戦闘開始 VS洋館の主
鎧はこちらを向くまで後数秒はかかる。
こっちを正しく認識しているかは不明だけど、周囲はどうなっている。
部屋の広さはスケルトンがいた部屋と同じくらいで、鎧の腕の範囲外の横を通り抜けて奥へ行くことはできそうな程度の幅がある。
少なくともリナが武器を振り回すのに苦労はしない。
それで、奥には大きめのベッドだったと思わしき木枠と床に転がっている家具の残骸と思える木片があるくらい。
鎧の兜がこちらを向いた。
そして私たちを見つけると低い雄叫びを上げる。
少なくとも冷静になったとしてもコミュニケーションはとれそうにない。
「アリアさんは右から。アタシが左からいきます」
「わかったわ」
戦闘においては現状はリナのほうが経験は上だ。
リナが左に向かって走り出すと同時に私も右へと走る。
鎧は迷わずに私を追いかけるように体勢を変えてきた。
「理由はわからないけれど、私狙いなのね」
幸いかはわからないけれど、相手は武器は持っていない。
この前と同じように掴もうとしてくるか、純粋に殴りかかってくるか。
「よし、きなさい」
初めての脅威を強く感じる相手との戦闘――想像していたより思考は落ち着いている。
恐怖は正直な所ある。
だけど、混乱をしたほうが危険であると私は知識を持っている。
頭がそれについてきてくれてよかった。
身長的にはあちらのほうが大きい。ただプレッシャーだけでいえば私の倍ほどの大きさに感じる鎧は私に右の拳をまっすぐにぶつけようとしてきた。
「少なくとも、あまり頭がいいわけではなさそうね」
私は拳を少し避けてからその腕を横からつかみ勢いをそのまま壁に向かって流してやる。
そのまま勢いよく壁に腕からぶつかっていき私はすぐに部屋の奥側に距離を取る。
「追撃いきます!」
リナのその声が聞こえたと思うと、金属に何かの塊が叩きつけられたような音が響く。
敵に視線を戻すとリナが剣――ではなくバックラーに岩の塊を複数つけて鎧の後頭部に叩きつけていた。
これは想定外だけれど、悪くない攻撃ではある。
脳があればかなり揺れただろう。
いや、というかあれだけ勢いよく叩きつけられたけど兜が外れてないところを見ると中身はあるわね。
中身のないアンデットではない。少し安心できた。
鎧が自立して中身のないアンデットの多くはそこそこ上位種だったり、特異な種類が多くてこの装備で相手をするのはかなりきつい。
相手はそれで怯んだかはわからないけれど、一度動きが止まる。
その間に私は自分のグローブを確認する。
――呪いはかかっていない。
触ったら呪われるわけではなさそうね。
……うん?
「リナ。もしかして、今の呪いを気にしてやったの?」
「え? はい。触れただけでだめな可能性ってあるんですよね?」
やっぱり、リナってこういう冷静さは目を見張るものがあるわよね。
土壇場とか窮地に強いのか、単純に集中力があるのか。
「アリアさん。まだ、だめです」
「わかってるわ。あと、少なくとも腕はこちらから触れて呪われることはなかったわ」
「わかりました!」
鎧は体勢を立て直して再びこちらにふりむく。
「鎧だけ攻撃していても中にどれだけ効果があるかわからないわね」
「そうですね。頭はかなり揺れたはずですが、そういうダメージはなさそうです」
そして今度は腕を振り回すようにして攻撃してきた。
型にはまっている格闘攻撃ではないんだけれど、身長差もそうだけどこの前投げられたことを考えるとパワー差も確実にある。
一撃くらうとやばい場合は、がむしゃらに振り回されて攻撃範囲が広いほうが困るのよね。
真っすぐの一撃のほうが実際の威力は高いんでしょうけれど。
私は心の愚痴を吐き出しつつも隙を伺う。
そして、腕の遠心力で足の踏ん張りがみえて追撃に時間がかかる攻撃を狙って拳をひとまず当てられるところに叩き込む。
一撃、一撃、さらに一撃。
魔力を込めなくてもそこそこの威力を出せるように努力してたはずだけれど、聞いてる感じがしない。さすがにゴブリンとかゾンビとは違うわよね。
リナも剣で攻撃を入れているけれど金属と金属のぶつかる音が響くばかりで、見た目のダメージは感じ取れない。
リナの頭の一撃が効いてなかった。
中身は存在していそうだけれど、脳震盪だの生物と同じ弱点ではない。
こうなってくると少なくとも私たちだと、ダメージを蓄積させて勝つのは難しいかもしれない。
「リナ、相手の隙を作ってくれる?」
「やってみますけど、どうするんですか?」
「私は聖女よ。相手が生物でないなら、アンデットの可能性を考えて聖なる魔力を可能であれば中に叩き込むわ」
狙うはどうしても隙間ができてしまう胴鎧と兜の間の首か兜をむりやり外す。




