第23話 開かれた扉
朱雀がいた世界は壊れ、俺はその世界を眺めていた。もう粉々になっていた。さっきのような赤い空に火柱もたっていたがもうない。本当に壊れたんだ。
時間が過ぎ、辺りは一瞬暗闇に覆われた。
真「朱雀がもういないから…世界は保てなくなったのかな…」
そんな風に思っていたら、外部に繋がる一筋の光を俺は見た。俺はそこに向かって歩みを進めた。こんな暗い世界…俺にはきつかった。早く出たかった。
光が流れているところに俺は触れた。光に触れた瞬間俺を光が包み込んだ…
蓮乃「…くん!真くん!こんなところで寝ちゃだめですよ!もう!」
真「あ…」
蓮乃さんが起こしてくれた。俺はどうやらこっちの世界に戻ってきたようだ。
蓮乃「なんで朱雀様の祠に…って…真くん…目…」
真「え?何かあった?」
蓮乃さんは驚いていた。だが俺自身がなにに驚いているのかがわかっていない。なににそんなに驚いているんだ?
蓮乃「目が…赤?金?色に…」
目が…赤色か金色に…か。俺は心当たりしかない。俺は朱雀と戦い、『朱雀』を戦闘の最中に発現することができた。神話能力を発現したことになるんだ。あの時の俺は正直どうやってやったのかはわからない。だが蓮乃さんは色を認識できている。俺の目は黒色ではなく色がついた目になったんだ!
真「目に色がついてるの?」
蓮乃「はい…なにか心当たりはありますか?真くんがあの後何かをしたかと言われれば…眠ったことくらいしかない気がするのですが…」
真「う…うん。そ、そうだね…」
蓮乃「…その目…なにか知っていますね?教えてください」
真「え、えっと…朱雀と…戦いました…」
蓮乃「朱雀と…戦った?なにをいってらっしゃるのですか?」
やっぱり理解できないよな。朱雀と戦った。これだけの文章で理解できるほうが逆にすごい。俺は本当の意味であったことをすべて蓮乃さんに話した。蓮乃さんはしっかりと聞いてくれていた。わかりやすいように噛み砕く言葉を使えたと思う。蓮乃さんは大体理解してくれた。少しわからないところもあったと思うがな。
蓮乃「つまり…朱雀様は真くんが悩んでいることを知り、行動を起こしてくれた。そして真くんが成長できるように真くんと1対1をし、結果的に真くんは神気も能力も開放できた…と」
真「そう。朱雀が動いてくれたから神気とか能力を会得できたんだ」
蓮乃「でも…真くん。君の能力は『スサノオ』ではありませんでしたか?能力を上書きしたことになりませんか?」
俺はスサノオに世話になっていたし、神気を増やすことの目標だったスサノオではなく、朱雀が俺に能力として発現したんだ。スサノオはどうなるんだろうか?
???「それは心配する必要はないぞよ」
どこからか声が聞こえてきた。これは…肩からか?肩から声が聞こえてきた。聞いたことがある声だ。肩を見た。赤い鳥がいる。
朱雀「スサノオはいなくなったわけではないのじゃよ。わらわがちょっと先に能力として発現しただけじゃな」
朱雀がいる肩にちょこんと座っている。
真「あ、朱雀だ」
蓮乃「これが朱雀様…」
朱雀「初目にかかるのお。名は何と申すのじゃ?」
蓮乃「源蓮乃と申します。この屋敷の主に仕えています」
朱雀「そうか。蓮乃か。ふむ…頑張って覚えようかのう…」
真「それで朱雀。さっき言ってたのは?」
朱雀「ああ、先に能力として発現したことじゃな。そのまま言葉通りに解釈してくれればよい」
その言葉通り…ということは朱雀がスサノオよりも先に出てきた…ということであってるのかな?
