第20話 朱い鳥
蓮乃さんに連れられ俺はリビングにいた。蓮乃さんは夜ご飯であるそうめんを冷蔵庫からだし、ゆがいていた。俺はリビングのソファに座りながら翠花姉からもらった本を読んでいた。今俺は自然能力の中で四大元素といわれる火、水、風、土という大きな枠組みの中で火系をメインに読んでいた。火だけでも相当な量がある。火といってもただの火ではないらしい。俺は気になることがあるんだ。蓮乃さんは湯がき終わってひと段落ついたようだ。そんな蓮乃さんに俺は聞いてみた。
真「蓮乃さん。質問があるんですけどいいですか?」
蓮乃「もちろんです。なんでしょう?」
真「この本にある、神気を使った能力の火は違うってあるんだけどどう違うってわかったりするの?」
蓮乃「能力は神気を使う。ここはよろしいですね?」
真「うん。能力は神気あってこそ成り立つものって認識なんだけど…」
蓮乃「間違ってないですね。そういえば私今日真くんの能力の核がどこにあるかを見ましたよね?」
あった。蓮乃さんは神気の稽古の最中に俺の体内にある赤色の核を見えましたか?みたいな感じで当然のように聞いてきた。それに俺は驚いた覚えがある。
蓮乃「あれも真くんが能力と神気をしっかりと使うことができていた。だから場所がわかったんです。赤色というのはスサノオの色なんでしょうね。真くんにお似合いな色です。話が脱線してしまいましたね。能力の火と通常の火には神気が流れているというのが大きな差です」
真「能力の火は神気があって、普通の火はなにもない。ここだけでわかるものなの?」
蓮乃「では逆に聞きますが、真空の状態で火は燃えますか?」
確かに火単体では燃えることはない。空気があって初めて火は存在する。真空の状態だとだめだったような。酸素に反応して燃えるんだっけ?まあ単体では燃えれないな。火は。
真「えっと…燃えれないよね」
蓮乃「その通りです。火は酸素を介して燃えます。では…あ、わかりやすい例を私は知っていますね」
真「わかりやすい…例…」
そんなのあるか?実在するものでないと分かりにくい可能性があるが…
蓮乃「私は獅道という男と戦いました。その時彼は爆破の攻撃をしてきたのを覚えていますか?」
獅道という男は以前蓮乃さんがぶつかった相手だ。蓮乃さんは奴に無傷で勝っていた。そんな奴と蓮乃さんの戦闘を俺は見ていないが、爆発があったのを俺は見た。
真「うん。でもそれがなにかあるの?」
蓮乃「彼は私と真くんが一度逃げた時に爆発を起こしました。その光景は見てましたよね」
真「うん。でもあの時は逃げないとってのがあったからあんまり覚えてないんだ…」
蓮乃「しょうがないことですね。彼の能力は爆破。これは憶えているかと思います。ふわっと覚えていたらでよいのですが…彼の爆発。直線的、そして直角的に動かなかったですか?」
直線的…あの爆発は確かに導火線でもあるかのような軌道だった。空中にいた俺たちを狙い、地上にいた翠花姉には向かうことなく、まるで直角に方向転換したと思うレベルの不自然な動き。本来の爆破ではああはならない挙動であったな。
真「言われてみれば…そんなようなことも…」
蓮乃「まあ覚えてはいないですよね。彼の爆発は曲がっていたんです。それはなぜか。そこで最初の質問に戻ります。神気がある火とない火ではどう違うのか、そして真空状態で火は燃えるのか。彼の爆破をもとに答えましょう」
俺の質問は神気と火の関係性だったが…少し発展してきて頭が置いてけぼりになりつつある。
蓮乃「まず能力のみの爆破には酸素が必要です。発動する分の神気は使っていますが、そのほかの神気は使うことはありません。これは本に書いていますが…まだそこまでいってないですかね?」
真「まだそこまではいってないかな…」
蓮乃「そこは大丈夫です。今後読んでおいてくださいね」
真「うん。わかった」
蓮乃「そして、能力と神気を使った爆破。これには酸素は不要なんです」
真「どういうこと?」
神気を使わず、能力だけの爆破では酸素がいる…。そして神気を使った爆破では酸素が不要…。頭が痛くなってきたな。科学の話をしなくてもいいんじゃないか?
