第19話 鍛錬6 神気の器
神気を作るための仮の器を作る工程。その流れは理解できた。それを実践でやるのは骨が折れそうだな…
蓮乃「言うのを忘れていましたが、これは能力発現までです。真くんの能力であるスサノオを出すことができればこの器を作る工程もいりません。発現までの辛抱ですよ」
神気ってのは能力と精神を合わせれば増やすことが可能だ。だが俺にはまだ能力がない。潜在的神気を外に出せたこともまぐれだったんだろう。だが増やすことはまぐれは無理だ。能力がない俺にはまだ不可能なんだからな。その能力発現までは…この器を作ることが必要になるのだとか。
翠花「まずは一回やってみよう。それで真くんがどんな感じかわかると思う。さっき言ったようにやってみて」
真「神気のコップを作って、そこに神気と精神とを合わせればいいんだよね」
蓮乃「ええ。ですが一つ言っておきます。これは一つの技術的なものになります。私たちはできますが、真くんにとっては一朝一夕でどうにかなるものではありません。本来は神気はそうやってやるものなのです」
それはそうだろうな。神気自体は俺も体外に出すことはできてはいた。だがそれは出しただけで技術なんて何もない。技術がない俺が神気を高密度にするという技術をやるというんだ。無論難易度が普通の人よりも高いのも自覚している。
翠花「手助けできることがあったら言ってね」
真「うん。お願い」
さて…どれほどの難易度かはわからない。だがやらなければいけないんだ。やってやる…!
真「神気を出して…巡っている神気を能力がある部分に…。…!う…ゲホ!」
翠花「真くん!?大丈夫!?」
な…んだ!?今の痛みは!?心臓が握りつぶされたかと思った…。生きてるよな?…俺…。頭も痛いし…なにが起きたんだ?
蓮乃「やはり…これは今の真くんには厳しいものなのか…?」
蓮乃さんはわかっているかのような言い方だった。
蓮乃「真くん。今の痛み…きついかと思います。なにが起きたのかわからないと思います。それは高密度の神気に心臓がびっくりしただけ。ですが、神気を纏う場所は間違ってはいません。能力の核は心臓にある。そして心臓から流れる血液と神気が脳に送り届けられ、目を通して能力が扱えるという仕組みです。
その痛みに慣れる必要があります。私たちは痛いことがあると言いました。その痛みこそが…それなんですよ」
この痛みは…尋常じゃない。ここまでの痛みを通さなければ神気を増やせないのか…。きついな…。この痛みを何度も耐えられるのか?俺の体は…。
蓮乃「真くん。酷なようですが、もう一度神気を能力の核にやってください。高密度にして、ですよ」
真「ぜえ…ぜえ…う、うん、わかった…」
正直この痛みを何度も繰り返すのは抵抗がある…。そりゃあそうだろう?痛い思いをいまいま体験したというのに、その痛い思いをもう一度しろというのは抵抗があるだろう?
真「さっきは…びっくりしただけだよね…。はあ…」
蓮乃「その通りです。心臓に神気が送られてくるという感覚を知ったと思います。それなりの痛みを伴いはしますが、やればやるほど痛みは少なくなっていくと思います。数ですよ。数」
数とは言うが…その痛みが少なくなるのにどれほどの数をしなければならないんだ…。
翠花「数でどうにかなるものなのかな…」
蓮乃「はい。最初は心臓を神気が重点的に集まったことで驚いたため、痛みが発生したんです。心臓が神気というのに慣れることができれば自然と痛みも小さくなると思います」
翠花「うーん…私たちの常識を真くんに当てはめてもあんまり意味ないんじゃない?」
蓮乃「というと?」
翠花「まず私たちと真くんじゃ潜在的神気量に差がありすぎる。私みたいに神気量で10万を生身に流すのと真くんが体に1000万もの神気を流すのじゃ差がありすぎる。私は成功した時こそなにかにドッキリをされた程度だった。けど真くんは神気がありすぎて心臓の驚き方が私とは比べ物にならなかった。この時点で違う」
翠花姉は潜在的神気量は10万と言っていた。だが俺には1000万宿っている。そこだけで大きな差があるらしい。
翠花「しかも真くんは神話能力持ち。私たちとは能力の点で見ても潜在的神気量という点で見ても差がありすぎる。このままじゃ…真くんの体は悲鳴を上げるよ…」
翠花姉は俺の心配をしてくれている。何かいい方法はないのか…?
