100・vsドラゴン
それにより召喚に対して躊躇する人間が数多くいるのだ
そして契約するに当たってその対象となるのが『精霊』と呼ばれる存在だ
彼等はどのような存在かと言うと、人間など他の生物が多種多様な属性を扱えるのに対し精霊は自然に宿るあらゆるエネルギーが物質化し命を持った者。それ故、火のエネルギーなら火の精霊。水のエネルギーなら水の精霊、と言うように一つの属性しか持たない
さらにそのエネルギーの強さも多様で小さな火のエネルギーとなれば小さなトカゲのような精霊になるし、大きな火のエネルギーともなればジールが召喚したヴォルカヌスのような人を模した大きな存在になるのだ
さらにその最上位の存在も存在するがソレらは最早、人間が召喚出来ると言った域を遥かに超えているエネルギーの塊で存在しており、そのあまりの強さから敬意と畏怖をもって『神獣』と呼ばれている
勿論ソレ等と契約、または召喚する事など人間にとっては不可能とされており、ソレ等と相対した時には黙って過ぎ去るのを待つか自らの生涯を走馬灯の様に噛み締めるしかないのだ
「ちっ、このままじゃ埒が明かねぇな・・・ヴォルカヌス!『送還』!」
炎の精霊を召喚したジールはしばらく彼と共闘していた。通常のサイズの魔獣等を相手にするにはヴォルカヌスでも十分事足りるのだが、ドラゴン相手には少々荷が重いみたいで地面をも溶かす熱量を持つヴォルカヌスの炎の息吹もドラゴンの群れに対しては目立った効果が見られていない
精々、直撃して一匹程度しか倒せていなかった
・・・そもそも精霊がドラゴンを倒せるという事自体、異常な個体なのだが
「おいシャル!あと魔力はどんぐらいありそうだ!?」
「何さね!?こっちは忙しいんだよ!アンタもっと精霊を呼べないのかい!?アンタの魔力量ならもっと呼べる筈さね!」
ヴォルカヌスを送還したジールはいくら倒しても一向に減る気配が無いドラゴン達にウンザリしていた。そしてそれと共に背中に垂れる冷たい汗、別にこのまま放置してさっさとトンズラしても敵わないのだが、近くに壊滅してしまった村があるのだ・・・この群れがこのまま街に進軍してしまった時の事を考えたらいまここで殲滅しておく他無いだろう
これ以上被害を広げる訳にはいかないのだ
「呼べない事は無いけどよ!このままチマチマ減らしてもキリが無いだろうが!いいから!あとどんぐらい魔力は残ってるのかって聞いてんだよ!?」
「はぁはぁ・・・はっ!誰に聞いてんのさね!アタシは鮮血の大賢者と呼ばれてる女神さまだよ!魔力なんざまだ一割も使っちゃいないさね!」
「はは・・・そんだけ吠えれりゃ上等だ!」
いつの間にか肩で息をしているシャル。それもそうだろう、持ち前の膨大な魔力量も長時間ドラゴンの群れを相手にしていては節約するわけにもいかず、ずっと全力で放出しまくっているのだ
強がりを言ってはいるがこのままではいつか数の暴力に押され、魔力が底をつき持ちこたえれなくなるのは明白だ
それを分かっていたジールは自分の近くに群がっているドラゴン達を炎の魔法で一掃した後、一瞬でシャルの側に飛んで行った
自分にはまだ少しは余裕があるがシャルの事を考えての事だろう、彼女の燃料が切れる前に一気にカタをつけてやろうと考えていた
「シャル!久しぶりに合わせんぞ!出来るか!?」
「はぁはぁ・・・ジールのくせにアタシに指図すんじゃないよ!出来るに決まってるさね!」
「そうこなくちゃな!よし、ちょっと掴まってろ」
宙を飛びシャルと肩を並べたジール。そしてシャルの手を掴むと周りを囲んでいたドラゴン達から猛スピードで距離を取った。そして未だに減った気配が全く見られないドラゴン達と自分たちの間に大きな障壁を張った
「『イルミネイトプロテクション』!・・・よし、これで少し時間が稼げるはずだ。シャル、今のうちに召喚するぞ」
「うっさい!はぁはぁ・・・アタシに、指図すんじゃないよ・・・仕方ないね」
今から二人が行使するのは『召喚』。それもこの二人が時間を少し有する必要があるほど
その時間稼ぎの為、ジールは自分たちとドラゴンとの間の大きな障壁を張ったのだ。元々人一人囲む程度の魔法であるがジールが広げたのは地面から遥か天にまで突きあげるほどの広さの結界、さらに横幅も視認出来るほどの広さに収まっていなかった
ドラゴン達への時間を稼ぐ為、ジールは出来るだけ大きな障壁を張るしかなかったのだ。だがそれもドラゴン相手には数分も持ちはしないだろう。その証拠に障壁の前に群がっているドラゴン達はそれを壊す勢いで次々とブレスや爪牙による攻撃を繰り広げていた
もって数分・・・だが二人にはその時間で十分だった