蓮乃「ですが真くん。君の能力はスサノオ様なはずですが…そのスサノオ様はどこに?」
真「そうだよ!スサノオは?」
朱雀「わらわがやつに会い、わらわが先に行くと伝えた。それだけじゃ。まあええのよ。というよりも本来わらわが真の能力として存在すること自体おかしいのじゃがな」
真「そうなの?」
朱雀「わらわは本来神社や祠にて祀られるのが普通なんじゃ。じゃが強い神気を感じ取ってな。それも何色にも染まっていない神気が。そこにわらわは向かった。そして真と出会い、決闘を申し込み、神気の手助け程度に思っていればよかったのじゃが、わらわという存在を真の神気は吸い取りわらわを能力として認識した。だからわらわは真の能力になった。これが経緯じゃのう」
なんというか…申し訳ないな。いや、神気に寄ってきた朱雀もそうだが、それは俺を鍛えるためにしてくれたことだ。それが結果として朱雀を能力として吸収してしまった。不本意ではあるな。
真「じゃあ朱雀はもういつでも発現できるの?」
朱雀「もちろんじゃ。真よ。わらわを屋根のない広い空間に連れて行け。そうすれば発現ができるであろう」
真「えっと…この辺りの広いところ…蓮乃さん。ある?」
蓮乃「空き地はあります。それなりの大きさなので…大丈夫じゃないですかね?」
朱雀「ではそこにわらわを連れて行け。蓮乃とやらお主も同伴しておくれ」
蓮乃「承知しました」
朱雀「うむ!ではわらわは真の中で眠るとしようかの」
朱雀は光に包まれ、いなくなった。俺の体内に戻ったという方が正しいか。光が消えた瞬間体が少し熱くなった。まあ誤差程度だ。熱を出したほどではない。
真「じゃあ僕らは準備をしていこうよ。蓮乃さん」
蓮乃「そうですね。翠花さまは起きていられてますかね…」
真「そうだ。翠花姉は?まだ起きてないの?」
蓮乃「うーん…本を1日中読んでいますから…どうなっていることやら…。とりあえず準備をしに行きましょうか」
俺たちは屋敷に向かい、リビングで朝ごはんの準備をしていた。その時…
ガチャっという音がした。リビングのドアが開いた。そこにいたのは…
翠花「お、おはよう…」
目にクマがあった翠花姉がいた。目が…決まっている…。
真「翠花姉!」
俺は翠花姉に抱き着いた。俺のために本を1日中読んでいたんだ。感謝でしかない。俺は翠花姉を見た。だが…その顔に喜びはなさそうだった…。
翠花「ごめんね。真くん1日も待ってもらったのに…。絶眼を持っている人の神気の増やし方…書いてなかったの。ごめんね…」
結局この本には書いていなかった。翠花姉が丸一日かけてくれたのに…ないなんてことあるのか。
だが俺は翠花姉に驚かれるかもしれないが言えることがある。
真「あのね、翠花姉。僕の目を見て」
翠花「目?え…目に色がある…これは…琥珀金色かな?でも…なにがあったの?」
俺は蓮乃さんと同じ説明を翠花姉にした。また、朱雀とスサノオの関係も言った。翠花姉も理解が早く、大体を理解できていた。
翠花「そんなことがあったんだ。真くんには驚かせられることばかりだよ。本当に」
蓮乃「まったくです。ここにきて1週間そこらで何度驚いたことでしょうか」
2人からしてみれば俺は1週間前くらいに突然来て、俺が名家出身だとか大厄災に巻き込まれたことを知ったり、鍛錬になれば神気をものの1日で知ったり、挙句の果てには神話能力を神気を会得して数日で発現した。驚かない方がすごいくらいには起きたことが多い。
翠花「じゃあ今日は記念日だね!真くんが能力を発現できた記念日!」
真「ほんと!?やった!」
蓮乃「今日は買い物が捗りそうですね。それはそうと、ご飯を食べて朱雀様のことをやらなければいけませんね」
真「そうだった。翠花姉、このあと朱雀の能力を使うから広い空き地にいくんだけど来てくれる?」
翠花「もちろん!初披露はしっかりと見ないとね」
翠花姉も来てくれるのはうれしい。やはりこの人たちにはお世話になっているからこそ初めて能力を発現するのを見ていてほしい。
翠花「そうと決まればすぐにご飯食べて着替えてかないとね!さ、食べるよ!」
こういう時の翠花姉は早いな。行動が速い人ってすごいよね。
蓮乃「お皿に盛るだけですしすぐに終わらせましょう」
蓮乃さんはてきぱきお皿に盛っていき、気づけばもう終わっていた。
翠花「それじゃあ…」
3人「いただきます!」
