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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
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第91話 新たなる道へ 前編



 アイリスがゴブリン達を訪れて25日目。


 午前中はフレッドの葬儀と【三組合連合軍】の結成式が行われた。


 



―――――――――――――――――――――――

―アイリス視点―



◆◆◆◆◆25日目◆◆◆◆◆



 「……どうですか?」

 「……まだ足らん。だが、1日目にしちゃあ出来の良い方だ。」


 「ありがとうございます。」



 午後2時。

 俺はバルザンの所へ出向いて羽根ペンを教わっていた。



 1時から始めたが、たった1時間そこらでカルナ言語の文字全ての書き方を教わった。



 今その書き方を教わった後に薄い線が引かれた紙に書き、バルザンに見せた所である。



 「まぁ、こればっかりは練習あるのみだ。何枚でも書いていればその内この紙を見なくても上手ぇ字が書けるようになる。」

 「はい。……これ、仮りても良いですか?」


 「おう、やる気があるんなら遠慮なく持って行け。ついでに、コレも。」



 バルザンはお手本1枚と大量の薄い線が引かれた紙を俺に渡した。



 「その前に、お前の苦手な所がある程度分かった。苦手分野がわかんねぇと話になんねぇだろうから、試しにコレを書いてみろ。」



 バルザンはお手本の紙のとある一文字に右手の人差し指を当てた。


 俺は集中力を高めて文字を描く!


 ……が、流石はバルザン。

 ちゃんと見抜いていたようだ。



 「集中力が高いからか……止め、羽根は綺麗だ。だがそのせいか、どうやら要所要所の筆の力加減があまり出来ねぇようだな。」

 「……はい。」


 「よし、じゃあ次は俺が右腕の力加減をサポートしてやる。お前は普通にさっきやった通りに書け。」



 バルザンは左腕で俺の右腕を下から持つような形で構える。


 俺は文字を書き始めた。

 バルザンは微調整して俺の力加減を程良くさせている。


 と同時に、この場所はこの程度の力加減で良い……や此処は筆を少し離して筆先で……などというものが、腕に伝わりやすかった。



 終わって気が付けば、お手本とあまり大差無いほどの文字を書く事が出来ていた。


 バルザンは先ほどの文字と比べて見ながらこう誉めた。



 「やんじゃねぇか。大体の感覚は分かったか?」

 「はい。ありがとうございます。」


 「礼はいらん、俺は教えただげだ。後はお前がどう生かすか次第。後は、コイツに似た文字が幾つかあるから、それもさっきと同じようにやれ。」

 「はい!」



 初回のバルザン直伝の羽根ペンは、2時間程で終了した。



―――――――――――――――――――――――



 アイリスが羽根ペンを教わっている一方、とある魔物が秘密の場所であることに挑戦していた。



 ある魔物……。

 モークタンのモークである。



 元々モークタンには毒耐性なんぞ何も持っていなかった。


 ゴブリンの所へ最初に来て悔しかったのは、アイリスやユッケが美味しそうにあの毒草ゼリーを食べていた光景である。



 それ以降、闘志を燃やしたモークは前代未聞の速度で次々と毒の耐性を獲得していった。


 現在、モークの持つ毒耐性スキル【毒従順】。

 何も入っていなくても毒だけで甘い味を感じるアイリスの【毒物吸収】までとは行かないものの、念願の【毒無効】の一歩手前まできたのである。


 【毒従順】になってから既に多量の毒草を摂取しているモークは、2000枚という大量の毒草を持って気合いを入れていた。



―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 はぁ……はぁ……。



 今日の夕飯のおやつまでには絶対に終わらせる!



 まずは禊ぎの1枚!



