5.星祭り -硝子ランプ-
色とりどりの薄い硝子を手に取りながら、今夜の星祭りに合うようなランプはどんなものかと考えてみた。
アリスは早々にデザインが決まったのか、金色の硝子を店主に渡し星の形に切って貰っている。
アリスの首にいつも下げてある掌大のアストロ燈は人為的に闇を作り出す装置だが、このランプは正真正銘、淡い光を作り出す20センチ程のランプである。
アリスにとっては手作りのランプがとても珍しいのだろう、表情からも楽しんでいるのが伝わってきた。
窓から零れる太陽の光に硝子を翳すとそれだけでもキラキラと輝くステンドグラスのようである。
なんとかデザインを決めたはいいが、僕にはセンスも画力も最初から皆無であったようだ。
図案を見せると、店主が一瞬固まって何か考え込んだあと、徐に吹き出して笑いを堪えようとはしたらしく肩を震わせながらクツクツと喉だけで笑っていた。
なんとなく顔を合わせずらいと気を張っていた僕だったが、この店主の反応になんだかだんだんと馬鹿らしく感じてきてしまった。
「・・・・・・失礼だなぁ」
「クック。いや、すまない。個性的な絵だと思ってな、うん・・・・・・。ところで、これはヒトデかなぁ?」
「違うよ、星だってば!」
最初に言っておくと、星祭りのランプに星をモチーフにするのは一般的である。
中には星そのものの形をしたランプもあるほどだ。
なので断じてアリスに影響された訳ではないが、星祭り初参加のアリスが星の形がスタンダードなのだと何故知っていたのかが少し不思議だった。
星祭りという名称から連想したのだろうか。
「あぁ、星か。私はてっきり海をイメージしたものかと」
「宇宙だよ!最初に言っておくけど、これ魚じゃなくて月だからね」
「・・・・・・あれ?蜥蜴じゃなかったのか?」
「店主・・・・・・」
「あっははは。冗談だよー、冗談」
こんな調子で微かに子供達の笑いを誘いつつ、店主が硝子をカットしている間ふと店内を見渡すと、子供に混じって学生服を着た少女が真剣な固い表情で硝子と睨み合っていた。
大きなアーモンドアイとライトブラウンの瞳は遠目に見るといくらか勝ち気に見えるが、その整った容姿が挨拶してどこか大人びた雰囲気も持っている。
十歳前後の子供達の中で一緒にランプ作りに参加している僕が言える義理ではないが、真剣すぎる眼差しも含め、その少女の周りだけが妙に異質であった。
さりげなく見ていると、店主が作業の手を止めないままひそりと口を開いて説明してくれた。
「店の外に貼り紙貼ってた時にいきなり走ってきてね、私も参加していいですか?って、凄く真剣な顔で頼み込まれちゃってね」
「へえ・・・、そうだったんだ」
「一応子供向けのつもりだったからキットしか用意してなかったんだけど、1人も2人もあまり変わらないし・・・・・・。はい、出来たよ」
「うん、ありがとう」
カットされた硝子を受け取り、ちらりともう一度だけ少女を見た。
僕より3つくらいは年上に見える少女は、はっきり言って美人だ。
顔立ちはアリスの方が整っているけれど。
「なに見てるのさ?」
いつのまにかアリスを凝視していたらしく、不可解げな顔をされた。
「いいや、別に?」
曖昧に笑って誤魔化すと、アリスは納得してはいないものの複雑な表情を浮かべたままランプ作りに手を動かし出した。
星祭りまでもう時間が少なくなっていたため、僕もランプ作りに集中し始めた。
横目でちらりと店主を見ると、にっこり笑いながら僕らの様子を楽しげに眺めていた。




