第82話 【野蛮道】
【野蛮学校物語】一周年!
ご覧になった方々。
そして、続けて此処まで読んでくださった方々。
本当にありがとうございます!
―――――――――――――――――――――――
―ユッケ視点―
アイリスが致命傷レベルの傷を食らって、まだ立っている……。
腹を必死に抑えて痛みを我慢している。
(あんな状態で立てるのか……)
すると突然、サングラスから連絡がきた。
それは、今まで聞いたことが無い。
……いや、聞いたことはあるが違和感のある内容であった。
《……!!! ……通達。アイリス様がスキル【プレイヤースキル】の一瞬である、スキル【野蛮道】を発動しました。》
……は?
……スキル?
【野蛮道】という呼び名はあったが、スキルにそんな物があったか?
それに……【プレイヤースキル】?
何なんだそれ?
スキルの中にスキルって名前があるのなら、大笑いしながら暇潰しの1000年の間に習得してたぞ?
一種ってことは、他にも俺の知らないスキルがあるのか?
サングラス。
【野蛮道】、【プレイヤースキル】というスキルの意味は?
《私も初めて聞きました。只今効果を解析中……。》
俺はアイリスを見つめる。
そこから見た光景は……俺が今まで見たこともない、アイリスの姿であった。
―――――――――――――――――――――――
全身から襲い掛かる痛覚の嘆きをうろ覚えで聞きながら、意識が飛ばないように耐える【臆病者】。
すると……さっきまで痛がっていたハズの痛みが、段々と抜けていくのを【臆病者】のアイリスは感じた。
(あれ?どうした俺?)
次第に沸き上がっていく力と全身からくる暖かい感触。
一気に冷静さを取り戻した。
おもむろにうずくまっていた状態からゆったりと直立し、バルザンを見つめる。
大量の血は流れているが、特に体の異常は見られない。
「バカな……あれだけダメージを受けて、まだ戦えるのか?」
「……やってくれたなバルザン。さっきのは五本の指に入る程……痛かったぜ!」
「なんだ……ウグアァァァァ!!!」
アイリスは一発バルザンを殴ろうとバルザンに一気に詰め寄る。
(ちょっと待って早い!)
自分でさえ思っていた速さの数倍以上の早さにアイリスは驚き、拳を作れずに頭をバルザンにぶつける。
バルザンは何も出来ずにアイリスに激突された。
苦しい呻き声と共にバルザンは後ろへ飛ばされて木に激突する。
地面に倒れそうになるアイリス。
通常なら制御出来ずに普通に倒れるが……。
(……落ちる速度がやけに遅いな。これならこうして……)
アイリスは足を即座に引っ込めて体を地面と垂直に戻す。
反動もそこまで受けずにアイリスは軽々と着地した。
(あれ?両足と両腕が……再生してる)
アイリスは気がつくと両足と両腕が元に戻っていた事に気付いた。
「【ステータス】!」
バルザンを追い打ちする手もよぎったアイリスだが、そんな事よりもステータスが気になった。
【error】名前無し(現愛称 アイリス・オーリア)
レベル 43 ランク C
体力 26/868
魔力 163/338
攻撃 000/error
防御 000/error
早さ 000/error
速度 0000/error
当会心 00000/error
回避 00/error
当回避 00/error
総回避 00000/error
残血液 1653/4000(180)
経験値 000000/000000000
次 000000/000000(0000)
【注意】
現在、原因不明のスキルが発動しています。
人体に多大な影響を与えるスキルの為、絶対安静にするようにお願い致します。
(何だコレ……意味がわからない)
アイリス本人は全く意味が分からなかった。
―――――――――――――――――――――――
そもそも【ステータス】の魔法ははるか大昔、この世界のとある教会が作り上げた魔法の一種である。
元々昔の人間達が……
「自分の身体能力を数値化できれば、今の自分の強さがどれ位かわかるな!」
という理由から作られた。
名称・スライム
レベル 1
体力 残り90%以上
魔力 2
攻撃 3
防御 3
素早さ 5
初期の【ステータス】はこのような貧相な物であったが、幾多の後継者が魔法の開発を続けて現在の【ステータス】になった。
この魔法は度々更新されるのだ。
変更点があれば教会が2月に発表し、毎年4月に更新される。
特定のスキルによるステータス上昇があるためである。
魔法を覚え直せば(一度覚えているため詠唱や魔法陣は非常に簡単)、最初のステータスが何時でも表示出来るようになる。
ところが、スキル【野蛮道】を発動したアイリスのステータスは殆どerrorの表示があった。
つまり、教会が未だ発見されていないスキルなのである。
未発見のスキルには、errorの表示がされているのだ。
―――――――――――――――――――――――
意味が分からないエラー表示にポカーンと茫然し、佇むアイリス。
口からダラダラと血が流れている状況で吹っ飛ばされたバルザンは、すぐさま起き上がって魔法を唱えた。
「くそったれが! 【魔力球】!」
従来の64分裂から128、256、512……。
1024分裂した直径数ミリ程度の球をアイリスに向かって飛ばす。
1000を超える弾丸並の魔力球が襲い掛かる……が。
(遅い。どうした俺?)