俺たちはご飯を早く食べた。だが、雑談もあった。神気や能力については話してはいない。そんな会話は今は野暮とみんなわかっているからだろうな。
少し時が経ち、ご飯を食べ終え、着替え、歯磨き等を終わらせた。
3人とも準備を終え、屋敷を出た。そして俺たちは会話をしたり道中にいた長老たちと話しながら目的地に向かった。
蓮乃「真くん。空き地はこちらです。今日は…子どもたちはいませんね」
翠花「初披露にはちょうどいいね。じゃあ真くん。朱雀様を発現してみようか」
真「わかった」
俺は神気を練りだし、神気を纏った。そして俺は深呼吸をした。
翠花「神気が増えているね。能力を発現できているんだしそりゃそうか」
蓮乃「昨日まで1000万だった男の子が5000万も出せている。成長ですね」
真「深呼吸をすると増えるってことがわかったんだよね」
翠花「そのやり方は本には書いてあった。神気を空気中にある神気に反応させるって書いてあったよ」
真「そうなの?でも僕できていなかったよね?」
翠花「本に書いてあったんだけど、潜在的神気量が多い人ほどできにくいらしいの。割合でみられるんだって。同じ量の空気を吸っていても、私と真くんだと深呼吸で得られる神気量だけで見れば私の方が多いんだよ。けど真くんの今の神気の増え方は深呼吸とはちょっと違う?」
朱雀「それはそうじゃよ」
真「朱雀!」
朱雀が俺の頭に乗っている。発現をしたから起きたのかな?
朱雀「緑髪の。そなた、名は?」
翠花「源翠花。あなたが朱雀様?」
朱雀「いかにも。して、深呼吸による神気の増え方についてだけ話してわらわを扱ってもらおうかのう」
蓮乃「よろしくお願いいたします」
朱雀「うむ。深呼吸の増え方の違いについてじゃが、わらわは神であるが、それ以前にわらわは動物とするならなんじゃ?」
真「鳥じゃないの?」
朱雀「その通りじゃ。鳥は人と同じように肺があるわけではない。気嚢と呼ばれる器官があるんじゃ」
知らない名前だな。生物の話だろ?鳥の生態について!なんて言わないだろうな?しかもなんで翠花姉と蓮乃さんは頷いてるんだ。理解できるのかこれを。やっぱり2人は頭がいいんだな。
朱雀「そして気嚢は空気を一定の方向に流すんじゃ。わらわの気嚢はその道中に吸った空気にある神気を増幅することが可能じゃ。また空気にある有害物質も浄化し、真の身体に還元するようにしておいたんじゃよ」
翠花「……結構やばいことしてない?」
蓮乃「やばいですね…これは…。今の話を聞いた感じですが、呼吸をするだけで神気を増やしまくれる。そして毒ガス等があったとしてもそれを浄化し、真くんの身体の機能として作用することができる…ということですからね。これが神話能力の力…恐るべしです」
朱雀「わらわの言いたいことすべて理解してくれたのじゃ!」
朱雀は俺の頭の上でぴょんぴょん跳ねている。うれしいんだな。
朱雀「わらわのすごさを理解してくれたところで…やるとするかのう」
真「なにを?」
朱雀「決まっておろうて。お主がわらわを発現するのじゃ」
朱雀を…発現する…か。けど俺前に朱雀の世界に入ったとき翼生えてなかったか?
真「朱雀。戦った時生えてなかったっけ?」
朱雀「あれは人の姿を保ちながら空を飛ぶことができる形態なんじゃ。じゃが今からしてほしいのは完全にわらわになるんじゃ。体はわらわ、意思はお主という感じじゃ。心配はなにも要らぬ。わらわに任せよ」
真「わかった。じゃあ最初は任せるよ」
朱雀「では…深呼吸じゃ。わらわを使え」
朱雀はそう言い、消えた。その代わり、俺の身体は熱くなった。朱雀が中に入ったのだろうな。
俺は深呼吸をし、神気を増やすことに成功した。その時…
朱雀【真よ。聞こえるか?今わらわはお主の頭の中に直接語り掛けておる。これからは発現するとわらわがこんな感じで話しかけることになる。覚えておけ。では早速じゃが…鳥に変体する。気持ちの整理ができたら教えてほしいのじゃ】
朱雀が話しかけてきた。別の声が聞こえるというのはまた違和感なものだ…
真【わかった。正直なれないけど頑張る。いつでもきてくれ】
朱雀【承知…では…行くぞ!!】
俺は朱雀に身を任せた。主導権も今は朱雀だ。朱雀は…神気を爆発させ、大ジャンプをした。そして体を丸め込み、両腕を交差させた。そして、力を体に凝縮するようなイメージだ。
その時なにか低い重低音のようなものが聞こえた。この音はなんなのか。俺にはわからない。そして俺はためていたものを一気に開放した…!
