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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
90/116

第85話 SpecialEpisodeアリス そして、解き放たれる 前編 2.

※レイアウトを黒に変更しました。

 鬱シーン、残酷シーンが多めです。

 苦手な方は閲覧をお控え下さい。



―――――――――――――――――――――――

~アリス視点~



 ノノアと出会った私は、次第に仲良くなっていった。


 前に出会ったあの頃の記憶は残ったままだけど、貧乏だったのは変わらないけど、ノノアとの生活は幸せだった。




 ……あの後、両親はテントの下の土の中に入れてお墓を作った。

 食べちゃった事、死んじゃったことは受け入れないといけない。


 あの後から私は、一部の人間を見るとお腹がウズウズし始めていた。


 (体が……欲しがってるんだ……肉を……)


 しかし、このまま行けば本当に食いに行ってしまう。



 「アリスちゃん。ダメだよ。今はコレしかないけど、我慢してね。」

 「うん。」



 するとノノアは鞄の中からサランラップにくるまれた【おにぎり】を取り出し、アリスの注意を逸らした。


 日照り続きで野菜や小麦は激減した。

 ……けど、日照りは稲にとっては最高らしい。


 稲って言うのはお米の事。



 一般家庭は小麦の代わりに米を重宝し始めたの。実際、米の収穫は昨年の6倍の量が消費された。

 ……勿論、アイロンの国は諸々の事情で塩なんてついてないただのおにぎりだけど。




 私は頷いて受け取った。

 元々この欲求は食欲が原因だったため、おにぎりを食べればすぐ解決した。



 「欲しくなったら言ってね。」

 「うん、頑張る。」










 そんな感じで月日が経ち、私が6歳になった頃にはノノアと一緒に勉強と訓練をしていた。


 長時間の人間との接触は出来るだけ控えたかったため、ノノアは僅か6歳の私に木の棒を握らせた。



 この頃にはまだ【ステータス】を所得しておらず、具体的なレベルは分からなかった。

 何時も細長い木の棒で戦っていた。


 偶然通りかかったレベル20ぐらいと名乗る男性と軽く手合わせをしてもらった。


 身長110センチちょっとの私が、頭2つ程離れている男性に幾ら何でも勝てるわけないと思った。

 ただただアドバイスをくれればそれで良かっただけの手合わせ。

 



 だが、何故か戦闘能力は私の方が圧倒的に上だった。


 走る速さが速過ぎて自分でも制御しきれなかったり、振り下ろす速さが自分の思っていたよりも早かった。

 気がつけば私が振った棒は男性の首の右を見事に当てた。


 当時の私は全く理解出来なかった。



 男は首を痛めて状況が分からない私を置いて褒めた。



 「痛てて……嬢ちゃん強いな。そんな速さを何処で身に付けたんだ?」

 「え……えっと……私もびっくりしてます。何でこんなに……。」


 「嬢ちゃん、冒険者になったらどうだ? 鍛錬を積んでいけば有名になれるぞ! 手合わせしたこの俺が保証する! じゃあな!」



 男は僅か6歳の私に負けたのにも関わらず一切の悔いもなく、寧ろ清々しい表情で大きく笑って何処かへ行っちゃった。




 さらに、男性だけではなく……。



 「やるじゃない! 数年振りに手こずったわ!」

 「ハァ……ハァ……。強い……。」


 「アナタはまだまだ伸びる。もっと技術を磨きなさい。」



 技術の差で絶対負けちゃうけど、レベル40のノノアを本気で苦戦させることもしばしば。


 腕力勝負だけなら私は全勝だった。






 理由も分からないまま訓練しておよそ半月ほどがだった後、私は9時頃に夜道を歩いていた。

 6歳が1人で大通り外れの暗い夜道を歩くのはとんでもないけれど、数度全部は自慢の逃げ足で何とかなった。


 (アイロンのシャワールーム安いなぁ……湯冷めしちゃうから早く帰ろっ)



