戒め
13.
家に戻ると兄さんと母さんが玄関で待ち構えていた。
「本当に依弦ちゃんと付き合ってないのか?お前。」
「本当は付き合ってるんでしょ?白状しちゃいなさいよ〜!」
「だから付き合ってないってば!!本当に!!」
この二人は絶対面白がってる。
僕が女の子の話をしたのはこれが初めてだったからかもしれない。
あんな話の後なのに能天気なもんだ。
「まぁまぁ顔赤くしちゃって!お母さん、応援してるからね!」
母さんはウインクして親指を立てるとキッチンに戻っていった。
兄さんもケタケタと笑ってリビングに行ってしまった。
ーーーー
その夜、ふと目が覚めた。
目が覚めたしトイレでも行こうと部屋から出ると、リビングから光が漏れているのに気づいた。
こんな時間なのに、電気の消し忘れだろうか。
「ーー蒼月、怒ってないかしら。」
「ーーいやむしろ怒って俺達に気を向けていた方がいいだろ。良くない事ばかり考えさせるのもな。」
「私達があの子を支えてあげないといけないしね。」
母さんと兄さんの会話に、僕は廊下で目を見開いた。
あの玄関での事だろうか。
能天気だと呆れたけれど、あれは、僕を想っての行動だったのかと、気付きもしなかった自分が凄く情けなく、母さん達への申し訳なさでいっぱいになった。
「まだあの子のお父さんの傷も癒えていないのに、依弦ちゃんのお父さんの事知って、あの子大丈夫かしら。」
「親父は優しかったからな。きっと気持ちが追いついてないだろうな。」
「でも、依弦ちゃんあんないい子なのに親御さんにあんな風にされて、あの子の心も心配だわ・・・。いっそ抜け出してうちの子になって、楽しい家庭を・・・。」
そのまま母さんは顔を覆って泣き始めた。
兄さんは黙って俯いていた。
母さんも兄さんも僕達を凄く心配してくれていたんだ。
母さんの涙を見て、目の奥がじんわりと熱くなったのを感じた。
自分を戒めるかのように唇をギリギリと血が出るまで噛んで僕は部屋に戻った。