アイリスは近くの木や自分の魔力、凄まじくなった胴体視力を駆使していともアッサリ回避する。
「おいおい、マジかよ……。1024だぞ? それをいとも簡単に全部……。」
「覚醒でしょうか? それにしても凄まじい回避能力です。」
「アリスに斬られ、バルザンの戦いで更に傷付いていたハズの両手が尋常じゃない速度で回復しているぞ? 道具や魔法を使わずに、一体どうしてだ?」
ユッケと村長は両者驚愕し、アイリスの変貌ぶりに目が離せない。
バルザンは、放ったハズの魔力球が一球も当たらずにアイリスの後ろを過ぎていく光景を、夢でも見ているかのような悪夢の気分で直視する。
「さぁ、応援団の皆さん! アイリス先生を我らの太鼓で鼓舞してあげなさい!」
「ハイ!!!」
「おぅし! アイツらに負けてちゃ、バルザン様に面目が立たない! 野郎共! バルザン様を鼓舞するぞ!」
「オーーー!!!」
村長の提案によりゴブリン達は一斉の歓声と同時に、何処からか異世界の【太鼓】と【タンバリン】を混ぜたような楽器を取り出しては、木の棒でそれを叩く。
戦意を沸かせるような軽快で軽やかななリズムと早さで音を鳴らす。
対して、負けじと【ル・レンタン組合専用取引所】はとある黒のフードの一声により皆を一つにさせた。
応援歌という名の楽器で皆の気合いを一つに込め、轟かせる。
バルザンが出した最初の【魔力球】から既に1時間と少しが経過していた。
―――――――――――――――――――――――
―【野蛮道】アイリス視点―
なんだこれ?
今までと違う!
どうして回避出来た?
回避能力が高い俺でもあれは絶対無理だったハズ……。
残り体力も無い。
魔力もそんなに残ってない。
さっきの爆発で死にかけたハズ……。
それに……何で両手が何も無しに速攻で再生した?
今まで味わった事が無かった感触に戸惑う俺だが、同時にやらなければ行けない事があった。
(とは言え……この効果はそんなに持たないだろうな。一時的な身体能力の向上と考えるべきか。だとしたら、とっととこの戦いを終わらせて安静にするのが定石)
一刻も早く終わらせる!という意識の元、俺はバルザンに突っ込んだ。
さっきの走りで速度もある程度掴めることが出来た。
後は使い方次第。
何時もの自分の速さよりも速い速度で、バルザンに向かって一気に詰め寄る。
「クソっ……【魔力球】! 【大地の矢】!」
バルザンは手に魔力を込めて256分裂の魔力球と地面から100程の土の矢を俺に向けて飛ばす。
体力の都合上、マトモに当たったら死亡レベル。
こういう時になると、大抵の人間は緊張により緩みでミスをしてしまう。
失敗したら死ぬ!
失敗したら死ぬ!
失敗したら死ぬ!
と冷静に慣れないのだ。
だが、俺は何百以上も死の瀬戸際に立ってきた。
死ぬのは恐怖じゃない、慣れだ。
そこが普通の冒険者達と俺の違う所なのだろう。
俺はまたアッサリと回避し、バルザンに右手で顔を殴る。
バルザンはさっきの失敗を繰り返えさないようにガッシリと構えていた。
地面を少し引きずり、チャンスとばかりに右手に魔力を込めて俺を仕留めようとする。
「もらったあぁぁぁ!!! 【魔力……。」
「させるかよ!」
「チィッ! ガハッ!!!」
俺は地面と平行になっている状態から空中を蹴って回転し、上からバルザンの右肩を足で蹴り下ろす。
与えたダメージは少ないが、至近距離で魔力球をぶっ放されるよりはマシだろう。
更に俺は空中でバルザンの虚をついて左足で、蹴った方向に蹴り飛ばした。
予測出来なかったバルザンは口から血を吐き出して俺の攻撃に少し飛ばされ、軽く木にぶつかった。
そして吐き捨てるようにこう呟く。
「ハァ……ハァ……化け物だ……。空中で急に回転するなんて、レベル100でも無理だぞ……。」
正直、俺もびっくりだ。
空中で回転するなんて技、流石に特訓で身に付けられる代物ではない。
どうして出来たのだろう?
