102・目覚めるモノ
「ぅおいっ!何で寝てんねん!?頼むよ黄ちゃん!おいって!起きてくれよ!?」
寝たまま召喚される事が出来るのは世界広しと言えどこの黄龍ぐらいだろう・・・しかしまさかジールでさえ、寝たまま出てくるとは全く思ってなかったみたいだ
思わずツッコんでしまうジール。ブレスを溜め続けている四神達もどうすればいいか分からず困ったように見える。伝説の神獣の四神が困っているのだ、これは中々お目にかかれない光景だろう。そしてジールの必死のツッコミに反応したのか、黄龍はその大きな耳をピクリと動かせ薄っすらと目を開けた
『ぐがぁ~~・・・が、ん、ん~?おぉ、何だジールではないか。どうした?何か用か?ふわぁ~~~あ』
眠りから覚め大きな欠伸をした後自分の前にチョコンと浮いているジールに気付く黄龍。だがその表情はまだどうにも眠そうで今にも瞼が再び閉じてしまいそうに見える
「いや何か用か?じゃなくてよ!この状況、見れば分かるだろ!?」
自分の前で口喧しく叫んでいるジールをボ~っとした視線で眺めている黄龍。だが辺りにも喧しいジールに反応したのか言われた通りそのままの態勢でグルっと一通り辺りを見回した。自分の四方を囲んで居て魔力のブレスを溜め続けている四神、そして少し離れたところにいるドラゴンの群れ。それを眠そうな双眼で確認した黄龍。そして
『んん?ん~・・・うん・・・ぐがぁ~~・・・スピピピ』
「いやいや何で二度寝やねん!?おい!この黄すけ!お前この・・・起きろっての!おい!?」
周囲を確認した後、再び眠りにつく黄龍。おそらく、黄龍にとってこの状況は取るに足らない事だったのだろう・・・いやきっとそうだろう。決して襲い来る睡魔に勝てなかった訳ではないだろう、そう思いたい
「はは・・・相変わらずだねコイツは・・・まあいいさね。ジール、残りの四神でも何とかなるだろうよ」
「はぁ~、ったくせっかく召喚したのによ・・・ま、いっか」
黄龍の顔面にビロ~ンと伸びている二本の髭をグイグイと引っ張っていたジールだが、シャルの呼びかけに諦めがついたのか盛大に溜息を吐きながらクルリとドラゴンの方たちへと向き直った
そしてずっとブレスを溜め続けいい加減ピクピクと全身が震えてきていた四神。自分達より上位の存在、黄龍が居る為、気を使っていたのだろう。文句一つ言わずにずっと耐えていたみたいだ・・・神獣も人間もその辺りは変わらないのだろう。世知辛いものだ
そしてその四神の状況を知ってか知らずか、盛大に一つ溜息を吐きながらジールは手をスッと上にあげそれを前に突き出しながら再び叫ぶ
「薙ぎ払え!!」
ジールの号令と同時に極限まで、非常に極限まで溜めこまれた四神の濃密で膨大な魔力を込めた咆哮
それがドラゴンの群れに放たれた
ギュオオオオオオ
四神それぞれ各属性の頂点と言っても過言ではない濃密な魔力のブレス。対なる属性が反する事無く混ざり合っていく、それもより強力になりながら、だ
そしてそれは瞬きする間もなく一瞬でドラゴンの群れに襲い掛かった。そしてその手前、あれ程協力にドラゴンの進行を防いでいたジールの張った障壁。だがそれは四神のブレスに触れた途端薄いガラスの様に一瞬で砕け散る
そしてそれと同時にその近くに集結していたドラゴン達にもそれは襲い掛かった
ジュッ
四神の召喚から身動きできずに障壁の前に群がっていたドラゴン達は四神のブレスに触れた途端、断末魔の方向一つあげる暇無く一瞬で蒸発した
そしてドラゴンを蒸発させた四神のブレスはそのまま勢いを衰えさせることなく、ドラゴン達が出て来たであろう遥か後方にあるドラゴニア山の尾根に激突した
ドッゴォオオオン
「お~相変わらず壮観な眺めだな・・・とりあえずこれでカタが付いただろ」
その光景をじっくりと見ていたジールとシャル
僅か一瞬、あれ程二人が手こずっていた厄災いにも近いドラゴンの群れ、スタンピードが一瞬で消滅した
ブレスが通った後はその威力により空間すらも歪んでいた。勿論そこに生ける者は何も残っておらず、後に残るのはブレスの軌跡が軽く放電しているぐらいだった。ブレスが激突したであろうドラゴニア山は大きな白煙が立ち上っており、その為直撃した結果を視認するのは難しそうだ
そしてジールはそれを目で確認した後、ふぅっと軽く息を吐き肩を貸しているシャルに話し掛ける
「ほら、終わったぞシャル。今回ばかりはちょっと危なかったけど何とかなったな・・・ったくこれだけ働いたんだ、さすがに報酬無しってのは勘弁してほしいな」
世界最強と謳われるジールでさえ今回は自らの命の危機を少しなからず感じたのだ。おそらくシャル一人では凄惨な結果を迎えていただろう。それも含めて流石にシャルの豊満なデカメロンを凝視しただけの報酬では少し割に合わない、そう思ったジール。だがシャルはその言葉を聞きフンっと鼻を鳴らした
「はぁはぁ・・・ふぅ・・・、ったく何を言ってるさね。今存分にアタシの身体を弄んでいるじゃないか。逆にこっちがお釣りを欲しいぐらいさね」
「なっ!?おまっ!これはお前が肩を貸してくれって言うから!」
「はっ、肩を貸してくれとは言ったけどアタシの身体に不快な視線を這わせていいとは言ってないさね。まぁいいさ、これは一つ貸しだからね」
「ななななな・・・」
バレていたみたいだ
だが、さり気なく、ほんの少し、さり気なくチラ見をしただけなのに
バレてた
だが事実なのは覆せない真実なので、ジールも反論したいのだが言葉が出てこない。ここでも引き続きシャルにしてやられてしまったみたいだ。全く・・・己の本能が忌々しい、だが仕方ない。本能と欲求は衝動的なモノなのだから
「はぁ・・・ったく、分かったよ。取り合えず下に降りるぞ?四神達もご苦労だったな・・・黄すけは役に立たなかったけどよ」
もろもろ諦めたジール。自分の所為とはいえ今回も報酬無しか・・・毎回の事だがシャルに係る時にはいつもそうだな。取り合えず肩を貸しているシャルを地面に降ろそうか、その前に四神達を送還しないとな、そんな風に考えていたジール
・・・だがその時二度寝をかまして大きな鼻提灯を浮かべていた黄龍がいきなり目を覚ました
自身の大きな体躯に埋もれて爆睡をこいていた首をグイっと大きく伸ばし、四神のブレスが激突したドラゴニア山の方へと視線を送る
『・・・ジールよ、これはまだ終わっておらんぞ』




