第15話 鍛錬4 神気の練り出し
俺は翠花姉の部屋に行く最中にこんなことを聞いてみた。
真「ねえ翠花姉。僕ってどれくらいの間寝てたの?」
翠花「大体1日半だね」
真「1日半も!?」
その事実に驚いた。正直そこまで寝ているとは予想していなかった。
翠花「うん。本当に1日半は寝ていたよ。どうして?」
真「いやね、さっき僕スサノオに会ったって言ったじゃん?」
翠花「うん。こころの世界で、でしょ?」
真「うん。体感だけどスサノオと会話したの1時間かかってないくらいなんだ。だから現実だとどれくらいの時間が過ぎていたのかなって気になって」
スサノオと話したのは30分くらいかなって思っている。時間差がどれくらいあるのかが気になるんだ。そんな会話をしながら部屋に入り、そして俺と翠花姉はベッドに入って会話を続けた。
翠花「なるほどね。こころの世界と現実の時間差がどれくらいあるかってことだね?」
真「うん」
翠花「時差はほぼないと思っていいよ」
真「えっと…つまり?」
翠花「こころの世界でスサノオ様とどれくらい話したのかを私は知らないけどね、私が沖田と会話したのと同じなら時差はない。どれくらい会話したの?」
真「大体…30分くらいかな?」
翠花「だとしたら予想できる時間は30分~1時間くらいだと思うよ。現実で過ぎた時間は」
真「てことは本当に1日半近く僕は寝ていることになるんだ…」
1日半も寝ていた…いや、正確には気絶という方がいいのか。神気が体の中に来た時突然意識が飛んだ。
翠花「神気はそれくらい扱い方を誤ると危険なものなの。私のミスもあったけど、真くんは元々ある神気に体が追い付かなくて長い間眠っていたのだと思うよ。そう考えるのが自然かな」
真「でもビビッていたら扱えないもんね」
翠花「そうだね。真くんには才能がある。ある才能を潰すわけにはいかない。今度は神気の暴走が起こらないように慎重に進めていくからね。明日からの鍛錬頑張ろうね」
真「うん!明日は頑張るよ!」
翠花「じゃあ寝よっか!寝ることが一番いいからね!」
真「うん!おやすみ!翠花姉!」
翠花「おやすみ。真くん」
翠花姉はそう言い電気を消した。
真{スサノオを発現するのにどれくらいの神気がいるかわからない。だけど暴走じゃなくてしっかりと自分の力で扱えるようになれば力になってくれるとスサノオは言っていた。長い時間がかかってでもやってやる。神気を会得してみせるぞ}
そう決意し、俺は目を閉じた。
朝が明け、俺は目を開けた。横を見ると翠花姉は寝ていた。前のように腕を回されているわけではなかったため、ベッドから出ることができた。翠花姉の部屋をでて、リビングに向かった。すでにリビングには光が灯っていた。ドアを開けると蓮乃さんがいた。
真「おはよう。蓮乃さん」
蓮乃「おはようございます。翠花さまよりも早起きですね。まあ彼女はそこまで早起きというわけではありませんがね」
真「そうなんだ。なんていうか意外かも。いつもしっかりとしているイメージがあったからさ」
蓮乃「翠花さまはそこまで完璧な人間ではありませんね。はい。おそらく真くんがいるから完璧に見せようとしているのかなと思っています」
完璧な人間なんてこの世にいないと思っている。どこかしらに抜けがある。それでこそ人間と俺は思う。
真「それはそれで嬉しいよ。血がつながってないにも関わらず、こんなにお世話してくれるんだもん。完璧お姉ちゃんってよりは少しは隙があった方がいいよ」
蓮乃「それもそうですね。さて、ご飯にいたしましょうか」
真「うん」
俺と蓮乃さんは机にある朝ごはんを食べた。朝ごはんを蓮乃さんと食べながら会話をしていたとき、俺は一つ思い出した。
真「そういえば蓮乃さん。前に言ってた能力のことなんだけど…」
蓮乃「能力の構造の話ですか?」
真「うん。後日説明しておくって言ってたし聞いておこうかなって」
蓮乃「あまりおすすめはしません。構造の話を知って能力が扱いやすくなるわけでもないですし、神気を練りだしやすくなるわけでもない。なんならこの話を聞いて神気を練りだすのに支障をきたす可能性もあります。神気の練りだし方が安定し、潜在的神気の大半を出せるようになってから教えるのも悪くはないでしょう」
そんなに複雑なのか…。支障をきたす可能性もあるらしいし、ここは素直に言っておこう。
真「ならやめておこうかな」
蓮乃「それがいいでしょう。今は神気を練りだせるようになることが第一ですからね」
真「やっぱり神気を練りだすのって難しい?」
蓮乃「一朝一夕で何とかなるものではないと思ってもらっていいでしょう。1日目でこれが神気かな?となれればいい方です。そうなってから神気を感じ取り、神気を認識し、そしてしっかりと練りだす。これが過程ですかね。翠花さまでもこれらをこなすのに丸2日かかっていますから。丸2日でも早い方です。私は5日かかりました。真くんはどれくらいの時間がかかるのでしょうね?」
やはり神気は難しい。2人でさえ時間がかかっている。俺は1週間とかそこらあたりでいけたらいい方かな。
真「わからないけど、自分ができる最大限やるよ。けど翠花姉が慎重にやるって言ってた。また暴走するといけないからって」
蓮乃「それに関しては大丈夫ですよ。暴走することはおそらくない」
真「そうなの?でも翠花姉がそう言ってたんだけど…」
蓮乃「初めて教えるのが真くんで初めての弟子。もちろん慎重になるのも分かります。ですが暴走する条件というのを彼女はまだ知らない。知らないことがあるからこそ慎重になる。これは正しいです。ですが私は知っている。翠花さまが慎重になっていても私がもう少しやっていいということもできますのでね」
真「今さらっと言ったけど暴走の条件ってなに?」
蓮乃「暴走の条件というか暴走がおきてしまう原因は2つあります。一つは真くんにもあったように潜在的神気が外部からの神気に驚き暴走してしまうケース。ですがこれは一つの成長痛のようなものですね」
成長痛だと?ということは経験するべきものなのだろうか?
