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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
91/116

第86話 SpecialEpisodeアリス そして、解き放たれる 後編 3.

※レイアウトを黒に設定しました。

 グロシーン、殺人肯定台詞があります。

 苦手な方は閲覧をお控えください。



 私はまた人間の肉を食べてしまった。


 この時、私の身体はまた強くなった。

 わかったの。


 人間の肉を食べれば、問答無用で強くなるって。

 ノノアさんと戦ったあの時の強さは、私がお父さんとお母さんを食べたからだと理由を付ければ、事の全てが上手く繋がった。



 だから……今の強さで足りない私は、更に肉を求めて連続で標的を探し始めた。


 アカサカは勿論だけど、アイロンも許さない!



 悪魔という名の私は、此処で解き放たれたの。




 キャシーを殺された7日後。

 殺された部下のお肉が尽き、お腹が空いた私は偶然拾った鉄の細いパイプを持って大通りの外れで大人の人間を狙っていた。



 「ひっ……ヒイッ! 誰か、誰か助けてくれ!」

 「鳴いてもむだだよ?」


 「も……目的は何なんだ? 金が欲しいのなら、今すぐこの財布から有り金全額持って行け!」



 角に追い詰められた30代ぐらいの男は、おどおどしながらもすぐ下に落ちてあった財布を指差す。



 「私の目的はお金じゃないの。」

 「だったら何なんだよ!」


 「お肉。お腹が空いているから、とっとと殺すね。」

 「や……止めろ! お嬢ちゃん、こんな事をしちゃダメだ! おじさん、見なかった事にしてあげるから……な!」



 私は彼の言葉に腹を立てる。


 (『お嬢ちゃん、大人は皆こうやって生きるんだ。騙されたお嬢ちゃんが悪い。ザマァだぜ。』)


 キャシーを殺したアカサカの言葉が何度も繰り返された。



 「見なかった事にしてあげる? ふざけないで! 約束を破るんてしょ? けいさつに話すんでしょ? 取引の話は、大っ嫌いなのよ!」

 「ガアァァァァ!!!」



 私は鉄パイプを上から男の右肩を殴る。


 そして、私は最後に男に向かってこう言い放った。



 「アナタに個人的な恨みなんて無い。でも、アイロンを殺す為には力が必要なの。申し訳無いけど、私の力になってください!」

 「止めろ……止めてくれえぇぇぇ!!!」

 「ガアァァン!」



 私は全力で男の頭を右横から鉄パイプで殴る。



 一撃で男性は地面に座り込んで死んでしまった。


 (ハァ……ハァ……ハァ……)


 私は自分の心臓に手を当てる。




 罪悪感が消えたわけじゃない。


 強くなるために仕方無いとは言っても、心の中の何処かでは「ごめんなさい!……ごめんなさい!」と謝っていた。



 しかし、その素直な気持ちが出て来る事は無かった。


 「アイロンのせい、アイロンのせい!」と何度もなすりつけては、ずっと悪魔を貫き通していた。


 そうでもしないと、理性と罪悪感に押し潰されて自分で殺しそうだったからね……。




 その僅かに残った理性と罪悪感を無理矢理弾き飛ばし、私は財布を拾って中身を見る。



 「フフッ。ひとり身の割には、けっこーお金持ってるんだねー。」



 金貨2枚と銀貨6枚、銅貨8枚。


 お金を引き下ろす、預金通帳とカードがあったけど……。

 速攻バレちゃうから放ったらかしにした。



 そして……。



 「美味しい所、ぜーんぶ食べて上げるねー!」



 私は生殖器周りと骨全部と胃、肝臓、腸、脳みそなどの臓器以外を6日程で粗方食べ尽くした。


 残りは物凄く気持ち悪いから、ハエとうじゃうじゃちゃんに任せるねー!という気持ちで私は立ち去った。



 もっと……もっと強くならなきゃ!

 うーん、このお金で色々買っちゃおー!



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

―アイリス視点―



 とある一件によって正気を失ったアリスを聞いた俺は、黙って軽く下を向いた。


 自分がアリスの立場だったら、俺も間違い無く殺人に手を染めてしまっていただろう。


 (最愛だった両親はアイロンの失敗によって死んでしまい、愛情込めて育てたネコはアイロンの人間によって無残にもやられた)



 なんとかならなかったのか?

 アリスが幸せになる道は他にあったんじゃないか?



