第24話 皇帝の名を冠するもの
俺は朱雀となり、上空を飛んでいた。鳥の体になっていることに少し違和感はある。だがそれも最初だけ。それに能力の一つとして得ることができたんだ。もういつでも変体することが可能になった。練習をし、自由に飛べるようにしたいな。
翠花「真くん。少し低く飛んでみてよ。周りの人たちに迷惑が掛からない程度の高さね」
翠花姉の提案を俺は飲んだ。実際低空飛行なんて朱雀を使っていればあり得ない話では全然ないからだ。だがどうやって高度を下げるんだろうか。鳥の滑空ってどうやってやるっけ?
朱雀「翼を畳み、姿勢を鋭くすれば落ちることが可能じゃ。やってみよ」
俺は朱雀の言われた通り、翼を畳んだ。だが…
翠花「く!!」
蓮乃「う!!」
これが俺の失敗だった…。翼を畳むのが速すぎて空気を押し出してしまった。それも姿勢を鋭くして加速をしてしまったんだ…。このままだと…住宅街に突っ込みかねない…。このままじゃ…住宅街が火の海に…どうすれば…
朱雀「説明を誤ったのう!真!変われ!」
そう言い朱雀は俺の主導権をやや強引に奪った。だがそうでもしなければ俺はこのまま突っ込む可能性がある…。朱雀は翼を広げ、そのまま並行に飛行した。スピードは翼を広げているため多少は落ちているが、それでもスピードは依然として速いままだ。その時視界がいろんな方向に動いた。朱雀はなにかを探しているような視界の動き方だった。
朱雀{広い道はどこじゃ…。…!!あれは…大きな道じゃ!!この高さにこのスピードなら…間に合う!}
「皆!北西のあの大きな道に向かうぞ!」
翠花「あの方向って…!」
蓮乃「王宮がある方向です…!ですが…やむを得ない状況です…!」
翠花「朱雀様!あの道は民衆が多く、人の目につきやすいです!気をつけてください!」
朱雀「承知!」
朱雀はそのまま並行に飛行し、北西の方向に向かった。どんどん王宮に近づいている。もう眼前に王宮と城下街が広がっている…!
翠花「城下街は坂になっています!そしてその奥に広場があります!加速することができるのはそこの一瞬のみです!お願いします!」
朱雀「うむ!!」
そびえたつ大きな城の真横を通り、城下街にある広場にどんどん近づいている。視界がさらに小さくなった。朱雀が集中しているんだ…!
城下街の坂を下り、広場までたどり着いた…!朱雀…頼むぞ!
翠花「朱雀様!ここです!」
朱雀「うむ!!」
朱雀は広場の一番真ん中、中心にある噴水の真上で翼を羽ばたいた…!その直後、視界が真上になり、どんどん雲を突き抜けた。成功だ…!
朱雀が変わってくれなければ大惨事になるところだった…。
真【朱雀がいてくれて助かったよ。ありがとう】
朱雀【構わぬ!それにわらわの説明が足りていなかったのう…。こちらこそすまんかった】
真【大丈夫だって!なにも起こしてないし多分大丈夫だよ!】
朱雀【そう言ってくれると…】
翠花「朱雀様!!」
翠花姉が大声を発した。何事だ?朱雀が辺りを見渡す…。そこにいたのは…戦闘機!?しかも見えるだけでも3台!?明らかにこっちに向かってきている…!その戦闘機のうちの1台が乱射してきた…!
朱雀「むう!!」
朱雀は翼を羽ばたかせ、急加速をした。だが…逃げた方向にも1台あった…何台あるんだ…。その1台が俺たち目掛け、ロケットのようなものを5発撃ってきている…しかも後ろからも連射されているような音が聞こえる…!完全に挟み撃ちだ…!
朱雀「近頃の人間は…わらわを舐めすぎじゃ!」
朱雀は姿勢を低くし、落下をした。そして下がったと思ったら、また翼を羽ばたかせ、アーチを描くように上昇した。どの戦闘機よりも高いところにいた。朱雀が翼を大きく広げた…!
