第26話 王のもとへ
翠花姉と共に翠帝のいる城に向かっている。翠花姉はいつもと違い、正装というかしっかりとした服で、そういうところに行くと他の人が見ても一発でわかる。
そして俺たちは城下町と言える大きな道に来た。ここは朱雀となった俺が高度を保てなくなって、朱雀と変わって高度を上げるときに来た場所だ。噴水のある広場や商人が行き交っていて活気あふれる場所だ。
そんな時、大柄な男が俺たちに近づいてきた。
男「おう!姉ちゃん!俺たちと一緒に飲まねえか?」
まさかのナンパだ…。こういうのってこっちの世界でもあるんだな…翠花姉はどうするのだろうか…。
翠花「すみません。今日は急いでいます。またいつか」
男「なんだよ連れねえな!ほらこっちだよ!こっち!ならこの子を!」
男は俺の手を掴み、強引に引っ張って、連れ去ろうとしたのだ…。
真「や、やめて」
そう俺は抵抗をした。だが大人の力をなんとかできるわけもない…。
翠花「どけ、ゴミ虫。お前程度の雑魚が真くんに汚い手で触るな」
その時、翠花姉は男に強烈な圧をぶつけた。その圧を受けた男は耐えきれず、気絶した。周りにいた人たちが一斉にこちらを見て、騒がしくしていた。
女性「うそ…。この辺りじゃ手を出せなくて困ってたあいつが…」
男性「圧だけでのしちまった…」
男の取り巻きのようなやつらが倒れた男の周りに集まる。そして翠花姉に向かって罵詈雑言を言った。
男「こらてめえ!団長に向かってなにしやがった!このクソアマ!」
女「そうだ!団長がそんなのに負けるわけない!クソビッチ!」
俺は心の中で何かが切れるような音がした。翠花姉に向かってこいつらは…!!
翠花「大丈夫。真くん。こんなのに付き合ってる時間がもったいないよ」
男「逃げんのかよ!?ビビってんじゃねえだろうな!」
翠花「そんなわけないでしょう?あなたたちのような雑魚に使う時間がもったいないって言ってるの?わかる?足りない脳みそで考えたらどう?」
…結構翠花姉は言うな?罵倒をしたこいつらが逆に顔を赤くしている。辺り一帯に風が巻き起こる…!
男「誰に向かって…んな口きいてんだ!殺してやる!」
男が手に風を宿している。そして手を俺たちに向ける…!翠花姉は刀を抜こうとしていた。だがその時…
???「やめておけ、少女よ」
翠花「!?」
後ろから女性の声がした。黒色の長いローブを着た女性だ。黒色の中に水色と紫色の線が入った服だ。フードがあり、髪と口元が少し見えるくらい深く被っている。女性が翠花姉の肩に手を置いて話しかけた。翠花姉は突然後ろから声をかけられたことに驚いていた。
翠花{この人…全く気配がなかった…なんだろう?この人は…}
女性「驚かせてしまってすまない。君が相当に強かったからな。声を掛けてしまったよ。君がやるほどでもない。もちろん私がやるものでもね」
翠花「もう彼らは構えています…どうするので?」
女性「まあいい。私がやろう。君たちは見ていなさい」
そう言い、女性が白い光から、本体の部分が黒く、周りに紫色のツタが生えていて、先端には水色のような氷のような結晶玉がついた杖を取り出した。そして風を宿す男に向かって杖を向けた。
女性「悪いことは言わない。ここから去るなら私はなにもしない」
男「うるせえ!そんなやつに与しやがって!おめえも殺す!」
女性「そう…残念だ」
女性は杖を高く掲げ、男目掛け杖を振った。男はすでに風を女性目掛けて出していた。
女性「冥凍帰者…『フィブア・ライアンテ』」
その瞬間、翠花姉が気絶させた男の取り巻きだった男女のグループは全員氷漬けになった…
翠花「……!!」
{なにが起きているの…この女性は…何者なのよ…!!}
真「ねえ…翠花姉…あの人の神気…感じ取れた…?」
俺には…全く感じ取ることができなかった。翠花姉の方を見た…だが翠花姉は首を横に振っていた。
翠花「私も…全然感じれなかった…」
翠花姉でさえ…あの女性の神気を感じ取れていなかった…
女性「失礼したね。じゃあ私はこれで」
翠花「待ってください!あなたは何者なんですか!?あの技はそう易々とできるものじゃありません…」
女性「名乗るほどの人間じゃない。申し訳ないが、控えさせてもらおうかな」
翠花「翠花です。源翠花!いつかまた会えたら…次こそはお名前を!」
女性「君が私が名乗るほどの人間になっていたらね。あ、あとそこの男の子は?」
真「赫星真です!」
女性{赫星真…そうか…ふふ…変わったのね…}
「そうか。君も名前を覚えておこう。神話能力をもつ人間だからね。これからの成長が楽しみだよ。それじゃ」
そう言い女性は立ち去って行った。氷漬けになった人たちはもう動けなくなった。すごい女性だった。異質、だが神々しいなにかを持っている。そして…俺が神話能力を持っていることにも驚いていなかった。翠花姉は女性の背中が見えなくなるまで見届けていた。
