第18話 鍛錬5 神気の増やし方
真「んあ…」
俺は眠っていたようだ。夜ご飯以降の記憶が全くない。俺は目を開けた。そこに飛び込んできたのは…
翠花「すー…すー…」
寝ている翠花姉だった。俺はもうこの光景に慣れていた。もう驚くこともなく俺は目覚めた。俺は昨日翠花姉からもらった能力の本を探した。だが…いくら探してもなかった。部屋が暗いのもあるだろうが、あれだけ分厚い本を見逃すものではない。
真「能力の本は…あ、そっか。リビングに置いたままだった」
リビングにあるのを思い出した俺は部屋を出てリビングに向かった。普段はドアから漏れる光があった。だが今日はその光はなかった。蓮乃さんも起きていないのだろうか。俺はリビングのドアを開けた。机の上には能力の本が置いてあった。その本があるのを確認した俺は机に座り、いつものルーティーンまでの間ずっと読んでいた。
真「火系の能力の目の色は赤色…。極めることで目の中に火のようなマークができる…か。扱う…名前かな?この『炎球』ってのは。他にもあるな。『火炎球』ってのもある」
似たような名前だが何の違いなのかはわからない。だがそんな名前の文字列が左ページにずらっと書いてあった。正直目が痛くなるほどの量だ。右ページにはその能力の歴史が書いてあった。能力戦闘に歴史はいるのか?
真「歴史なんて…全くわからないよ…。なに?帝光暦150年に初めて能力を持つ人間の存在が確認された。その能力者は他の能力者との戦闘で扱った自身の能力によって肉体が燃え焼死した…。なんだこれ」
ただの自爆で死んだ人間のことをこんな分厚い本の最初の歴史説明でするのかよ。もしかしてずっとこんな内容の歴史がこの後の能力の説明にあるのか?
真「翠花姉は…こんなのを読み切ったのか…。もしかして…暇人?」
???「それは違いますよ」
真「!?」
俺は突然の声に驚き、後ろにいる声の主の方向を向いた。そこにいたのは…
蓮乃「暇人ではありません。歴史を知ることも大切なことなんですよ」
蓮乃さんだった。彼女が起きてきたのだ。
真「歴史を知ることってそんなに大事なことなの?」
蓮乃「ええ。昔にいた能力者のいろんな失敗を見て、自分はそんな失敗をしないようしするぞといういわば反面教師のようなものでしょうか」
反面教師で死人が出ているが…故人のことを悪く言うのはあまりよくない。何なら彼らがいるからこその今の火系の能力者がいるのだろうからな。
蓮乃「しっかりと歴史を知っておいて損はありません。まあ能力自体の性質を知ることの方が大事ですがね。さて、ご飯の準備をしますね」
真「うん。お願いします」
そんな会話をしていたらドアが開かれた。翠花姉が目をこすりながら入ってきた。…前もこんなことがあったような。
翠花「蓮乃~私の分もお願い~」
蓮乃「承知しました。机に座っていてください」
翠花「はーい」
真「翠花姉、おはよう」
翠花「うん。おはよう。早速読んでるんだね。能力の本」
真「うん。この本に書いてある歴史って覚えるべきかな」
俺は翠花姉に挨拶をして質問をしてみた。
翠花「私歴史はあんまり覚えてないかな…。火の能力を見て、あ、これは覚えなくていいやつだ。ってわかった。だから真くんも歴史はいいよ」
…覚えなくていいのかよ。蓮乃さんは歴史を知ることで~みたいなこと言ってなかったか!?俺は疑問に思い蓮乃さんの方を見た。…蓮乃さんは包丁の音が大きくなっていて、私は知りませんと言わんばかりの包丁使いだ。
翠花「なにかあった?蓮乃」
蓮乃「いえ、なんでもございませんよ」
真「ふーん…」
翠花「真くんも。なにかあったの?」
真「いや…なんでもないよ」
翠花「そ、そっか?まあいっか」
翠花姉は何が起きたのかわかっていないようだが…まあいいと言ってるし…いっか!