 ……と思うと、段々言い分が苦しくなってくる。

 どうしようもないのか……という絶望しか結論が出せないからだ。



 「ノノアさん、その一件以降……アリスを見たんですか?」

 「いいえ、そもそもアリスちゃんが何時も私と勉強する所にずっとこなかったの。まさかとは思ってたけど……アイロンの情報掲示板というもので『人喰い鬼現る!』っていう見出し物があってわかったわ。」


 「……。」

 「私が言える事は、コレが全てよ。結局、私はアイロンから逃げてこのル・レンタンに来たの。貧乏な人も多かったけど、私にとっては幸せに感じたわ。」


 「アリスと偶然、所属する組合が一緒だったんですか?」

 「ええ、しかも同期。神様が私に命令でもしたのかしら? と思っちゃった事もあったね。」



 地獄のようなアイロンを潜り抜けてきたノノアにとっては、ル・レンタンでの貧乏な生活は生温いと感じたのだろう。



 それが……。

 よりにもよってアリスと同時期に【朱の騎士団】で出会ってしまったのだ。



 神様の悪戯としか思えないその偶然っぷりに俺は納得する。


 俺だって、あの時モークを殺していたら今回の同盟は無理だった。


 運命って言うものは、そんなものなのだろう。



 「ありがとう御座います。お陰様でアリスと話せそうです。」

 「うん。アリスちゃんの心を、癒やしてあげてね。」



 アリスの話をノノアから聞いた俺は頭を下げて感謝を述べ、ノノアのテントから出て行った。

 ノノアは椅子に座りながら俺に右手を振って応えた。




 その後、兵士がわざわざ出口まで俺を案内してくれた。



 「ご苦労様でした。」

 「ありがとう御座います、アイリス様。」



 洞窟へ向かおうと思った俺は、不意に立ち止まって後ろの兵士に質問する。




 「一つ……個人的な意見として聞きたいのですが、聞いても宜しいですか?」

 「喜んで。なんで御座いましょう?」


 「例えばアナタに友人がいて、犯罪グループを全員殺しました。友人は酷く後悔して今にも自殺しそうです。」

 「……。」


 「しかし、友人が犯罪グループに両親を殺された話をアナタが知っていたとしたら、アナタは友人にどう声を掛けますか?」

 「……。」




 兵士はしばらくの間黙りこむと、こう話した。




 「いやはや、難しい質問ですので……私に答えを聞くのは些か不都合な事で御座います。ワゼリス様やロガー様などの方にお聞きした方が宜しいかと思われます。」

 「いや、個人的な意見が欲しい。」


 「私なら、理由を付けて『生きろ!』って言いますね。」



 肝心なのはその理由が欲しい。


 俺は兵士の答えを掘り進める事にした。



 「どうしてそう思いますか?」

 「犯罪グループのやった事は当然許されるべき事ではありません。そして、友人のやった事も許されるべき事ではありません。殺した人数で罪の重い軽いを決めつけるのではありません。」


 「……だったら何故でしょうか?」

 「この世界が【殺しても許される時代】だからでしょうね。戦争が頻繁な地域では、この風潮が使われるのが当たり前になってきております。」


 「……この時代だから許されるという事ですか?」

 「いいえ、『今度は自分の過ちを他の人に絶対してほしくない。』と伝えるのです。自分が犯した罪は、地獄まで背負っていかなければいけませんがね。」




 なるほど……よくよく考えれば、それが一番手っ取り早いな。


 【殺しても許される時代】か……。

 否定出来ないのが辛いな。

 



 「……ありがとうございます。手間をかけさせてしまいごめんなさい。」

 「こちらこそ、稚拙な解答で申し訳ありません!」


 「いえ、寧ろ助かりましたよ。」




 俺は最後に兵士に向かって感謝を述べると、キャンプを後にした。


 (よし……アリスの元へ向かうか。)


 夕焼け始まる空を見ながら、俺は洞窟にいるアリスの所へと向かっていった。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

~アリス視点~



 8歳になった頃には、私は強くなるために様々な訓練を単独で行った。



 勿論、人肉を止めることは無かった。


 夜の9時頃、裏の路地で酔っ払った一人の男性が私の魔法で動けなくなっていた。


 必死にもがこうとするけど、無駄。



 この頃の私のレベルは83。

 一般人が勝てる訳無いよね。



 「や……止めろ! こんな事をして、タダで済むと思うなよ!」

 「恨むのなら、アイロンを恨んで!」


 「!!!」



 私は裏の闇商人に特注で作ってもらった大鎌で、男性の首をものの一瞬でふっ飛ばした。


 首は血を撒き散らせながら空中を一回転し、「ボタッ!」という気味の悪い音と同時に近くに転がった。


 (人殺すのも慣れたゃったね。たまーに夢に出て来る事もあるけど)