翠花「すごかったね。私もいつかあんな風になれるかな…」
真「翠花姉なら大丈夫だよ!心配いらない!」
翠花「真くん…そっか。そうだよね!」
俺たちは現場を後にし、城に向かって歩みを進めた。
城の付近に着いた。大きな門が城の前にそびえたっている。門番のような屈強な男性が2人いた。翠花姉は男性たちに話しかけに行った。
翠花「翠帝様に呼ばれてきました。源翠花です。翠帝様はいらっしゃいますか?」
門番「あなたが翠花様でしたか。ええ。翠帝様は中にいらっしゃいます。ご案内します。こちらに」
翠花「この子も連れて行っていいですか?」
門番「もちろんです。ご客人お連れになっている方です。どうぞ」
真「ありがとうございます」
門番の男性は城の大きな門を開けた。見えてきたのは…豪華な内部だった。赤いマットが敷いてあったり、真っ白の柱が等間隔に刺さっている。そして…その奥に大きな玉座があり、そこに見覚えのある人物が腰をかけて待っていた。
門番「仁様!ご客人です!翠花様、こちらにどうぞ」
俺たちは門番に言われるがまま、玉座の前に着いた。
「昨日ぶりだな。早かったな。もう決めたのか?」
翠帝、橘 仁。先日翠花姉と戦った翠国を統べる皇帝だ。彼が玉座に鎮座している。
翠花「はい。ヒーディキュア王医学校に入学しようと決めました。なので私は翠帝様のもとに来ました」
仁「そうか!では入学についてはこちらでやっておこう」
翠花「そこでなのですが…」
仁「なんだ?」
翠花「この子も…ヒーディキュア王医学校に入学させることはできないでしょうか」
仁「なに?」
翠花「言葉の通りです。この子をヒーディキュア王医学校に入学させたいと思っています。できないでしょうか…」
仁「ふむ…」
翠帝が頭を悩ませているように見える…俺は学校に入学したい。翠花姉も同様にそう思っている。だがそれは翠帝が決めることなのだ。彼が否と言えば…俺は否応なく入ることが叶わないんだ…
翠花「いかがでしょうか!」
翠花姉が頭を下げてくれた。床に頭をつけ、翠帝に向かってお願いをしてくれた。
仁「一つ思ったのだが…なぜ俺がその少年の入学を考えていないと思っていたのだ?」
翠花「もしもだめなら!…え?」
今翠帝はなんと言った?翠帝は…俺の入学のことを…考えていてくれたのか?
仁「翠花。君が少年を特別視しているのを俺は知っている。そして君は我がヒーディキュア王医学校に入学すると言っていた。ならば少年も入ると思うのが必然と思うが違うか?」
翠花「真くん!やったよ真くん!!」
翠花姉は俺を抱きかかえ、めっちゃ回転をした。そして回転が終わり、翠花姉が俺を体に引き寄せた。
真「う、うん!」
仁「……あ、終わったか?」
翠花「もうちょい待ってて!!」
仁「あ、はい」
翠花姉今さらっと翠帝に向かってタメ口使わなかったか?そんで翠帝さんも翠花姉の勢いに負けて目を丸くしてて敬語になってしまっているし…
しかも待ってて!と翠花姉は言ったけど俺と何もしていないし!
仁「……あ、終わったか?」
翠花「もうちょい!!」
真「もういいよ!翠花姉!」
翠花「そう?じゃあいいですよ。翠帝様」
仁「終わったか。では本題に戻ろうか。少年も学校に通うことについてだが、翠花が入ることを決めたと言った時点でそうなんだろうなと思っていた。少年。君はどれほどか俺は知らない。だが翠花が推す人間なのだ。相応に強いのだろうと思っている」
翠帝は翠花姉のことを認めていて、面倒を見ているからこそ俺の評価もしてくれているのだろうか。だが実際俺は強くない。朱雀との戦闘で勝ったくらいだ。1億もない神気量の次元で生きるか死ぬかだったんだ。翠帝との戦闘なんて…一生をかけても敵わないんだろうな…。
翠花「ありがとうございます。そう言ってもらえて光栄です」
仁「実力者の教え子は相応と考える。真だったかな?君も彼女と俺の期待に応えるように」
真「はい!」
仁「あ、そうそう。学費に関してだが、二人分は俺が受け持つ。金は気にしなくていい」
つまり奨学金のようなものだが返す必要はないようなものか?給付型というんだっけ。
翠花「ありがとうございます。翠帝様のご期待に応えれるよう精進していきます」
仁「ああ。頑張ってくれ。1年後が楽しみだ」
翠花「はい。では、失礼します」
仁「ああ」
翠花姉と一緒に翠帝の前から退いた。門番の人に連れられ、城を出た。
翠花「よかったね。真くん。翠帝様が通っていいよって言ってくれて」
真「うん。本当によかった。期待に応えないとね!」
どんな所かも、どんな人がいるかはわからない。だが、俺はもう止まらない。そう俺は期待に胸を膨らませながら翠花姉と共に帰路についた。
しばらく歩いて、翠花姉の屋敷が見えてきた。屋敷に近づいたのだが…屋敷から物音が聞こえてきたのだ…誰かいるのか?
