誰だ?いや、そんなことはどうでもいい。そこをどけ」
巨漢「断る。主に仇なすものは…我が滅す」
翠花「主ということは…お前、分家だな?護衛か。名前はなんだ?聞いてやる」
その言葉と同時、2人は離れたようだ。だが張り詰めた空気が戻ることはなかった…。
城鎧「我が名は城鎧。蓮乃がいなくなった現在源一族の分家一の実力を持つと言われている。貴様は翠花だな?宗家の落ちこぼれと言われた少女が…少しは強くなったようだな?」
翠花「そりゃあ私だって成長はする。蓮乃に教えてもらったんだ。この力はね」
城鎧「そうか。蓮乃に教えてもらったのか。まあいい。主から離れるといい。その少年は主に何かしたのだろうな」
翠花「真くんは何もやっていない!爺…婆…答えろ…なぜ真くんを狙う!」
真「翠花姉…」
いつも翠花姉には助けてもらってばかり…翠花姉は俺のことをどんな風に思ってくれているのかはわからないが…俺のことでここまで感情的になってくれている翠花姉に…俺の目は熱くなってきた…。
源爺「ふん。貴様が我らにした仕打ちをこやつにしているまで。貴様が悪いのだぞ?それを…」
翠花「ふざけるな…」
源爺「なに?」
翠花「ふざけるな!!真くんは何もしていないだろう!!関係ない真くんを巻き込むな!!」
源婆「関係ない?ふん。お前と一緒にいる時点で関係あるだろう?それにお前が爺さんの腕を切らなければよかったんだ。因果応報だな!はははは!」
翠花「お前らに…人の血は通っていないのか?同じ人類であることに吐き気がして仕方ない…」
城鎧「主を愚弄するな!翠花!」
その言葉と同時、巨漢が刀を翠花姉に向かって振るおうとしている…。
翠花「邪魔を…するな!!」
翠花姉が叫ぶと同時、覇王流の構えの一つ、”王羅の構え”をとり、互いの刀がぶつかろうとしている…。
翠花「覇王流…『業禍絢爛』!!」
城鎧「覇王流…『塵空花』!!」
翠花姉はあの構えで刀を上から下に振り下ろした。城鎧は大きな刀の持ち手の端を両手で握り、翠花姉目掛けて刀を振るった。その刀同士がぶつかり合った…。
直後大きな金属音と共に、互いが纏う神気によって再度空気が爆ぜるような圧が周りを襲った。
ぶつかった両刀だが、一方的に震えている。その刀は…
城鎧「なんという…馬鹿げた力だ…。この我が…押されている…だと…!?」
それは城鎧の刀だった。ぶつかり合っている刀で振るえているのは城鎧の刀だけだった。翠花姉の刀は震えていなかった。
「ピキ!」
城鎧「な…」
刀からヒビが入った音が聞こえた…。
城鎧{これは…まずい!}
翠花「あなたでは…私に勝てないんだよ!!」
翠花姉が刀に力を込めた…その直後…!
「バキン!!」
刀が…完全に割れ、そして…
城鎧「ぐあああああ!!」
翠花姉の刀が勢いそのままに城鎧を袈裟に切ったのだ…!そして城鎧がその場に倒れる…!
源婆「あの城鎧が…!
城鎧「まだだ…我は…!」
城鎧は立ち上がろうとしているが…その城鎧の背後から誰かが近づいた…
蓮乃「おやめなさい。城鎧」
城鎧「…!姉貴…」
姉貴!?ということは…この2人は…姉弟ということか!?確かに似ているような気もしなくはないが…
蓮乃「あなたでは翠花さまには勝てないのよ」
城鎧「…みたい…だな…。体感しちまったがな…」
翠花「城鎧さん。あなたを殺すつもりなんて毛頭ない。だからお願い。そこをどいて」
城鎧「…わかったよ」
蓮乃「いい子ね」
源婆「く…城鎧!なぜ貴様が負けるのだ!こうなれば…!爺さん!」
源爺「ああ!」
真「…!!」
源の爺と婆は俺の首に刀をつけた…。俺の命は…この2人に握られているも同然になってしまった…!
翠花「どこまで…どこまで腐っているんだ!!お前らは!関係ない真くんをもうこれ以上…巻き込むなと言っているだろう!!!」
源爺「お前が手を出さなければよかったのだよ!翠花」
源婆「そうだ!お前はこの学校にも、そして源家にも相応しくない人間なんだよ!」
本当に聞くに堪えない言葉しか出てこない…そして行動も…翠花姉が何度もやめろと言っているのにも関わらずこいつらは俺に向かって刃を突き立てている…!
