問いと答え、応え。
14.
昨日の夜の事をこっそり胸の内に隠して、平然と振る舞う母さんと話し、学校に向かった。
僕が昨日見ていたのは気づかれていないみたいだった。
「おはよう、澄元。」
「おはよーっす志河!」
本当に今日、星河さん、依弦は学校に来てくれるのだろうか。
僕はふと依弦が消えてしまうんじゃないかとたまに感じる事がある。
だからこそ依弦の姿が見えると安心してしまう。
「おいおい志河、またお呼びじゃねえか?」
澄元の声に教室の入口を見ると、お昼休みでもないのに依弦の姿が見えた。
「おはよ、澄元くん、志河くん。」
ニッコリ笑ってくる彼女に僕は戸惑った。
僕に下の名前呼びを命じたのに自分はそのままってちょっとずるくないか・・・。
楽しみに舞い上がってた僕の気持ちが一気に崩れ落ちるのがわかった。
「志河くん、ちょっといいかな?」
頷いて依弦のあとを追う。
下の階に降りて人混みから離れていく。
「どこ、行くの。」
「なんかこの先の教室空いてるのさっき見つけたから。2限目サボっちゃおうよ!」
まるで猫が鼠を見つけた時のような悪戯っぽい悪い目でニヤっと笑いかけてきた。
ーー本当、僕は彼女に翻弄されっぱなしだと微かに口元を緩めた。
「ノった。」
ーーーー
空き教室は少し机や椅子が散乱していて、普段は補習等以外で使われていないだろうという感じが伝わってきた。
「これだけ端っこだと先生が通りかかる事もないし、大丈夫だよ!」
「やっぱりヤンキーなんじゃない?」
ーー
僕達は教室の後ろの方の机に座って2人で並んでいた。
「志河くんさ・・・」
「なんで僕だけ『志河くん』呼びなのさ。」
「だ、だって、志河くんだって私のこと呼んでくれないじゃ・・・」
「依弦。」
「うっ・・・。」
「依弦。」
「わ、分かった!呼ぶ!呼ぶから!」
今日は珍しく僕がマウントを取ったようだ。
名前を呼ばれた依弦は顔を真っ赤にして照れたような、怒ってるような、そんな感じだった。
こんなに恥ずかしがってる依弦は初めてみた。
「蒼月!これでいいんでしょ!」
「うん、いい。」
「そういえば僕達って、必要以上の事は知っていても、お互いの事あんまり知らないよね。」
「じゃあ質問大会ね、何でも聞いて!」
「依弦の血液型は?」
「O型。」
「誕生日。」
「4月12日。」
「好きな食べ物。」
「納豆。」
「意外とマニアック。将来の夢は?」
「・・・天文学者。」
「素敵だね。君が白衣を着てるのとても想像できる。」
「・・・質問は終わり?」
「じゃ最後の質問。・・・好きな人はいる?」
「・・・・・・私、恋なんてした事がないから、好きとかよく分かんない。でも恋はしたいなと思ってる。でもそれがどうやって恋になるのかも分からない。だからまだ今は答えはNO。」
最後の質問はほんの興味本位、だったと、思う。
依弦は恋をした事がない。
でもそれは親の影響で男に恐怖心を抱いてるとかそういうじゃないかと心配になってくる。
「次は・・・蒼月の番ね。」
「いいよ。」
「血液型は?」
「A。」
「誕生日は?」
「1月9日。」
「好きな食べ物は?」
「ミルクティー。」
「それ食べ物じゃないじゃん・・・将来の夢は?」
「・・・ない、かな。」
「・・・ないの?」
「もう具体的になりたいものが分からないし、ないと思う。夢がないんだ僕には。」
「・・・じゃあ、君は好きな人、いるの?」
「君と違って恋はした事あるけど恋人は出来たことない。今は、どうだろうな、居ないんじゃないかな。」
「・・・そうなんだ。」
きっと僕達二人はこの質問を通してお互いの事を旗から聞く以上に知っただろう。
そしてお互いに思うことも増えただろうと僕は感じた。
「依弦、あのさ。」
「ん?なぁに?」
こちらを向くキラキラした瞳に目を伏せて、何か分からないこの気持ちを確かめるかのように尋ねる。
「クリスマス、空いてる?」
「クリスマス・・・そっか、来週、だもんね。」
「うん。」
「空いてる、よ。」
依弦は珍しく、こちらを向かず、そっぽを向いて答えた。
「じゃあ、友達だし、何処か出かけよう。クリスマス楽しもうよ。」
ぱあっと顔を輝かせてこちらを向く依弦は少し頬が桃色になっていた。
それに気づくとこちらも顔が熱くなる。
まるで僕が依弦を好きだから誘ってるみたいになってしまった。
お互いの熱くなった顔を見合わせて吹き出してずっと笑っていた。




