兄弟
15.
その夜、依弦は僕が誘い、家に夕食を食べに来た。
母さんは大喜びで、「こんな可愛い娘欲しかったわ〜」と仲良く2人並んでキッチンに立った。
兄さんも暫くのうちは家に居るみたいで、皆で料理を囲んでワイワイと夕食を共にした。
ふと、家で一人で味気なく寂しそうにご飯を食べる依弦を想像して、目の前で楽しそうに兄さんや母さんと話す依弦を見つめていた。
依弦のお父さんは1度仕事に出ると暫くの間帰って来ないらしい。
あの傷ついた依弦を見ずに済む事、依弦が辛い思いをしなくていい事に心底ホッとした。
ーーー
数日が経ち、僕は財布と話をしていた。
僕はバイトをしていないのであまりお金に余裕はない。
「どうしようか・・・クリスマスプレゼント買おうにも何を買えば・・・いくらくらい必要なんだろう・・・。」
財布を見つめて一人部屋でブツブツ呟く。
澄元に、相談してみるか・・・。
いやアイツは女にきっと疎い。
他に頼れそうな人も居ない、服装もイマイチピンと来ないし頭を悩ませていた。
「くそ、最終手段だな・・・。」
ーーー
「いや〜、蒼月と買い物なんて何年ぶりだろうな!?昔一緒にスーパー行ったっきりじゃないか?」
僕は最終手段、兄さんを召喚した。
あまり頼りたくはなかったけれど、女の子が喜ぶ物や喜ぶ事なら人並み以上に分かるはずだ。
「んで、何を買いに行くんだ?」
「・・・クリスマスプレゼント・・・一緒に選んでほしい。」
「お!?お!?依弦ちゃんか!クリスマス一緒に過ごすのか!?」
「・・・そーだよ!」
こうやって冷やかしてくるのが見え見えで少し気が引けていた。
兄さんは嬉しそうに僕の頭をぐしゃっと撫でた。
僕達は街に出て女の子が好きそうな、キラキラ、フワフワ、シャランとしたお店が並ぶ通りに来た。
「・・・入りにくいね、兄さん。」
「そうか?別になんて事ないだろ。」
そう言うと兄さんは躊躇うこと無く店内へ消えていった。
兄さんと一緒とはいえ、こういう店には入った事がないしハードルが高い。
意を決して兄さんのあとを追う。
「いくらくらいで考えてるんだ?」
「実は何を買えばいいかも分からなくて・・・5000円くらいで考えてる。」
「依弦ちゃんどんなのが好きなんだ?」
「いや、イマイチ分かんないんだよ・・・。」
「まじかよ・・・。」
兄さんと話し合いながら何店舗か歩き回っていた。
「・・・兄さん、これとか、どう?」
「お、可愛いバレッタじゃん、いいんじゃないか?」
僕が手に取ったのはバレッタというやつらしい。
曇ったような青色に金色で星座が描かれている。
見た瞬間、依弦っぽいなと思った。
これを付けてる依弦を想像して、付けてくれたら嬉しい、きっと似合うだろうなんて考えて、一人口元を緩めていた。
バレッタを包装してもらい、それだけじゃ味気ないという兄さんのアドバイスに促され、暖かそうな、もこもことした素材のマフラーも購入した。
兄さんにお礼がしたいとアイスを奢ろうとしたが、この寒い中兄貴にアイスを食べさせるなんて鬼畜だと言われ、そのまま僕達は家に戻ることにした。
「そういえば兄さん、僕がマフラー選んで買ってる間、何処に行ってたの?」
「クリスマスプレゼント選び。」
「クリスマス結局女の人と過ごすのか・・・。」
僕が呆れて笑っていると目の前が真っ白になった。
「ほれ、クリスマスプレゼントだ。」
「えっ・・・。」
兄さんは手に持っていた真っ白の大きい紙袋を手渡してきた。
「これ・・・。」
「お前どうせクリスマスの服とか悩んでたんだろ?服一式良さげなの買ってきたから、それ来てクリスマスデートして来い!」
正直、驚いた。
兄さんがこんな事するなんて思っても居なかった、けれど少し尊敬して、凄く嬉しかった。
兄さんから何かを貰うのは初めてだった。
「兄さん、ありがとう、大事に着るよ。」
「おうよ。」
今年のクリスマスは凄く楽しみな物になっていた。
去年まで不仲だった事を忘れて、僕は兄さんと母さんの待つ家に帰った。