真「成長痛?どういうこと?」
蓮乃「神気を外部から取り込み、暴走状態になる。これが一種の成長痛としましょう。これを乗り越えることができたならば一つの喜ばしいことが待っているのです」
真「喜ばしいこと…。それってどんなの?」
蓮乃「それはですね。潜在的神気のリミッターが外れるんです」
リミッターが外れるというのはどういうことだ?言葉通りならそれこそ暴走状態な気がするのだが…
蓮乃「リミッターが外れるということ。制御機能が外れるのではありませんよ。潜在的神気というビンの蓋が取れたと想像していただけたらわかりやすいんじゃないでしょうか」
真「…ってことは…自分の潜在的神気は今蓋が開いている状態ということ?」
蓮乃「そうですね。もうすでに神気の蓋は開いている。神気を練りだすことができれば、今度は自分の意思で神気を扱うことができると思いますよ。今日の鍛錬、頑張ってくださいね」
そう言ってもらえるとモチベーションが上がる。教育者としてこの人は素晴らしいな。そんな風に思っていると…ドアが開いた。翠花姉が目をこすりながら入ってきた。
翠花「おはよ~」
蓮乃「おはようございます。翠花さま」
真「おはよう。翠花姉」
翠花「お、二人とも朝ごはん食べるの早いね。私も食べなきゃ」
そう言い翠花姉は椅子に座り、ご飯を食べ始めた。
翠花「真くん。いつものルーティーン済ませておいで。私もなるべく早く済ませるから」
真「わかったよ。蓮乃さん、ごちそうさまでした」
蓮乃「お粗末様でした」
俺は歯を磨き、寝ぐせを直し、朱雀様に手を合わせた。すべてのルーティーンを終え、道着に着替え、翠花姉と蓮乃さんを待っていた。だが2人は準備に時間がかかるのか来るのが遅かった。待っているのが暇だった俺は朱雀様の祠に向かった。そして俺は独り言のようにつぶやいていた。
真「どんな神様なのかも知らないけれど、翠花姉のいる屋敷で祀られているようなすごい神様なんですよね。朱雀様はきっと。これから僕は神気の鍛錬です。僕は皇帝になるって決めたんです。そのための鍛錬です。どこかで見ていてくださいね。朱雀様」
そんな独り言をつぶやいていたら翠花姉たちが俺を呼びに来た。
翠花「あ、いたいた。おーい!真くーん!」
真「あ、翠花姉だ。では行ってきます。朱雀様」
俺はそう言い翠花姉のもとに向かった。
翠花「もう!朱雀様の祠にいたずらしてないよね?」
真「うん。してないよ。朱雀様の祠ってどんなのなのかなって見てただけだよ」
蓮乃「触らぬ神に祟りなしという言葉もあります。軽率な行動は控えた方がよろしいですよ?朱雀様も神様。無礼を働いてはいけませんよ」
真「はーい」
そんな会話をしながら俺たちは道場に入った。
翠花「さてと、今日からの稽古は神気を実践で扱えるようにするよ。まず、神気の練りだすこと。これができないと神気は扱えないからね。最初は真くんがどこまでできるのかを見ようか。イメージも何も教えないよ。前に言った水鉄砲を意識してやってみるのは大事。これだけは言っておくよ。さ、やってみて」
蓮乃「これは大事ということだけ先に伝えておきます。無理をしないこと。そして呼吸をしっかりとすること。この2つだけは忘れないでください」
真「わかった」
無理はしない。自己管理ができてこそ一人前というものだ。そしてしっかりと呼吸をする。どんな効果があるかは知らないが先人の教えだ。しっかりとやろう。水鉄砲のイメージで…しっかりとやるんだ。
真「ふー…ふー…」
しっかりと呼吸をし、水鉄砲のイメージはできている…だが全くできない。ひねり出そうとうめき声にも近いような声を出しているが、それでもできない。神気を練り出すというイメージが全く湧かない。
翠花「真くん。一旦ストップ。やっぱり最初は難しいよね」
真「はあ、はあ、全…然できる…気がしないよ…」
蓮乃「先ほども言いましたが一朝一夕でなんとかなるものではありません。それにイメージができているだけで実際に流れているのを感じなければ初めての人は無理でしょう。ですがここで挫折するよなことはありません。できないことが普通なのです。逆にここで成功したら私たちが挫折しますね。はい」
翠花「真くん。前と同じように私が神気を流すよ。蓮乃から聞いてると思うけど、真くんの潜在的神気はもう開いている。だから暴走することはないよ。だから安心して私の神気を受け入れてね」
真「わ…わかった」