 「(にゃーにゃー)!」



 新しいテント(前のテントは燃やした)に戻ろうと思っていると、目の前に一匹のネコがいた。

 「にゃーにゃー」と口は動いてるけど聞こえなかった。


 汚れ塗れのネコだったけど、首飾りがあった。




 そこには、【チェシー】とネコの似顔絵が書かれていた。

 間違い無く私の父さんが買った首飾りと、私が書いたチェシーの文字とネコの顔。



 「……チェシー? ……チェシーなの!?」

 「にゃーん!にゃーん!」


 「チェシー! ゴメンね! ゴメンね! こんなに汚して……ゴメンね!」

 「にー! にー!」



 私は駆け寄ってその汚れ塗れのネコ……チェシーを抱きかかえた。

 チェシーは「気にしないで! 会えて嬉しい!」とでも聞こえてきそうな鳴き声でそれに答えた。


 シャワー浴びたばっかだけどそんなのは気にしなかった。

 再開出来た事の喜びに我慢出来なかったの。







 

 それからのテント暮らしは暖かい空気に包まれた。



 「チェシー、ご飯。おいで。」

 「ニャオ、ゴロゴロ~!」


 「うわっ! チェシー……お友だち連れてきたの!?」

 「にゃ!」


 「ご飯多くないから、分け合って食べてね。はい、どうぞ。」



 白い毛で輝くチェシーは、他のネコ達の興味を持ち、気付けばこの辺りのネコのボス的存在になっていた。

 私が保護しているのと、過酷な環境で生きてきたのが組み合わさった結果だと思う。


 数日すればネコは私の周りに数十集まり、夜になって寄り添いながら寝る光景は私に大きな安らぎを与えた。



 さらにネコ達は稀に意外なものを持ってきた。



 「にゃおにゃお。」

 「あら? どうしたの……ってえっ!?」


 「にゃー。」

 「これ、銀貨じゃない! くれるの?」


 「にやっ。」

 「ありがとう! 助かったわ!」



 ネコちゃん達のお陰で私は暫くの間、飢えに苦しむことは殆ど無くなった。

 後は耐えるだけ。

 この不景気を早く乗り越えて、幸せな人生を……。








 ……そんな時だった。

 幸せな時間を過ごした後こそ、地獄がやってくるのよ……。






 私はネコちゃんがくれたお金を持ってペットショップへと向かった。



 何時もお世話になっているペットショップだった。


 (あれ? 誰か居る……)


 向こう側の陰から白色のフードを着た30人程の人間がペットショップを見ていた。


 (嫌な予感がする)