開いた俺の身体は…もう人の姿ではなく、前見た朱雀のように鳥の姿になっていた。9本の金色の尾、光り輝く大きな翼、燃える大きな体。
俺は成功に歓喜し、おもわず叫んでしまった。
「キィィィ――――アァァァァァ!!」
その声はもう人の声ではなく、完全に鳥に、朱雀になったことを意味していた。
視界には翠花姉と蓮乃さんが見える。だが見え方が普段とは違った。少し視界が赤い。2人の様子は…驚いているように見えた。
翠花「これが…朱雀…。」
蓮乃「これは…凄まじいですね…。これが…神話能力の力…」
翠花「真くん…やっぱり君は…」
2人がどんなことを言っているのかが聞こえた。最後の方で翠花姉がなんて言ったかだけ聞き取れなかったが、驚いていること。これだけは間違いなさそうだ。
朱雀【どうする?このまま飛んでいくか?それとも2人のもとへ行くか?】
真【2人背中に乗せて空を飛びたい。できるか?】
朱雀【無論。では一度2人のもとへ行こうか】
朱雀と話し合い、俺は翠花姉と蓮乃さんのもとへ行った。俺は今朱雀になっている。会話をすることができない。どうやって…
朱雀【わらわが出よう】
そう言い朱雀は小さな小鳥の状態になった。だが俺の体は大きな鳥のまま。可能なんだな。
朱雀「今の状態でも話すことは可能じゃが、これは慣れてからのがいいじゃろうな。さて2人とも。真の背に乗るのじゃ」
翠花「背中に?」
蓮乃「可能なんですか?」
朱雀「ああ、この炎は燃えぬ。燃やそうとする意思がなければな。すれば少し暖かい程度の背中になるはずじゃ。ほれ、乗ってみよ」
2人は遠慮しているのかたどたどしくしていた。俺は2人が乗りやすいように背中を低くした。
翠花「大丈夫?真くん、痛くない?」
痛いなんてことは全くなかった。上に2人がいることもなんにも支障をきたしていない。だが俺は今は話せない。Noが言えない。そうだ、ジェスチャーだ。俺は首を横に振った。
翠花「そっか。ならよかったよ」
朱雀「では真!今度はお主が飛ぶのじゃ!足で大地を蹴り、翼で大気を掴み、押し上げるのじゃ!2人とも!しっかりと真に捕まっておれ!」
2人がしっかりと俺の体の一部を掴んだのを俺は感じ取った。さっき言われた通り、足で地面を蹴り、ジャンプしたと同時、一気に羽ばたいた。
空気を裂き、雲をいくつも突き抜けた。スピードが緩やかになってきた。俺は羽を広げ、空気抵抗が大きくなるような体勢をとった。
翠花「すごい…こんな高さまで行ける日が来るなんて…!」
蓮乃「きれいな雲海が広がっていますね…」
成功した。俺は2人を連れて遥か上空にまで来れた。この大空を俺は飛ぶ。金色に輝く巨鳥となって__
「ふむ…あの赤い鳥はなんだ?」
叡智を極めし者のみが入ることができる城の頂。緑色のコートを肩にかけ、玉座に鎮座せし男が飛んでいる真たちを目にする。そして男は静かに目を閉じる。モノクロの世界で、少女の慟哭を男は見ていた。男は立ち上がり、目を開いた。その男の顔は…愉しそうに笑っていた…
「くっふふ…面白いことになりそうだ…」
この男の脅威を俺たちはまだ知らなかった__