今までやった事すら無いと言うのに……。
閑話休題。
(バルザンの体力は残りどれ位だ?)
「【ステータス】!」
俺はバルザンのステータスを確認する。
【ステータス】名前無し(現愛称 魔力球使い バルサン)
レベル 97 ランク B+
体力 945/4716
魔力 591/980
攻撃 546/675
防御 395/473
早さ 318/480
速度 4.175/5.5
当会心 10.375/12.25
回避 9/10
当回避 9/10
総回避 17.19/19
残血液 3106/4900(2480)
残り900……。
さっきの爆発と後頭部に与えたダメージ。
それから急に強くなった時に与えた攻撃。
それでも耐えている事自体凄い。
バルザンってどんな特訓してきたのだろうか?
俺はバルザンの余りにも高い体力に頭を悩ませる。
(どうしよう……この状態が切れるまでに900を削りきる魔法なんて無いぞ?殴るだけじゃ、削るのは一苦労だな)
頭を悩ませていると、バルザンが起き上がって俺に一言告げた。
「おい、アイリス! 死ぬのは怖くねぇのか? お前の体力……俺の魔力球一発マトモに食らえば即死じゃねぇのか? どうせその状態が続いている間に俺を気絶させる寸断だろ?」
流石に読まれていた。
……ってことは、まさか……。
「そこでだ。俺の勝ち方は綺麗で終わるなんてこれっぽっちも関係無ねぇ。言いたい事はわかるか?」
「お前……まさか……。」
「このまま勝負するのは止めだ。俺は俺のやり方で勝ってやる!」
「ちくしょう!」
俺は全速力でバルザンの元へ向かうが、残念ながらバルザンの詠唱の方が圧倒的に早かった。
「【魔力球】! 【魔力球立方体】!」
「【魔力球】!」
バルザンは魔力消費が大きいハズの魔力球の防御を張った。
間に合わないと察した俺は右手に魔力球を込めて殴った。
……が、願い虚しく弾き飛ばされてしまった。
体勢は直ぐに戻ったためダメージは0だが、状況は更に苦しくなってしまった。
「ガッハハハハ!!! お前のその状態が続くまで俺は完全防御で待ってやる!」
「【魔力球立方体】は魔力消費が高い魔法だぞ!」
「おお! 普通は確かにそうだ! だがな! 【魔力球】を極めた俺は違う! 今の魔力なら最低30分は持つ。」
「30分!?」
30分だと?
アリスでさえバルザンより高い魔力で5分で苦しんでいた。
(やはりそうか! バルザンはスキルか何かの影響で、初期の【魔力球】から発展する系統の魔法の魔力消費を殆ど使わないのか!)
こんな領域を出せるのは、幼い頃から相当の【魔力球】を撃って無いと絶対無理なハズだ。
血と汗の結晶なのだ。
バルザンは俺と同じ努力家なのだろう。
そんな事を考えながら、俺はさっき殴った所へ移動して、同じ場所を殴り続ける。
ガン!という衝撃も聞こえず、ただ堅い白色の何かに阻まれているのを感じた。
しばらく殴っていると、ふらふらし始めてきた。
(魔力が……足りない)
気がつくと残りの魔力は既に50を切っていた。
しかし、それでも俺は殴る。
諦めたくない。
皆の期待と応援を背負っている立場である以上、ただ純粋に勝ちたい。
すると、殴り続けている俺を見たバルザンは不思議そうな目つきで俺を見つめていた。
「アイリス。どうして諦めない? もう勝負は目に見えているぞ?」
「……これのどこが……? 俺は……負けてない。」
「俺の魔力は後25分。お前の魔力はもうじき尽きる。そしてお前のその状態もいつかは尽きる。かといってお前が折れれば、俺はすぐさま【魔力球】でお前を殺す。」
「じゃあ、どうしてお前はそれをやらない? 今がチャンスだろ?」
「バカ言うぜ! 何時でも殺れる機会をわざわざ早めて、何の得がある? お前がわざと息を切らしている可能性も否定できん。」
「じゃあ、俺の拳とお前の魔力の勝負だろ? 余計な口を挟むな! 10年間今まで折れずにやってきたんだ! 今更こんな中途半端は所で諦めるかよ!」
「!!!」
俺は朦朧としながらも両手で同じ所をただただ殴りながらそう言い返した。
すると、直前の言葉と同時に殴った右のストレートにより、【魔力球立方体】の壁がピキッと音がした気がした。
「何!? そんな事があるというのか? 大体、【魔力球立方体】は並大抵の力では!?」
動揺するバルザンをかすれた目で見つめながら、俺はこういった。
「俺の父さんが昔の人間の言葉を借りて、前にこう言ってたな! 『人間が作った物が……。』」
俺は息を大きく吸って大声で叫んで勢いよく殴った!