 私はこの頃の半年前に習得した【収納魔法】から30センチ程のナイフを取り出す。



 「フンフフンフフーン♪」



 私はテキトーに作った変な口笛を吹きながら、死んだ人間を慣れた手つきで解体する。


 二の腕、太もも、心臓、肺……など、個人的に気に入った部位を見つけては収納魔法の中に入れた。



 収納魔法は超便利。

 新鮮さを保ったまま何時でも引き出し、預け入れ可能。


 難しかったけど、その分の甲斐はあった。

 腐る前に一気に食べるという、非効率な方法よりも現場に滞在しない。


 殺してから僅かものの10分足らずで部位を収納魔法の中に入れた。


 (研究員も来てるし……退散!)


 そして、足早と退出する。

 罪悪感と言うものなんて存在しない。



 「今日の飯ゲット!」という程度の事だった。

 一番無邪気に狂っていた時なのは間違い無くこの頃。




 ちなみにこの頃になると、「人喰い鬼」の脅威性が非常に高まっていた(犯人私だけど)。


 ピストル所持のアイロンの研究員が300人体制で追っていた。



 「お嬢ちゃん。」

 「何?」



 すると突然、後ろから白い服の男性2人が近寄ってきた。


 さっき人を殺したばかりの私だけど、5着ある服を日に日に着替え、殺した後はシャワーを欠かさない。

 石鹸の甘い匂いで本性はバレない。


 金貨18枚以上持っている私にとって、そんな物に使うお金など大した金額じゃなかった。



 「近頃、『人喰い鬼』のうわさを知っているかな?」

 「うん。人間を鬼が食べちゃうんだよね?」


 「おお! そうとも。先程、その『人喰い鬼』にまた死んじゃった人がいてね、この写真の男性の足掛かりを追ってるんだけど……何かあったかな?」

 「えっ!? 死んじゃったの? ……私この人しらない。」


 「そうか! ゴメンね、迷惑かけちゃって。」

 「うん! おにーさん達もがんばってください!」



 白衣の男達はニッコリと私に微笑み、何処かへさっていった。


 私は作った少女のニッコリ笑顔をしながら、手を振って送る。


 (……フッ、フフフ……フフフ……アハハハハ!!!)


 私は心の中で大きく笑った。


 小さな女の子っていいなぁ~!!!



 バカげてる話だよね?


 『人喰い鬼』の一連の犯人が、こんな小さな8歳の少女の単独による犯行だったなんて……誰が信じると思う?


 (あーかーさーきーさん、あーいーろーんーさん。何時か私が牙を剥くときは、事前に女の子にハグでもしてなさい)


 私は絶対復讐する。



 キャシーの怒りと両親の怒り、ぶつけるその日までは……潜伏させて貰うわ!
















 だけど僅か三週間後、今まで完璧だった犯行がバレてしまった。


 何時も通り、定めた男の普段の経路を探って人混みから離れた所で襲いかかり、早々に人間のお肉を頂く算段だった。



 「く……くそったれが!!!」

 「ゴメンね。恨むのなら、アイロンに恨んでね!」

 「「「そこまでだ!」」」


 「!?」



 すると、突如として後ろから7人程の白衣をきた男が【ピストル】と装飾が施された細長い杖状の棒を構えて襲い掛かってきた。


 (……チッ、おとり使って待ち伏せなんてやるじゃん)