 「……ゲホッ! ゲホッ!」



 俺は毒草を1枚食べた直後、耐えきれずに壺の中に緑色の血反吐を少量吐く。


 (ずっと思ってたけど、【毒従順】でこれってエグくない?最初の頃よりはぜんっぜんマシだけど)


 そんな事を思いながらも、吐いた直後にすかさず口の中へ2枚、3枚、5枚放り投げる。



 「ゲホッ! ゲホッ! ガハッ!」



 俺はさっきよりも多量の血反吐を壺の中に吐いた。


 ……当然だけど、枚数が多いほど苦痛はもっと大きくなる。


 相乗効果って奴だね。

 勝手に相乗すんなよ!って思うけど。



 吐き終わった俺は更に毒草を食べては吐き、また食べた。



―――――――――――――――――――――――



 午後20時、ゴブリンの洞窟内の村長の部屋でアイリス達は何時ものように食事をしていた。


 そして、デザートの時間がやってきた。



 「アイリス殿、ゼリーの量は如何致しますかな?」

 「そうだな……3個欲しい。」


 「ユッケ殿は如何ですかな?」

 「俺は1個で構わん。」



 彼らの食事を何度も見ていたら分かる、何時もの光景。


 ……だが、今日。

 その光景が誰かの発言で崩れ去った。



 「はい! 僕、100個で。」

 「……えっ?」

 「なんと……。」



 モークの発言にユッケと村長は耳を疑う。


 毒耐性がなかったハズのモークが、気合いと負けず嫌いの性格だけで此処まで登り詰めた事に驚いているのだ。



 「おい! モーク、お前まさか……。」

 「【ステータス】! じゃーん♪」



 実はこっそりモークの努力を見ていたアイリスはモークの性格を考えて驚いたフリをする。


 アイリスの驚く反応に天狗になった気分のモークは、【ステータス】の中にあるスキル一覧を見せた。




 そこには、



 スキル【毒無効】



 と確かに表示されていた。




 「村長、これは俺も予想外です。最後まで諦めなかったモークの努力を無駄にするのは少し野望ですね。」

 「いやはや……流石にこれは一本取られましたね。普段なら即答で拒否していましたが……お祝いに承りましょうか。」

 「やったー♪ 100ゼぇリー! 100ゼぇリー!」


 「聞きましたかな? 毒草ゼリーを100個、回数を分けても構いませんから、早急に用意をしなさい!」

 「はっ!」




 村長とユッケはモークの要求する100ゼリーを無条件で賛成した。


 周りのゴブリン達に村長が声をかけ、総動員で毒草ゼリーの製作に取り掛かった。



 「よくやったなモーク、お疲れ様。コレからは毒草を楽しんでくれ。」

 「はーい!」

 「しかしですぞ、流石に毎回100は困りますなぁ。せめて10個程で……。」


 「ダメ! 50個くらいは欲しい!」

 「……なる程、舌戦ですか? ……お相手しましょう。」


 「いざ、じんじょーに勝負!!!」



 アイリスはモークを褒め称えた。

 モークはその褒めに照れ臭そうににやけ面をする。


 だが、今後モークのゼリーの数を巡って村長とモークが舌戦をするこことなった。




 ……結局モークが舌戦最強クラスの村長に勝てるハズも無く、毒草ゼリー20個とモークの希望を大きく下回る形で終結した。


 アイリス達が香味草を少しの間吸っていると、計54個のゼリーが運ばれてきた。



 アイリスは何時もの3個、ユッケは1個、モークが50個である。

 「もう半分は10分後に用意するので、待っていてください」も慌ててモークに聞いてきた。


 そして、村長は毒草ゼリーの皿を上へ掲げてこう叫んだ。



 「それでは、モーク殿のスキル【毒無効】習得祝いに私が音頭をとらせていただきます。おめでとう!」

 「「「おめでとう!」」」

 「ありがとー! それじゃあ、いっただっきまーす!」



 モークは噛むことなく吸い込むようにゼリーを一個一個平らげていった。



 「ん~! し・あ・わ・せ♪」



 この世の快楽を全て味わったかのようなとろけ顔をしながら、モークは上を向いてゼリーを味わう。



 今まで散々苦しい思いをしてまでこのゼリーを食べたいという目標を持っていたのだ。


