似合う人
20.
依弦が女の子を引っぱたいて怒って以来、もう学校で色んな人に依弦との関係を尋ねられることは無くなった。
依弦が女の子を引っぱたいたのを依弦のクラスの子達は当然見ていて、そこから依弦のその話が広まってしまったようだ。
依弦は前みたいにありもしない噂を立てられていてはしないけれども、皆から少し怖がられ、距離を取られている状態になっている。
依弦本人は気にしていないようだし、まぁいいのかどうなのかといったところだ。
「・・・明日、クリスマスか。」
ベッドに寝転んで天井を見上げて独り言を呟く。
明日、依弦とクリスマスを過ごしてプレゼントを渡す。
分かってはいるけれどいざ明日だと思うと、緊張で今ももう脈が早くなるのが分かった。
「・・・そうだ、兄さんに服貰ったんだった。」
兄さんにプレゼントしてもらった服はまだ袋から出てくることも無く、部屋の隅に眠っていた。
「なんだ、これ。」
いざ着て鏡の前に立つ。
服だけがイイ感じで全く自分の雰囲気と合っていない。
ふと、前に言われた言葉を思い出す。
『あんな冴えないのが好きなのかな。』
『釣り合ってないの分かってねえの?』
「・・・陰気な奴が急に陽気なんかになれるかよ。」
目にかかった前髪をちょんちょんと触った。
ーーー
「蒼月〜!!蒼月〜〜!!!」
「なにーー!」
「あんたハサミ持って何して・・・って、え!?ちょっと、あんた蒼月?」
「・・・そうだよ。」
「ちょっとー!嘉月ー!来て来て!たいへーん!」
「なんだよ母さんそんな大声出して・・・ってうわぁ!!?!」
ビックリしすぎて仰け反ったあまりに腰を痛めた兄さんを母さんと笑いあった。
嗚呼、僕は君に釣り合えなくていい。
ーーでも、隣に居て恥ずかしくない男になりたい。
ーーーー
クリスマス当日。
僕は事前に言われた18時の15分前に待ち合わせ場所に着いた。
待ち合わせ場所は依弦の家の前にある街灯下。
「プレゼント、持った。服も、髪も・・・まぁなんとかなるか・・・。」
ボソボソ一人で呟いていると勢いよく前の家の扉が開いた。
「ええぇぇぇぇ!!!??!?!?」
目と口をまんまるにあけて僕を見ているのは、普段のストレートな髪をふわっと巻いて、ワンピースにコートを羽織った依弦だ。
初めてきちんと見る私服にこっちまで目が丸くなってしまう。
「そ、その髪っ・・・どうしたの・・・?!」
「ん?切ってみた。」
「えぇ、なにそれなにそれぇ・・・。」
そのまま依弦はへたりとしゃがみ込んだ。
「・・・似合いすぎて、困る・・・。」
「・・・・・・え・・・。」
その服装でそのセリフは、反則だと思う。
顔は見えないけれど、耳が赤くなっているのが見える。
こっちまで恥ずかしくなって変な空気になってしまった。
「・・・今日、頑張って可愛くしてみた・・・んだけど、その、どう?」
少しいつもと化粧も違う頬を染めたその子が尋ねてくる。
「かわいーよ。かわいい。」
「・・・ほんと?」
「本当。かわいい。」
「ふふっふふふっ!」
満足気ににまにまと笑い出す。
感情がコロコロ変わって忙しそうだなぁなんて思って凄く愛おしく感じた。
「じゃあ、駅前のケーキ屋さんに予約したケーキ取りに行こう!」
そう言って僕の手を掴んでずんずんと歩き始めた。
本当にこっちの気持ち何も分かってないんだろうなと思って、でも、こんな寒い気温の中、凄く暖かい気持ちで、人を好きになるって凄く温かい事なんだろう。そう思った。
「でも、そんな可愛い依弦は僕だけが知ってればと思うので暫くその格好は禁止ーー。」
僕の言葉に顔を真っ赤にして何も発せなくなって突っ立っている彼女の手を優しく握って、僕達は駅前に向かった。