 私は重苦しい空気をすぐさま察知し、来た道へ方向転換する。



 「待て!」



 しかし、ある男の1人が私に声を掛けた。

 白いフードを被って居ない、普通の男性だった。



 「……なんでしょうか?」

 「お嬢ちゃん、こんな所でどうしていきなり引き返したんだい?」


 「えっと……あそこに白いフードの人がいっぱいいて、怖かったから帰ろうとした。」



 私は指を指して返答するけど、白いフードの人達は消えていった。


 男は頭を掻きながら私の指差した方向をジッと見つめる。



 「見間違いじゃないのか? 季節外れにお化けになってハロウィンはしないだろ?」

 「そうだけど……でも確かにいた。幽霊……かな?」


 「……わかった。……で、どこにいくつもりだった?」



 私は背筋をビクンとさせる。

 彼の軽い声の中から僅かながら殺気を感じた。


 当時まだ7歳になったばかりの私。


 子供のそう言う所に鋭い感覚と偏見に縛られない柔軟な思考は伊達じゃなかった。



 ただ、嘘がヘタだけど。



 「えっ……えっと……お買い物をしに……。」

 「どんなお買い物かな? お兄さん聞きたいんだ。」


 「お……お米を買おうかなーって思ったの。」

 「お米? 変だな~。此処から一番近いのは、こっちの方向にある米屋さんだぞ? しかも安いって評判の店だ。そっちの方向は普通のお店だぞ? どうしてこっちを選ぶ?」



 男は私の肩を軽く叩いき、私と同じ高さまで顔を下げた後、右手の人差し指を方向に向けた。

 その方向は、ペットショップの方向だった。

 しかも安価。



 当時はウソが言えない私。

 そこで、私は小さな頭を回転させてこう答える。



 「えっと……いっぱい人がいて混んでるから……並ぶの大変そうと思ってつい引き返しちゃった。」

 「そうか……。」


 「……帰ってもいいですか?」

 「ああ、お嬢ちゃん。ゴメン! 時間をとらせて悪かった。こんな時代だから、不審な動きしていると怒られるから気をつけろよ!」


 「ごめんなさい……。ありがとうございます。」



 男は直立の姿勢に戻ると、頭を下げて謝った。


 私は謝罪と感謝の両方を伝えて戻る事にした。




 疑われないようにゆっくりと歩いて米屋の前に入る。

 



 「いらっしゃい。」

 「一番安い2キロのお米をください。」


 「はいよ。石版9枚、小石版8枚です。」

 「コレで。」


 「はいよ。小石版2枚のお返しね。」



 私は2キロの米を買った。

 炊事は共有で使う場所があるから問題無かった。


 隣の店と若干値段は高いだけだった。



 米屋を出ようとすると、ペットショップの中に白色のフードを着た人達が一斉に中に入っていった。

 そして数十秒後、中から店員さんと思う人達が手錠をかけられて出てきた。


 異世界の最高発明と称えられる【くるま】の中に無理矢理入れられ、そしてくるまが動く。



 私はその光景に釘付けになった。


 (えっ!? どうして? 何で連行されてるの?)


 この一件で私は事の重大性に気がついた。


 (もしかしたら……私のネコちゃん達が、危ない!)


 しかし、この状況では迂闊に動けなかった。

 今出たらそれこそ追ってくる。


 どうしよう?どうしよう?と悩んでいると、米屋の人が気を利かせてくれた。



 「嬢ちゃん、ウチの裏口から出なされ。子供を不幸にさせる最近のアイロンは、好きになれませんなぁ……。」

 「えっ……良いんですか?」


 「早くお行き! 嬢ちゃんの後ろつけてた男が数人おりましたでな。」

 「あ……ありがとうございます!」

 


 私は米屋の人のご厚意で裏口から出る事にした。


 そして、少し経つと後ろから声が!



 「待て! このクソガキ! このアイロンの研究員らの手から逃げ切れると思うなよ!」



 本気になった私は全力で走る。

 僅か7歳の私が2キロの米を担いで大の大人から逃げ切れる訳がないと思っているのだろうけど……。


 甘く見ないで!



 私は次々と大通りから逸れた住宅街の小道を幾度も曲がる。


 そして、自慢の脚力とノノアさんとの特訓から生かした自前の切り替えにより、何とか撒くことに成功した。



 「ハァ……ハァ……ハァ……。」



 とは言え、まだ7歳の私が出せるこの速さの限界は短い。


 撒けて良かったと思う。


 (早く帰ろう)


 私は急いでテントへ戻った。








 テントに戻ると、ネコちゃん達はまだ無事だった。



 「皆! 早く人が見つからない何処かへ隠れて!」

 「にゃー?」


 「早く隠れて! 殺されちゃうかもしれない!」

 「……シャー!」



 ネコちゃん達は私の焦りと表情である程度伝わったらしく、急いで人間が絶対入れない細道や小さい穴に入っていった。


 しかし、ネコちゃん達の中に居ないネコがいた。



 「キャシー? キャシーは何処?」



 私はキャシーを捜しに行った。

 おおよその見当は付いているからそこにいると思った。


 しかし、珍しくこの時間帯に居なかった。



 当てもない私は仕方無くテントの中で籠もった。






 夜10時、ウトウトしていると「にゃー!」という声が聞こえた。


 私はテントから出る。



 「キャシー! こんな遅くまで何して……えっ!」

 「にゃおー!」

 「ニィッ!」

 「ニャー!」



 なんとキャシーの子猫が生まれていた!


