126・シスター エリー・シルフィール
「改めて自己紹介させて頂きます。私はここの教会兼孤児院の責任者、エリー・シルフィールと申します。どうぞよろしくお願いします」
「あ、あぁ。俺はジールだ。ジール・ストライダル、一応ハンターを生業としている。この依頼もちゃんとギルドを通して来たから安心してくれ」
ジールのジールとジールが回復したのを待つ事数分、気絶していたジールが起き上がったのを確認したシスターは子供達の相手をしながらようやくジールに自分の名前を名乗る事が出来た
対するジールは一瞬、自分が何故ここに倒れているのか理解できなかったが、自分の横に腕を組んで仁王立ちしている少年、カイトを見て今の現状をすぐに思い出したのだ
取り合えず、カイトに文句を言おうと意気込んだジールだったが、それよりもシスターが名乗る方が早かった為、息巻いたものはいいがその矛先が空振りに終わる事となったのである
「宜しくお願いしますジールさん。では先にいくつか疑問があると思いますが一つずつ説明させて貰いますね」
シスターはそう言いながら頭に深く被っていたヴェールを両手でゆっくと後ろの方へと脱ぎ下した
そこから現れたのは肩までかかった目が眩むほど美しい金髪、そしてその金髪が霞むほど整った端正な顔立ちの女性だった。この部屋に入る前は薄暗く良く見えなかったが、それでも口元だけで綺麗な女性なのだと何となく分かっていたジールだが、部屋の明るい光の中で改めて容姿全体を見ると彼女の美しさに開いた口が塞がらなかった
長い付き合いのシャルとはまた違う、シャルが妖艶な男を惑わすような美しさを持つと例えるなら、シスターは立ち入ってはいけない洗練された聖域に佇む天使の様な美しさを兼ね備えている、と表現できるだろう
ジールの立場上、色んな美しい女性と関わる事があったが、シスターは別次元。言ってはいけないが、こんな片田舎の辺境の町に居てはいけない様な、それこそ、その美しさ故、王族や貴族に召し上げられてもおかしくない様な美しすぎる容姿であった
「・・・サン!おい、オッサン!人の話を聞いてんのかよ!」
そんな呆けているジールを我に返らせたのはジールのジールに甚大なダメージを与えたカイトだった
「あ、あぁ・・・き、聞いてるよ。えっと・・・シスター・エリーだったな。宜しくな」
「それは最初の自己紹介の話だろうが・・・」
どうやらジールが呆けている間、シスターの話は進んでいたみたいだ。その間カイトの予想通り全く話を聞いていないジールに対して大きな溜息を吐くしかなかったのだ
だがそんなジールの反応もカイトは慣れているようで、恐らく今まで依頼で来たハンター達もほとんどが同じような反応をしたのだろう。だがそうなっても仕方ないと言えるのかもしれない。それ程にシスターの容姿は美しかったのだ
「はぁ・・・姉ちゃん悪いけど最初から話してやってくれ。俺は子供達の面倒を見てるからよ。おい、オッサン。今度はちゃんと聞いとけよ?それに姉ちゃんに変な事すんなよ?もし変なことしやがったらまた蹴り上げてやるからな」
「う、うっさい!変な事なんかしねぇよ!」
「どうだか・・・じゃあ姉ちゃん、後は頼むわ。何かされたら呼んでくれ。まぁ姉ちゃんなら大丈夫だと思うけどよ」
「うふふ、はいはい。じゃあ子供達を頼んだわねカイト。話が終わったらそっちへ行くから」
カイトの言葉に思わず股間に手を当てるジールだが、そんなジールをカイトは少しも相手にする事無く部屋に居る他の子供達を引き連れて部屋の奥にある一つの扉の中に入って行ったのであった
そんなカイトを苦々しく見送るジールに微笑ましい笑顔で手を振っているシスター。対照的な二人の態度だがカイトと呼ばれる少年はそれだけシスターに信頼されているのだろう。そしてそれがジールにとってはさらに腹立たしかった。所謂、美女に信頼されている男に対する男の嫉妬と言うやつである・・・相手はまだ少年だと言うのに
「ちっ、何なんだアイツは・・・なぁシスター・エリー、アイツはいつもあんな感じなのか?」
「シスターで結構です。そうですね、カイトは他の子より少し大きいですから。責任感?みたいなものが少しあるのかもしれませんね・・・私からすればまだ可愛い子供達なんですけどね」
そう言いながら微笑むシスターはまた天使のごとく美しい。思わずシスターの笑顔を見たジールは頬を赤らめてしまうが、それを隠すかのように顔を逸らしながら慌てて繕うように返事をした
「あ~、そ、そうなのか?まぁあのカイトってやつの事は置いとくとするか・・・シスター・エリー、悪いんだけどもう一度最初から説明してくれないか?」
「シスターで結構です。ではまた最初から説明させて貰いますね・・・今度はちゃんと聞いていてくださいね?」
「あ、はい。分かりました」
ニコッと笑顔でジールに微笑んだシスターだがその笑顔は先程と違って少し怒っている様に見えた為、素直に返事をするジール。天使の様な美しい笑顔の奥に鬼の様なオーラを感じたのだ。今度はちゃんと聞いとけよ、と
そしてその笑顔を見て思った・・・あぁこの人は怒らしたらいけない人だな、と
「コホン、では、まずここの教会がギルドに出した依頼・・・つまり私が出したのですが、ジールさんもご存じのその内容である怨霊の殲滅の事です。その怨霊らしき存在が出始めたのが約1年ほど前で、この教会の神父であった私の父が生きていた時からずっと開かずの扉になっていた地下への扉が開かれた事から始まります」
「私の父って・・・あんたの親父さんが亡くなったのはどのぐらい前なんだ?シスター・エリー」
「・・・シスターで結構です。私の父が亡くなったのは、と言っても私の実父では無いのですが、彼が亡くなったのは私が13の時、町に侵入してきた魔物の大群によって殺されました。元々孤児だった私を拾ってくれてこの教会で育ててくれた父でしたが・・・魔物達から私を守る為に負った傷が原因で・・・魔物達は王都から派遣されてきた衛兵達によって駆逐されましたが、その被害は甚大で、私の様に親を亡くしてしまった子供達も数多く居ました。そこで私は拾って育ててくれた父に倣って、孤児になってしまった子供達をここで引き取り孤児院を開くことを決めました・・・と大分話が逸れてしまいましたね」
「・・・いや気が回らなくて悪かった・・・続けてくれ」
当時の事を思い出したのか、少し涙目になりながら話すシスターにバツが悪くなったのか。謝罪をした後、頭を掻きながらドカッと床に座り込む。そして話を続けるようにエリーに促した
「はい・・・私が孤児院を始めてから約10年ほど経った頃、町の復興もほとんど終わり前の様な平穏な日々が戻ってきていました。それに町の人達も私たちに凄く良くしてくれていて余裕は無いながらも食事には困る事が無い幸せな日々を送っていました。地下への扉も生前の父から絶対に開けるなと言われていた為、私も掃除する時以外は近寄ることも無く、子供達にも強く注意していたので誰も近寄る事はありませんでした」
当時を思い出すかのように目を瞑りながらゆっくりと言葉を続けるシスター
ジールはそんな彼女の言葉を今度は遮る事無く顎に手を当てて黙って聞いている
「そんな時です。この教会の地下に財宝が眠っていると言う噂が流れだしたのは・・・」