蓮乃「朝ごはんです」
蓮乃さんは机に朝ごはんを持ってきてくれた。今日は…パンか。そしてヨーグルトに牛乳。大厄災の前、両親とよく食べたものだ。
両親は…今どうしてるのだろうか。あのビラが配られても俺は翠花姉たちと共に稽古をしたり買い物をしている。俺はいつまでここにいていいかはわからない。だが、蓮乃さんが言うには俺が元々いたシーバンス帝国は今壊滅状態。そして治安も悪いとのことだ。そんな状態の帝国に今の俺を返しても死ぬ。そう思った翠花姉が俺の稽古をしてくれているんだ。しっかりと稽古を受けなければな。そして稽古で強くなって両親に再会するんだ。
3人「いただきます!」
俺たちは朝ごはんを食べた。そういえば…
真「翠花姉。僕って夜ご飯の時寝ちゃってたよね?」
翠花「そうだね。寝落ちって言い方が正しかったね」」
真「でも起きたのは翠花姉の部屋だったけど…誰が翠花姉の部屋に連れてってくれたの?」
翠花「もちろん私。一緒に部屋に行けばいいからね。真くんを抱えながらだったかな」
蓮乃「しかもお嬢様だっこ」
俺は顔が赤くなった。いくら寝てしまっていたとはいえ、翠花姉にお嬢様抱っこをされたという事実があるということを。
翠花「あはは、顔赤くなってるね。大丈夫だよ。部屋に行くついでだったし真くんはまだ軽いからね」
真「今度からは…気を付けるよ…」
翠花「別にいいんだけどな~。真くんが嫌なら言ってくれればいいから。ま~寝てたら…運ぶけどね」
そこは変わらないのかよ。別にリビングのソファに毛布をかけて寝かせてくれたらいいものではないのか。一緒に寝るこっちの身にもなってくれ。たまーにお腹締め上げられるんだぞ。めっちゃ痛いし。
蓮乃「真くん。そろそろ準備をしますか?」
真「うん。そろそろやろうかなって思ってた。着替えてくるよ」
翠花「私も準備しないとだね。いそご」
真「翠花姉はゆっくりでいいよ。翠花姉は準備早いからなんなら越されそうだよ」
翠花「そう?じゃあゆっくり準備をしますか。先にやっておいで」
真「うん」
俺はご飯を食べ終え、リビングを出た。歯磨きをし、寝ぐせを直し、道着に着替え、朱雀様に手を合わせた。前と同じ感じで朱雀様に独り言のような経過報告をした。
真「朱雀様。僕ね、神気を練りだすことができたの。しかも2人が言うには結構規格外なレベルの潜在的神気があったっぽくてさ。1000万もあったんだよ。これからその神気を増やす稽古なんだ。頑張るね。今日は翠花姉来る前に失礼します」
朱雀様に独り言のような経過報告をし、俺は道場に向かった。翠花姉と蓮乃さんはまだ来ていないようだった。改めて思うのだが、この道場は結構広い。そして木材を基調としているが年季が入っているのだろう。独特な色をしているのがわかる。それだけこの屋敷は古い時からあるんだろうな。そんな屋敷を見ていたら翠花姉と蓮乃さんが中に入ってきた。
翠花「お、いたいた。じゃあ始めようか」
真「うん!よろしくお願いします!」
翠花「よし、今日は神気を増やすこと。先に言っておくと神気が一気に増えるわけじゃないからね。徐々に徐々に増やすそんな感じ。増え幅は人それぞれだけど真くんは結構早く増えるのかも?潜在的神気が多いからね」
潜在的神気が多ければ多いほど増える量も多くなると前に言っていたような覚えがある。まず目標としていることはある。神気を増やし、スサノオを発現することだ。
翠花「まずは神気の増やし方を教えるね。ここもイメージが大事だよ」
真「神気はやっぱりイメージが大事なんだね」
翠花「そうだね。前みたいに水鉄砲をイメージしてもらおうか」
真「水鉄砲をイメージ…うん。できたよ」