疲れてはいたが、鉄は熱いうちに打て、という言葉もある。今やればもしかしたら…
蓮乃「翠花さま、真くんは今疲れています。どうやってやればいいかわからないものに向かって力を込めた。変に力が入っていましたので疲労がすごいです。少し休憩をはさんだ方がいいかと」
翠花「無理はさせちゃいけないもんね。じゃあ呼吸が整ったらにしよう」
真「わかりました…」
正直この休憩がなければやばかったかもしれない。無理するのはよくない。無理して体調を崩すくらいならしっかりと休憩をして万全の状態でやるのがいいと思うんだ。ある程度休憩し、俺は呼吸が整い、動けるくらいにはなった。
真「翠花姉。もう大丈夫だよ」
翠花「よし、じゃあいこうか。神気を流していくよ」
真「わかった」
翠花「神気が体の中でどんなふうに動いているかを感じてね。ふー…は!」
翠花姉の掛け声とともに、俺の体をなにかが動き始めた。前のように熱かったり、体が重いということはなく、体中を流れているこのなにかが気持ちよくすら感じた。
翠花「どう?感じる?体の中に流れているもの」
真「うん。わかる。なんていうか…体に浸透していってるような気がする」
蓮乃「翠花さま、一度止めましょう。他人の神気を長時間流し続けるのは体に毒なのです」
翠花「わかった。止めるね」
胸部あたりから何かが流れているというのを感じ、あふれ出る何かを俺はつかもうとしていた。正直、翠花姉に神気を流してもらってからずっと沸騰したような動きをするなにかが体を巡っていた。おそらくこのなにかとは神気だ。わかる。体にとって違和感もないほど、この体内を巡るものは心地が良かった。
翠花「さてと、一旦神気を流してみたけどどう?」
真「なんていうか…気持ちいね。神気が流れているのって」
蓮乃「気持ちのよい感覚…私は初めてはそうは思いませんでしたが…」
翠花「私も。真くんにとって神気は心地よいものなのかも。…可能性はあるかも…。真くん。もう一度神気を練ってほしいの。呼吸を忘れずに、そして無理はしちゃだめだよ」
翠花姉は可能性はなくはないといったような顔で俺にそう言った。だが、不思議と俺はその要望がなにか確信を得ているかのように感じた。俺も神気がどんなものかわからないが、できそうな気がする。
真「わかったよ。翠花姉。それじゃあ…いくよ!」
俺はその声と共に、大きく息を吸い、胸部から渦ができるようなイメージをし、その渦を爆発させるイメージをした。そして俺は……やってみせたんだ…!
神聖なる力が体中を駆け巡り、体中から光が溢れ出た。その光はまるで俺を中心に世界が動くと言わんばかりの力強さを秘めていた。
真「どうかな?翠花姉、蓮乃さん」
翠花「うそ…真…くん…」
蓮乃「ありえない…翠花さま…真くんは…とてつもない才能の…持ち主でしたね…」
翠花「うん…私が初めて神気を会得した時でさえ神気量50万くらいだったよね?」
蓮乃「え、ええ。ですが今の真くんは…翠花さまでさえも霞んで見えるほどです…」
ここまで驚く2人を初めてみた。そんなに俺はすごいことをしているのだろうか?
翠花「私も才能は十分にあったけど…それ以上だよ。真くん」
真「そうなの?よくわからないんだけどさ、神気、できてるかな?」
蓮乃「できてる?なんて言わないでください。君はほかの誰よりもすごいですよ…」
真「そうなんだ。どんな風にすごいの?」
俺は今起きている現状がわかっていないが、とにかく体が心地よい。ずっとこのままでいたいくらいに。
すごいと言われる俺はどれほどのものか。早く言ってほしいんだ。
翠花「真くん。初めて神気を会得する人のおおよその神気量の平均は1万と言われているの。私は50万。これでも神気に関しては才能があったほうなの。けど今の君の神気量はね…」
真「…ごくり…」
「__1000万」
真「え?」
翠花「真くん。今の君の神気量はね…1000万あるよ…」
待て。俺が今出している神気量が…1000万…だと…?俺はその事実が信じられなかった。俺は自分の手を見た。そこには…白く輝く1000万という文字があった。
真「なに!?この数字は!!」
蓮乃「その数字は自身の神気量を表す数字なのです…文字通り桁違いの圧倒的神気量…ですね」
2人が驚きを隠せていない…それほどにすごいものなのだろうか…。俺は自身のもつ才能がどれほどなのか。それをこれからの2人の鍛錬で思い知ることになる…




