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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
85/116

第80話 静かなる案内人



 午後7時。

 【ル・レンタン組合専用取引所】軍団は【グルドの森】にある草原地帯にたどり着いた。



 「バルサン様! 【グルドの森】の手前にたどり着きました。」

 「よし、先頭部隊に止まるように伝えろ。何処かにアイリスと名乗る男が俺達を待っているハズだ。」


 「はっ……前方、止まれ! 【密偵部隊】、【遊撃隊】、【盗賊部隊】はアイリスと名乗る男を見つけ次第、速やかにバルサン様に伝えろ! 他の者はしばらくその場で待機だ!」



 バルサンの指示を受け取った幹部の命令により、前方部隊に居た部隊が一目散に散らばる。






 しばらくすると、【盗賊部隊】の一人から【情報送信】によるメッセージが幹部に届いた。

 



 「アイリスと名乗る男、一人佇んでいる。場所は駐屯場所から距離、北西に500。」

 「そこへ向かえ。アイリスという奴を直接見てやろうじゃねぇか。」

 


 メッセージを受け取ったバルサンはすぐさま全軍に命令を出して向かっていった。



―――――――――――――――――――――――

―【臆病者】アイリス視点―



 俺は今、数十人の男に囲まれてナイフを向けられている。


 茶、紫、黒、青という様々な色のフードを着た男達にナイフを向けられる俺の気持ちになってみろ!と心の底では言いたい。



 「……で、何時まで俺はこの状態なんだ?」

 「バルサン様がもうじき此処へ到着なされる。そちらの罠と我らが気付いた瞬間、首が飛ぶと思え。」


 「お前らに人殺せるのか?」

 「なるほど。殺すなとは言われているが……『傷付けるな』とは言われていない。」



 すると、青のフードを着た男が俺の首元にナイフで軽く切った。


 若干力を加えた事により、俺の首筋から血が流れ出した。



 「……なるほど、躊躇いは無しか。何のために闇の社会に?」

 「フン。こうでもしないと一般の俺達は金が足りないからな。特に表で活躍しているお前らみたいな【冒険者】って奴は、命がけにも関わらず安月給だろ?」



 それは俺には身にしみて理解出来た。



 よくよく考えれば命がけの生活をしているのにも関わらず、【冒険者】というのはかなり不安定で安月給の職業なのだ。


 有名組合所属のエリートや有名冒険者になっても、一部は村の人の依頼をこなしていかないと安定した高収入は望めない。


 (人を殺すか魔物を殺すかという価値観の違いだけだな。俺がコイツらを見下ろして【人殺し】とは到底言えない……。)



 「……お互い様だな。」

 「ああ、お前の言うとおりだ。好きで人殺し、魔物殺しをやってんじゃねえ。美味いものを食っていく為、たったそれだけだ。」



 俺達が言えることはそれしか無かった。

 反論も出来なかった。






 それから10分がたった頃、かなりの軍団がやってきた。


 ざっと300超え。


 (俺達はこのままタイマン勝負へ行かなかったら、コイツらとマジの殺し合いやってたのか。まぁ、まだ回避した訳じゃないけど)



 「あれか? 全員連れてきたな?」

 「バルサン様一人では何が起こるか分からん。当たり前じゃねぇか。」



 流石に一人で来るとは思っていなかったが、まさか全員連れてくるとは思わなかった。


 まだ戦争の可能性があるから正直怖い。



 それから数分後、俺との距離数十メートルで馬車が停車した。


 周りにはかなり強面で屈強な(多分親衛隊)男達が、馬車の中にいる人間を守るように配置されている。


 (中にボスがいるな。それも、アリスとはちょっと違った強さを持った人間だな)


 俺はそう確信していると、馬車のタラップを踏み倒すように降りてきた180越えの男が俺を見つめて観察していた。




 薄茶色い坊主頭だった。

 ナイフ所々切れた後が残っている。


 眉は鋭く尖っており、見ただけで威圧感を覚える。

 目は翡翠色で綺麗だった。

 欲しい奴いそうだな……俺は全く興味ないけど。


 筋骨隆々のその体に、全身黒と銀色の装備でガッチリと固めていた。


 幾多の激しい命がけの戦いを乗り越えてきた、そんな地獄から這い上がってきた戦士のような姿であった。




 間違いなく手強い。

 幹部達も厄介なステータスばかりだが、コイツはヤバイ。


 何処か隙が無いかとあれこれ探していたのだが、その前に大男が俺の元へ近寄ってきた。

 大男が地を踏む毎に、若干の大地の揺れを感じるのは何故だろうか?


