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天帝転生~前世で王を夢見た俺は異世界で皇帝を目指す~  作者: おかしなお菓子
第2章 鍛錬編

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第25話 王への決断

翠帝という圧倒的な存在を前にした俺は少し委縮していた。あれが俺が目指しているものなのだという認識と、翠花姉や蓮乃さんですらなにもできていなかった事実が俺を押しつぶした。


朱雀となっている俺は、翠花姉と蓮乃さんを連れて屋敷に戻っている。屋敷に向かっている最中、俺たちは会話をすることはなかった。


屋敷に着き、2人を背中からおろした。


翠花「ありがとう。真くん。真くんも元の姿に戻ったら?」


そういえば俺、戻り方を朱雀に教えてもらってない。どうするんだ?鳥の姿になっている俺の上にちょこんとなにかが座ってきた。


朱雀「翠帝…流石のものじゃったな…今の翠花でも十分に強いが…それで防戦一方とはな…」

翠花「全くです…。多分ですけどあれ、加減をしていますね。なんというか…やる気のようなものが感じとれなかった」


あれで本気じゃないのか?じゃあ彼の本気はどれほどなんだ…。


翠花「しかも翠帝は『虹帝達(エンペラーズ)』内での実力は最下位。医療系に特化した存在なのにあそこまで強いとは…『虹帝達(エンペラーズ)』…末恐ろしいね…」


「虹帝達(エンペラーズ)」という存在がどれほど異次元な存在なのかを俺は知った。負けるイメージができない2人を彼は一人で制圧した。


翠花「それはそうと朱雀様、真くんをもとの姿に直すことはできますか?」

朱雀「無論じゃ。真、神気を解いてみよ」


神気を解く…神気を纏った状態じゃなくするということか?なら簡単にできる。俺は神気の練りだしをやめた。徐々に神気がなくなっていくのがわかる。


そして俺は神気を完全に抑えた。すると…


朱雀「うむ。できたな」

真「人の姿だ…」


自然と朱雀の姿から人の姿に戻ることができた。視界も元に戻っている。


翠花「真くん…よかった」

真「翠花姉。大丈夫?」

翠花「うん。けど…蓮乃はね…」

朱雀「蓮乃だどうしたのじゃ?見た限りじゃが神気をぶつけられたようにしか見えなかったが…」

翠花「蓮乃が受けたのは…『業波(ごうは)』です」

朱雀「なんと!あやつ…『業波』をあの至近距離で当てよったのか…」


業波…?聞いたことがない名前が出ているな。どんなものなんだろうか。


真「翠花姉。その…『業波』ってなに?」

翠花「究極神気技術『業波(ごうは)』。他人の神気の波を自身の神気の波に強制的に書き換える技術のことだよ。神気は纏っている最中は体の血液のような重要な役割を持っているんだけど、その神気を強制的に自分の波に書き換える。体が神気の変動に追いつけず、体の自由が強制的に奪われてしまう。蓮乃の場合、体の自由というよりも意識を強制的に絶たれた、という方が正しいかな。脳が何が起きたのかわからずキャパオーバーになって、そこを神気が流れたから意識がなくなったって感じ」


今のを聞いた限り…相当えぐいものだな。その「業波」を食らえば確実にデバフがくる。状況次第じゃ即死だ。実際、俺が蓮乃さんを助けなかったらあのまま落下死だった。それくらいやばいものなんだな。


翠花「今日は多分目を覚まさないと思うな。蓮乃」

朱雀「じゃろうな。離れていても少し視界が揺らぐ程度。じゃがあの距離では早々に目を覚ますことも叶わないじゃろうな」

翠花「今日は私がご飯を作るよ。いいよね?真くん」

真「もちろんだよ。待ってるね」

翠花「蓮乃を医務室に運ぶよ。ちょっとだけ手伝ってほしいの」

真「わかったよ」


今蓮乃さんは床にそのまま眠っている状態だ。医務室とやらに運ぶんだな。


翠花「脱力してる人の身体って全然持ち上がらないから、神気を使ったほうが早いの。真くん。神気を出して」

真「わかった」


俺たちは神気を練りだし、蓮乃さんを翠花姉と一緒に運んだ。翠花姉は神気量も多いんだろうが元々体が俺よりも大きいため楽々と運んでいた。俺は運ぶのを手伝うというよりも屋敷のドアを開けたり医務室のベッドを広げたりする感じだった。翠花姉が蓮乃さんを一人で運んでいた。この人ひとりで行けたんじゃないか?


