第14話 神話能力の手引き
真「んん…」
俺は意識が戻った…辺りを見渡すが…ここはどこだ?果てしない地平線が続いていて終わりが見えない。空が赤色に染まっていて、地面が白色だ。奇妙な空間で気味が悪い。そして…強い圧を感じた。少なくともここは翠花姉と蓮乃さんがいる屋敷ではないことはわかった。どうすればいいのかわからない。
???「起きたか。我が主よ」
誰かが話しかけてきた。男の声だ…もしかして父親なのか?いや、声が父親に比べて低い。そして俺に対してこんな口調じゃない。誰だ?
真「だれ?僕に話しかけてるの?」
???「ああ。ではそちらに向かおう」
そう言い話しかけている男がこちらに近づいているかのような空気だ。それは上から下へと流れていた。俺はその空気が流れている方向を見た。すると…
???「参ったぞ。我が主」
上から剣を地面に突き刺し、その上に男がトンっという音と共に降りてきた。男は大きな剣を背負い、俺の前に立った。なんだ…この男は…圧倒的な存在感だ。
スサノオ「自己紹介が遅れたな。我が名は『スサノオ』。よろしくな」
真「スサノオ…」
スサノオだと?確か日本神話の三貴神の一柱だ。そんな神様がどうしてこんな空間にいるんだ?
真「どうしてこの空間にいるんですか?というかこの空間はどこなんですか?」
スサノオ「ここは君があの緑髪の少女から聞いた話に準ずるならば『こころの世界』という世界だな。ここは君の世界だ。そして我は君の『こころの世界』に訪問するという形でここに来たということになるな」
真「えっと…」
スサノオ「まだ現状を理解できていないようだな。ならば我から話そう。まず、我自身は君の能力だ」
真「え?」
スサノオが能力?そういえば翠花姉も沖田総司に対面したと言っていたな。だが俺は神話能力で翠花姉は偉人能力。能力が違うのに起きていることは一緒だ。
スサノオ「君は神気を緑髪の少女によって体内に入れられた。それが君にとって初めてなはずだ。神気は体内に初めて入ると、潜在的にある神気が驚き、その神気が暴走してしまうらしい。一般人は潜在的神気が少ないため暴走することはないらしいが、君は潜在的な神気が多かった。だから暴走したのだな」
真「そこと能力ってどう関係があるんです?」
スサノオ「君の父親が言っていたはずだ。君の目は『絶眼』だ。その目は神クラスの能力を持つ人間が持っていると。神気が必要量に達していない場合、使えない…と。だが我は君の前に立っている。つまり…どういうことかわかるな?」
もしかして俺は…その必要な神気量に達することができたのか?でも俺は神気を翠花姉にそこまで送られてはいない。しかも俺は暴走したんだ。神気が送られ、それに驚いた潜在的神気が溢れ出し暴走したんだ。仮に能力の開放に必要な量に達していても制御できなかったら能力を開放することはできるのか?
真「制御できていない神気でも必要量に達していれば能力の開放ができるんですか?」
スサノオ「それは我が君の目の前に立っていること。それが答えだ」
真「じゃあ僕は能力を発現することができたんですね!?」
スサノオ「そうなるな。だがまだ喜ぶのは早いな」
真「え?だって能力であるスサノオが目の前にいるんだから…」
スサノオ「それはこの世界に限っての話だ。一つ勘違いを君はしている。我が目の前に立っているのは神気量が達していること。すなわち能力が使用できていること。これは間違ってはいない。だがそれは潜在的に存在する神気が暴走したことによるものだ。つまり君は一時的に神気量が増えただけ。今は『こころの世界』だから我と話せている。現実ではまだまだ達していない。少女たちとの鍛錬で神気を増やすこと。これができなければ我は君と今生の別れになるな」
真「…」
正直簡単に神話能力を会得できるなと思っていた。だが現実はそう甘くはなかった。俺は翠花姉に神気を流し込まれ、体に異変が起こった。神気が暴走したことが原因ではあるがスサノオという能力があるということを俺は知った。なら俺にできることは一つだ。
真「ならスサノオさん」
スサノオ「スサノオでいい。敬語は我が好きではない。そしてなんだ?」
真「僕がこの世界でまたスサノオに会うにはどうしたらいい?」
スサノオ「一番手っ取り早いのは神気を今度は暴走ではなく自分の意思で必要量に達すること。これだな。だがなぜ聞くのだ?そんなこと」