翠花「そしたら、頭の中でその水鉄砲がグレードアップする。そんな感じに思ってもらえればいいかな」
水鉄砲をグレードアップさせるのか…ショットガン?スナイパーライフル?まあとにかくそれらをイメージすればいいか。
真「うん。できたよ」
翠花「できたら、それを前と一緒で水鉄砲を撃つみたいな感じ」
真「打つ…か…。ふ!」
俺はちゃんと水鉄砲をグレードアップさせ、それを打つイメージをした。だが扱えた神気量は前と同じだった。
翠花「やっぱりこうなるよね…」
翠花姉はわかっていたと言わんばかりの言い方だった。これは難しいことなのだろうか。
蓮乃「これに関してはイメージよりも神気を増やすのに必要なことを先に話す方がいいのでは?」
翠花「あー…。そうかもね。説明は私苦手だからお願いしていい?」
蓮乃「承知しました。真くん。まずおさらいですが、神気というのはどうやって練りだしますか?」
真「能力と精神を合わせることじゃないの?」
蓮乃「ええ。その通りです。ですがそれは基礎中の基礎。それは潜在的神気を外に出しているだけ。ですがそれでは神気は増やせない。なぜかわかりますか?」
真「えっと…」
神気は能力と精神を組み合わせてできる。これは覚えた。だが潜在的神気を外に出しているだけで増やせてはいない。どうやるのか…見当もつかない。
真「わからないよ…」
蓮乃「それはですね、君の精神と潜在的神気量に追いつけるだけの能力の器が君にはないからなんです。難しいですね。これは」
全くわからん。どういうことか…実際にあるもので教えてほしいな…
真「蓮乃さん。実際にあるもので例えてほしいな…」
蓮乃「そうですね…。コップに例えればわかりやすいですかね」
真「コップ?」
蓮乃「はい。まずコップというのは水を汲むもの。そうですね?」
真「うん」
蓮乃「水を神気、能力をコップとしましょうか」
翠花「うん?じゃあ精神って何を表すの?」
確かにそうだ。神気は能力と精神を組み合わせたもの。その中の精神に値するものがないじゃないか。
蓮乃「それは…あ、着色料としましょう。水を神気、コップを能力、着色料を精神としましょう。よろしいですね?」
真「うん」
蓮乃「あ、あと補足で水は水道から出るものとします。そしてその水は結構勢いがある。あと着色料も無限に出るものとします。真くんなら精神力も申し分なく、神気も才能ありですから。この条件の方が理解しやすいかと」
色々補足はあるが、それは俺のことを理解してくれているからこそ、そしてわかりやすく教えるためなんだろう。
蓮乃「ではそれらを使って説明しますね。頭の中でイメージしてください。蛇口をひねり、水を出します。そして出た水に着色料をかける。そうすると水が…まあ緑色にしましょう。緑色の水が流れている状態です。その水をコップで汲む。ここまではいいですか?」
頭では理解はできている。ここまではいいぞ。
真「うん。大丈夫」
蓮乃「ではその水を汲みすぎるとコップはどうなりますか?」
真「こぼれるよね」
蓮乃「ええ。それはなぜか。コップには容量が決まっていますよね。その可能な容量を超えるとこぼれる。想像はしやすいかと思います。これを神気に置き換えてみてください」
真「えっと…。まず、能力と精神を合わせて元々ある潜在的神気を出すよね」
蓮乃「まあそうですね。つまり今真くんは1000万ある状態ということ。ここからやってみましょう」
真「わかった。出ている神気を水として…その出ている神気に精神力を足して…あれ?能力が使えないから神気増やせなくない?」
もう一度考えてみよう。今俺には神気が出ている状態で…その神気に精神力を出す。能力という名のコップに神気を…いや、神気があっても注ぐコップがない。どうするんだ?