朱雀「『金紅羽・積善』!!」
この技は…俺が朱雀と対峙した時に打ってきた技だ…俺の時と同じように羽を無数に飛ばしている!
翠花「これは…捌ける自信はないな~…はは…」
蓮乃「密度が高すぎますね…避けるしか選択肢はなくないですか?」
即座に戦闘機2台は巻き込まれ、爆発した…!一台は遠くに逃げ、もう一台はガトリング砲で対抗しているが…
朱雀「そんなもので…越せると思うでないわ!」
あの程度のガトリング砲では話にならんとばかりに朱雀はその抵抗してきている戦闘機に照準を絞って集中砲火をした。戦闘機の抵抗も意味を為さず、羽が集中的に刺さり、その戦闘機も爆発をした…!
朱雀「残り1台…!あそこか!!」
朱雀は逃げた最後の一台を見つけ、追いかけるように飛んだ。城の方向に向かって飛んでいる。
朱雀「やつ…自分の城に向かってなにを…。…!!」
そこにあったのは…待機状態にあった巨大なエネルギー砲だ…。この大きさは…俺の身体を完全に覆える大きさ…逃げられない…どうすればいい…
「打て!!」
天守閣から発射の命令と共に、エネルギー砲が発射された…こんなの無理だろ…。
翠花「蓮乃!!」
蓮乃「はい!!」
2人が飛び出した。俺には感知できないほどの神気を出している。出しすぎて逆にわからない…。だがこんな巨大なエネルギー砲を…どうにかできるわけが…。
翠花「こんなの…私らにかかれば…!」
翠花姉は刀を正眼に構えた。蓮乃さんもすでに抜刀し、エネルギー砲に対峙している。なにを…
翠花「”覇王流”!雷砲閃!!」
蓮乃「”覇王流”…極光!!」
翠花姉は刀を振り下ろした…その振り下ろした刀からまばゆい光と共に斬撃が飛んでいる!
蓮乃さんはまるで野球のピッチャーのように刀を振った。刀の先端から…光の玉が飛んでいる…!そしてその玉はレーザーのように向けられたエネルギー砲に向かって飛んでいる!
そして2人が打った斬撃とレーザーがぶつかり、二つの攻撃は合わさった…!
翠花・蓮乃「”覇王流”!!双星!!覇極砲光!!!」
合わさった攻撃はエネルギー砲とぶつかりあった…。ぶつかった瞬間、辺り一帯に突風が巻き起こった。俺は空中に飛んでいたが、突風が起きたことにより吹き飛ばされてしまった。
翠花姉と蓮乃さんは空中で攻撃を浴びせあっている…!
翠花・蓮乃「はあああああ!!」
2人の技がエネルギー砲を押し返した…!そのまま押し返し…
翠花・蓮乃「はああああああ!!!」
エネルギー砲をかき消すことができたのだ…!
翠花「よし!!」
蓮乃「やりましたね!!」
俺は吹き飛ばされたが、すぐに2人のいる方向に向かった。
朱雀「さすがじゃ!2人とも!!」
翠花「ふふん!すごいでしょ!」
蓮乃「ふふ…。…!?」
翠花「蓮乃?どうしたの?」
蓮乃「誰かが…こちらに来ます!」
蓮乃さんはそう言い城の方に目線を向けた。俺たちは城の方を見た…城からなにかが急接近してきているのが見えた…あれは…人か!?人が城を蹴ってこっちに向かってきている…!もうすでに眼前に迫っていた…!
狙いは…翠花姉か!?俺と蓮乃さんの方向には来ていない…だがこのままだと翠花姉が…
男はすでに翠花姉の視界に入り、男は彼自身以上に大きい刀をもう振ろうとしていた…。それに対応するように翠花姉も刀を構えた。
そして男と翠花姉の刀がぶつかり合った…。
男「くっふふ…さすがだなぁ。源一族最高の頭脳の持ち主は…」
翠花「お褒めに預かりどうも。それで?あなたは誰?」
仁「俺は翠帝…橘仁である!!」
翠帝…この男が…!