だが俺は…見た…。いや、見えてしまった…。演台からこちらに近づいている人間がいることを…!
「見るに堪えんな」
翠花「…!!」
近づいてきたのは…なんと…
仁「貴様らがしている所業…人間とはとても思えん…」
翠帝、橘仁だった…!そして源爺と婆の目の前に飛んできた…!そして…目を閉じている…!
源爺「あ…」
源婆「え…」
仁「真。目を閉じていろ」
真「は、はい!!」
翠花「まさか…」
俺は翠帝の言われた通り目を閉じた。爺と婆はあまりの驚きに呆然としていた。
仁「去ね…お前らにお似合いの場所に送ってやろう」
それと同時、俺でもわかる強烈な圧が俺の周りに…。
直後、俺の首にある刀に入る力が…緩んだのだ。翠帝は2人に…何をしたのだろうか…。
仁「もういいぞ。真」
真「は、はい」
俺は目を開けた。入ってきた光景は…源爺と婆が白目をむいて倒れていたのだ…。いや…この感じ…まさか…
仁「我の前でこれほどの醜態…当然だな」
城鎧「主…主様!」
倒れている2人に城鎧が近づくが…2人に反応はない。
城鎧「翠帝様…申し訳ありませぬが…何をされたのか…お教えいただいてもよろしいでしょうか…」
仁「見ていたであろうが、こいつらに最大出力の『業波』をぶつけた。俺の最大出力だ。もう…言わなくてもわかるな?」
城鎧「さ…左様ですか…」
俺は何が起きたのか未だにわかっていないが…翠花姉や蓮乃さんの顔を見た。2人の顔は…驚いているような青ざめているような顔をしている…。どういうことなのだろうか…。でも聞いてはいけないような気がするんだ。
仁「リーラ!来い」
「は!」
翠帝の呼びかけと共にリーラと呼ばれる女性が近づき、翠帝に膝をついた。
リーラ「お呼びですか。主様」
仁「この2人を会場外に連れて行ってくれ。いいな?」
リーラ「承知しました」
翠帝の命令に従い、女性は2人を抱え会場外に出た。
仁「では再開しようか。といってももう終盤だがな。翠花よ。スピーチの続きをお願いできるか?」
翠花「は、はい」
翠帝の声で翠花姉が壇上に立った。この騒動がなかったかのように再開した…。
仁「中断してしまったな…。最初からお願いしてもいいか?」
翠花「はい。では失礼します。暖かな春の日差しに包まれる中、私たちはヒーディキュア王医学校中等部に入学できますことを、大変うれしく思います。これから始まる中学校生活では、勉強や部活動、学校行事など、たくさんの新しい経験が待っていると思います。私たちはそれぞれ異なる個性や能力を持っていますが、互いを認め合い、高め合いながら成長していきたいと思っております。時には困難に直面することもあるかと思います。しかし、仲間たちと支え合い、一歩ずつ乗り越えていきたいです。そして、この三年間を通して、自分の可能性を広げ、充実した学校生活を築いていくことをここに誓います」
「あ、ありがとうございました。では代表生徒は控えにお戻りください」
颯治「少しお時間よろしいでしょうか」
仁「構わん。なんだ?」
颯治「翠花」
翠花「うん」
颯治「この度は我々源一族のいざこざに皆様を巻き込んでしまい申し訳ございませんでした。このような厳粛な場で我々が迷惑をかけたこと。とても怖い思いをしたことかと思います。申し訳ございませんでした!」
それは当主である颯治さんの謝罪だった…。そして颯治さんと翠花姉が土下座をしたのだ。少し遅れて…大学生のお兄さんも土下座した。…そして少しの静寂が訪れた。
真「翠花姉…」
「パチパチパチパチ」
拍手が…起きた。
「よく言ったよ!兄ちゃん!」
「君は悪くないよ!安心して!」
席から拍手や労いの言葉が出てきた。
颯治「よかった…。ありがとうございます!」
仁「謝るのは悪いことではないからな。して…なぜ君も頭を下げたのかわからんが…」
大学生「一応やっておいた方がいいかなと…」
仁「ふはは!そうか!それはそれでありだ!では…終わろうか」
「代表生徒は席にお戻りください」
その言葉と同時、代表生徒3人はステージから離れた。
「これをもちまして入学式を終わりとします」
波乱の入学式が終わった。俺はこれから始まる学生生活に思いを巡らせつつ起きたこの出来事を忘れないと心に誓った__




