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呪いの聖女じゃありません~呪われた迷宮と聖なる少女~  作者: 初雪しろ/Yuyu*
第一章 聖女と呪いと冒険の始まり

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脱出と初めての調査終了

 戦いが終わって傷の手当を済ませる。

 残念ながら鎧そのものは霧散して影も形もなくなってしまった。

 残ったのは戦いでそこかしこに穴などのあいた部屋と鎧に操られていた遺体に最後に使われたのかいつかもわからない暖炉だけ。


「あの感覚が正しいのなら」


 なにか痕跡でも残っていればいいんだけれど。

 そう思いながら私は遺体の体制を整えて寝かしてやりながら、少しだけ探らせてもらう。

 すると辛うじて残った服のポケットから金具が壊れているネックレスが見つかった。

 ネックレスには家紋が刻まれていて、かすかに呪いの痕跡を感じる事ができるが、少しして完全に消え去った。


「これが原因だったのかしら」

「ネックレスがですか?」

「ここにも家紋があるでしょ。これが魔法陣みたいな役割になって呪いにかかって鎧が生まれた」

「こんな小さいものが、あれだけの鎧を生むことなんてあるんですか?」

「私は聞いたことないけれど。そうじゃないと、他には何もないのよ。まさか、体の中に魔法陣を彫るなんて無理だし」


 流石に劣化が激しいと言っても、体にタトゥーのようなものが彫られていたかは判別できる。


「でも、この洋館って結局なんだったんですか?」

「ダンジョンの気まぐれだけで済ませるには、不可解な情報が色々とあるのだけれど。かといって洋館自体が何かを確定させるには情報が足りないのよね」

「なんともいえない気持ち悪さですね」

「元々はダンジョンで見つかる呪い付与アイテムの問題だったはずなのに、呪いに関わるものがいっぱいある洋館が現れたわけだしね」

「でも、これ以上はアタシたちだけでは難しいのでは? 目に見えた場所は探しましたし」

「そうね。最後に暖炉も念の為に調べたら帰るわよ。情報をまとめるのはここから離れてからでも遅くないわ」


 私はそういいつつ立ち上がったけれど、自分の手に握ったネックレスをどうするべきか少し悩んだ。


「普通はこういう場合はどうするのかしら?」

「人によりますけれど、下衆な話になりますが値段次第ですかね。まあ、後は帰りにも魔物はいますし遺体を少人数で運ぶのがリスクの場合は、そういうものを持ち帰って身元がわからないなら共同墓地だったりに」

「なるほどね……教会に持ち帰って供養することにしましょう」


 リナが言う通り2人で片方の両手を遺体を運ぶことで塞がるのは、いかに危険度が低い場所でも油断がすぎる。

 ただ、戻って報告しようにも遺品の1つもなければ証明も難しい。

 しかし、この家の人間だったとしてなんでこんなことに。それに、この人は見えた光景が正しければ抗議している側だった。

 話している事は聞こえなかったけれど、必死に何か怒っていた。


「うん? これは……」


 私が少し考えていると先に暖炉を見ているリナがそんな声を上げる。

 視線を向けると暖炉の中に体を入れて細かいところまで見ている。


「灰とか大丈夫?」

「埃っぽさはありますが、灰は残ってなかったですよ。それよりこれ……っと」

「どうしたのよ?」

「なんか暖炉の奥に動かせそうな部分があって、動かしたら中にこんなものが」


 そう言ってリナが体を戻して私に手渡してきたのは、一冊の手記だった。

 かなり年季が入っているのが見てわかるけれど。


「あと、なんかそれが置かれていた場所にも家紋が壁? に彫られてました」

「へ?」

「それで、それを取ったら光ってた家紋が落ち着いて――」


 リナがそんな話をしている中、突如大きく洋館が揺れた。

 そして揺れが小さくなると、天井からパラパラと小石とも砂ともいえるものが落ち始める。


「アリアさん。これ、もしかして」

「急いで逃げるわよ。洋館が崩れ始めてる……絶対、その魔法陣が洋館の核か何かだったのよ!」

「すいません!」


 私たちは小さく揺れる洋館の中を走り出す。

 道中、立てかけておいた斧を回収しながら階段を駆けおりて真っ直ぐに限界に向かって走る途中、ふと台座に視線を向ける。

 台座の家紋はまだ光っている。ただ、瓦礫がぶつかったのか一部が欠けて中に小さな空洞があったのか、そこにあるものが露出していた。

 細かい種類まで判定はできないけれど、光る石が台座の中にはあった。

 私は無造作にそこに手を突っ込んで石を引き抜く。


「アリアさん!?」

「何かあるのよ」

「いや、わかりますけどそれどころじゃ!?」

「ぐぅっ、取れた!」


 石が台座から離れた瞬間に、両方の光が収まった。

 そして、感覚的にだけれど足元にあった視認できないなにかが割れたような気がした。


「急いで!」

「わかってるわよ!」


 その感覚が何なのかを考えるよりも先に、再び玄関に向かって走る。

 そして、無事に洋館の庭から入口の門から森まで走り抜けた後、少しして遠くで何かが地面に落ちる轟音と共に地面が小さく揺れた。


「アリアさん。流石に価値がありそうだからって、あれは危ないですよ」

「違うわよ。いや、それもあるけれど台座まだ光ってて、中身が見えて明らかに同じように光ってたのよ」

「魔石かなにかってことですか」

「わからないけど……」


 手に持っている石を改めて見てみる。

 わかりやすい光は収まって、ただの紫色の透き通った石になった。

 宝石といった感じではなさそうだし、魔石の類かしら。このあたりはどうしても、趣味で知っているか専門家に頼まないと特定まではできそうにない。


「まぁ……無事に生きて洋館を出れたってことで帰りましょう」

「呪いの調査だったことを考えると、この洋館の調査って報酬出るんですか?」

「最低限は出させる。仮に出なくても、あなたに対してはでなくても私が払うわよ……」

「いや、流石にそれは」

「それでいいの」

「そ、そうなんですか? まだ貴族の考え方はわからないです」


 これは貴族っていうよりも、私の考え方だけど。

 まあいうだけ野暮ね。


 まあ何にせよ、私の初の冒険でありダンジョン調査は一旦の幕を閉じた。


 あとは帰ってから報告や情報をまとめる事後処理ね。

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