 勿論この間はコイツの部下達にナイフて首元を四方八方狙われており、身動きも出来ない状況であった。



 そんな状況の中、大男が俺に数メートルの距離の間で話し掛ける。



 「お前がアイリスか? そこにいる男がお前自らアイリスと名乗ったと聞く。」

 「……ああ、アイリスだ。早速だが単刀直入に聞こう。ゴブリン村長が提案したタイマン勝負、引き受けるか? 嫌と言えば……わかっているよな?」


 「お前、この状況にビビってるのか?」

 「ビビっているのは今俺が直接話している人だ。」



 バルサンは俺に目線を反らすことなく周りの密偵を見回す。


 コイツらはどうでも良いのか?とでも言っているのだろう。



 「ほぅ……そいつらにナイフで刺されても何とも言わんと?」

 「そう言うことです。」


 「お前ら、コイツの腕を切れ。決して殺すな。」

 「了解! ……バルサン様、彼の両腕……。」

 「ああ、そうです。今日の朝でちょっとしたヤバイ敵が居たんです。ソイツにやられてしまって……。」



 大男、バルサンに命令された部下数人は俺の腕を切ろうとする……が、俺の腕は半分無かった。

 アリスとの戦闘で両腕を切られ、緑草で傷は塞がったが、手が再生するにはあと数日は掛かる。



 しかし、この一件でバルサンの態度が変わった。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

~バルサン視点~



 俺はアイリスの喉元にナイフを向けている部下達を見つめてこうカマをかけてみた。


 大抵の人間は、威を借りた狐程度のタマだ。


 「今から腕を切る」とギリギリの所までやらせれば、小便引っ掛けて命乞い。

 幾らでもソイツの弱ぇ所を引き出せる。


 要するに、村長っていう奴が寄越した使者ってのがヤバイ奴なら、快勝で終わる筈だった戦争が血みどろの泥沼になるかもしれねぇ。



 さて、アイリスとやらはどうでる?



 「ほぅ……そいつらにナイフで刺されても何とも言わんと?」

 「そう言うことです。」


 「お前ら、コイツの腕を切れ。決して殺すな。」

 「了解! ……バルサン様、彼の両腕……。」

 「ああ、そうだ。今日の朝でちょっとしたヤバイ敵が居たんです。マジになったソイツに鋸でやられてしまって……。」



 アイリスは軽く笑いながら両腕を動かして切れている事を見せる。



 ……なんだと?

 「ああ、そうだ。今日の朝にちょっとしたヤバイ敵が居て。ソイツに鋸でやられた?」


 何故だ?

 言っている事可笑しいんじゃねぇのか?


 何で今日の朝腕無くしてそんな呑気に居られるんだ?


 (オマケに首筋から流れている血の事なんか触れてこない。度胸試しに俺の部下がやったんだろうが……そんなのはどうでもいいのか)


 少し俺が動揺していると、アイリスは右腕を出してこういった。



 「そんなに腕切りたいの見たいのならどうぞ? まな板とナイフ持ってきたら、自分で黙って輪切りにしますから。ただ、一部始終はバルサンさんに見て貰いたいですね。」



 コイツ……並大抵の精神どころじゃねぇ……。

 根性の精神がバケモノ並に狂ってやがる。


 腕を切られるのを嫌がる所か、自分からまな板とナイフを持って切るのを進める奴は今まで居なかった……。



 やるな……。

 戦争を仕掛ける相手じゃ無かった見てぇだ。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

―【臆病者】アイリス視点―



 「そんなに腕切りたいの見たいのならどうぞ? まな板とナイフ持ってきたら、自分で黙って輪切りにしますから。ただ、一部始終はバルサンさんに見て貰いたいですね。」



 (ちょっと誇張表現な気もするが、まぁいいか。どうせ「やれ!」って言われても、後で緑草で回復すれば何時かは治るし)


 しばらくの間バルサンは黙っていたが、言葉を開いた。



 「……ゴブリン村長の条件、引き受けよう。相手はこの俺だ。」

 「了解、村長が特設会場とやらを作ってお待ちだ。そこまで案内しよう。」


 「ああ、宜しく頼む。……一つ聞こう。お前らゴブリン側の相手は誰だ?」



 俺は村長の特設会場へ案内しようと、後ろを向いたその時、バルサンが対戦相手を訪ねる。


 ついでなので後ろを向いたままこう言った。




 「バルザンさん。タイマン勝負宜しくお願い致します。」




 バルザンの部下達は、ガクガクと震えたまま俺にナイフを以前より少し離して向け続けた。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

~バルサン視点~



 馬車に戻り、俺達はアイリスを先頭に【グルドの森】を案内されていた。


 (アイリスが対戦相手か……事前に【ステータス】が気になる)



