表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コスメティック・ハンター  作者: Tsuyoshi&松山亮太
第一話『赤髪の美容ハンター』
3/10

#3

 酔っ払いや客引き達で賑わう繁華街を千寿は一人歩いていた。チラホラ見える『エステ』や『美容形成』、『永久脱毛』の看板。


『人が美を意識するのは、今も昔も変わらない。ただ現代は、美容整形によって造られた美が溢れている・・・・・・果たして、それは正しい美意識の在り方なのだろうか?』


 その時、腹の虫がグゥと鳴り、彼は腹を押さえた。


「ああ・・・・・・腹減った」

「ちょっとぉ、どいてよぉ~。嫌だって言ってるでしょ~!」


 聞き覚えのある声が聞こえてきて、千寿は声のする方に視線を向けた。


「ん?」


 視線の先には千鶴の姿があった。二人のホスト、吉田と池端に囲まれて立ち往生している。


「今夜だけ、ネッ。必ず、至福の時を味わえるからさ」


 吉田は両手を合わせて千鶴に入店を懇願しているようだ。


「ちょ、ちょっとぉ!」

「ほらほら・・・・・・ん?」


 怪訝そうな顔を浮かべる池端とは対照的に、吉田は驚いた顔で口をパクパクさせていた。


「か、神多、千寿・・・・・・」


 池端の背後にいたのは千寿だった。千寿は池端の背後から、彼らに静かに語り掛ける。


「ほう・・・・・・あんた達ホストは、こんなカタチで至福の時を語っているのか」


 千鶴の方も千寿を見て驚いていた。


「あ・・・・・・赤い髪の」


 苛立っていた池端は千寿の手を振り払い、彼を睨みつける。


「何だ、兄ちゃん? あん?」

「池端! やめろ」


 吉田が池端を制する。その表情はどこか強張っていた。


「この子、俺の知り合いなんだ」

「・・・・・・ほえ?」


 千鶴が素っ頓狂な声を出した。そんな千鶴をよそに、千寿はホスト達に目をやる。


「子供だから、あんた達の店はまだ早い」

「そ、そうでしたか・・・・・・ははは」


 吉田が苦笑いする。


「なっ、なにおぉ! 私は子供じゃ・・・・・・!!」


 反発する千鶴の首根っこを千寿が掴んで引っ張り、


「ほら、行くぞ、お嬢ちゃん」

「お、おおっつ……」


 ジタバタと手足をバタつかせる千鶴を脇に抱えて去って行く。

 そんな千寿の後ろ姿に池端は唾をペッと吐き出して睨み付ける。


「けっ、せっかくの金づるが。先輩、なんなんスか、あの男」


 千寿の後ろ姿に固唾を呑んで見つめる吉田。


「神多千寿。美容整形業界でその名前を知らないヤツはいない程の名医・・・・・・ゴッドハンドの

持ち主だ。芸能業界から風俗業界、あらゆる美容に関する業界人達、それも上流階級の奴らが

あいつの顧客だと噂だ。奴に睨まれるような事なんか俺達下っ端ができるわけねぇ・・・・・・」



 ホスト達の前から去った千寿と千鶴は大きな広場に来ていた。広場には噴水があり、噴水の中央からは時計が伸びている。


「あー、ウザかったぁ…・・・強引すぎだっつーの、あいつら。あ、もう降ろしていーよ」


 千寿の脇に抱えられた千鶴は清々した顔で機嫌よく、千寿に自分を降ろすように言う。

 すると千寿は無言で千鶴を噴水の中へ放り投げた。


「のわっ! 何すんのよぉ! いきなり!」


 千鶴は水中からザバッと顔を出して千寿に怒鳴りつける。

 しかし彼は千鶴を見下ろして冷静に言い放つ。


「俺の前で歳を誤魔化せると思ったか? お前、まだ十八ってとこだろ」

「ギクッ・・・・・・何、言ってるのよ。私は二十歳だって―――」

 

 図星を突かれ、千鶴は目を泳がせながらまだ誤魔化そうとする。


「成人は十八からになったんだっけ? だが、法律は守った方が良いぞ、お嬢ちゃん」


 千寿はずぶ濡れの千鶴からサングラスを取り外す。

 その際、千鶴の顔を見て千寿は驚愕の表情を浮かべた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