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【番外編】碧の後悔

サブタイトルが「月の光は恋の歌」のまま間違えて投稿していたので変更しました



あんなこと、言わなければよかった……


彩李ちゃんとレオンのリサイタルも無事に終わり、今日は彩李ちゃんと一緒に帰国するレオンを見送るために空港に来ている。

僕とレオンは、あれから―――彩李ちゃんの大学で会って以降、何度か一緒に食事をしたりして、レオン、碧と呼ぶ仲にはなった。

お互いのわだかまりが無くなったわけではないけれど、レオンは大好きな彩李ちゃんの意思を尊重して、僕のことも一応は認めたようだ。

僕も彩李ちゃんと彼との音楽でのつながりは大切にしたい、そう思った。


確かにそう思っていたんだ。

しかし国際線のロビーで、そのことを後悔していた。

目の前には、ふたりが抱き合う姿―――いや、一方的にレオンが彩李ちゃんを抱きしめている姿がある。


『レ、レオン!』

『アイリー、またしばらく会えないなんて寂しいよ。でも、また絶っ対に日本に来るから!』

『え、ええ……』


これだけ見ていると、恋人同士が別れを惜しんでいるようにしか見えない。

レオンも彩李ちゃんも人目を引くほど綺麗な顔立ちをしているから、いくら国際線だからといっても目立っている。

いや、目立ちすぎている!

周りの人たちが向ける目は、別れを惜しむ恋人同士への同情そのものだった。


彩李ちゃんを強く抱きしめていた腕が緩んだ。

よし、終わった!そう思った時。

レオンの顔が彩李ちゃんに近づく。


『ま、待って!』


彩李ちゃんが慌てて、レオンの胸に両手を突き出して離れようとする。


「That’s it!」


僕は慌てて彩李ちゃんの手を引いてふたりを引き離し、そこまでだ!と止めに入った。そのまま、彩李ちゃんをギュッと自分の元に寄せて肩を抱く。


周りの人からは、何?修羅場?と驚きの目を向けられるが、違うから!

この女性の恋人は僕だから!


「It’s a German greeting.」


ドイツ人の挨拶、だって?

誤解だと肩をすくめて驚くような顔をしているけれど、どうも嘘っぽい。

いや、ここ日本だから! 彩李ちゃん日本人だから!


「This is Japan.」


僕の隣で彩李ちゃんもコクコクと頷いている。

ああ、なんて可愛いんだろう。

思わず彩李ちゃんに見とれてしまった僕の耳に、チッと舌打ちの音が聞こえてきた。


「Midori said, she isn’t mine.」


言ったよ。確かに、彼女は僕のものではないと言ったよ。

でもその後があっただろ。

ちゃんと「Her life is hers.」って言ったはずだ。

だって、彩李ちゃんは僕の所有物じゃない。彩李ちゃんは自分が一番輝く生き方をしてほしいと思っている。そして、その一番近で僕は彼女の輝く姿を見ていたい。


お互いに不慣れな英語での会話だったから、レオンに細かい思いは伝わっていなかったのだろうか……。

少しだけ不安になってレオンを見ると、彼は意地悪そうな目をして笑っていた。


こいつ…!

何か言おうと口を開きかけたが、言葉が出てこない。


「See you next time in Germany」


彼はそう言って近づくと、僕たち二人を軽く抱きしめて、彩李ちゃんの頬にさっと口づけた。


「ひゃっ!」


彩李ちゃんの息をのむような声が聞こえてきて、慌てて僕は彼女を胸に抱きしめる。


『アイリー、碧が嫌になったら、いつでもひとりでドイツにおいでね』


ん?何て言ったんだ?

僕の腕の中で、彩李ちゃんが首を横に振っているけれど……

ああ!同じ言語で会話ができないってことがもどかしい!


「Hope to see Aili … and Midori again!」


レオン…僕の名前のところでためらっただろ。

まあ、また会いたいのは彩李ちゃんだけだろうね。


「I will go to Germany with her」


でも、ドイツに行く時は彩李ちゃんと一緒に行くから。

僕はある決心をしてレオンに強気な笑顔を向けると、彼は肩をすくめた後「I'm waiting for you」と言って背を向けると、片手を上げてひらひらと振りながら出国ゲートへと向かっていった。


「碧くん、ドイツに行くの?」


レオンを見送った後、彩李ちゃんが首を傾げて僕を見る。

肩を抱かれたまま、きょとんとした薄茶色の眼が近くで僕を見つめている。

ああ、このまま抱きしめてキスしたい。

あ……でもここは日本だって、僕がレオンに言ったんだった。


「うん、一緒に行こう。ドイツに。

その前に、彩李ちゃんに話したいことがあるんだ」


そう言って、僕は彩李ちゃんの肩を抱く手を彼女の手元に移動させ、指を絡ませる。彼女に笑顔を向けた後、空港を後にしたのだった。


その後を少しずつ書いてみようと思っています。

本当は他の人物に焦点を当てた番外編を書いていたのですが、長くなってしまったので別小説として掲載しようと思います。(最後まで投稿できるか不安なので、完結してからアップするつもりです)


気に入ってくださったら、評価いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

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