蓮乃「いいところに気づきましたね。ですが…能力自体が真くんにはない。そうでしたっけ?」
いや、俺にはスサノオという能力はある。だが神気が足りていないから扱えないのだ。
真「いや、スサノオがあるよ」
蓮乃「ええ。君には能力自体はある。発現するために神気を増やさなければいけない。ではどうするか…
当たらなくてももちろん大丈夫です。一度考えてみてください」
翠花「私もそれは難しかったな。そんなことできるんだってのを知らなかったし」
翠花姉でもわからないことか…どんなことだ?能力はないから使えないし…。あ、いいこと思いついたぞ。
真「神気に固める薬みたいなの入れるんじゃない?」
翠花「凝固剤の役割を入れるってことか…」
蓮乃「うーん…。惜しいような惜しくないような…。その場合、神気の塊ができるだけで量は変わっていません。というかこの考え方は…あまりよろしくないですね」
真「そうなの!?」
蓮乃「はい。それは神気の性質そのものを変えているんです。しかも薬だと外部からの力みたいになりますね。それは違うのですよ。性質を変えるのも技術としてありますが、増やす方向ならやってはだめです。ですが固めるというのも間違ってはいないので半分正解半分間違い。いい線いってますね」
真「よかった。でも固めるのはだめなんだね?」
蓮乃「はい。今は増やすことに焦点を当てている。それはまずいです。正解はですね…」
真「うん…」
蓮乃「能力に準ずるものの器を作り、そこに神気と精神力を入れるのです」
…難しいな。器に神気と精神力を入れる。ここはいい。だが…最初の能力に準ずるものの器を作る?何を言ってるんだ?
真「……ん?」
蓮乃「理解が難しいですね。これは。詳しく説明していきます。しっかりと聞いてくださいね」
真「うん…」
蓮乃「まず、能力を神気で覆うんです。仮の器となるものを神気で作る。どんな形でもよいですが…まあコップを意識するのがよいですね」
真「能力を…神気で覆う?自分には能力もないのに?」
蓮乃「翠花さまは言っているはずです。能力は目を見ればわかると。目を神気で覆う。一点で覆うこと。これは技術ですので大丈夫です。体に纏えばどこにあるのかわかります。一度神気を練りだしてください」
なんというか…さらっと言うんだな。こういうこと。大事そうなことをさらっと言うのは2人とも共通っぽいな。慣れるしかない、こればっかりは。それよりも、神気を練りだすんだ。
真「ふー…は!」
しっかりと神気を練りだすことができた。前のように体を神気が駆け巡るのがわかる。
蓮乃「慣れたものですね。では…目線を体に向けてみてください」
確かに神気を出している状態で手は見たことはある。だが体をみたことはないな。俺は体を見た。心臓らへんか?体の真ん中だ。そこには神気の中にある少し赤色に輝くものがある。
蓮乃「ありました?赤く光るものが」
真「うん…え?」
今蓮乃さんは赤く光るものと言ってたが…まさか見えているのか?
蓮乃「真くんに見えることは私たちにも可能です。真くんよりも技術がありますから見ることも可能なのですよ。さて、見ることができたと思います。では能力があるところを覆うように神気を流してみてください。君は神気を出すときに渦を作ると言っていました。ではその渦を止め、その神気を固めて器のようにする」
翠花「蓮乃…固めるんじゃん」
蓮乃「そうでした…器を作るときに神気固めますね…。ではその技術も教えます…といってもこれは簡単です。今の神気は…水と思ってください」
真「神気は水…」
蓮乃「はい。固めるといことは…」
真「氷にするってこと?」
翠花「そういうこと。体に流れてるから今は液体だけど、それを能力がある部分の神気を氷にして、氷のコップを作るイメージかな?」
蓮乃「その通りです。能力のある部分に神気を流し、それを固めることでコップができる。しかもそのコップは能力の性質を帯びています。そのコップに元々流れている神気をコップに注ぐことで能力、神気、作るぞ!という精神が合わさりました。これで晴れて神気を増やすことができるようになります」
かなり高度なことをしていることはわかった。だがそれをしなければ俺は神気を増やせはしないんだ。俺はやってみせるぞ。そう決意した俺だったが、この器を作るという工程。これをすることに四苦八苦することになる__