蓮乃「このやり方は一般的になっているんですがね…。この本に書いてありますし…」
蓮乃さんは持っている本を翠花姉に見せた。表紙にはいかにも脳筋そうな男がポーズを決めていた。
翠花「なになに?『神気の増やし方!神気を増やすには能力と精神の組み合わせる!どんな手順でやるのかわからないそこの君に!僕から教えてあげよう!』…この本…胡散臭すぎない?」
蓮乃「そ…そうですか?」
翠花「うん。…ん?」
真「翠花姉?どうしたの?」
翠花「いや…少し気になることがあってね…」
なんだろうか。表紙を見続けている。この脳筋男になにかあったのだろうか。
翠花「この人の目…絶眼だ。片目だけだけど…」
蓮乃「本当ですか?あ…確かにそういわれてみれば…そう見えなくもないような…」
翠花「この人が絶眼なら…載ってるかも…」
真「なにが?」
翠花「確証はないけど…絶眼を持ってる人間は平均的に神気量も多いとされている。そういう研究データがあるくらいには。まあ実際は私は見たこともないし絶眼だらけを集めたわけではないと思うけど…。そういうデータすらあるんだから増やし方も私たちとは違うのがあるはずなの…。この本には絶眼を持ち、潜在的神気量が多い人間を対象にした増やし方が…」
データすらもあるのか。この世界は。翠花姉がとても協力的でよかった。じゃなければ俺は仮に神気を増やすことができても、それなりの痛みを伴う生活を送ることになるんだからな…。
翠花「ごめん真くん。今日は一旦この本を読んでいい?」
真「え?あ、う、うん。でも…その本」
翠花「この本それなりに厚いってのはわかってる。でもそこは心配はいらない。私にまかせて」
蓮乃「真くん。今日は一度終わりにしましょう。翠花さまは一度本の世界に入るとすべて読み終わり、その内容をまとめるまでは口をきいてはくれません。それくらい集中するんですよ。翠花さまは」
翠花「うーん…否定されてるような?されてないような?まあいいや。真くん。この本を見て、明日神気を増やすのを教えれるように頑張るから、任せてね」
真「うん。お願い!」
翠花姉は本を持ち、道場を出た。俺は道場にて蓮乃さんと一緒にいた。
蓮乃「神気に関しては翠花さまに任せるとして…真くん。なにかやりたいことはありますか?」
突然のお誘いだ。どんなことが今の俺には可能なのかわからない。だからこそ変に言うことはできないんだ。
真「えっと…蓮乃さん。逆に今の僕は何が可能なんですか?」
蓮乃「別にいろんなことができます。基礎的な身体づくり、武術に関することなどがあります。別にトレーニングのみではありません。テレビを見たり、掃除をしたりとか。本当にいろんなことができます」
鍛練に関することではないのか。てっきり今は鍛錬をやっていたから鍛錬についてのみだけと思っていた。
真「鬼ごっことかって許されたり?」
蓮乃「しますよ。今の時期から体力づくりは大切です。ただ…少しいじった鬼ごっこにしましょうか」
真「少し…いじる?」
ボール鬼とか氷鬼とかなのか?警察と泥棒がいるやつか?人数が足りないだろうがな。何をするんだ?
蓮乃「神気を出している状態での鬼ごっこです。道場内で神気を出しながら鬼ごっこをします。よろしいですね?」
真「神気って…自分増やせないよ?」
蓮乃「潜在的神気で大丈夫です。1000万なんて普通の人からしたらありえない数字なんですよ?私はそれ以上も可能です。というよりこの鬼ごっこで知ってほしいんことがあるんです」
真「知ってほしいこと…」
蓮乃「今からやる鬼ごっこ。先に言っておきます。全力疾走はおろか半分くらいのスピードを出せればいい方です。頑張ってくださいね」
神気を出した状態にしてるだけなのにスピードがそんなに半分くらいになるものなのか?わからないがやってみるが吉だ。
真「じゃあ神気出すね。は!」
蓮乃「若干ですが早くなりましたね。先ほどよりも早い。これは毎日練習してどんどん早くしていきましょう。私も出してと…」
そんな軽く言いながら蓮乃さんは神気を出した…。その神気の圧は…俺なんかよりも圧倒的だ…
蓮乃「まあ…これくらいですかね」
真「す…すごい…」
蓮乃「大体10億くらいですね。これはまだまだ出してない方です。2割も出してない」
翠花姉といい蓮乃さんといい神気量がおかしい気がする。これは鍛錬次第で変わることを願おう。うん。2人に圧倒されるのはきついんだ。メンタル的に。
蓮乃「では…始めましょう。どちらが鬼をやりましょうか」
真「じゃあ蓮乃さん鬼でいい?」
蓮乃「わかりました。では少し離れて…これくらいでいいですかね」
蓮乃さんは大体10メートルくらい離れている。この距離なら全然いけるぞ。
蓮乃「では…よーい…スタート!」
蓮乃さんは近づいてきたんだが…俺が動こうとしたときにはすでに蓮乃さんは俺の背後にいた。早すぎる。
