不可解な額と部屋
玄関に戻ると変わらず台座が光っている。
ただ、大きく何かが変化したわけではない。
それと、1回の玄関ホールにある階段下の扉以外を調べ終わったところで、私の中で新たな謎が生まれている。
「アリアさん?」
それが顔に出ていたのかリナが声をかけてきた。
「この洋館って、仕事用とか別荘とかなのかしらね」
「どういうことですか?」
「いえ、1階の作りを考えるとどう考えても狭いのよ。上にも部屋があるとしても主の寝室は確実にあるとして、使用人の部屋とか他の家族の部屋の余裕まで想像していくとね」
「アタシには、わからない世界なのでそこの常識はわかりませんけれど……でも、こんなこというとあれですが辺境の小さい町の貴族の洋館だったり家ならこのくらいの広さでしたよ?」
「…………」
私の関わっている人たちから想像していたけれど、確かに貴族といっても上から下を正確に比べていけば範囲は広いのよね。
なんか、私がこの洋館クラスの家の貴族を見下してるみたいに思われたかしら。そんなつもりはなかったんだけれど。
「でも、なんでそんなことが今気になったんですか?」
「使用人っぽいゾンビがいたけれど、使用人を自分の洋館で住み込みさせるほどの余裕があるか気になったのよ」
「……たしかに2階が同じ広さだと、1人か2人がやっとですかね。でも、主の家族の人数が多かったら足りてないです」
「そうなのよ。だから、本邸として使ってる洋館なのか少しね。でも、本邸じゃない場合は使用人が住み込みしているかも疑問なのよ」
「まあ、ダンジョン内にできた洋館なのでアタシたちの社会基準で考えて一致するかは定かではないですが」
「それを言われると、すべて考えるだけ無駄じゃないのよ」
まあ、無駄かもしれないけれど。
だけど、ダンジョン内にしても謎が多い洋館だから、どうしても気になるというか考えてしまうのよね。
「まあ調べればわかることね。2階に行くわよ」
「わかりました」
私は念の為に階段が崩れ落ちたりしないか慎重に気をつけながら一歩ずつ上がっていく。
2階まで辿り着くと左右に大きめの扉がある空間になっている。
そして壁には額が飾ってある。なんの意味があるんだろう。
真っ白というわけでもなく、額だけがそこに飾られている。
「呪いじゃないけど、こういうのって不気味よね」
「額ですか?」
「額っていうか。本来であれば中に何か入っているはずのものがないままで、飾られている状況?」
「あー、たしかにそう言われると不気味ですね」
「リナはこういうの大丈夫なの?」
「冒険者はじめてからはなんか気にならなくなりました。子供の頃は怖かったですけれど」
「そういうものなのね」
私はアンデットだとわかりきってる相手なら怖くはないけれど、得体が知れないって感じは怖いのよね。
「まあ、気にしていても仕方ないし。また右から行くわよ」
「それなんですけど、右の扉さっきノブだけまわしてみたら鍵がかかってるんですよね」
「鍵? 個室とかならわかるけど、流石に通路にいく扉に鍵かけるかしら?」
「もしかすると右半分で一部屋になってるとか?」
「なんのための部屋よ」
「それは……ほ、ほら貴族の方ってパーティーとか社交界? やってるじゃないですか」
「この規模の洋館ではやらないと思うわよ」
それ専用のために作っているならば変わってくるけれど。その場合は1階の書斎とか客室が謎になってくるし。
「どうしますか? まあ、扉自体は劣化してるので、ふたりがかりで何度かぶつかれば壊せはしそうですけれど」
アンデットとか魔物が2階にいない保証はない。大きな音をだすのはどうなのかしら。
でも、さっきは運よく部屋の中で戦えたけれど、通路に敵がでてきて遭遇する場合もあるわよね。
それならいっそのこと下にも逃げ道があるこの空間にきてくれたほうが戦いやすいのかしら。
「アリアさん、悩みすぎて動けなくなるなら割り切るのも大切だと思いますよ」
「そんなに私ってわかりやすいかしら?」
「普段はそうでもないですが、ダンジョンだと気を張ってるのか結構でてます」
「そうなのね。なら割り切って扉吹き飛ばしましょう」
「わかりました! では、タイミングをあわせて」
私はリナとタイミングをあわせつつ右に続く扉に体当たりをする。
数度ぶつかると扉の木製部分にヒビが入る。
そして最後2人で勢いよくぶつかり鍵はしまったままに扉を突き破った。
「……は?」
そして、目の前に広がった光景に思わず声を漏らした。
そこには何もなかった。通路も個室もなく窓だけが外から見た時と同じ位置に存在する。
洋館としておかしいというよりも、建物としてなぜこんな作りにしたのかを察することが出来ない空間がそこに広がっていた。