 「こ……子供!? な……何だと!?」

 「おじさんたちは誰!?」


 「アイロンの研究員だ。『人喰い鬼』は、大抵人混みを避けたがるからな。もしや……お前か?」

 「へー、やるじゃん!」



 ヘンな言い繕いをしてもムダだったから、結局正体を表す事にした。


 その証拠に、収納魔法からあるものを取り出す。



 「ガ……ガキのクセに【収納魔法】!? なんて奴だ……。」

 「おい! アイツの持っている物ってもしや……。」

 「この前殺した人間のしんぞー! 筋肉質があってコリコリしてて美味しいの。」



 心臓の特有の動きであるドックンという振動はもう無い。

 だけど、血塗れの心臓を突きつければ信じてビビってくれるし。


 この場で喰おうかな?と思ったけど、食べてる手が使えなくなるのはちょっと無理。


 【ピストル】持ってたし。



 「そ……そこを動くな! ガキとは言えど、【収納魔法】を使いこなす怪物だ! 油断するな! 発泡許可、殺害許可は既に下りている。」

 「さーて、誰からいこっかな♪」



 心臓を見せられたら研究員の大半はすぐさま【ピストル】を構える。

 残りの人は細長い杖に魔力を込めて何時でも構える準備だ。


 私はノリノリで収納魔法から大鎌を構えて一人一人に目を向ける。



 ちょっと早かったけど、研究員と殺り合う日を楽しみにしてた。

 この日までにお肉を抜き取った死体で死ぬほど練習してきた(練習台になるのがこれしかなかったし)。


 私がどれぐらい強くなったか、食材になるまで思い知ってね!



 「撃てーーー!」

 「【魔力球立方体】、【展開】、【氷結の円舞】!」



 研究員は私に向かってピストルと魔法を放つ。


 (ピストルで勝てると思ってるの?)



 私は魔力で冷静に対処する。

 生まれつき魔力が強いっていうのは何となく理解してたけど、努力して此処まで出来るとは思わなかったね。



 【魔法球立方体】で攻撃をノーダメージで受け、一発辺りの威力を下げる代わりに魔法の範囲を広める【展開】。


 そこからの鋭い氷の刃を全体に飛ばす【氷結の円舞】。


 鋭角に尖った硬くてそこそこ大きい氷の塊が、研究員に向かって襲いかかった。



 先に当たった研究員の弾や魔法は勿論ノーダメージ。


 だけど、研究員たちは……。



 「ガアァァァァアア!!!」

 「ギャアァァァァ!!!」

 「ああ……ああ……。」



 鋭い氷の塊は研究員達の顔、腹、足、腕を容赦なく貫通する。

 貫通した所から赤黒い血と内蔵を外へと吹き飛ばした。


 運悪く足や腕のみをメチャクチャにして生き残った者達は、耐え難い激痛に我慢出来ずに断末魔を叫んでいた。


 (皮肉……誰にもバレないようにこんな所で罠を掛けたんだろうけど、結局この断末魔もだれーにも聞こえないよ?)



