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蓮華草  作者: 山猫
第二章 あの時の話
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101/139

101・召喚されるモノ

「東から出ずる陽春の善女龍王『青龍』!」


「西から出ずる秋麗の伝説『白虎』!」


「南から出ずる盛夏の不死鳥『朱雀』!」


「北から出ずる冬暁の星宿『玄武』!」


二人は眼前に手を合わせ膨大な魔力を全身に張り巡らせ言霊を唱える

呼び出したるは伝説の神獣『四神』

人間には不可能とされている神獣との契約。さらにその中でも二つとして存在していない伝説と呼ばれる四神。世界の東西南北を司るとされている生きた伝説。それは世界各地の濃密な魔力の塊により生み出された、世界が生んだ奇跡とも言っていいだろう


ソレ等がこの二人によって顕現されたのだ


二人が言霊を紡ぎ終わった途端二人の上下左右、四方の空間が大きく光り出し、そしてその光がゆっくりと大きな魔法陣を描いていく

少しずつ紡がれていく魔法陣、その展開により二人の周りの空気は震え空間が歪みだす。それ程までの濃密な魔力。それに気付いたのかジールが展開した障壁に幾度も攻撃を仕掛けていたドラゴン達の動きも思わず止まってしまう


数秒か数刻か・・・ゆっくりと魔法陣が描かれていった間に動きを見せる者は誰も居なかった・・・否、動けなかったと言っても過言でなはいだろう

ドラゴン達は委縮して動けなくなっており、ジールとシャルは全身全霊を込め四神を召喚するために己の持ちうる魔力を全力で注いでいたからだ


『グォオオオオオオ!!』


そして完成された魔法陣、その中からゆっくりと姿を現していく四神

伝説と呼ばれるその名に恥じない存在感

青龍 白虎 朱雀 玄武

その見た目もさることながら、纏っている魔力量が尋常ではない。それぞれの体躯も障壁の前に群がっているドラゴン達にも引けを取っておらず、むしろドラゴン達と比べ遥かに濃密な重厚感にドラゴン達は身動き一つできずにいた


この四神によりドラゴンの群れを一掃できるのだろう。その目論見を込め残っているシャルの魔力量を考えた上でジールは賭けに出たのだ

そしてその価値は十分にあったのだ

・・・だがジールとシャル、二人の詠唱はまだ終わっていなかった


四神が全身を顕現させたのを確認した二人は目を合わせ言葉を合わせ最後の言霊を紡ぎ出した


「「真から出ずる神の十二天将勾陣九龍『黄龍』!!」」


神獣『黄龍』

東西南北を司る四神を束ねるとされ真なる位置、中央を司る伝説の神獣

それは四神の完全上位の存在。神獣と言うよりは神に近しい存在


顕現した四神の中央、二人が居る背後に金色の魔法陣が描かれていく

一つ一つ、一節一節紡がれていく召喚陣

世界最強と言われるジールの額にも大粒の汗が垂れている。四神の中の一神でも召喚するとなれば、それこそ国の英雄と謳われてもおかしくないほどの偉業。それをさらに全ての四神の召喚、それに加え黄龍の召喚

いくら人の域を遥かに超えた魔力量を持つジールと言えどソレ等を全て召喚するには文字通り全身全霊、全力を掛けていた。シャルに至っては黄龍の召喚が完成した後、その体に魔力は残っていないだろう

だがそれを含めて全てをこの召喚に賭けていた

そしてそれはついに成った


金色に刻まれていった召喚陣から現れたのは、召喚陣の色と同じく黄金色に包まれた鱗を身に纏った龍

ジール達と対峙しているドラゴンとはまた一線を引いた別格の存在。そして四方を囲んでいる伝説の四神が脇役になってしまう程の神気。太陽の光に反射し煌びやかな存在を見ている者全てに映し出す

初めて見た者でも分かる、これが神なのだ、と


「ぶはぁっ!・・・はぁはぁ、ジ、ジール・・・悪いんだが少し体を支えてくれないかい?もう流石に空っぽさね・・・」


「お、おう・・・取り合えず肩を貸してやるからもう少し我慢しな」


最早宙に浮く魔力すら残っていないシャル。普段は触る事すら難しいその悩ましいボディをジールに預ける。・・・憔悴しきったのだろう。際どい部分にジールの手が触れているがそれを窘める余裕すら伺えない

ここぞとばかりにシャルの豊満なボディを堪能したいところだが流石のジールも場を弁えているみたいで少し触れる程度で我慢している、というか元来の目的を先に遂行しない事には始まらない

シャルに肩を貸しながらも顕現させたソレ等を一瞥したジールは、四神達の圧力により障壁の前で固まって動けなくなっているドラゴンの群れに対して言い放った


「薙ぎ払え!」


ジールの言葉を引き金にジッと佇んでいた四神は大きく口を開き口内に己達の属性のブレスを溜めこんでいく。濃密な高濃度な魔力の集積、上下左右から感じる魔力の大きさにジールの肌もピリピリと痺れていた

それに対し逃げ出そうにも逃げ出せないドラゴン達、おそらく逃げ出したところで間に合わないと諦めているのか、はたまた委縮して動けずにいるのか

その間にもドンドン四神の口腔にブレスが溜まっていく・・・四神の口内に・・・

四神の・・・


あれ?

とふと疑問を感じたジール

確かに上下左右からは凄まじいほどの魔力を感じる。だが一番それを感じるはずの背後から全くそれを感じない・・・もしかして、とそっと後ろを、黄龍の方を振り返るジール

太陽に反射しその姿が少し見えにくいが、目を細め何とかその姿を視界に捉えた。するとそこには・・・


「・・・」


『グォオオオ~・・・スピピピ・・・グォオオオ~・・・スピピピ』


伝説の黄金色の鱗を携える四神を束ねる神獣黄龍

その伝説はこの状況を全く顧みず、爆睡していた

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