真「え!?」
蓮乃「タッチ。捕まってしまいましたね」
スタートして…2秒くらいか?捕まってしまった。この人のこのスピードはおかしい。1秒で10メートルを潰せるスピードを出したのか?理解が…追い付かない…。
蓮乃「なぜ私がこれほどのスピードを出せるのかわかりますか?」
真「ううん…。全く」
蓮乃「これも神気を使えれば可能です。今の真くんでも可能です」
真「本当?」
蓮乃「もちろんです。神気を纏っているということは体に神気が流れているということ。神気は肉体を活性化させ、脚力や腕力、握力等が強くなります。強くなる具合は流している神気量に比例する…というわけではありませんがね」
真「え?」
蓮乃「神気による身体能力の向上は神気量が多すぎてはいけないんです。といっても体を壊すとかではありません。上限を超えても構いませんが、身体能力に還元できないんですよ」
身体能力に還元できない…。必要以上に流しても意味がないのならやらなくていいんだな…。いらない分を流す必要もないしな。
真「今の僕はどれくらいなら還元に引っかからないかな?」
蓮乃「それはわかりません。増え幅が少なくなるところがあるんですよ。そこまでは流して大丈夫なんです。向上しているというのを認知できるまでは考えなくて大丈夫です。今の真くんなら大丈夫でしょう」
身体能力の向上がどこまで上がるのかはわからないが、さっきの蓮乃さんの動き(見れてはいないが)は俺には瞬間移動と言っていいスピードだった。蓮乃さんは10億出していてもきつくはなさそうだ。まだ上限じゃないんだろうな。
蓮乃「神気を出している状態なら真くんでも上がっていると思いますよ。少し動いてみましょう」
真「うん…ていってもどれくらいなら動いていいの?」
蓮乃「神気の密度にもよりますからね。真くんは密度を上げることはできている。初歩の技術ではありますが説明していなくてもできているあたり、才能はやはりありますね。さすがです」
真「あ、ありがとう」
才能に関してはスサノオや翠花姉も言っていたな。両親の才能がすごいんだろうな。今の俺にはどれくらいすごいのかが理解できていないが。
蓮乃「では軽くジョギングのように走りましょう。神気量は今のままで大丈夫です。スピードは一旦今できる最速を目指しましょう」
真「大丈夫かな?いきなり壁にぶつかったりしない?」
蓮乃「大丈夫です。もしもを起こさないために私がいるのですから。心配せず、精一杯やってみてください」
真「わかった。やってみるよ」
蓮乃さんも神気を再び纏った。俺のサポートをしてくれると言ってくれたんだ。胸を借りる気持ちでやろう。俺は神気を出しっぱなしな状態だったから、そのまま再開した。
真「じゃあ…いくよ!」
蓮乃「いつでもどうぞ」
俺はジョギングをする程度に軽く足を踏み込んだ。普段通りに。そのスピードはいつもよりも早く、初めての感覚で視界に脳が追い付かない。
真「うわ…早い…。…!やばい!ぶつかる!」
俺は道場の壁にスピードを落とすことなく突っ込んでいき、今にも俺は壁にぶつかりそうだった。
蓮乃「あら、結構早いですね。さて…」
真「うわ!」
俺の視界がいろんな方向に回転をした。壁にぶつかった感覚は…ない。何が起きたんだ?今の視界は…!?宙に浮いているのか?
蓮乃「大丈夫ですか?結構スピードが出てましたね。最初でこれなら期待大です」
真「そ…そっか…はあ…」
俺は正直このスピードに慣れるのも苦労しそうだ。けど鬼ごっことしてなら最悪は慣れることができそうだ。蓮乃さんが鬼で壁にぶつかりそうなときにタッチしてもらえれば被害は減らせるかもしれない。
真「これに慣れる…か。どうしたらいいかな」
蓮乃「この状態の鬼ごっこを継続していきましょう。慣れるにはやはり数です」
やはりそうだな。慣れこそ一番強いんだ。それはもう前の世界でもこっちでも体験した。
蓮乃「この鬼ごっこは一旦は終わるとして…次はいかがしますか?」
真「もういいかな…屋敷に戻ろうよ」
蓮乃「そうですね。結構疲れましたよね。夜ご飯はなににしますか?」
真「うーん…軽く食べれるものがいい。今なんか体が重くて…」
蓮乃「神気を使うと体が重くなるのも分かりますよ。神気が体をサポートしていた。それが生身の状態になる。体の負荷は少なからずきつくなりますよ」
神気が流れることでいろんなメリットはあるがその分デメリットもあるんだな。というかこの手の体に起きる変化とかの知識蓮乃さんありすぎじゃないか?本当になんでも知ってそうだ。
蓮乃「ではそうめん辺りにしましょう。軽くなら…それくらいですかね」
真「じゃあお願いしていい?」
蓮乃「お任せを」
俺と蓮乃さんは道場を出て、リビングに向かった。翠花姉は未だ部屋から出てきていないようだ__