真「僕はいつも守られている立場だった。だけど僕は絶眼を持っている。そこで思ったんだ。僕はこの力を使って守るべき人を守りたい。そして強くなりたい。強くなって…僕は皇帝になりたいんだ!」
スサノオ「そうか。だが今の君では無理だな。何度も言うが神気。これが今の君には足りていない。だが進歩もしている。神気が今までは見えてはいたが感じることはできなかった。そこを彼女らによって拓かれた。ならばどうするか…聞かなくてもいいかもしれんがな」
真「そんなの決まってるよ。神気をしっかりと会得して、スサノオを使える量まで増やす!これが今の目標だよ!」
スサノオ「うむ。わかっているな。しっかりと。では君を現実に戻そうか」
戻らされてしまう…だが一つ聞きたいことがあるんだ。
真「待って!スサノオ!聞きたいことがあるんだ!」
スサノオ「なんだ?」
真「僕の能力としてスサノオはいるけど…その能力の保持者が僕でよかったと言える!?」
俺はスサノオという能力を持っている。だが俺は神気が扱えないかもしれない。そんなやつがスサノオという神様を持っているだけ持って、使えないということもあり得るかもしれない。それじゃ宝の持ち腐れだ。それでもスサノオはいいのだろうか。
スサノオ「ああ。もちろんだ。なぜなら我はこれほどまでの才能を持つ人間を見たことがない。そして心配もしていない」
真「それはどうして?」
スサノオ「君には優秀な教育者がいる。そして君を生んだ両親はともに幾千の戦場を切り抜けた猛者だ。そんな二人から生まれた君に才能がないはずがないのだ。だから確信を持って言える。君は再び我の前に立つ。その時の君は今とは見違えるほどの存在となっていることを願おう。以上だ」
真「ありがとう。スサノオ。僕が君の前に立つ日までこの世界で見ていてくれ!」
スサノオ「ああ、待っているぞ。この世界で君の勇姿を見届けようぞ。赫星真よ」
そんな会話をスサノオとし、俺はこころの世界から元の世界へと戻った。
真「ん…」
ここは…翠花姉の部屋だ。俺は無事に戻ってくることができた。俺はスサノオと会話をし、彼に背中を押されたような気がする。そして俺は一つ奇妙な感覚に襲われた。それは体がいつもよりも熱いということだ。風邪をひき、熱が出ている感覚に近い。そして一番熱いのは…右腕だ。俺は右腕の服をめくり、右腕を見た。
真「なんだ?これ」
右腕の二の腕辺りに剣のような形を模した赤色のマークがあった。なんというか…このマークが脈を打つかのような血の色のような色のマークだ。おそらくこれはスサノオがくれたんだろう。いつでもスサノオがいると思えるような、そんな気がした。俺はベッドから出て窓の外を見た。真っ暗だ。今は深夜のようだ。俺はどれくらいの間寝ていたのだろうか。というかこの部屋は翠花姉の部屋だ。なのにその部屋の主である彼女がいない。どこかで寝ているのだろうか。俺はこの部屋を出て、リビングに向かった。
真「ここがリビングだよね…え?」
俺はリビングから漏れる光を見た。つまり深夜でも誰か起きているということだ。俺はリビングへ続く扉を開けた。そこにいたのは__翠花姉だった。だがいつもの雰囲気ではなかった。なんというか…空気が重い。扉を開けたことにも反応がなく、動きがなかった。そんな翠花姉を見て、何があったのかを俺は考えた。だがわからない。俺は思い切って翠花姉に話しかけた。
真「翠花姉…」
俺は話しかけた。その声を聴き、彼女が振り向く。
翠花「え…?真…くん…?」
彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。よほど何かがあったのだろう。
翠花「嫌だな私…疲れすぎて真くんの幻が見えちゃってるよ。早く寝ないと…」
真「翠花姉!!」
俺は思わず声を張り上げた。どうして彼女がこんな風になっているのかがわからない。だが初めて見る彼女を放ってはおけない。そう思った俺は思わず彼女に抱き着いた。
真「僕は目の前にいるよ!翠花姉!幻でもない!本物の僕だよ!」
翠花「真くん…真くん!」
彼女は俺にハグをした。俺の体がつぶれそうなくらいの力で。そして彼女は抱き合いながらいろいろな言葉を連ねた。
翠花「真くん…ごめん!私が…私が下手だったから君を神気暴走状態にさせてしまったの!」
神気暴走状態。これはスサノオが言っていた。俺は生まれつき潜在的にある神気が多いと伝えられている。そして神気が俺の体内に入り、潜在て神気が驚き暴走したと。それを彼女は知っているのか?