 まだ小さな6匹の子猫はキャシーの後ろに付いてのんびり寝転がっている。


 子猫が出来た事には物凄く嬉しかったけど、今はそんな場合じゃない。



 「兎に角、今は人間に見つかると殺されるからしばらくの間は何処かに隠れて!」

 「にゃおー!」

 「ニャッ!」

 「ニィッ!」



 キャシーは子猫を口で優しく加えて、人間が居ない穴の中へと入れていった。


 私も協力し、次々と入れる。



 そして、最後はキャシー。

 何やら毛羽立っていたけど、当時の私は何故なのか分からなかった。



 「フーッ! シャーッ!」

 「キャシー、しばらく我慢してね。」

 「お嬢ちゃん、こんな夜中にご苦労様。」


 「!?」



 突如、後ろから声。

 昼間の男と2人の白色のフードを被った男がいた。


 昼間の男は私の頭に何かを突き付ける。



 「シャーッ!」

 「な……なに、それ……。」

 「異世界で作られた物を改良した一品だ。特別に一発見せてやる!」



 直後、男は私の頭の数十センチ上で謎の代物を使用した。



 「バアァァァァン!!!!!」

 「キャアァァァ!!!」

 「ニャァー! 」



 すると鼓膜が破れかける強烈な爆発音と共に、私は思わず耳を塞ぐ。

 キャシーは驚きつつも、自分の歯を見せつけて男達を激しく睨み付ける。



 物凄い勢いで何かが激しく奥へと飛んでいった。

 速すぎて全く見えなかった。


 その先にいたのは、茶色いネコ。

 脳天を貫かれたネコは血を流して死んじゃった……。



 「ナイスショーットってな! アーッハッハッハ!」

 「ひ……ひどい……!」



 男達は上手くネコに命中した事により、腹を抱えて狂気なる笑いを見せる。


 狂ってる。


 私はキャシーをギュッと抱きかかえる。

 嫌な予感がひしひしと伝わってきた。


 (お父さんから聞いたことある……アイロンの研究員が必ず所持している、【ピストル】。なんて威力なの……)



 「どうしてネコちゃん殺して笑ってられるの!? おかしいじゃない!」

 「あ? お嬢ちゃん、俺たちは動物のせいで疫病が蔓延したんだ。コレを見ろ!」



 男は穴のあいたただの四角い金属をを取り出し、付属された赤色のボタンを押す。


 すると穴から紫色の渦が発生し、男はそこに手を突っ込んで紙を取り出した。


 そして、後ろからわざわざ私の目の高さまで紙を下げる。



 専門書のようなびっしりと書かれたその中に、病名と思われるものを見つけ出した。



 「……Q熱?」

 「そうだ! 人間に掛かると【インフルエンザ】の症状と似たような状態になる。肺機能や心臓に入られたら大変なんだ。のそのそ生活してやがる、汚れた動物共がきっかけでなぁ!」