広げたベッドに蓮乃さんを寝かせ、翠花姉が蓮乃を診た。


翠花「ちょっと神気が不安定…『業波』を受けたからか…蓮乃は神気の扱いに長けているのにここまで被害があるのか…」

真「そんなにやばいの?」

翠花「うん。『業波」は神気を乗っ取って体の自由を奪うって言ったけど、自由を奪って神気が乱れるのはものの数秒。あり得ないことだよ。数時間経った今でも不安定なのはね」

朱雀「それほどにやつの『業波』の精度が高いということじゃろうな。神気の技術の中でもあれは最高難易度の一つに数えられるものじゃ。それを高精度に…だとしたら他の『虹帝達(エンペラーズ)』はそれ以上の化け物揃いじゃぞ…」


朱雀がそれくらい恐れるほどに「虹帝達(エンペラーズ)」はすごく強いやつらなんだろうな。


翠花姉は蓮乃さんの診察を終え、席を立った。


翠花「蓮乃は私が毎日診ていくから。リビングに戻ろっか」

真「そうだね。夜ご飯だ!」

翠花「今日は何がいい?」

真「蓮乃さん起きてないし…翠花姉が得意な料理でお願い!」

翠花「いいの?今日はお肉にしようかなって思ってたんだけど…」

真「蓮乃さんが起きたら、改めて記念に食べようよ!」


本来は今日俺の能力を発現できたという記念日でお肉を食べられる予定だった。だが蓮乃さんはくどいようだが。気絶してしまっている。俺は蓮乃さんに神気についていろいろと教えてもらった。翠花姉と同じく一人の師匠と思っている。そんな彼女が今起きていないのなら今やるのは違うんじゃないかと思っている。


翠花「そう…だね。じゃあ今日は…オムライスにしよう!」

真「うん!オムライス大好き!」


そう盛り上がっている少し後ろで、朱雀が翠花を見ていた。


朱雀{翠花…平静を装ってはおるが…精神的に結構きているはずじゃ…。蓮乃は翠花の面倒を見たと聞いておる。剣術から神気、考え方などなにからなにまで世話になったと聞いておる。今となっては翠花の方が強いが世話になったことに変わりはない。その師匠が今気絶しているのじゃ…強き師匠は神格化するものじゃ。その師匠が敗北した…。この事実は…翠花に少なからず影響が出るじゃろうな…}


心配ではあるが悟られぬようにと、朱雀は静かに俺の体の中に消えていった。



翠花姉がオムライスを作ってくれている。ケチャップのいい匂いがリビングに広がっている。俺はお皿をキッチンに持っていき、翠花姉が皿に盛るだけにした。コップなども用意し、本当にあとは食べるだけだ。


翠花「できたよ。さあ、食べようか!」

真「おいしそう!」

2人「いただきます!」


俺は翠花姉特製のオムライスを口いっぱいに入れた。とてもおいしかった。翠花姉は…まだ食べていないようだ。俺の食べっぷりを嬉しそうに見ていた。


真「翠花姉?どうしたの?食べないの?」

翠花「ううん。真くんが私が作ったオムライスを夢中で食べてくれることがうれしくてさ、つい見入っちゃったよ」

真「そう?おいしいんだし普通な気がするけど…」

翠花「その感想が、作った人からしたら一番嬉しい言葉なんだよ」

真「そっか…?まあ翠花姉が嬉しいなら…いっか」


翠花姉もオムライスを食べ始めた。翠花姉と2人の食卓ってのはこの屋敷に来て初めてかもしれないな。


翠花「ねえ。真くん。ちょっと真面目な話になるんだけどいい?」


突然翠花姉がこんなことを言い出した。真面目な話ってのは…なんだろうか…。


翠花「私ね、翠帝に言われたことがあるんだ。それが、私が入試に行こうとしている学校に来ないかっていう提案をされたの。私ね、これを受けようかなって思ってるの」

真「そうなんだ…」


翠帝が運営している学校に翠花姉が…そうか…。学校という制度がここにはあるのかという驚きと、翠花姉が受けるという驚きが重なっている…。


翠花「そこで提案なんだけど、真くんも一緒にその学校に通わない?」

真「え?」


翠花姉は俺と一緒に…翠帝が運営する学校に通わないかと言ったのか?