真「えっと…翠花姉。どうしてそんな風に思うの?」
翠花「だって私が神気を真くんへ流したけどそのやり方が下手だったから暴走しちゃったんだもん」
真「それは違うよ。翠花姉。神気が暴走した理由は違う」
翠花「え?どうしてそんなことがわかるの?」
真「僕ね。潜在的にある神気量が多いっていうの蓮乃さんが言っていたじゃん?それが原因らしいよ」
翠花「いや、それは私も知ってたよ?神気量が人よりも多いっていうのは。でも暴走状態になったのは私が下手をうったからで…」
真「いや、それに関してなんだけど、暴走状態っていうのになったことが決して悪いことじゃなかったんだよ!僕ね、神話能力じゃん?その神様が誰かわかったんだよ!」
翠花「え!?それは本当!?」
翠花姉が大きな声を上げた。その時扉が開いた。蓮乃さんが立っていた。
蓮乃「どうかしたのですか?翠花さま…え!?真くん!?」
彼女は俺がいることにとても驚いていた。
蓮乃「どうして…ん?真くん。右腕のそのマークはなんですか?」
翠花「え!?ちょっと真くん。見せて」
そう言い翠花姉は俺の右腕の服をめくる。二の腕に剣のマークが見えた。だがこれは俺は知っている。まあ2人はもちろん知らないだろうがな。
翠花「なんだろうこれ。剣のマークかな?」
蓮乃「そのように見えますね。脈でも打ちそうな色のマークですね。でもこれ、以前はなかったですよね?」
翠花「うん。なかった。お風呂に一緒に入ったけどなかった。真くん。何かした覚えは…ってないよね」
真「いや、あるよ。それも能力が関係していると思うんだ」
蓮乃「能力…もしかして真くん。神話能力を表す神様がわかったの?」
真「うん。僕の神話能力。それは『スサノオ』だったんだよ!」
翠花「『スサノオ』…確か日本神話の神様だったような。それも結構高位の神様じゃなかったっけ」
真「うん。本人に聞いたんだけどね?」
翠花・蓮乃「本人に!?」
そんなに驚くことなのか?だって偉人能力でもあるじゃないか。2人とも偉人能力を持っている。そして面と向かって話したと言っていた。それと一緒のような気がするが…
翠花「もしかして偉人能力と同じで『こころの世界』でその…スサノオっていう神様と会ったんのかな?」
真「うん。『こころの世界』でスサノオに会った。多分2人の偉人能力と同じことが起きてると思うんだ」
翠花「でもすごいね。そんな神様を能力として持ってるなんて…すごいよ!真くん!」
そう言い翠花姉は頭をなでてくれた。なでてくれている彼女の顔はいつもの彼女の顔だった。もうあんな崩れた顔ではない。
真「翠花姉。僕ね。スサノオと話して分かった。僕には神気がとてもあるっていうことも。そして才能も環境も恵まれているってことも。そして僕は神気を体感することができた。ならどうするか。そんなこと決まってる。神気を使いこなせるように鍛錬をして能力を扱えるまでになること!だから僕はこれからの鍛錬がんばるよ!二人とも!」
そう宣言した俺を見た2人は微笑んでいたように見えた。2人は顔を合わせうなずきあった。
翠花「私たちにできることは少ないかもしれないけど、君が強くなれるように、しっかりと教えていくからね!」
蓮乃「君のような存在を教えられること。誇りに思います。手加減はなしですよ?」
真「もちろん!遠慮なんていらないよ!」
翠花「でもちゃんと段階を踏んではいくから。そこは安心してね」
真「うん!大丈夫、翠花姉たちならしっかりと教えてくれるって信じてるから!」
翠花「ふふ…じゃあこんな時間に起きてるのもあれだし早く寝ようか!」
真「うん!」
俺は2人に鍛錬をつけられることになる。神気を得て俺は強くなって見せる__!