「『人間に壊せる筈が無い!』ってな!」
左ストレート。
【魔力球立方体】には更に大きなひび割れが入った。
と、此処で分かっていた事態が。
(うっ……此処でかよ……)
両手から次第に魔力が消え、次第に激しいめまいと強烈な疲労感を覚えた。
《アイリス様、残念ながら……魔力切れです。》
非常の宣告。
俺はガクッと地面に突っ伏してしまった。
「……チッ。クソてこずらせやがって……どうせ【最後のあがき】って奴だ。」
バルザンはしばらくして【魔力球立方体】を解除し、トドメの魔法を唱える。
「あばよ、【野蛮道】! 【魔力球】!!!」
バルザンは64分裂の魔力球を唱えた。
……普通なら、此処で死んでるんだよな!
魔力切れでも、数百あれば……慣れるんだよ!
俺はバルザンが魔力球を飛ばした直後に近くの木へ飛び移りし、息を激しく上げながらバルザンに向かって勢い良く飛ぶ!
実質捨て身の攻撃であった。
防御を完全に捨て、状態が続いている状況。
その上で、攻撃全振りのラストアタック。
狙いを首に狙って、右手を全力で殴りかかった!
「食らえ! バルザン!!!」
「クソがあぁぁぁぁ!!!」
勝った……と思った次の瞬間、バルザンが咄嗟に右で俺の頬に殴りかかる!
激しい全身疲労のせいで思うように体を曲げられない!
(だ・か・ら!こんな所で諦めるかよ!)
俺は無理を承知で体を必死にぐねらせ、回避する。
結果、バルザンの攻撃は親指がギリギリ俺の左頬に激突。
俺のラストアタックはバルザンの首に直撃した。
(……無理)
俺はその直後、2メートル近くの高さから地面に倒れ、激突してしまった。
「そこまで! 結果は………………。何をしている! 早く救急班! アイリス殿を運びなさい。」
村長が勝負を止める合図が聞こえた。
結果は聞き取れなかった。
救急班が近寄ってくるのを微かに見えた後、俺はここで意識を失ってしまった。
負けたのだろう……。
だって、900削るのに首当てても無理だろ?
……でも、最後までやったという気持ちがこの時残るばかりであった。
―――――――――――――――――――――――
~一周年記念取材~
【野蛮学校物語】一周年おめでとうございます!
モーク「……え? これ……俺が言うの?」
この一年間どうでしたか?
モーク「え……えっと……。なんか、短かったなーっていう感じ?」
※モークは急に答えられるとめっちゃ焦るタイプです。
【野蛮学校物語】執筆者に向けて、主要キャラクターのモークさん。
何か一つ意見をお願いします。
モーク「えっと……。投稿期間おっせー!!!」
ありがとうございます!
次に、本作の主人公であるアイリス・オーリアさんに感想をお聞きしたいと思います。
アイリスさん。今のお気持ちは如何ですか?
アイリス「そうですね。【野蛮学校物語】のキャラクター代表として、一言。一年間此処まで読んでくださった読者の方々、本当にありがとうございます! 感謝感激です!」
執筆者に向けて何か一つ意見をお願いします。
アイリス「焦らず、頑張れ。地獄の道を走る事になっても、その経験はいつか身を結びます!」
ありがとうございます!
最後に、主要キャラクターであるユッケさんにも感想をお聞きします。
ユッケさん。今のお気持ちは如何ですか?
ユッケ「アイリスやモーク。それにゴブリン達の成長が、執筆される度にゆっくりとではありますが、強くなっているのを感じます。正直、アイリス達が羨ましい限りです!」
モーク「よくわかんないやつで一気にレベル上げられた結果があれだもんねー。代償が孤独人間だし。」
……ありがとうございます。
執筆者に向けて何か一つ意見をお願いします。
ユッケ「焦るな。一気に強くなっても退屈で仕方がない。ただ純粋にレベルを上げていけ!」
皆さんありがとうございます!
では、最後に皆さんで「ありがとう! 【野蛮学校物語】一周年!!!」と叫んでくれませんか?
アイリス「いいな、それ。」
村長「綺麗に決まった方が素晴らしいと思いますぞ?」
モーク「さんせー!」
ユッケ「悪くないな。俺も乗った!」
感謝感激です!
それでは、私の合図でお願いします。
せーの!
全員「ありがとう! 【野蛮学校物語】一周年!!!」
来年も宜しく御願いします!
それでは、本当にありがとう御座いました!!!
全87部分
文字数(句読点含む)741309文字
モーク「一話辺りの文字数多っ!!!」