 最初は死にそうな程の苦痛を持っていたハズのあのヤバさの欠片も今は何処にもなかった。



 「フハハハッ! お前いっつも上手いモン食うときに限ってその顔だよな!」

 「いい加減直さないと、女に嫌われるぞ?」

 「まあ、いいじゃん! 今日だけは。」


 「それもそうか。」



 モークの悦楽の顔を他の皆は許す事にした。


 そんな表情のモークを祝うように、10分後には更に50個のゼリーがモークの所へ運び込まれた。



 モークはペースを全く落とすことなくバクバクと食っていき、あっと言う間に完食した。



 「ごちそうさまでした! 次は【毒物吸収】だ!」

 「お、遂に俺のところまで来るか?」


 「だってライバルだもんねー! 【毒物吸収】くらい、ちょちょいのちょい!」

 「お前に一つ言っておこう。【毒物吸収】っていうのは今まで毒草を食ってきた分、毒で回復する量が違う。俺の回復する数値まで追いついて見ろ。」


 「はーい! 頑張りま~す!」



 アイリスとモークは互いに火花を散らし、今日の夕飯は皆笑いながら一日を終えた。












 アイリスがゴブリンの洞窟へ来てから27日。


 この日はとある人物とアイリスが外で稽古をしていた。



―――――――――――――――――――――――

~アリス視点~



 私は木刀を持ってある人物と本気で対峙していた。




 アイリス・オーリアである。




 あの時の私は本気で死ぬ気だった。


 死ぬ気が失せて生きる気を貰ったのは、アナタのせいなんだからね!



 弓や飛び魔法系統はスキルのお陰で絶対に当たるんだけど、

 近接武器に至っては自分の腕次第。


 今日は私は魔法禁止、アイリスは補助系以外の魔法禁止でアイリスと特訓している。




 「手加減無しで行くけど……いい?」

 「何時でも来い。」


 「……じゃあ、行くよ! せぇいっ!」



 一瞬の勝負。

 私は一気に全力で間合いを詰めて、そして木刀を連続でアイリスに向けて振りまくる。


 (どんな特訓したらこうなるのよ……)


 だけど、【身体強化】を使用したアイリスの本気の回避能力は尋常じゃない。


 アイリスは一個一個の私の攻撃を全部回避していた。



 「せいっ!」

 「キャッ!」



 そして、私のほんの僅かな一瞬の隙をついて私の頭に軽くチョップをかます。


 叩かれた私は軽い悲鳴を上げて攻撃を止めた。



 「お前の攻撃は左右の攻撃と上からの攻撃しか飛んでこない。全方向を狙って攻撃してみろ。」

 「全方向って何よ?」


 「その木刀貸せ。」



 私はアイリスに木刀を渡す。

 すると、アイリスの目つきが変化し木刀を私に近付ける。



 「!?」

 「良かったな。コレが本番だったら、お前の首が数秒で飛んでいたぞ?」



 アイリスは私の首もと寸前で木刀を止めていた。

 全く気付かなかった。




 私は軽く青ざめる。



 あの時のアイリスは、その気になれば私の首をはねることが出来てたってわけ。


 敢えてそれをしなかったのは、人間の肉が好きだった私の欲望を断ち切るため……。



 (知りたい、その強さの秘訣……)


 私はますます彼の元へついて行こうという気持ちが強くなっていった。




 「分かったか? 相手を一発で仕留めるんじゃなく、2回目3回目の攻撃を素早く撃ち込むこと。お前の場合は攻撃の回数は申し分ないから、努力を惜しむんじゃないぞ?」

 「分かった。」


 「……で、アリス。まだ欲望は疼くか?」



 アイリスの質問の意味は、

 人間を食いたいという欲求は来たか?ということ。



 あれ以降、あのウザイ悪夢は見なくなったし欲求も衝動的に湧くことは無くなっている。


 いい意味でも悪い意味でも、心の拠り所だった私のそれが消えた事による【魔力暴走】を恐れているアイリスが、たまにこうやって聞いてくる。



 「ううん。今のところ特に無さそう。」

 「そうか、それは良かった……。あと、ワゼリスにはもう言ったのか? お前は此度の一件で【朱の騎士団】を強制脱退された身だが……せめて、最後の礼くらいは言っておくべきなんじゃないか?」


