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【最終章完結!】婚約破棄された悪役令嬢が枯れた大地で掴んだのは最高の安眠でした。  作者: 月雅
第3章

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第4話:迷惑な考古学者


私はモニターに映し出された光景を見て、こめかみの血管が切れそうになるのを堪えました。


地上の農園では、土足で踏み込んだ男たちが、私が手塩にかけて育てた冬キャベツのうねを踏み荒らしていました。

その中心にいるのは、爆発したような白髪を振り乱し、汚れた白衣をまとった男です。


「素晴らしい! 吾輩の計算通りである! この反応、古代の『戦略級破壊兵器』に違いない!」


男は大袈裟な身振りで叫び、私の可愛い農機具(ゴーレム・タガヤス君)の残骸に抱きついています。

あろうことか、彼はタガヤス君の装甲板をバールのようなもので無理やり剥がそうとしていました。


「……ナナ。あの非常識な原始人は誰ですの?」


『照合中……。該当データアリ。王立学術院・考古学部長、シュタイン教授。……過去ニ、王太子セドリックノ家庭教師ヲ務メタ記録アリ』


「セドリック様の? ……なるほど、あの人の歪んだ性格は、この師匠譲りだったというわけね」


納得しました。

人の敷地に勝手に上がり込み、所有物を奪おうとする厚かましさ。

まさに師弟関係です。


「リゼット。あいつら、傭兵を連れているぞ。武装している」


クラウス様がモニターを指差しました。

教授の周囲には、ガラの悪い男たちが十数人、剣や斧を構えて警戒しています。

彼らの足元で、無惨に潰されたキャベツが泥にまみれているのが見えました。


「許せませんわ」


私は低く呟きました。

遺跡への侵入よりも、キャベツ一玉の死の方が、私にとっては重罪です。


「クラウス様。地上の掃除をお願いできますか? 私はここから、ナナと一緒にシステムをロックします」


「ああ、任せろ。……不法投棄された粗大ゴミは、速やかに撤去する」


クラウス様が剣を抜き、冷ややかな笑みを浮かべました。

久しぶりに見る「氷の公爵」の顔です。

彼もまた、愛妻(私)の野菜を害する者を決して許さない「農園の守護神」になっていました。


「エリナ様は私と一緒にいてください。貴女の魔力がキーになるかもしれません」


「は、はいっ! 隠れていますぅ!」


クラウス様が階段を駆け上がり、地上へ向かいました。

私はナナに向き直り、指示を飛ばします。


「ナナ、遺跡の入り口を閉鎖! 地下への侵入を阻止して!」


『了解。……警告。シュタイン教授ガ、外部カラ強力ナ魔力干渉ヲ行ッテイマス。ハッキングノ可能性』


モニターの中で、シュタイン教授が奇妙な杖を掲げました。

杖の先から紫色の禍々しい魔力が放たれ、タガヤス君の露出した回路に突き刺さります。


「ノンノン! ただのスクラップではない! 吾輩にはわかるぞ、この地下に眠る『マスターコントロール』の存在がな!」


教授の高笑いがスピーカーから響きます。


「この兵器を目覚めさせれば、吾輩の名声は不動のものとなる! 王立アカデミーの頑固者たちも、吾輩にひれ伏すのだぁ!」


「……兵器ではありませんわ。それは高性能な『全自動耕運機』です」


私はマイクのスイッチを入れ、冷ややかに告げました。


「なっ!? 誰だ!?」


教授が驚いて周囲を見回します。


「ここの所有者、リゼットです。教授、即刻立ち去りなさい。さもなくば、不法侵入と器物破損で訴えますわよ」


「所有者だと? フン、小娘が! 古代の遺産は人類の共有財産、すなわち発見者である吾輩のものだ!」


話が通じません。

教授は杖の出力を上げました。

紫色の電流がバチバチと火花を散らし、遺跡全体の照明が明滅し始めます。


『警告! 警告! 不正ナ魔力干渉ニヨリ、セキュリティシステムガ不安定デス。……コノママデハ、防衛プログラムガ暴走シマス』


「暴走? 止められないの?」


『外部カラノ強制操作ト、マスター(リゼット)ノ正規コマンドガ競合シテイマス。……システム、判断不能。……「排除モード」ヘ移行シマス』


ナナの姿が青から赤へと変色しました。

工場の奥深くから、重苦しいサイレンの音が鳴り響きます。


ウゥゥゥゥゥ……!


『対象ヲ「害虫」ト認定。プラント内ノ全生物ヲ駆除シマス』


「害虫って……私たちも含まれていますの!?」


私の叫びと同時に、天井のハッチが開き、無数の銃口(レーザー除草機)が鎌首をもたげました。

教授の強引なハッキングが、眠っていた「殺虫システム」を最悪の形で叩き起こしてしまったようです。


地上ではクラウス様が傭兵たちを蹴散らしていましたが、地下の状況はそれどころではありません。

私の夢の野菜工場が、一瞬にして処刑場へと変わろうとしていました。


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