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呪いの聖女じゃありません~呪われた迷宮と聖なる少女~  作者: 初雪しろ/Yuyu*
第一章 聖女と呪いと冒険の始まり

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洋館の主

「なによこれ」

「洋館ってこんな部屋作るんですか?」

「目的が明確にない限りは作らないし、私の知っている家では一度も見たことがないわ」

「それじゃあ、この文字通りの広間みたいな部屋はどうして」

「さっぱりわからないわね」


 机と椅子が配置されていてシャンデリアや特別な装飾がされていれば、変わったパーティーホール扱いもできる。

 だけど、本当になにもない。作りたてで家具も入れていないような状態のこの場所には、人の痕跡を感じとれない。

 部屋を作るための壁や扉みたいなのもない。ただ、外から見た時にバランスよく見えるために余白をうめただけのような。


「もしかして、左もこんなことになっているんですかね?」

「流石にそうなったら、何もわからなくなるからやめてほしいわね」

「見てみるしかないですね」

「そうね」


 私たちはその部屋から戻り反対の扉の前に立つ。

 ひとまず鍵はかかっていない。


「では開きますね」


 そう言ってリナがゆっくりと扉を開いた。

 扉の先は通路になっていたけれど、1階と違って窓側に部屋がない。

 その代わりに開けた空間に椅子や机があり外を眺められるような空間になっている。


「こっちは、しっかりとしていますね。というか人が住んでいたようにも感じます」

「そうね。庭がここから見えるし子供がいたら、使用人とか親はここの窓から様子が見れる感じみたいね」

「まあ、机も椅子も座ったら壊れそうなぐらいになっていますが」

「そうね」


 ただ、気にしても仕方ないけれどますますさっきの何も無い空間が気になる。

 なんであの空間だけが真っ白といえる状態なのかしら。


「ひとまず、部屋を見てみましょう。階段下を除けばここの2部屋で最後ですし」

「そうね。もやもやするから何かわかればいいんだけれど」


 そう思いながら手前の部屋の扉を開いて中に入る。

 そこは誰かの私室だったと思える部屋だった。

 家具とかを見ると女性の部屋かしら。ベッドも寝室を作るわけじゃなくて広い私室にあるのね。

 まあそこら辺は好みだからおかしくはないはず。


「アリアさん、待ってください」


 中を見ている途中、ベッドに近づこうとした時にリナがそう言って私を止めた。

 そしてベッドをじっと見つめている。

 私も集中して気にしてみると、かすかに気配を感じた。

 ベッドにはボロボロではあるものの、毛布だったのかは定かではない布がある。


「動いた気がしたんですが……」

「いえ、なにかはいるわよ」


 というか気配じゃなくて物理的に動いたことに反応したのね。

 そのまま少しの緊張の時間が過ぎたと思うと、布の中から何かが動いて姿を表した。


「スケルトン……だけど」


 アンデットの一種であるスケルトン――ただ、動きがおかしい。まるで下半身を自由には動かせないような。


「ど、どうしましょう」

「まあスケルトン自体は、わかりやすく装備をしていない限りは対処は容易なアンデットだけど」


 ベッドから抜け出てこちらを襲ってくる気配もない。

 よく見ると首から何かをかけている。


「……ロケットかしら?」

「首のあれですか?」

「そうよ。でも、ゾンビはともかくスケルトンに人がなってしまうには、かなりの時間がかかるはずだけれど」


 少なくとも人の体が自然に溶け切るまでには膨大な時間がかかるはず。

 だからこそスケルトンは土葬の風習のあった地域のゴーストタウンなんかで見つかることが多い。

 でも、ここはダンジョンの中だし。何ならこの洋館だって突然現れたばかり。

 しばらく様子をみているとスケルトンが口を話すように動かしてカタカタと骨のぶつかる音を鳴らし始めた。

 ただ、残念ながら声帯も反響させるための空間のないせいで、伝えたいことを察することはできそうにない。


「リナはどう思う?」

「何がですか?」

「恨み言を言っているのか助けを求めているのか。もしくは頼み事があるのか」

「スケルトンにそういう知能? 知性? ってあるんですか」

「上位種であれば生前の記憶を魂として残していたりして、魔力で空気を震わせて会話ができるような例も過去にあったらしいわよ」

「……でも、話せてませんよ」


 そのとおりだ。

 襲ってくるわけでもない謎のスケルトンへの対処に困っていると、隣の部屋と思わしき扉が開く音が通路側からした。


「もしかして、仲間を呼んだの!?」

「アリアさん、部屋をすぐに出ましょう。遭遇は避けられませんが、挟まれてからスケルトンに動き出されるよりはいいはず!」

「わかったわ」


 ここはリナの提案にのる。私よりも緊急時の判断は信用できるはず。

 私たちはすぐに部屋から出て通路にでる。

 すると、隣の部屋の扉の前に鎧が立っていた。

 頭までフルフェイスのせいで鎧の中に人がいるのか魔物がいるのかはわからない。

 ただ、私の感覚でひとつだけはすぐに分かった……全身呪いの装備だ。


「ちょっと、まずいわね」

「逃げますか?」

「逃がしてくれるかしら?」


 身長とか歩幅的に走った場合すぐに追いつかれる想像がつく。


『ヴォオオオオオ!』


 雄叫びとも悲鳴ともとれそうな声をその鎧は吐き出した。

 そして、顔をこちらに向けるとすぐに走りだした。


「やばっ」


 私はすぐに相手を正面に捉えたけれど、想像以上に早く目の前まで接近されて――そのまま腕を掴まれたかと思うと、窓にむかって投げ飛ばされた。


「アリアさん!」

「なんか、最近こんなのばっかり!」


 私の体は中を浮いて窓を割ってそのまま外に投げ出される。

 そしてそのまま庭に落下した。幸いだったのは土がある部分に受け身がとれたおかげで、かなり痛いけれど大怪我はさけられたことだ。

 それよりも問題は――そう思っているうちにリナも庭に投げ飛ばされてきた。

 下手に受け止めるとお互い怪我しかねないと思って私は咄嗟にリナとぶつからない位置に転がって移動する。


「いだっ!?」

「大丈夫?」

「なんとか……って、敵は!」


 謎の鎧はその後私たちを追ってくることもなく、部屋に戻っていくのが割れた窓から見えた。


「……なんなんですか」

「わからないけれど。あれが洋館の主だとは思うわ……ん?」


 ひとまず敵が追ってないことで、一瞬気が抜けた時にふと腕に違和感を感じた。

 そして、かなり良くないことに気がつく。


「嘘でしょ……?」

「アリアさん。どうかしたんですか?」

「ガントレットに呪いがかかってる。いつのまに?」


 掴まれた時かしら。でも詠唱もなく呪いをかけるなんてあるの?

 斬った相手を呪う剣の伝承とかは記録でみたことあるけど、ただ掴まれただけよね。

 そう思った矢先、更に嫌なことが判明する。


「ちょっと待ちなさいよ……あー、もう」

「もしかして、他にもですか?」

「どれもこれもよ。多くてどれが呪われて、どれが呪われていないかわからないわ……リナ。一旦撤退ってありかしら?」

「ありだと思います」

「なら、一回帰りましょう。それで、ちょっと持ち物全部確認するわよ」


 ダンジョンで見つけたものじゃなくて、新たに呪いを付与してくるなんて。

 なんか、呪いの調査のほうも想定よりも大事になってきたかもしれないわね。

 私たちはそう思いつつ、一度洋館を後にしてラビリアへと帰ることが出来た。

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