 「うん。そろそろル・レンタンに戻ってワゼリスに言っておこうと思ってたんだ。」

 「分かった。帰ったら俺達と食事を食わないか?」


 「そうだね、モークさんにも謝んなきゃいけない事があるし。」



 モークを悪意にもクロスボウで数発も撃っちゃったからね……。


 ついでにモークの悪口言って火付けさせちゃったし、そーとー激おこかも。


 ※第63話後半参照。



 「決まりだ。20時集合で頼む。」

 「りょーかい。【飛行】!」



 私はアイリスと約束したあと、魔法を使ってル・レンタンへと向かった。



―――――――――――――――――――――――

【ル・レンタン】



 検問を通り越してル・レンタンへ着いた私は、迷う事なく【朱の騎士団】の本拠地へ向かった。


 わざわざ正面玄関からの訪問って訳。



 「誰だ?」

 「アリスよ。もう脱退されちゃったけど、最後にワゼリスに言っておきたい事があって。」


 「ワゼリス様を呼び捨てにするとは……許せん!」



 すると突然、兵士は私に剣を持って降りかかってきた。


 (何時もの私なら大鎌で首を切って美味しく頂いている所だけど……)


 昔の私を思い出しながら、私は軽く右足で兵士の腹を蹴り上げる。


 随分手加減したからダメージは少ないハズ。



 「ガバッ!」

 「正面を守る兵士なら、もうちょっと鍛え直しが必要じゃない? 見せてあげる、【ステータス】!」



 兵士は後ろに後退して腹を抱える。


 私のレベルはアイリスとの戦いで落ちちゃったけど、強いからね。


 


 【ステータス】名前なし(現愛称アリス)



  レベル 142 ランク A


  体力 1624/1624

  魔力 2152/2793

  攻撃 1021/1021

  防御 1609/1609

  早さ 842/843

  速度 9.875/10

 当会心 16.25/16.25

  回避 25/25

 当回避 25/25

 総回避 43.75/43.75

 残血液 2762/3100(1910)


 経験値 2496342/500000000

   次 2496342/2512000(15658)




 みーっちり、アイリスに回避の仕方教えてもらったしね。



 「兵士達、手を出すな。」



 私が兵士にステータスを見せていたその時、後ろからターバンの男が此方に向かって歩いてきた。



 「ワゼリスちゃん、お久しぶりー。」

 「お久しぶりです。それにしても、大鎌は使わなかったのですかな?」


 「アイリスっていう人間に色々教えてもらったの。私を斬ろうとしてたから蹴っちゃったけど。」



 私が事情を説明すると、私が蹴っちゃった兵士に向かってワゼリスは質問をした。



 「事実か?」

 「はい。ワゼリス様の読み通り、アリス様は大鎌ではなく私に蹴りを入れました。」


 「そうですか……。」



 二人の発言で私はだいたい察しちゃった。


 ってことは、私がわざわざ正面から来るのも予測済み。



 「……もしかして、私を試したの?」

 「ええ、どんな対応をするか気になりましたからな。」


 「ふーん、そう言えば村長さんと随分前に組んでたんだってね。……って事はあの日、私がああなるのも予測済み?」

 「ええ、アナタの持つ【カニバリズム】とやらを撲滅する方法がそれでしたからな。」


 「……やるじゃん、ワゼリス。じゃあ私が此処へきた理由位わかるんじゃない?」

 「勿論です。最後のご挨拶でしょう?」



 ワゼリスはニッコリしながら頷いた。


 (このオジサンの頭の良さはいじょーだもんねー)


