108・憤慨
『ジール!?』
一瞬でジールの居る場所に着弾した四神達のブレス
そしてそこから聞こえてきた人間の、ジールの悲鳴。これは・・・よもや
最悪の結末が過る
着弾した筈の、ジールが居た箇所に目を凝らす黄龍。自分達のブレスにより空間が削り取られバチバチと放電しながら宇宙を思わすような真っ黒の空間を生み出してしまっている為、少し見えずらい
だが何故だ、未だブレスを吐き続けている筈。なのに何故だ?ブレスを通して感じるこの手応えは・・・何か途轍もなく硬いもので塞がれているような・・・
『これは・・・何という事だ』
そして徐々に見えてきたその結末。それは絶望的と言っても過言では無かった
黄龍の金色の双眼が捉えた姿、そこには自分達が放った全力の一手。それを神鱗から伸びる両腕を交差して受け止めている神龍の姿があった
『バカな!我等の世界の理すら破壊する全力の攻撃を止めたというのか!?』
四神達から神龍まで伸びる一本の線
それが四神達の誇る全力のブレス。黄龍の言うように伝説んも精霊と謳われる自分達の全力、世界の誰であれ何であれそれに抗う事なぞ出来るはずが無い
だがそれが防がれている。バカな、有り得ない事だ
目に映っている現状を理解出来ないでいた
そしてそれとは別に気になる事も・・・
ジールは何処にいるのだ?
ブレスは確実に神龍へと着弾した
だが直ぐ側で神龍と戦闘を繰り広げていたジールの姿が無い。先程聞こえた叫び声、アレは間違いなくジールのものだった・・・だが姿は何処だ?何故、神龍の姿しかない
全力のブレスを維持したまま試行錯誤する。そしてその時、違う方向から別の声が聞こえた
「ジール!!」
咄嗟に黄龍はその声のした方へ視線を送る。するとそこには戦闘から離れ、地面へと降りていたシャルの姿が見えた
そしてシャルの見ている方向を目で追う・・・っ!?アレは!
『朱雀よ!癒しの羽根を一枚ジールへ落とすのだ!』
黄龍の目が捉えたのは神龍の居たところから煙を上げながら落下していっている人物、ジールの姿だった
既に意識は無いように見え、何重にも掛けていた身体強化は切れてしまっている。そして何より・・・
『くっ・・・!やはり掠ってしまっていたのか・・・済まないジールよ』
ジールの脇腹は大きく抉れ、そこから夥しい程の量の血がジールと共に地面に向かって滴下している
それを見た黄龍は直ぐに白虎を治癒したものと同じ、癒しの羽根をジールに渡すよう朱雀へと呼び掛けた。だが僅かながらもジールにブレスが当たってしまった・・・その罪悪感が黄龍へと圧し掛かってしまう。この攻撃の軌道を決めたのは自分だ。四神はあくまでも我に従っただけだ
・・・何と情けない事か
何が伝説の精霊だ
いざと言うとき主の役に立たないでどうする・・・気に入らぬ、己の未熟さに、だ
『シャルよ、聞こえるか!?済まないがジールを受け止めてくれまいか!?今朱雀が癒しの羽根を落として筈だ。それでジールを治してやってくれ!』
「人使いが荒いトカゲちゃんだね!言われなくてもそれぐらいの事はやってやるさね!」
『トカゲちゃん・・・』
己の不甲斐なしに業腹していた所にシャルの追い打ち
だが今はそれに反論する余裕も無い、それにそう呼ばれても今は反論する気も起きない。ただそれに至った原因を今は全力で排除するべきだ
『クソっ!四神よ!持てる全てをもって神龍を消滅させるぞ!』
既に全力で神龍への攻撃を継続している四神達。だが今はソレを越えるべきだ、己の存在を賭けて
黄龍の咆哮を皮切りに、一層輝きを増す五色のブレス
全力を超える事、それは即ち魔力の塊で顕現している自分達の存在を賭ける覚悟
もし失敗してしまえば・・・先に自分達の魔力が尽きてしまえば、我等は消滅してしまう
傷ついたりするのとはワケが違う・・・存在自体が消滅してしまうのだ。だがそれでも
それでも、だ!
全身を震わせ咆哮を上げながら神龍への攻撃の威力を上重ねしていく
それに対し両腕を交差しブレスを止めていた神龍の顔色が変わった。明らかに焦燥している
ジールとの戦闘、それに先程までブレスを防いでいた表情、そこには常に侮った表情が張り付いていた。その神龍の風姿が一気に変わった
ジジジジと鉄を溶かすような音を立てながら神龍の両腕を圧していく。少しずつ、少しずつだが神龍の身体が後退していっている様に見える。このままいけば滅する事が出来るかもしれない
『ぐっ・・・これでもまだ消滅せぬのか』
だが、それは四神達も同様
気のせいか、四神達の身体が少しずつ透けていっている様に見える。だがそれは気のせいではない
彼等は己の存在を賭けているのだ。限界以上の力を引き出しているのだ。魔力体である自分達の身体がそれに耐えられないのは充分承知の上だ
『先に何方がくたばるか・・・我慢比べと言う事だ』
もしかしたら、そう思う。だがその思いとは裏腹に引くどころか一層出力を上げていく四神達
その攻撃に対し明らかに苦悶の表情を浮かべている神龍
そしてとうとうその攻撃に耐えれなくなった神龍の腕がピキピキとひび亀裂が割れるような走っていった。それを金色の両目でしかと確認した黄龍
『っ!!今だ!四神よ全てを出し切るのだ!!』
叫ぶ黄龍
それに共有して一気に膨れ上がる圧縮された極限のブレス
そしてそれは一挙に神龍に強襲した
ドッゴォオオオオン!!




