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蓮華草  作者: 山猫
第二章 あの時の話
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133/167

133・四凶

「いいか、四凶ってのはな・・・東洋に伝わるかなり位の高い悪神、禍神で、四体の内それぞれがコントン、トウテツ、キュウキ、トウコツって呼ばれてて順に、混沌を司り、饕・・・つまり全ての物を貪り広莫風を支配し難訓を司るってやつだ」


「はぁ・・・???」


次々に聞いた事がない単語が羅列されていく事でシスターの頭の中はハテナマークでいっぱいになってしまった

お漏らししてしまう変態なのでつい忘れがちになってしまうが、やはり天才。瞬間記憶を持つ稀代の天才は伊達ではない。ただ見た事や事象全てを記憶出来るだけではなく、膨大な記憶の中から該当する答えをすぐに引き出せることにその非凡さが垣間見える。ただ記憶能力が良いと言うだけでは意味が無い。それを全て活用出来てこそ、その能力の真意が発揮出来るのだ


「まぁ、つまりだな・・・分かりやすく言えば、秩序を乱して何でも食って風を操って暴れるのが大好きって奴等が封印されていたんだよ」


「あ、成程。それなら何となく分かりますね」


「それにアンタも見たんだろ?地下に封印されていた扉の四隅にに打ち付けてあった釘を。何か絵みたいなのが書いてあったって言ってたじゃないか。それに犬やら羊みたいな絵が描いてあったって、つまり言ってしまえばそれがソイツ等、四凶の似顔絵みたいなもんだ」


「そう言えば確かにそんな絵だった気がしますね」


シスターの歩幅に合わせゆっくりとカートを押しながら話す

今は一人ではないので教会内の不気味な雰囲気も全く気にならない。それに話している事で気が紛れている事もあるのだろう。ジールの中ではつい先程にみっともない醜態晒してしまった事は既に無かった事になっている、と言うより無かった事にしている


シスターと出会った場所から少しずつ進み、会衆席の側を通りながら会話を続ける

四凶の事説明していたジールだが、ここで一度大きく息を吐き出した。それはこれから最悪の怨霊と言われる四凶と相対する事に対する覚悟のようにも見えた


「・・・言っておくが今回の相手はかなりヤバい。それこそ俺でもな。俺一人で太刀打ちするにはかなり厳しいもんがある。それに依頼内容は討伐って事になってるが、せいぜい再封印するのが精一杯ってとこだな」


「そうなんですか?噂のジールさんなら何でもやってしまいそうですけど」


「さっきから言ってるその噂って何なんだよ?まぁ別にいいけどよ・・・んで再封印するのにさっき部屋で見た人魚姫の涙ってのが必要になってくるんだよ。それに再封印するにもアンタの親父さんと同じ文様は俺には描けないから完全に俺のオリジナルになるんだが、まぁ媒介が人魚姫の涙なら少々術式が違っても問題なく再封印できる筈だ」


「はぁ???人魚姫の涙って何ですか?それに言ってることが良く分からないんですが・・・」


部屋で人魚姫の涙の使用許可を貰った時と同様に、シスターにはその価値が分かっていなかった為また頭にハテナマークがいっぱい飛び交っていた。そもそもその価値をちゃんと説明していなかったジールも悪いのだが


「まぁつまりだ、しっかりまた閉じ込めてやるから安心しろって事だよ」


かなり高価な、と言うより世界三大秘宝の一つを使用させて貰う事に少しなからず負い目を感じているジール。だが相手が相手だ、そのぐらいしないと自分一人では太刀打ちできないだろう。相手が伝承通りの相手だったらだが・・・


それに今回はシスターを含め子供達、守るべき対象が多く居るのだ。あの部屋から出なければ問題は無いだろう・・・しかし人魚姫の涙を使うという事は、あの部屋の結界の効力を落としてしまうという事になる。多少結界の効力が落ちたところで破られることは無いと思うが、絶対ではない。つまりは、望ましいのは短期決戦。再封印するにあたって時間をかけてしまったらそれだけ子供達の危険度が増してしまう。それに相手が四凶だ、おそらくその強さはつい先日シャルと共に相対した生まれたばかりの神龍に匹敵する強さを持っているだろう

そんな相手が四体も居るのだ。とてもじゃないが子供達を守りながら戦える相手じゃない

だがシスターを安心させる為につい強がってしまう


「それなら安心ですね。ジールさんが言うなら間違いないでしょうし・・・ただ、その、大丈夫なんですか?怪我とかしないですよね?」


そんな強がりを見せているジールに対してシスターは怪我の心配をしていた。秘宝を使う事や四凶を再封印する事より先にジールの事を気に掛けているのだ

それはジールにとっても意外な事であり嬉しくもあった。最強の名を冠してから自分の事を心配してくれる奴なんていただろうか・・・いる筈が無い、いた筈が無い。自分に対する他の奴らの態度は眺望の眼差しか怨嗟の視線か、それか誰かみたいに飯をたかってくるヤツか・・・そのどれかしか無かった


心配してくれた事が素直に嬉しい

ジールはそんなシスターの言葉に少なからず顔が熱くなっていくのを感じた。その照れ隠しの為につい大袈裟に振舞ってしまうジール


「べべ別に怪我なんてしねぇよ!ちょいちょい~と軽く封印してやるから大丈夫さ!」



『それは困るな』

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