翠花「もちろん強制はしないよ。学校なんて行きたくないところだと思う。けど、小学校で得られるものって、今までの真くんの人生で一番実りあるものって私は思ってる。小学校の経験はこれからの人生の基盤になる。だから私は、真くんと一緒に行きたいなって思ったの」


翠花姉はあくまで俺のことを考えてくれている。翠花姉は翠花姉で学校でやりたいこともあるんだろうが…これは俺が選択するんだ。行くのか否かを。そんなの決まっている…


真「学校…行くよ。僕」

翠花「本当?強制はしないよ?」

真「ううん。これは僕の意思だよ。小学校に通うことができれば僕もいろんなことを知れるって思ったんだ」

翠花「そっか。よし、じゃあ翠帝に言いに行かなくちゃね!明日にでも行っちゃお!」


やっぱり行動はこの人めっちゃ早いんだよな…まあいいことなんだろうが…


真「明日翠帝のいる城に行って、学校に行くっていうのを伝えればいいんだね」

翠花「そういうこと。明日のために今日は早く寝ようか」

真「そうだね」


オムライスを食べながら結構大きい話になったが、迷う必要はない。俺は小学校に通い、いろんな経験をするんだ。



翠花姉が作ったオムライスを2人とも食べ終わった。


2人「ごちそうさまでした!」

翠花「じゃあ…一緒にお風呂入っちゃおうか」

真「あ、う、うん」


翠花姉に連れられ、お風呂に入ることとなった。


浴室に入り、俺たちは服を脱いで、浴槽に浸かった。


翠花「ふう…今日もいろんなことがあったね」

真「そうだね。僕は能力の発現ができたよ」

翠花「それが一番大きなことだよ。よく戦ったこともないのに朱雀様に勝てたね。すごいよ」

真「そうかな?結構きつかったけど頑張ったから勝てたんだと思ってるよ」


俺は人生で初めて戦闘をしたんだ。生きるか死ぬかの戦闘だった。結果的に俺は勝つことができた。だから朱雀を会得することができたんだ。


翠花「多分私が真くんのような状況だったとしても勝てないと思う。さっき朱雀様がやってたあの技を1000万の神気で乗り切るのは…私なら無理かな。あの技やってきた?」

真「うん。やってきてた。でも戦闘機にやってたときに比べるとそんなに多くはなかったと思うよ」

翠花「それは多分真くんが神気を増やしたからじゃないかな。真くんが朱雀様と戦った時の神気ってどれくらいだった?」

真「8800万くらいじゃなかったかな?」

翠花「多分だけど、真くんの進化に朱雀様の力が反映されていなかったからかな?増えた直後は朱雀様も対応できなかったんだね。すぐに順応されてたら負けてたのは真くんだったかもね」 

朱雀「その通りじゃよ」


朱雀が上からゆっくりと降りてきた。でもこのままだと…


朱雀「あちちち!」


朱雀がお湯に浸かった瞬間、見たこともないスピードで羽ばたいていた。


翠花「大丈夫ですか?朱雀様」

朱雀「降りてきた場所もタイミングもまずかったのう…。しくじったわい」

真「それで朱雀。負けてたのは僕だったって本当?」

朱雀「うむ。お主は神気が増え、わらわはそのままだったんじゃ。あの時わらわはお主の能力になっておった。つまりお主の一部。お主の神気量に比例するんじゃ。じゃがそれにわらわは順応できず、あの時のお主の神気量の差でわらわは敗れたんじゃ」