 どうやら動物などにくっついたダニによって引き起こすらしい。

 イヌもネコも例外では無い。



 しかもアイロン全体で免疫力が大幅に低下しているこの時代、マトモに病院へ行く機会も出来るハズも無かった。

 死ぬ人間も多かったのは当たり前ね。


 ……元はと言えばアイロンが悪い。



 「……それって結局あなた達のせいじゃない! 【アイロンショック】で散々人を殺しておいて、今度はQ熱っていう病気で動物も殺すつもり?」

 「お嬢ちゃん……過酷な環境で精神が強くなったのは褒めてあげよう。……だが、それ以上言うと怒るぞ?」



 男は昼間の殺気よりも遥かに強い意志で私にキツくあたる。 


 このままだと、キャシーはあのネコちゃんと同じ結末を辿る。

 そう考えた私は、取引をしてみる事にした。



 「……この一件は互いに見なかった事にしない? 私、この子だけが心残りなの。ネコちゃんが死んじゃったら……私壊れちゃうよ。」

 「ほう……。俺が受けるメリットはなんだ?」


 「これでどう?」



 私は左手を上げて男に見せる。

 左手には、ネコちゃん達が集めた金貨2枚。


 これで……お願い。



 「よぅし、乗った。喜んで引き受けよう。」

 「ありがとう! 行くよ、チェシー!」



 男は金貨を受け取ると、私に突き付けていたピストルをポケットに入れる。


 私は早々にこの場から立ち去ろうと後ろを見ずに駆けようとする。




 「バアァァァァン!!!!!」

 



