112・決着
「クックック・・・我ガ龍ノ呪イ・・・ソノ身ヲ持ッテ・・・味ワウガイイ」
金色の光に包まれた景色が徐々に収まる寸前、神龍の呟きが聞こえた気がした
そのわずかなながらに聞こえた声に反応しようとしたジール、だが眩しさに瞼を閉じていたジールが目を開けた時には既に神龍の身体は全て崩れ去っていた
「・・・何だよ龍の呪いってのは」
己の体の中を駆け巡った不快感のようなモノは直ぐに消え去り、一瞬、首の辺りに違和感のようなものを感じ掌で触ってみるが特に引っかかるような感じも無かった。勘違いかなと思い触っていた手をすぐに引っ込めるジールだが神龍の残した言葉が気になる・・・だが今の現時点ではそれを確認する術も特になく、気のせいか、とジールの能天気な性格上、その違和感を簡単に終わらせてしまった
だがジールの目には確認できない場所、首筋の裏の辺りに黒い痣の様な、そしてよく見れば龍の形を模した彫り物の様な紋章が刻まれていた。ジールがそれに気付くのは後日、シャルに指摘されてからになるのだった
そして全ての身体が消え去り銀色の軌跡を残し霧の様に霧散していった神龍。だが全て消え去ったはずの神龍が居た場所に一つ、ポツンと残されていたものがあった
「ん?これは・・・まさか俺の切り札でも原形を保っているとはな。神龍・・・恐れ入ったぜ。もう二度と戦いたくねぇな」
そう言うジールが目にしたもの、それは神龍の身体の中心あり存在感を示していたもの『神鱗』であった。それはジールの最高であり全力の魔法を受けながらも、煌びやかな七色の光を失う事無いまま傷一つ無くそこに残されていた
そして宙に浮かんだままのそれをジールが手に取ろうとした瞬間、それは力を失ったかのように重力に逆らう事無く地面へと落下していった
「あっ、まぁいいか。あぁ言う伝説級のお宝はシャルが好きだろうし」
手に触れることなく落下していった神鱗を追い掛けようとしたジールだが、落下していったその先にシャルの姿が見えた為、特にそれを追うような事はしなかった
ハンターであるジールが伝説級のお宝に興味が無い訳があるはずないのだが、こちらを見上げてくるシャルが見てはいけないような顔をしながら、神鱗が自分の方へと落ちてくるのを今か今かと待っているのを見てしまっては何だが自分が手にしてはいけない様な気がしてしまったのだ
「っと、よっしゃー!!コレはアタシのもんだ!これがあれば暫く豪遊できるってもんさね!」
そして予想通り、それを手に入れたシャルからジールまで届く、凱歌の様な雄叫びが聞こえてきたのだ
それを聞いたジールは、やっぱり自分が手にしなくて良かった。後で何を言われるか分かったもんじゃない、と胸を撫で下ろすのだった
「・・・よし、とりあえずケリはついたな。後は・・・」
そんな自ら携える二つのデカメロンを上下左右に揺らしながら狂喜乱舞しているシャルを尻目に、ジールが目を移す先は四神達
何とか存在を保っているものの、いつ消え去ってしまってもおかしくない程、その存在は希薄になっていた。それ程神龍との戦いで消耗したのだ。そして今ジールが何とか生きていられるのも四神達が神龍を抑えていてくれた事が何より、彼等が居なくては辛くも勝利した今は無いのだから
「・・・」
ゆっくりと四神達に近寄っていくジール
そしてそれに反応したのは黄龍。視界を失いながらも神龍が消滅したのは肌で感じ取っていたみたいだ
『何とかカタは付いたみたいだなジールよ・・・』
伝説と呼ばれている黄龍、それに四神
魔力の塊によって顕現した彼等は死ぬことは無いが、内蔵している魔力を失ってしまっては消滅してしまう。時間を置けば回復はするものの、それは彼らを『送還』しなければ意味が無い。彼らの生まれ出でた属性に包まれた根城でゆっくりと療養し再びそのエネルギーを身体に取り込まなけらばならない
精霊として、普段召喚され戦う事にそこまで消耗する事無はいのだが、今回は別。自分達の存在を賭けるほどの戦いであった。そしてそれを自ら進んで行ったのだ
「黄ちゃん・・・四神・・・すまない、そしてありがとう。お前たちのお陰で何とか生き残る事が出来たよ」
それを分かっているジールも素直に四神達に頭を下げる
『ふっ、ジールが頭を下げるなぞ我でも初めて見るな。何ぞ、天変地異でもあるんではないか』
そんなジールを見て茶化すジールだが、如何せんその天変地異の様な出来事がさっきまであったのだ。強ち冗談でも無いように聞こえてしまう
「止めてくれよ黄ちゃん。今回だけは冗談で聞こえねぇ・・・それより身体は大丈夫なのか?今にも消えちまいそうだが・・・」
『うむ・・・だが、何とか雌雄を決するのを見届ける事が出来た。この結果も我等が自ら決めた事だ。後悔はしておらぬよ』
黄龍を勿論の事、四神も自分達がこうなる事は納得の上での事であり消え去ってしまう事に何の未練も無かった。それ故かそれぞれの表情は晴れやかであり一仕事終えた充足に満ちた顔をしていた
だがそれを見ているジールにとっては胸が締め付けられる事であり、何より自分のせいで彼等を失ってしまう事がどうしても許せないでいた
だが、悔恨の念に苛まれているジールにふと妙案が閃いた
「・・・ちょっと待っててくれ。もしかしたら何とかなるかもしれねぇ」




