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蓮華草  作者: 山猫
第二章 あの時の話
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103/140

103・危機一髪

寝やすいように体を屈めて丸くなっていた躯体を大きく伸ばし遠くに立ち上っている白煙を見据える黄龍

眠っていたので分かりづらかったが改めてその全身を見ると流石四神の上位の存在と言われるだけある。全身を金色に覆われたその躯体は四神より遥かに壮大であった。勿論纏っている風格も平凡なソレでは無くビシビシと刺すようなオーラが肌を通して伝わってくる。さすが神と呼ばれる神獣だ


だがその黄龍が警戒している

最強の一角を担うドラゴンの群れでさえ歯牙にもかけず二度寝をかますほどの黄龍が警戒しているのだ

それに気付いたジールもまた緩んでいた神経を尖らせた


『これは・・・よもや・・・』


そしてジッと白煙が立ち上る方向を見据えていた黄龍がそう呟いた


その刹那

白煙の中から七色に光り輝く熱線がジール達に向かって飛び出してきた


「っ!!?」


警戒していた

警戒してはいたが速すぎる

四神のブレスより遥かに速度の速いそれに僅かながらジールの反応が遅れた

だがそこは世界最強と呼ばれるジール。遅れながらもドラゴンの群れを塞き止めていた障壁を何とかギリギリになりながらも自分たちと熱線の間に展開した、それも幾重にも重ねて


・・・だが


「なっ!?」


熱線に触れた途端、いや触れる前にそれが近づいた瞬間にして障壁が破られていった

四神のブレスさえ触れるまでは形を保っていたジールの障壁。それが全て向かってきた熱線の威力によりにより崩壊した

ダメだ、間に合わない

音速を超える七色の熱線、一瞬で破られた障壁

その言葉が頭を過る。身を捻り躱そうにもシャルに肩を貸している為素早く動く事が出来ない

何とかしなければ

そう思考しようとするが、その刹那の間も無い。既に熱線は目の前まで迫っている。近づいてくる死の予感、感じる熱量・・・これはもう


「~~~っ!」


思わず目を瞑る

一瞬で今までの人生が頭の中にフラッシュバックした。これが走馬灯ってやつなのか

刹那、いや悠久とも感じられたその瞬間


ドッゴォオオオオオオン!!


それは直撃した


・・・

・・・


「・・・」


痛みが無い、否感じないのか?

ムワッと感じる熱量、だが来るはずの痛みが来ない。確実に直撃したはずの熱線。それとも俺は既に・・・不思議に思いそっと目を開く

開けた視界に入ってきたのはドラゴニア山に立ち上っていた白煙とは別の黒い煙。やはり熱線は直撃したのか・・・だがしかし

それより少し前にジールの前に何かある。大きな壁のような、だが障壁は全て破壊されたはずだ。なら何故・・・


死を覚悟したジール。これまでも何度かそれを感じた事はあったが、今回は流石にそれを一番身近に感じた。それ故か、思考がうまく纏まらない。俺は本当に生きているのか?

そんな事がグルグルと頭の中を駆け巡る。その時ジールの頭の上から重厚な声が降って来た


『大事ないかジールよ・・・くっ、中々の威力だな』


その声に反応し思考が定まらないながらも頭上を見上げた。黒煙の隙間から見え隠れする金色の鱗

それを見た途端ジールの思考が一気にクリアになった


「黄ちゃん!!」


ジールを守ったのは金色の翼、四神の頂点に立つ黄龍の大きな金色の翼だった

さすが伝説の神獣、ジールの障壁をいとも簡単に破壊した七色の熱線をその翼で防いだのだ。だが、その黄龍の翼でさえ直撃を受けた箇所がブスブスと焦げた様に焼け爛れ黒い煙を上げている。恐らく四神のブレスでさえ黄龍の翼にここまでのダメージを与えるのは難しいだろう、それ程の威力だったのだ。そしてそれを見て黄龍は一つの結論に至った


『う~む、やはりこれは神龍が目覚めたようだな。我の身体にここまで傷をつけるとは』


「神龍?神龍ってあの伝説上の生き物のやつか?」


黄龍のお陰で何とか命の危機を脱したジール。全身から滝のような汗を流しながら黄龍の言葉に答えている。そして横に居るシャルも同様に死の予感を感じていたのか全身を小刻みに震わしながら血の気が引いたような顔を張り付けていた

そして黄龍が言い放った言葉、神龍。まさか、伝説上の神話の生き物だ、そんなお伽噺のような存在がここに居る訳無い。存在する訳が無い。そう思ったジールだがそれと同様に伝説の神獣と呼ばれる黄龍が真剣な面持ちでそう告げているのだ。よもやそれが冗談でもあるまい


『うむ、この波動は間違いなく神龍であろう。だが・・・まだ顕現したばかりの様だな。幼いが故に起きた暴走か、それとも・・・』


ダメージを受けた翼を大きく広げその動作を確認する黄龍。何度か軽く羽ばたいた後再びドラゴニア山の方へと視線を移した。どうやら翼の動きに問題は無いようで、ジールの問いに答えながらも警戒を緩めていない。そしてそれが功を成したのか、白煙の隙間からキラリと光る七色の魔力の塊状に気付いた


『っ!?また来るぞ!四神よ、相殺するのだ!』


再び、先程と同様にドラゴニア山から七色の熱線が放たれた

だが今回は警戒の手を全く緩めていなかった黄龍によりそれに反応する事が出来ている


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