真「そうだったのか…」


朱雀の順応次第では負けていた…ということになる。早ければ俺は発現できていないことになっていた。


朱雀「わらわは真面目に勝ちにいったのじゃが真面目に負けたのう」

翠花「真面目に負けたんですね…やっぱり真くんは才能ありますよね」

朱雀「うむ!ある!こんな存在の能力になれたことがうれしいくてたまらんのじゃ!」


スサノオも言っていた。俺には才能があると。それにスサノオは環境にも恵まれていると言っていた。俺って神々に認められているんだな。ここまで嬉しいことはないだろうな。


翠花「そんなところで、体を洗おうか。はい、真くん。座って」

真「わかった。よろしく」


翠花姉は俺の髪と体をしっかりと洗ってくれた。体が全身泡まみれだ。翠花姉も自分で体を洗っていて、すぐに洗い終わっていた。


翠花「じゃあ100数えて、出よっか」

真「わかった」


俺は翠花姉と一緒に100数えていった。


真「98…」

翠花「99…」

2人「100!」

翠花「じゃあ出よっか」


翠花姉は俺の身体を拭いてくれて、そのまま服を着た。


翠花「明日もあるし、今日は早く寝ちゃおう」

真「そうだね」


翠花姉と共に部屋に行き、そのまま寝ることとなった。翠花姉が先にベッドに入った。


翠花「ふう。今日は疲れたし、明日翠帝の城に行くから寝よう」

真「入っていいの?」

翠花「今更でしょ。ほら、おいで」


翠花姉が手を広げ、ここに飛び込めと言わんばかりな感じだ。俺はその広がっている腕に収まった。この人の腕の中は…温もりがあるんだ。


翠花「もう逃がさないぞ!」

真「わわ…」


翠花姉が俺のことを抱きしめてきた…翠帝との戦闘で凄かったし、頭もいいものだから、遠い存在と思っていたが…ここだけは変わっていなかった。


真「僕も…」

翠花「お?」


腕を限界まで広げ、翠花姉のお腹に抱き着いて、顔を沈めた。だがその場所は…


翠花「すごいとこにいるね~」

真「……!!」


俺は顔が赤くなった。今俺は翠花姉のどこに顔を沈めているのかを理解してしまった。赤くなった顔を見てほしくなくて、さらに俺は顔を沈めた。


翠花「ふふ、いい子だいい子だ」


翠花姉は俺の頭を撫でながらそう言ってくれた。もう恥ずかしすぎて声が出ない…


翠花「じゃあこのまま寝ちゃおう。おやすみ、真くん」

真「……うん…おやすみ…」


恥ずかしいのもあるし、してしまったことの罪悪感で俺の心臓はバクバクだ…。俺はもう寝ようと目を閉じた。


翠花{明日…なんとしても真くんを王医学校に入れるために翠帝を説得しないといけない…翠帝が欲しいのは私だろうな…でもそれじゃあ真くんはどうすることもできない。だから私がなんとかしなくちゃ…。ううん、今考えてもしょうがない。今は明日に向けて寝よう…}


俺が眠っている間、翠花姉はそんなことを考えていた…。




「ちゅんちゅん!!」


小鳥のさえずりが聞こえてきた。今までこんなことはなかったが、それもあり得るということなんだろうな。にしてもなんか鳥ではあるが…言葉のように聞こえるのは俺だけか?


「ちゅうちゅうとれいん!!」

真「それは違うだろ!!」


俺はツッコミと同時に起きた。朝から大きな声を出してしまった。横には翠花姉が…ってあれ?翠花姉がいない。もう起きているのか?朝は弱いと蓮乃さんに言われていたのに…。


朱雀「起きたか!どうじゃ!わらわの必殺、ちゅうちゅうとれいんは!」

真「なんだよその触れづらい名前の技は!というかどこが必殺じゃボケえ!!」

朱雀「熟睡だったゆえ、起きやすい言葉を選んだのじゃ!よかろう!」

真「んん…。まあいい、翠花姉は?」

朱雀「翠花は早めに起き、支度をしていたぞ」

真「そっか。じゃあ僕も行こうかな」


俺はベッドから出て、リビングに向かった。リビングに繋がる扉を開けた。そこにいたのは…


翠花「あ、真くん。おはよう」


正装とも言うべき服を翠花姉は着ていた。白色と緑色が基調とされていて、そこに金色の装飾品が散りばめられていて、翠花姉の膝くらいまであるコートのようだ。中の服もきちんとしていて、ワンピースのようだ。白色の首元にリボンを首からかけている。また、緑色と金色のベルトをしている。スカートは膝上5cmくらいだった。


真「翠花姉…その服は…?」

翠花「翠帝のもとへ行くんだもん。きちんとした服の方がいいでしょ?」


確かにそうだ。俺も前の世界ではサラリーマンをしていて、社長の前ではきちんとした服にしたものだ。


翠花「真くんはいつも通りの服でいいよ。というか真くんに合う丈の制服がないから。これはしょうがないよ。朝ごはん用意してるから食べちゃってね」


机の上にはご飯があった。湯気も出ていて作り立てほやほやなんだろうな。俺は椅子に座って、朝ごはんを食べた。


真「いただきます」


その間も翠花姉は服をしっかりと整えていた。


俺は朝ごはんを食べ終わった。翠花姉が作ってくれたご飯は蓮乃さんの作るご飯とはまた違うおいしさで、癖になる美味しさだった。


真「ごちそうさまでした」

翠花「お粗末様でした。じゃあ準備してきてね。さっきも言ったけどいつも通りでいいからね」

真「わかったよ」


俺はリビングを出て、支度をした。歯磨き、寝ぐせを直したりした。そして服を着替えた。朱雀の祠へ向かった。だが朱雀は待ったをかけた。


朱雀「おいおい、真よ。お主が今から祈りをささげるのはわらわじゃぞ?祠に向かわんでもよい」

真「そっか。俺や翠花姉が祈ってたのって朱雀か。自分の能力に頭下げるのも嫌だししなくていっか」

朱雀「少しは畏敬の念もあってほしいがわらわはいいのう。他の神々にはちゃんとしてくれよ?」

真「わかってる。自分の能力だから、だよ」

朱雀「ならばよい。翠花が待っておる。行くがよい」

真「ああ」


俺は身支度を済ませ、行くだけとなった。翠花姉がいるリビングに向かった。翠花姉も終わっているようだ。


真「お待たせ、翠花姉」

翠花「よし、じゃあ行こうか」


俺は翠花姉と一緒に家を出た。翠花姉に連れられ、俺たちは翠帝のもとへと向かうのだった__

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