 すると、左横腹に今まで感じた事のない激痛が襲った。


 あまりの激痛に私は地面に倒れ、突っ伏す。


 右手でケガの部分を押さえつけた。

 気付けば相応の血の量が冷たい地面に流れて、手を真っ赤に染めた。



 熱い……痛い……苦しい……。


 お父さん、お母さん……助けて。



 「ニャアァァァァァ!!! シャーッ!」

 「……キャシー、……だめ。 ……出たら殺されちゃう。」



 私が撃たれたのに激怒したキャシーは、覆い被さって守る私から抜け出そうとする。


 ……が、私はキャシーが逃げないように左手でキャシーの頭を撫でてそう言った。



 出てしまったら此方の思う壺。



 「……チッ。ネコ諸共仕留めようと思ったのに、クソガキの癖に足が速いこった。」

 「……ど……どうして? 取引は成立したハズじゃ……。」


 「お嬢ちゃん、大人は皆こうやって生きるんだ。騙されたお嬢ちゃんが悪い。ザマァだぜ。ハーッハッハッハ!!!」



 男は醜悪な笑みを浮かべながら私の質問にそう答えた。



 「もう茶番はこれくらいにして……おい! 早くお嬢ちゃんが抱いているネコを無理矢理引き離せ!」

 「「ハ……ハイ!」」



 男は白色のコートを着た2人の部下に命令する。


 命令された男達はアリスに近づき……。


 私を無理矢理押さえ込んで、半ば強引にキャシーを引っ張ろうとした。




 「やめて……やめて……止めてえぇぇ!!!」

 「オイ! 大人しくしろ!」


 「ヤダ! 嫌だ! これ以上イジメないで……イジメないでよ!!!」

 「チッ……仕方無い。ケガをしているが……軽度のスタンガンを使え!」


 「了解!」

 「―――ツッ!!!」



 一人の男が黒色の何かを取り出し、私の左足のももに当ててボタンを押す。


 直後、左足のももに凄まじい激痛が襲った。

 衝撃の激痛により私は言葉を失う。



 そして、私は抵抗出来なくなった。

 キャシーは遂に私の手から離れてしまった。



 私は氷のように冷たい地面に突っ伏したまま、声を振り絞る。



 「ゆ……私は良いから……そのコを許して。……お願い。」

 「フン! くだらねぇ。ただの自己犠牲の塊じゃねぇかよ。派手に命乞いでもしろよ。」



 男は嫌悪溢れる顔つきで私を見つめ、紫色の渦から香味草とパイプを取り出して吸い始めた。



 「アカサカ様、此方のネコは如何なさいますか?」

 「!!! この馬鹿野郎!」


 「グフゥ!」



 男は『アカサカ』という言葉を聞くと、突然表情を変えて部下を殴った。


 そして、ピストルを部下に向ける。



 「お前は喋っちまった。この俺様のルールを破った一種の見せしめとして、お前を殺す。」

 「ひっ……! お……お許しください! アカサカ様! どうか……お慈悲を――。」



 部下は地面に頭をつけながら許しを媚びようとしたけど、『アカサカ』という言葉を発した地点で生きる可能性は完全に消えた。




 「バアァァァァン!!!!!」

 「……!!!」

 「ニャアァァァァァ!!!」




 銃弾は部下の頭を貫き通し、地面に刺さる。


 大量の血が地面に流れ出し、部下は地面に頭を付けたまま死んじゃった。



 悲痛の悲鳴を叫べない私、もう一人の部下に捕まりながら銃声に驚いて暴れるキャシー。




 「い……如何致しますか?」

 「そうだな……。」

 「やめて……殺さないで……お……お願い! アカサカ!」


 「そうだな……よし、放してやれ!」

 「は、はい。畏まりました。」




 アリスの声を聞いた男は部下にキャシーを放させる。



 「ニャー!」



 部下はを放すと、キャシーは喜びながら私の元へ駆け寄る。


 激痛が冷めない中、私は精一杯の笑顔を見せて地面に突っ伏したまま歓迎する。




 「キャシー! おいで――。」

 「バアァァァァン!!!!!」

 「ニギャアァァァァ!!!」


 「キャ……キャシー!!!」




 私が言いかけた直後、男はピストルをキャシーに向けて放った。


 弾丸はキャシーの腹を貫通し、キャシーは荒い息を上げながら痛みを我慢していた。

 貫通した穴から赤黒い血が流れている。



 私の目には、涙が流れ出していた。




 「ひ……ひ……非道いよ……。」

 「お嬢ちゃん、もう一つだけ教えてやる。俺様をタメ口で命令出来んのはアイロンの御方だけだ。一般民如きが、国で働いている俺様にタメ口で言うんじゃねぇよ! 恩知らずが!」




 男はキャシーの前まで歩み、キャシーに向かってピストルを突き付けた。


 男の顔。

 この場を支配する満足感とネコ殺す快感にうち振るえていた。


 今でも、この男の顔を忘れた事なんてない。




 「死ね。」

 「嫌だ……止めてえぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 「バアァァァァン!!!!!」


 「バアァァァァン!!!!!」

 

 「カチッ!」

 「……おっと、弾切れか。」

 「もう止めて……止めてよ!」




 男は紫色の渦から銃弾を6つ取り出し、ピストルの部品にある6つの穴を横にずらす。


 そして、それぞれを穴の中に入れて元に戻した。




 「どうせ入れちまったんだ! 贅沢に使わねぇとなぁ!」

 「バアァァァァン!!!!!」


 「バアァァァァン!!!!!」


 「バアァァァァン!!!!!」


 「バアァァァァン!!!!!」


 「バアァァァァン!!!!!」


 「バアァァァァン!!!!!」




 男はキャシーに向けて更に6発放つ。


 無慈悲に、躊躇なく、微笑みながら撃つ。


 至近距離で撃つピストルの威力は尋常ではなかった。



 キャシーの身体は無残にもあちらこちらに肉片と真っ赤な血をはじけ飛ばす。


 最後の6発を撃った後には、白色の毛が美しいキャシーの姿はどこにも無く、ただ赤黒い液体と臓器があちらこちらに散乱するばかりであった。




 私は……無残に砕け散ったキャシーを見て……





 何かが……壊れた。

 何かが……崩れ去った。





 無表情でキャシーの残骸を見る私に、男はまるで何も無かったかのように振る舞う。



 「よぅし! Q熱撲滅計画の為に、今日もネコを沢山ぶっ殺そうぜ!」

 「あの、死体の処理は……。」


 「ああ!? そんな裏切りもんの死体、運びたくもねぇよ。臭ぇし。」

 「……畏まりました。」



 そして、男達は此処からスキップしながら立ち去っていった。




 「……フフッ。ハハ……アハハ……。」




 この時の私は完全にイカれちゃった……。



 お父さんもお母さんもキャシーも、皆アイロンに殺されちゃった。


 幸せになりたかったのに……立派になりたかったのに……。


 ……非道いよね?

 アイロンってくずは、まだ7歳の私にこんな事させるんだよ……。



 すると、私は足を引きずりながら匍匐前進し、殺された部下の元へと向かう。



 「久しぶり……お肉だ。いただきます。」



 そして私の正常な判断は、完全に壊れてしまった……。



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