謎スキル:タイカクラフト
――10歳(成人)になった
成人の儀では、スキルを確認する儀式を受ける事になっていた。
与えられてたスキルは「タイカクラフト」という謎スキルだった。
誰も知らないスキルだ。
だから、使い方を教えてもらう事も出来ない。
「クラフト」というからには「生産」出来るスキルだろうと予想出来た。
前生を知った俺にとっては(あぁ、やっぱり…。)という印象があった。
早速、そのスキルで試しに「剣」の生成を試みた。
きっと、スゴイ剣が出来るに違いない……そう思った。
……けれど、
生成できたのは、小さてもろい「おもちゃの剣」だった。
……それに加え、
2つ目の剣を生成しようとしても、何も出てこなかった。
魔力を消費されている感じはない。
「生成に必要な条件」が、全くわからなかった。
こんなスキルで、これからどうすれば…生きていけるのだろう。
誰も聞いた事のないスキルだったので、効能は不明だ。
けれど、名前から、大量殺戮用のスキルではないと、皆が思った。
俺自身でさえ……
――成人の儀のあと……
当主に呼ばれ、家を追放する旨を告げられた。
「帝国貴族は敵を大量に屠れる技能がないとダメなのだ。
家を守る為、明朝、おまえを家から追放する。
何か言いたいことはあるか」
「ありません。」
何も返せる言葉が、思い浮かばなかった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――そして……
どうしようかと、途方にくれていた。
俺に剣を、教えてくれていた、先生が駆けてきた。
「帝国本領では、大量殺戮が出来る人間しか(兵士の)仕事につけない。
兵士以外の仕事をしている人たちは……殆どが占領国からの奴隷だ。
人を雇う事が許されていない」
「はい、わかっております。それで、途方にくれておりました」
「だから…」
そして、俺の両手を取り、
「追放される話は聞いている。
内密にと…念を押されたが、いてもたってもいられなかった」
「ありがとうございます。
最後に、先生にお会いできてうれしいです」
先生は、高い高い本領の城壁を指差し、静かに力強い声で続けた。
「君が生き残って行くためには、本領を出るしかない」
そして、短めの剣と、1着の上着を差し出した。
その上着は……
表面は、頑強な鎖かたびらの上に、安い布を貼り「粗末な様に偽装」されてた。
裏面は、手触りのよい裏地が貼られ、剣の鞘が縫い付けてあった。
「君の体は、まだ小さい。今なら、このくらいの大きさが丁度いい」
「これは剣であると同時に、柄に埋め込まれた石の効果で杖としても機能する」
「よ、よろしいのですか、こんなスゴイもの」
「元々、君の10歳のお祝いにと用意していた。
君に合わせて作ってもらったので、断られたら使いみちがない。
貰ってくれないか」
気がつくと、先生が、お気に入りだと言ってた「懐中時計」が無くなっている。
きっと、無理して用意してくれたのだろう。
そして、俺に合わせて作られているのも、確かなようだ。
そもそも、剣と魔法を両方使おうという酔狂なヤツはいなかった。
俺以外には……
先生は、剣術の師匠だから、剣を選びたかったのだろう。
けれど、俺が、剣より魔法の方が得意だった事も知っていた。
だから、こういう選択になったのだろう。
ゲス家の者に見つからないように、剣を鞘(服の裏)に収め、急いで、その服を身に着けた。
周囲で見ている人に、安い服をもらったと、理解してもらう為に、こう言った。
「似合いますか?」
「あぁ、とてもよく似合ってるとも……」
これから先、正直不安だったので、こういう装備はありがたい。
「ありがとうございます。」
正直、涙が出そうになった。
なんだか、目の前が少し曇ってきた。
そうか、俺は今泣いているのか…。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「本領を出たら、西に向かいなさい。
太陽が進んでいく方角に進めばいい。
すると、山が見えてくるハズだ。
そこに、私が生まれ育った村がある。」
「先生は、本領の生まれではなかったのですか?。」
「あぁ、私の国は、何十年も前に、帝国に滅ぼされた。
私の村は、土の下に家がある。
地表は砂漠化してるだろうが、
略奪から逃れる事が出来たので、今も存在しているだろう」
「そんな大事な事、俺に教えてしまって、大丈夫なのですか?。
俺のせいで、その村が気づかれたりしませんか?。」
「そこは、大丈夫だろう。
兵士たちの略奪は、侵略時にしか許されていない。
だから、今、気づかれても、略奪対象とならないのだ。
あそこなら、職人も優遇される。人を雇う習慣もある。
そこなら、君のスキルも活かせるだろう」
「だが……」
そこまで、言いかけて、先生は言いよどんだ。
俺は、先生をじっと見上げ、先生の言葉の続きを待つ。
先生は、その場に座り込み、目の位置を俺と同じ高さにしてじっと見つめ返した。
先生は、今にも泣きそうで申し訳なさそうな表情をしていた。
そして、俺の手を、両手でぎゅっと覆って言った。
「本当ならば、そこまで送って行ってやりたい。
だが、それが許されてはいないのだ……」
「承知しているつもりです。
でも、追放だけで済んで、ちょっとホッとしています。
こういう場合、普通は殺されると聞いてましたので……」
「君は賢いな…。それだけに惜しい……」
「先生のせいじゃありませんから……」
(それに、このスキルが発現した原因は、俺の前生の影響だろう……)
「村までの道のりは遠い。
子供の君が、無事に辿り着くのは、難しいだろう。
でも、君が生きるには、そこを目指すしかないと思ってる」
「はい」
「だから、だから、生きて、そこまで辿り着いてくれ……」
「やってみます」
「気休めにしかならないかもしれないが、
今の私が、君にしてやれるのは、それだけだ……」
「ありがとうございます。先生の気持ち、お預かりします。」
せめてもの遠慮として「頂きます」ではなく「預かります」という言葉を選択した。
「その手紙は、村長に渡してくれれば、村での便宜を図ってくれると思う」
その日は、なんだか嫌な気がしたので、その服を着た状態で眠りについた。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
数ある作品の中からこの物語を選び、読んでいただけたことを、とても嬉しく思っています。
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