蓮乃「翠花さまから離れなさい!」
蓮乃さんが男と翠花姉のもとに近づいている。
翠花「だめ!蓮乃!こっちに来ちゃだめ!!」
蓮乃「え?」
仁「貴様に用はない…失せろ!!」
男が蓮乃さんに向け、強烈な圧を向けた…!その直後、蓮乃さんは糸が切れたように意識が途絶えた…。これが…翠帝…!蓮乃さんが…何もできずに気絶させられたのだ…!
翠花「真くん!蓮乃をお願い!!」
動くしかない…!このままじゃ蓮乃さんは地面に叩きつけられて死ぬ…!俺は蓮乃さんに向かって急発進した。
真{蓮乃さん!!}
俺は蓮乃さんを背中に乗せることに成功した。俺は蓮乃さんを背中に乗せ、翠花姉と翠帝の方を見た。その刀同士の競り合いは…俺には見えなかった…。早すぎて俺には見えなかった。ただ音が聞こえるだけ、刀身は全く見えていない…
仁「くふふ…ふはは!いいぞ!緑髪の!名は何と申すのだ!!」
翠花「そんなに攻めてきて…言わせる気ないでしょ!!」
仁「まあな!!ふははは!」
男との会話も聞こえた。だが、翠花姉にはそんな余裕は…なさそうだ…。2人が一度競り合いを終え、距離をとった。
翠花「一応聞かれたから答えるけど、私は源翠花。というか源一族最高の頭脳の持ち主って言ってたし私の存在知ってたでしょう?」
仁「認知はしていた。だが確証はなくてな。本人から聞けばいいと判断した。緑髪なんて源一族特有の髪だからな。俺は神気量ではなく潜在能力で判断した。お前が翠花だと。だからあやつには意識を絶たせてもらった。すまぬと思ってはいる」
翠花「申し訳ないと思ってんなら…ほかにやり方はあったでしょ!それくらい考えてよ!翠帝なら!」
仁「やり方があれくらいしかなかったのだよ。それに朱雀となっているあの少年も彼女をしっかりと背に乗せていた。俺は彼ができる。そう信じた。少し試したというのが正しいな」
翠花「彼は今日初めて能力の発現ができたの…技術も今はない!だからこれから練習をさせる予定なの!彼は将来大きい男になる。だからこそ今は鍛錬の期間なの!」
翠花姉は…いつでも俺のことを考えてくれている…目にこみ上げるものがあった。本当に…感謝でしか…ない…
仁「君が彼のことを思っているのはわかった。…そうだ。提案があるのだが聞くか?」
翠花「なに?」
仁「君は…今小5くらいか?」
翠花「そうだけど…」
仁「君は進学先はすでに決まっているか?」
翠花「これから入試があるけど…」
仁「では…提案だ。俺が運営する小中高大一貫の学校、『ヒーディキュア王医学校』に入らないか?」
翠花「……!」
翠花姉は驚いている。男の提案は彼が運営する学校に入れ、とのことだが…翠花姉はどうするのだろうか…
翠花「私が入試に行こうとしてるところ…そこなんだけど…」
仁「なんと!ふははは!そうか!」
翠花「うれしいんだけど…私は特別扱いは嫌いだよ?」
仁「そうか…だがな、俺は君の頭脳を評価したうえで君のもとへ来たのだ」
翠花「そうか…でも今は考えさせて。蓮乃のこともある。また後日でいい?」
仁「無論だ。…では…俺は帰ろうかな」
翠花「後日また行く。いつ行ってもいいの?」
仁「ああ。君ならいつでもいけるようにしておく。いつでも来てくれ」
翠花「わかった。それじゃあね」
仁「ああ」
そう言い翠帝、橘仁は城に戻っていった。嵐のような人間だったな…。
翠花「真くん。大丈夫?」
頭を俺は縦に振った。
翠花「そっか。よかった。蓮乃は…まだ気絶してるね…。屋敷に戻ろう。蓮乃を屋敷で看るから。お願いしていいかな?」
俺は2人を乗せ、翠花姉の屋敷に向かって飛んだ。翠帝の存在を知り、俺は目標がどれほど高い存在なのかを改めて知ることとなった…。