蓮乃「うーん…これに関しては例であげるのが難しいですね。本を読めば理解できると思いますが…」
真「まあいいや。聞くだけ聞こうかな」
蓮乃「それがいいですね。一方的に話しますがよろしいですか?」
真「うん。お願い」
蓮乃「わかりました。まず先ほども言った能力のみの爆破には酸素がいる。そして神気を使った爆破には酸素はいらない。これの相違点はなにか。ずばり神気があるかないか、ですね。ここはわかると思います。ではなにが違うのか。能力の性質を帯びた神気はその能力が最も効果を発揮しやすいようになるんです。つまり、彼の爆破は神気によって効果を最大限に発揮していたんですね。本来の神気に爆破の効果が上乗せなんてされません。ですが能力の性質を帯びた神気は例えるならガソリンのような働きをする。そして神気はある程度方向を変えることができる。形状も変えれます。彼の神気が細く、そして導火線のように私たちの方向に延びたんですね。能力の爆破は爆発するだけ。神気を使った爆破ではいろんなことができる。これが相違点です。長くなりましたが理解できて…なさそうですね」
俺はもうほぼ聞いてないも同然だ。口がポカーンと開き、理解するのも途中から追い付かない。俺はもうボーっとすることが最善と思ったんだ。
真「難しいね!うん!」
蓮乃「まあ理解が難しいですね。最初の質問にだけお答えして終わりましょうか」
真「うん!お願い!」
蓮乃「神気がある火とない火の違いは不規則な挙動か、そして本来の火よりも威力が強いか。これくらいですね。見て不規則な軌道ならこれは神気ある火だなっていうのがわかると思います。もう説明しすぎて私も論点がずれていますから疲れましたね」
説明ご苦労様です。俺は結構大事なことが言われているような気もするが理解できないため右から左だ。
蓮乃「ではご飯にしましょう。翠花さまは呼ばなくて結構です。彼女は今集中しているでしょうからね」
真「そっか…。まああの本読むのにも結構時間かかりそうだもんね」
蓮乃「そうですね。集中モードのあの人は本当にすごいですから邪魔をしてはいけませんから。ではいただきましょうか」
真「うん!それじゃあ…いただきます!」
俺たちはそうめんをすすりながら雑談のようなものをした。能力とかの話でもこの世界の話でもない。テレビにあるお笑いの話とかで盛り上がっていた。この世界のお笑いも素晴らしいな。面白い。
蓮乃「この芸人さん、私が好きな芸人さんの一人なんです」
真「そうなんだ。叩くの…痛そうだけどね…」
蓮乃「そこからロケットみたいにツッコミの人に向かって飛んでいくのがこの人たちのネタなんです」
持ちネタにしては結構ぶっ飛んでんな?こんな芸人が好きなのか蓮乃さんは。まあ人の趣味だから否定はしないけども。
真「そ…そっか」
蓮乃「考え方は人それぞれ。尊重することが大切なんですよ。皇帝になるのであれば、ですがね」
真「ならいるね!」
蓮乃「はや」
俺には目標がある。皇帝になることだ。考え方も皇帝にふさわしい人間になってみせるぞ。俺は。
俺たちはそうめんをすべて食べた。
蓮乃「さて、食べ終わりましたね。お風呂にしますか?」
真「うん。そのつもり。入ってくるね」
蓮乃「ごゆっくり」
俺はリビングを出て浴室に向かった。思えば今までの風呂は翠花姉と一緒に入っていた。だが今翠花姉は神気の本を読んでくれている。一緒には入れない。俺のためにこんな風にしてくれる彼女は本当にすごいと思う。だって会ってまだ1週間くらいだ。そんな関係の浅い俺にここまで頑張ってくれるのは…正直すごく嬉しい。そんな風に思いながら俺は浴槽に入った。
真「ふう…」
どうしたら俺は神気を増やせるのか。はっきり言って想像もつかない。かといって変に行動すればもしかしたら…神気暴走状態になり得る可能性もあるんだ。そうなったら2人に迷惑をかけてしまうかもしれない。やはり俺は他人に頼らないと何もできない…俺は無力だ。
真「でも…なにもしないのは…翠花姉に申し訳ないんだよな…」
???「困っておるなあ」
なんだ?変な声が聞こえたような?若いお姉さんのような声だが口調はお年寄りか?
