128・三つ目の秘宝
「それは・・・」
そう言いながらシスターはゴソゴソと自分の来ている修道服の胸元を開き何かを取り出そうとした
それに気付いたジールはそれを見る為によっこらせっと立ち上がりシスターの居る方へと歩み寄っていく。そして近寄ったジールはシスターのやや後ろの方から取り出そうとしている物を覗き込んだ
「どれどれ・・・うほっ!?これは中々のお手前!いやゲフンゲフン、中々のナイスアップル、いやゲフンゲフン・・・コホン、で、それは?」
来ている修道服の胸元を少し引っ張った事でシスターの胸元が少し露になる。そしてその事で図らずも覗き込んだジールの目にシスターのナイスアップルの谷間がチラッと見えてしまった
思わず身を乗り出して凝視してしまうが、ギロっと睨んで来たシスターの視線と握り締められた拳を見て慌てて離れ姿勢を正したのであった
「コホン・・・これは私が幼い頃に父が授けてくれたお守りで、確かブルーメタルトパーズという宝玉らしいです。父が言っていたのですが、これには破邪の祈りが込められているので魔除けにもなると・・・実際これを身に付けている限り、ソレは私に近づく事が出来ませんでした」
胸元を開き首から下げていたネックレスの先に付いた小さな丸い宝玉、シスターはジールに見えやすいようにそれを首から外し掌に載せかざした
そしてジールはそれにゆっくり近づき指でツンツンと突きながらじっくりと眺める
「・・・凄い宝玉だなこれは・・・吸い込まれそうな程碧く、それでいて軽そうに見えるが存在自体にめちゃくちゃ重厚感を感じる・・・って待てよ?今ブルーメタルトパーズって言ったか?」
「え?はい、確かそんな名前だった気がしますが・・・それが何か?」
ハンターとしてのジールの目を唸らせるほどの宝玉。ここ最近、神鱗やら人魚姫の涙やら一生かけてもお目にかかれない様な三大秘宝の内の二つを見て目が肥えまくっていたジールをも唸らせる
だが待てよ、とここでジールの頭にある事が思い出された
世界の三大秘宝って確か・・・
「ってマジでブルーメタルトパーズなのかい!?」
それに気付いたジールは思わず大声で叫んでしまう
近くで叫ばれたいきなりの声に「ひぇっ!?」と可愛らしく短い悲鳴を上げてしまうシスターだが今のジールにそんな事は目に入っていない
まさか辺境の町の古びた教会のシスターが世界三大秘宝の内の一つを持っているなんて思ってもない。そりゃ最近見た二つに見劣りする訳ねぇか・・・ってコレは本物か?だがこの光は本物だろうな。だが何でシスターがこんなもん持ってんだ?ってか絶対この価値を分かってないだろ。そもそもこれは神の使いと言われる神狼フェンリル、さらにその群れを統治する王を倒さなければ手に入らないんじゃなかったっけか?俺でもまだお目にかかった事ねぇよ・・・シスターの親父って何者なんだよ
突然現れたまさかの秘宝に頭の理解が追いついていないジール
そんな馬鹿なと思いながら思いっきり自分の頬っぺたを引っ張ってみる・・・痛い。現実逃避したいのは山々だが実際に実物が目の前にあるのだ。それは覆せない事実であり現実なのだ
それに宝玉ブルーメタルトパーズって・・・確か
ハンターである故の目標の最大値である三大秘宝。当然、ジールもそれぞれの効力を分かっているつもりだ・・・人魚姫の涙に至っては誤解されやすい事があるが
だがブルーメタルトパーズの効力、それは決して破邪の効果があるとか魔除けになるとかそんな生易しいものではない。ある意味的を得ていることは確かなのだが・・・
「・・・絶対防御イージスの盾」
ボソッと呟いたジール
すぐ傍にいるシスターが聞き取れるかどうか程の小さい声
「はい?今何か言いましたか?」
それに反応するシスターだが、ジールはそれに対してゆっくり首を横に振り「何でもない」と答える
