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糸満の光〜それぞれの道標〜  作者: 仲西謙太


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第二章 七人の十八歳

高校三年生の春。

冬の寒さが少しずつ遠ざかり、糸満の街にも新しい季節が訪れていた。

校庭の木々は緑を増し、窓から入ってくる風にも、どこか柔らかな暖かさが感じられる。

始業式を終えた教室では、新しいクラス、新しい席、そして最後の一年間への期待と不安が入り混じっていた。

「なぁ、今年で高校生活も最後だな。」

颯斗が机に肘をつきながら五人の仲間を見渡した。

 「まだ始まったばかりなのに、もう卒業の話?」美海が笑う。

 「だってもう三年だぞ。あっという間すぎるだろ」

 「確かに・・・。」

 真弘は窓の外を眺めながら頷いた。

 「高校卒業したら、みんなバラバラになるんだよな。」

 その言葉に少しだけ空気が変わった。

淳二は何も言わず、窓の外を見ていた

糸満の空。いつも見ている景色なのに、この日だけは少し違って見えていた。

 「俺は野球続けるけどな。」

真弘が笑った。

「県外?」

克利が聞く。

 「まだ決めてない、でも、できれば上を目指していきたい。」

真弘が言う。

 「お前らしいな。」

颯斗が笑う。

 「颯斗は?」

美海が聞いた。

 「俺?俺は・・・。」

颯斗は少し考えた。

 「家族が安心できる仕事がしたいかな。」

 「真面目かよ。」美海が笑う。

 「悪いかよ。」

 「悪くないよ。」ひかりが笑った。

その笑顔を見た淳二は、ほんの一瞬だけ、視線を逸らした。誰にも気づかれないように。まだ、自分の、気持ちを言葉にする勇気はなかった。

 「じゃあ、淳二は?」

当然聞かれて、淳二は顔を上げた。

 「俺?」

 「そう。将来何するの?」

 「・・・まだ分からない」

 「珍しいな。淳二が分からないっていうの」

克利がからかう。

 「うるさいな。」

六人の笑い声が教室に響いた。それは、いつもと変わらない時間だった。

 六人で笑い、六人で話し、六人で過ごす。この時間がずっと続く。

 その時の俺たちはそう思っていた。

しかし――。

 「みんな、ちょっといいか」

そう言ったのは担任の大城だった。大城が教室に入ってきて周りを見渡しながら

 「今日から、このクラスに新しい仲間が加わります。」教室がざわついた。

 「転校生?」

 誰かが呟いた。

大城先生の後ろから、一人の女子生徒が教室に入ってきた。

 長い髪、落ち着いた表情。どこか都会的な雰囲気を持っている。

 沖縄の教室にいながら少しだけ違う空気をまとっていた。

 「自己紹介してくれるかな。」

大城先生が彼女に言うと

 「はい。」

彼女は黒板の前に立った。

そしてゆっくりと、彼女は名前を書いた後、白いチョークを置いた

 「高橋光希です。」

教室が静かになった。

彼女の名前は高橋光希と言っていた。親の都合で越してきたのだろうか。

 「東京から来ました。父の仕事で沖縄に引っ越してきました。」

 少し緊張してるようにも見えた。彼女は続けて自己紹介した。

 「高校三年生の一年間だけになるかもしれませんが、よろしくお願いします。」

 小さく頭を下げる。拍手が起こった。

「はい、ありがとう、みんなもなかよくしてくれな、よろしくな!」

と言った後、

「高橋の席は・・・そうだな・・・」

大城先生が教室を見渡した後

 「よし!ひかりの隣の席空いてるな、高橋さんはあそこの席へ。」

と空いてる席を指で示すと、

 「はい。」 

光希が歩いてくる、

ひかりが光希に声をかけた。

「よろしくね。」

と光希に笑顔で言うと

「こちらこそ。」

光希は微笑んだ。

 その様子を少し離れた席から颯斗が見ていた。

「あの子東京から来たんだ・・・。」

颯斗が小さく呟く。

「何?」真弘が聞く。

「いや、なんでもない。」

その一方で、淳二も光希を見ていた。

 転校したばかりなのに、何処か落ち着いている。それだけではない。

 彼女の目には何かを決めてここへ来たような強さを感じた。

 「高橋さん。」

 休み時間になると、美海が光希のところにやってきた。

 「沖縄は初めて?」

 「ううん、何度か来たことはあるけど、住むのは初めて。」

 「じゃあ分からない事あったら何でも聞いてね」

 「ありがとう上原さん・・・だっけ?」

と、名前を確認するかのように聞くと

 「美海でいいよ」と笑顔で返し

 「わたしも光希さん・・・って呼んでいいかな?」と尋ねると

 「私も光希で・・・いいよ。」

と戸惑いながら、そう答えた。

 そこへ真弘、克利、颯斗もやってきた。

 「俺、真弘、島袋真弘よろしく。」

 「俺は城間、城間克利」

 「俺、知念颯斗、俺たちと、美海、君の隣の席にいるひかりと、あそこの席にいる、淳二とは仲間なんだ、よろしくね、おーい淳二、こっち来いよ。」

と颯斗が淳二を呼び寄せた。

 最後に少し遅れてみんなの近くに来た淳二。

 「・・・淳二」

と何かを思い出すかのように淳二の名前を小声でいう光希。

 「よろしく、淳二くん。」

光希が微笑んだ。

 「うん、よろしく」

 その瞬間、いつも六人だった輪の中に、一人の少女が加わった。俺たち七人。

 まだ、この時誰も知らなかった。この春に出会った七人が、恋をして、夢に悩み、家族とぶつかり、仲間と喧嘩して、傷つけあい、それでも、何度も、みんなで支え合うことになることを。

 そして、それぞれの人生を歩み始めた数年後――もう一度、この糸満の海で、俺たち七人は、再会することになる。

十八歳の春。

 今、俺たち七人の物語が始まった。


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