真「ん?なにか聞こえたような?」
???「こっちじゃ、こっち」
幻聴…では…ない?俺は声の方向に向かって視線を向けた。そこには…赤い鳥がいた。すずめのような見た目だ。とても小さい。そして…炎を纏っていた。炎…俺は炎は大嫌い…いや、大嫌いで済めばいいな。俺は前の世界では炎によって焼死した。そしてこっちの世界ではあの虹色の龍によってこの家に飛ばされた。炎にはある意味好まれているような人生だ。
赤い鳥「溜め息なんてつきよって。若いもんは気合いが足りんのお」
真「……誰?赤い鳥さん?」
朱雀「ああ、自己紹介してなかったかの。わらわは『朱雀』。お主が毎朝拝んでおるのはわらわじゃ。光栄じゃろ?」
…朱雀?毎朝拝んでいた存在?神様ではないのか?朱雀は。
真「朱雀…え?朱雀様!?」
朱雀「ほっほっほ。わらわという存在が認知できたようじゃな?」
真「認知は…できているのか…というかなんで僕がお風呂に入ってきたタイミングで入ったんですか?」
朱雀「常なら緑髪の少女がいた。だが今はいない。それが理由じゃな。お主から質問があった。わらわも質問をするぞ?」
朱雀の質問…なんだろうか。というかなんでこんなに俺は冷静なんだ?俺は怖い炎を纏うこの存在を恐れたり、拝んでいた存在を目の前にし尊敬の念があるわけでもない。なんだ、この感覚は。
朱雀「お主、なにをそんなに悩んでおる?」
真「えっと…それは…」
朱雀「なんと言っておったかの…翠花…姉に申し訳ない…だったか?何をそんなに考えることがある。この際じゃ言ってみよ」
真「実は…」
俺は朱雀に今の現状、悩んでいること、これからどうしたらよいのか。そのすべてを話した。朱雀は頷くだけ頷いて、考えていた。
朱雀「…ふむ…」
真「いかが…ですか」
朱雀「わらわがどうこう言えるものではないが…。お主の今の悩み。わらわがどうにかできるな。間違いなく」
真「え!?」
朱雀「声がでかいわ!!」
俺は頬に飛び蹴りをくらった。爪が食い込んで血が出た。痛い。
真「痛い…」
朱雀「おっとすまぬすまぬ。びっくりしてしまってつい。再生しよう。動くでないぞ。目をつむっておれ」
真「え?う、うん」
朱雀が俺の頬によってきた。その直後俺の頬の痛みはなくなった。なにをしたんだ?
朱雀「これでよいな。ほれ、もう動いてよいぞ」
真「え?」
俺は風呂にある鏡を見た。血は消えていた。本当に何をしたんだ?
朱雀「再生。わらわの力じゃ。いい機会になったな」
真「再生…治癒とは別なの?」
朱雀「うむ。治癒は使用者の神気を使う。それに対し再生は自身の神気を使う。よいか?」
真「う、うん。それで、悩みを解決できるって本当?」
朱雀「うむ。じゃが一つ難点がある」
真「それはなに?」
朱雀「わらわがお主の能力として存在しなければならないんじゃ」
朱雀を能力として…か。俺の能力はスサノオだ。朱雀ではない。どうすればいいんだ。
朱雀「そこで一つ。よき提案をしようと思うのじゃが…聞くか?」
その時の朱雀の目は…先ほどとは違い、なにかピリピリするような圧を出していた。
真「…なに?」
朱雀「わらわを打ち倒せ」
真「え?」
朱雀は神だ。そんなこと知っている。そんな朱雀を俺が…打ち倒す?神気も増やせない、能力も発現できていない俺が朱雀を倒すなんて…夢のまた夢じゃないか。そんなの無理に決まっている…
真「朱雀を打ち倒す…」
朱雀「今のお主はこの先の未来を見えておらん。助けられっぱなしのお主は見るに堪えん。わらわに打ち勝て。でなければ一生そのままじゃ」
真「……」
俺は勝てないかもしれない。朱雀を打ち倒すこと。それがどれだけ難しいことかは戦闘をしていない俺からしたら想像もつかない。だが俺は…夢をあきらめるのか?皇帝になるという夢を…そんなのまっぴらごめんだ。俺は…無謀だとしても…強くなるためなら…やってやる…!
真「朱雀。今の朱雀がどれだけ強いかは正直わからない。けど…やるよ。ぼ…俺」
朱雀「覚悟を決めたいい目じゃ。では…今日の深夜。2人が寝た時にわらわの祠に来るのじゃ。よいな?」
真「ああ、わかった」
朱雀「ではまた後でな」
真「ああ」
俺は朱雀とやりあう。最悪死ぬかもしれない。でも俺は…やってやる。強くなるために…。