ブルーメタルトパーズをつついていた指を放し再度思考の中に沈むジール。その脳内には地下の財宝を含め、目の前にいきなり現れた秘宝について色々な打算案が繰り広げられている。だが地下に眠る噂の財宝はともかくシスターがぶら下げていた秘宝を奪おうなどとは微塵も考えておらず、むしろそれがあるお陰でシスターがソレに襲われず無事でいる事に納得がいっていた。それにカイトが去り際に言っていた「姉ちゃんなら大丈夫」と言う言葉もこれがあることを知っていたのかもしれない
だが、
そうなると別の疑問が湧き上がってくる
「で・・・シスター・エリーが襲われないのは分かった。だがこの部屋を含め子供たちが無事なのは何でだ?おそらくだが、シスターの言う地下から出てきたソレからすれば、悪いが子供たちは格好の餌食になったんじゃないのか?それにこの部屋は他の場所と違って明かりを点けていても問題ないのか?ここに来る道中は蠟燭の灯り一つだけで歩いてきたから明るくする事で何か問題があるのかと思っていたが・・・実際はどうなんだ?」
湧き上がってきた疑問を矢継ぎ早に次々と言葉にする。道中、後で説明するとお預けを食らっていた手前、ここぞとばかりに一気に質問を投げかけた
それに対し予め答えを用意していたかのようにシスターは軽く咳ばらいを一つ、コホンとした後ジールの質問に答えていく
「シスターで結構です。・・・ではまず明かりについてですが、襲ってくるソレは日が落ちて暗くなってきたら姿を現す様になります。それについては恐らくですが日の光が苦手なのでそうなのだろうと推測しました。でも、ソレは何故か灯りに対して反応する習性があるみたいで、その場所を目掛けて次々と攻撃を仕掛けている様にも見えました。ですが、ここに侵入してきた盗賊達が一瞬で亡くなられた時の事を考えれば、灯りに反応していると言うよりは人の体温や灯りの温度、と言えば良いのか分かりませんが、そのようなものに反応しているのではないかと思いました・・・ですので灯りを点けるといちいちそれを壊されてしまうので日が落ちてもなるべくこの教会内の灯りは点けないようにしているのです」
ふぅっと一度息を吐くシスター。侵入してきた盗賊達のせいでこの状況になっているのにも関わらず、ソレに殺されてしまった盗賊達の命を尊重するような言い方をするのは彼女の本筋が非常に暖かいのだという事が伝わってくる
ジールはその言葉を聞きながらシスターの美貌も相まって思わず心が揺さぶられてしまうが、その心に今は蓋をし、続くシスターの言葉に耳を傾ける
「そしてここの子供達が何故無事なのかという事ですが・・・それはこの部屋、と続くこの奥の部屋の灯りを点けても大丈夫な事と答えが同じになるのですが、理由は分かりませんが何故かソレはこの部屋に入る事が出来ないみたいで・・・ジールさんも目にしたでしょうがこの部屋に入る時に薄い膜の様なものがあったと思いますがそのお陰だとは思います。その膜がソレの侵入を阻んでいるのは確かですし、以前は無かった膜がソレが現れ襲われそうになった時にこの部屋に逃げ込んだ時からずっと存在しています・・・何故その膜がいきなり現れたのは全く分からないのですが、そのお陰で私たちはこの教会の中でも何とか襲われずに済んでいます」
質問に対するシスターの答えを聞いたジールは腕を組みながら考える
シスターの首飾り、ブルーメタルトパーズのお陰でシスター・エリーが襲われないのはまだ分かる。と言うかいくらソレが強力な怨霊だとしても全く介する事が出来ないほどの効力はあるだろう。それで彼女が子供達とは違って暗くなっても教会内を平気で歩けるのも分かる。だが・・・
少なくともジールが見る限りシスターが身に付けている宝玉は彼女自身にその効力を発揮しているものであり、この部屋全体にその効果は及んでいないはずだ




