#4
「なっ・・・・・・⁉」
「人の顔見て、そんな顔しないでよね」
千鶴は口を尖らせたが、千寿にまじまじと顔を見つめられて顔を赤くした。
「な、何よ・・・・・・」
(うわぁ・・・・・・まつ毛なっがい。お人形みたい、この人)
「・・・・・・そのデコのニキビ、いつからだ?」
「えっ!?」
不意に千寿から突拍子もない事を訊かれ、千鶴は額のニキビを咄嗟に手で押さえて隠す。
「ちょ、ちょっと、見ないでよぉ! 前髪で見えなくしてたのに・・・・・・」
千寿はそっと彼女の額の手を外して、前髪を掻き分ける。
「額にできるニキビは、おもに思春期に多く第二次性徴によるホルモンバランスの乱れが原因とされるんだ」
「え、何・・・・・・?」
突然、保健体育の時に聞いた事のあるワードが出てきて千鶴は困惑する。
「ニキビの原因となるアクネ菌は、前髪の毛先やシャンプー剤の洗い残しなどの不衛生さが刺激してさらに増殖して悪化するんだ」
アクネ菌が額にウジャウジャ増殖するイメージ映像が千鶴の脳内で想像される。
「う、嘘ぉ・・・・・・!!」
「できるなら、こういう時は前髪を短く切った方がいい・・・・・・でも、俺なら―――」
千寿は掌に念を込めて力を集中させる。すると千寿の掌は淡い紫光に包まれ、彼の掌の光が
千鶴の額に触れていく。
「わっ! ・・・・・・あ、温かい」
光は瞬く間に千鶴の額ニキビを消していった。そして千寿の掌の光もフッと消える。
「うっわぁ・・・・・・びっくりしたぁ。一気に酔いが醒めちゃった・・・・・・い、一体、何したのよ?」
千鶴は脱力してその場に腰を抜かしてしまった。
千寿は腹を押さえて満腹感を味わっている。そんな彼の様子に千鶴は首を傾げる。
それから先程光を当てられた額を手で押さえると、千鶴は驚いた顔を浮かべ、焦って鏡を取り出して覗き込んだ。
「うっそー!? キレイすっきりにニキビがなくなってる!」
千鶴は瞳を輝かせて千寿の両手を持ち、ブンブンと大げさに振りながら、
「マジ感激ぃ~!! 大学受験のストレスででき始めてから、ずっと悩んでたのよぉ。大学には合格できたのにコイツだけはしつこく残ってさ~。ウッキャッキャ…・」
途中、千鶴はハッと我に返り、
「あ、しまった……」
慌てて千寿の手を放す。しかし千寿は千鶴を真剣な眼差しで見つめていた。
「・・・・・・奈津美、なのか? お前・・・・・・」
「な・つ・み? 私の名前は、ち・づ・る・よ?」
首を傾げながら、千鶴は千寿に名前を告げる。
「・・・・・・千鶴?」
「うん」
困惑する千寿はクルッと踵を返し、千鶴に背を向けて歩き出す。
「都会の夜は危険だぞ。早く帰りな」
「あ・・・・・・って、こんなビショビショな姿でどうやって帰るのよぉ!」
千寿は一度も振り返らずに、大声で文句を言う千鶴の前から去って行った。
(確かに顔はそっくりだが・・・・・・性格が丸っきり違う、か・・・・・・)
「待って! あなた、お母さんの事を知ってるの!?」
「・・・・・・っ!!」
千寿は思わず振り返った。
「天満千鶴! 奈津美は、私のお母さんだよ!」
振り返った先に映る千鶴の笑顔。時計台の針が二十四時を刻む。