真「翠花姉。物音聞こえない?」
翠花「うん。でもこの揺れの感じ…」
なにか心当たりでもあるのだろうか?とりあえず俺たちは屋敷に入った。
玄関のドアを開け、音源に向かって近づいた。そこにいたのは…
蓮乃「あ、翠花さま、真くん。おかえりなさい」
真「蓮乃さん…」
翠花「蓮乃!起きたんだね!よかった」
蓮乃「ご心配をおかけしました。私はもう大丈夫です」
蓮乃さんが起きていたのだ。蓮乃さんは翠帝の業波を受け、気絶してしまっていた。だが起きてくれたこと。これが嬉しい。
翠花「無理しちゃだめだよ?蓮乃。今日明日は私が…」
蓮乃「大丈夫です。家事くらいしか私にできることがありません。それを翠花様に任せては私の存在意義が…」
翠花「そ、そう?でもきつかったら言ってね?手伝うから」
蓮乃「ありがとうございます。頼ることもあるかもしれませんね。それと翠花さま。その服は…」
翠花姉は翠帝と会いにいくために正装をしている。帰ってきてすぐに蓮乃さんと会ったから、服装はそのままだった。
翠花「翠帝の城に行ってきたの」
蓮乃「翠帝の城に…翠帝になにか用があったのですか?」
翠花「うん。私と真くんをヒーディキュア王医学校に入学したいって話をしてきたの。元々私は前に翠帝とやりあった時に誘われてたから、一緒に真くんもと思ってね」
蓮乃「なるほど…でもなぜ翠花さまを翠帝は誘ったのでしょうか…。翠花さまはもちろん実力がある。ですが今までは戦闘は控えてきたはずです。なぜ翠花さまが実力者とわかったのでしょうか…」
翠花「そこはわからない。でも誘ってきたってことは、私のことをどこかで知ったんじゃない?気にしてもわからないことだから私はスルーさせてもらうけど」
蓮乃「それもそうですね」
翠帝…確かになぜ彼は翠花姉を知っていて、王医学校に誘ったのだろうか。そこだけが謎に包まれている…。
翠花「私着替えてくるね。この服着心地いいから好きなんだけど、しわになっちゃうとあれだから」
そう言い翠花姉は自分の部屋に行き、着替えに行った。
蓮乃「真くん。ヒーディキュア王医学校に行くんですね」
真「うん。翠花姉に誘われたからってのもあるけど、今の自分を変えたいなって思って」
蓮乃「その心意気は大事です。小学校の生活は今後の真くんの人生で大きなものとなるでしょう」
小学校…前の世界ではどんな風に過ごしたかな…。そうだ。俺は周りの奴らに横柄な態度をとってみんなから除け者扱いされたんだ。今思えば…なんで俺はあんな態度で過ごしてしまったんだろうな。みんなに少しでも仲良くなれるような態度をしていれば俺はこう思うこともなかったしな…。
でもこの世界の俺はそんな態度で過ごすつもりなんてない。前の世界では対応は散々だった。この世界の俺は才能があるとみんなに言われてきた。だからこの才能を活かして俺は学校生活をより良いものにして見せる…!
翠花「蓮乃、真くんはそんなことわかってると思うよ」
翠花姉が階段から降りてきて、そう言ってくれた。翠花姉が俺の頭をポンポンと撫でるように触った。
真「翠花姉…。うん。僕、2人の期待に応えれるように頑張るよ!」
2人は俺の言葉に期待しているかのような笑みを浮かべてくれていた。
翠花「なら真くん、これからはもっと鍛錬頑張らないとね!」
蓮乃「そうですね。充実した学生生活を送ってもらうためにも一層厳しくしていきましょう」
真「え!?あ、ちょ、ちょっとそれは勘弁かな~?」
翠花「つべこべ言わないの!頑張るぞ~!えいえいおー!」
真「え、えいえいおー!」
俺はこれから送る小学校生活がどうなるかわからない。だが、どんな困難でも乗り越えてみせる。そのために、2人からどんなに厳しい鍛錬でもやりきってみせると俺はそう誓った__