 同時の私は研究員の断末魔を哀れに思っていた。

 ……いや、哀れっていうよりも……。




 「フ……フフッ……。アハハハハ!!! 気持ちぃ。夢にまでででくるといいなぁー! し・あ・わ・せ!」




 快感に近いものだった。


 全身から込み上げる熱い想いと、満たされた甘い優越感に浸る居心地は最高だった。


 今思えばちょー狂ったね。



 「この……化け物め!」



 研究員もバカじゃない。

 足がボロッボロの状態でも、最後の足掻きと【ピストル】を私に一発放つ。



 私は笑いながら大鎌でその弾丸を弾く。


 他からの攻撃も警戒したけど、気付けばピストルを撃った人間以外は絶望で気絶。

 もしくは死んでいた。


 そして、笑い終えた私はその男に向かって歩いてこう言った。



 「無駄だよ? 銃口気にしてれば狙って来る方向なんてすぐわかるよ。」

 「クソ! クソがぁぁぁ!」



 男は銃を私に向けて乱射する。


 私は一発一発の銃口を気にしながら回避と大鎌で捌いた。

 しかし、5発目で撃てなくなってしまった。



 研究員は堪忍してピストルを遠くに投げ、起き上がって足掻いたハズの上半身を地面と横にして荒い息遣いをする。



 「ピストルも6発撃つと球切れ……次使うには球をりぼるばーっていう6つの穴の中に入れなきゃダメ。そうでしょ?」

 「……フッ。とんだ鬼がシルバーシティで生まれたものだな。こりゃあ研究員の更なる育成が必須だな。」


 「そんな事より、サッサとその胸ポケットについてる小型ビデオをちょーだい? どうせ私の情報が本部って奴の所に流れ込んだんでしょ?」

 「ヘッ……だったら取れ。殺人鬼のお前は無実の人間の命と肉をごっそり持って行ったんだろ?」



 男は私に生意気な態度で煽る。

 「どうせ死ぬ。」という覚悟で私に刃向かって来た。


 「ふーん、言うじゃない……。」と私は怒る事もなく男のポケットから小型カメラを取り上げる。

 そして、自撮りするように敢えてカメラを自分の顔に向けてアピールを始めた。



 「じゃーん! 私が『人喰い鬼』のしょーたいです! アイロンさんのせいで私はこうなっちゃったんだよ? どー責任をとってくれるのかなー!」



 頬を膨らませて待ってた私だけど、カメラからは何の返事もなかったから先へと進んだ。



 「『人喰い鬼』如きピストルで何とかなるっていうさ、そんな感じでちょっとの人数で殺せると思ったのかな? 結果はこーでした! ぜーんぶ食べちゃうけどね。」



 そして私はカメラを他の所に向ける。


 顔が氷でメチャクチャにされ、腹からは臓物がうじゃうじゃと飛び出し、腕や足が千切れていた。

 よーく見たら運悪く生き残った代償の激痛に我慢出来ず、「サッサと死んで楽になる。」とピストルで自殺した研究員もいた。



 「あかさかさーん、見てますか? 今はまだ力不足だけど、いつか絶対に殺しにいくから。それまでに女の子抱いて良い思い出作りに励んでねー。ジャーネー!」



 私は最後にそう言ってカメラを地面に落とし、そして口笛を吹きながら何度も踏みつけて壊した。


 ふと、気になった私は虫の息状態の男に聞いてみた。




 「一つ、聞いてもいい?」

 「なんだ? 肉貰って良いっていう話か?」


 「それは後。どうしてその状態にまでなっても、アイロンの為に頑張ろうとしたの?」




 私は初めてみた。


 足がボロッボロになっても、最期まで誰かの為に頑張ろうという人。

 しかも、私の憎きアイロンに命を落としてまでも激痛に耐えながら私にピストルを撃った。




 聞きたかった。


 どうして上の為に最期まで頑張るのには、何か理由があるの?ってね。




 「別に対した理由でも無い。父がアイロンの元研究員で、それに憧れただけだ。子供の頃に死にそうになった事件があって、それを解決してくれたのもアイロンのお陰だった。用は恩返しって訳だ。」

 「へー。恩返しってそう言うものなんだー。」


 「鬼如きに言ってもわかって貰えんだろうがな。お前みたいにアイロンのお陰でこうなっちまった奴もいれば、アイロンのお陰で救われた人間もいるって事だ。」




 そして男は起き上がって私の胸倉を強く掴んでこう言い放った。




 「俺達はそれぞれ思いがあって、命賭けて必死に研究員やってんだ。……そこにお前みたいな恨み持つだけの『人喰い鬼』が、無理矢理首突っ込むんじゃねぇ!」

 「!!!」




 胸倉を掴まれた私はそう言われて激しく動揺した。



 そして男はそういい放つと、まるで砂漠にでも果てたかのような顔つきになって微笑む。

 直後「ガハッ!」という音と共に大量に吐血し、そのまま倒れた。


 男は最期まで掴んだ右手を離さ無かったため、男と同時に私も地面に軽く叩きつけられた。



 掴んだ腕が硬直する前に無理矢理引き剥がして、男を見つめる。


 男は微笑んだまま息を引き取っていた。



 「……何? 何なの? 結局最後まで言いたい放題じゃないの。あーホントにムカツク!」



 同時の私は男の言葉を理解出来なかった。

 だからこそのこの発言。


 戦闘では勝ったけどなんか負けた気分だったのは覚えている。

 それは、確かにそうであった。


 憎しみは何も産まない。

 今考えるとそうだと思えるね。






 結局私は、「お肉を大量収穫できたからいっか」という安直な結論に至った。


 捕まえた人含め7人分のお肉(研究員との戦いで結構やる気あげちゃって、お肉を傷つけちゃったけどね……)をいつものナイフで切り落とす。

 ついでに戦利品であるピストル4丁と誰でも魔法が放てるステッキを2本ほど頂く。


 私はこの場所を足早に去っていった。




 ……数が合わなかったのは理由がある。

 男の持ち物とお肉は一切持って行かなかった。


 「呪われそうだったから。」という安直な理由である。






 この日以降、私は追われの身となってしまった。


 (アイロンパークだと、どこかに私の隠れる所があるかしら?)


 当時の所持金は白銀貨4枚、金貨5枚、銀貨3枚だった。

 大金である。


 更にピストル4丁とステッキ2本。

 食料の人肉も充分。


 此処からアイロンパークまではおよそ500キロ。

 18歳までは此処から出ることは許されないが、秘策を使うからそんなの気にしてない。


 (行こう。お父さんとお母さんと離れるのは寂しいけれど、私の新しいお家へ!)


 私はアイロンパークへ向かう事を決意した。



 この時、私は8歳。

 7人殺した日の真夜中である。



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