 そんな事を思いながらも、私は頭を下げてハッキリと礼をする。



 「いままで、色々とお世話になりました。」

 「アリス。今まで私はアナタの【カニバリズム】を直すどころか、逆に促進させてしまった。今までの無礼を此方がお許し願いたい。」


 「いいえ、アイロンから追われている私を入れてくれてありがと。」

 「コレからは……アイリス殿にアナタを託します。」



 ワゼリスはアイリスの言葉を口にした。


 (アイリスの奴、わざわざワゼリスの所にまで行って話し合ったわけね。そんな事、私に一言も言ってなかったのに……)



 私にはわかる。

 アイリスの奴、そーとーヤバヤバの人物になる気がする。


 勇者とか、使命を持って挑んじゃない。

 多分この世界を自分の色に染め上げていくようなタイプ。



 私は頭を上げて頷いた。



 「わかりました。アイリスについて行きます。」

 「宜しい。もしも、辛かったら私の所へ何時でも来なさい。」


 「わかったわ。それじゃあ、バイバイ。」

 「荷物は持ちましたかな?」


 「うん。残ってる奴は全部捨てて。」



 そう言って、私は【朱の騎士団】の本拠地を出て行った。








 本拠地を出た私は、最後にとある店に寄った。


 だけど、ちょっと違うのはこの店は裏通りの角にある闇の店ってとこ。


 表向きはただの酒屋っぽいけど、閉店時間の指定された時間の間に来た一部の人間には武器屋になる。

 そこそこ高いけど、露店で売ってるそこらの武器とは比べ物にならないほど優秀だから使ってるわけ。



 入るや否や、マスターがクロスボウの手入れをしながら出迎えてくれた。



 「……アリスか。今日はどうした? 来る日数が随分早いんじゃねぇか?」

 「うん。もうこのル・レンタンから出るつもり。」


 「おう、此処を出るのか。何処へ向かうんだ?」

 「……アイロン。」



 マスターはクロスボウの手入れを止めて顔を変えた。


 私は5種類ほどある矢の中で、最近入ったという一品をじっくりと見ていた。



 「……遂に向かうのか。確か、アカサカとかいう奴に恨み持ってんだってな?」

 「……うん。アイツだけは絶対に殺す。」


 「どうやらアカサカは現在、アイロンのNo.3という地位らしい。」

 「……アイツがNo.3? あのゴミでものし上がれるんだねー。」


 「ただ、今まで行ってきた蛮行は半端じゃないらしい。お前がいた頃よりも酷い。それでも行くのか? お前が戻ったとなりゃ、アカサカは死に物狂いで殺しに来る。」

 「なら尚更。アカサカを私の前に跪かせてやる!」



 じっくり品定めしていた一品に満足した私は、100本単位に束にされた同じものをマスターの前に1束置いた。


 鏃が黄色のちょっと特殊な矢だね。



 「これちょーだい。幾ら?」

 「……少石版1枚。」


 「へぇ~、そこそこ値段するの……ってえっ!?」



 私は驚愕の安さに逆に不安になる。


 ……アメちゃん1個の値段で良いわけ?



 「……いいの?」

 「この店の閉店を止めてくれたお前には色々助かった。長い付き合いのお陰で充分稼いだ。その礼と思え。あと、そこにある矢は幾らでも持って行け。それ込みで少石版1枚。」


 「ホントに?」

 「俺の気が変わらぬうちに持って行け。」


 「……今までありがと。この借りは何時か返すわ。何倍にもして。」

 「フッ……お前らしいな。」



 私はマスターに頭を下げた後、普段使う何の変哲も無い矢の束を5束をマスターの前にだした。

 計600本、コレがアメちゃん1個と同じ値段。


 再び収納魔法から少石版1枚を取り出してマスターに渡す。

 と同時に600本の矢を中へと入れた。



 「御世話になりました。」

 「……元気でな。」



 私は再び頭を下げ、この店を出て行った。


 マスターの最後の顔は大事な人を見送る晴れやかな表情で、そして暖かさが溢れていた。



―――――――――――――――――――――――


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