 「おい、アイリスに一つ確認したい事がある。【ステータス】は見ても良いのか?と確認してくれ。」

 「はっ。畏まりました。」



 部下にアイリスのステータスが確認出来るか聞いて貰おうとした俺は、近くにいた【盗賊部隊】の幹部に指示する事にした。


 数分後、報告が入った。



 「『良いけど……先にバルサンさんの【ステータス】を見せろ。』との事です。」

 「ふむ、良いだろう。」


 「宜しいのですか? 一向に見せない可能性も考えられますが……。」

 「俺の【ステータス】を見た所で、対策とか出来る代物じゃねぇよ。寧ろ、相手が困惑するだろうなぁ。それに、今此処で奴がそんな事をしたら間違い無く信用が落ちて俺達とドンパチだ。それは表社会でも闇社会でも一緒じゃねぇか。」


 「はっ、了解しました。では、バルサン様。アイリスの冒険者ナンバーは10765218です。」

 「うむ。全軍、止まれ!」



 俺は全軍を止めて馬車から一旦降り、【ステータス】をアイリスに向けて飛ばす。



 「【ステータス転送・10765218】。」



 それから少し後に、小さな光の球が俺の腕に当たった。

 あったけぇ感触の直後、俺は【ステータス】を開く。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

―【臆病者】アイリス視点―


 

 「【ステータス】!」



 俺は幾人の男達に相変わらずナイフを向けられながら、バルサンのステータスを確認する。


 さっきバルサンのステータスを受け取り、本物かどうか遠くでひっそりと監視しているユッケにサングラス越しに会話をした。

 本物だったので、俺の本物のステータスをバルサンに送ってもらった所だ。




【ステータス】名前無し(現愛称 アイリス・オーリア)


  レベル 43 ランク C


  体力 845/868

  魔力 338/338

  攻撃 395/463

  防御 278/278

  早さ 786/806

  速度 8.75/8.75

 当会心 9.125/9.125

  回避 56/56

 当回避 56/56

 総回避 80.64/80.64

 残血液 3980/4000(180)


 経験値 104386/500000000

   次 104386/107000(2614)




【ステータス】名前無し(現愛称 魔力球使い バルサン)


  レベル 97 ランク B+


  体力 4716/4716

  魔力 980/980

  攻撃 675/675

  防御 473/473

  早さ 480/480

  速度 5.5/5.5

 当会心 12.25/12.25

  回避 10/10

 当回避 10/10

 総回避 19/19

 残血液 4900/4900(2480)




 アリスとの一戦でかなり経験値を貰った。

 どういうわけか俺の方が、ユッケより貰った経験値より大きかった。


 まぁ、貰うとも思ってなかったから嬉しい誤算程度で良いだろう。

 そんな事より……えっ?



 体力4716!?

 

 しかも魔力もそこそこ高い。


 

 あとは会心が高いな……でも攻撃力は思ったほどじゃない。


 俺の方が早さと総回避の数値が高いから、よっぽどの事がない限りは彼の物理攻撃をマトモに受けないだろう。



 気になるのは魔法だな。

 【魔力球使い】とまで愛称で言われているし……。

 

 (コレは超長期戦だな……回復とか使われたら俺の火力では無理だ。面倒っ!正直真っ向勝負したくないタイプだな)



 そんなバルサンのステータスで気落ちしていると、男達が急かす。



 「……オイ! バルサン様を待たせるな! さっさと案内を続けろ!」



 (こっちだってぬかるみに足や馬車を取られない場所を通るのに必死なんだぞ?)


 ……と俺は小さな溜め息を漏らして愚痴を心にぶつけた後、黙って特設会場へと向かう事にした。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

~バルサン視点~



 再び馬車に乗って進み出した頃、俺は奴の【ステータス】を確認する。



 回避80以上、残血液200……。

 何て奴だ……。



 一体どんな修羅の道潜ってきたらこんなめちゃなステータスになるんだ?

 なら、どうしてレベルが低い?普通ならレベルも非常に高いハズだ……。



 まさか……あの噂の【野蛮道】って奴か?



 (数年前に亡くなった先代の爺が煩く口癖で言ってたな……『もし【野蛮道】と戦うのなら、決して油断するな。死の覚悟はしておけ』)



 正直俺は【野蛮道】を持っている奴は嫌いだ。


 大体そいつ等は性格が歪んでやがんだよ。

 俺の爺も、【野蛮道】の奴に運悪く出くわして殺されそうになった事がある。



 理由?

 爺の話だと、「翡翠色の透き通った目玉が気に入ったから」だってよ。



 山に縄張り張って「金を出せば命は助けてやる!」と商人や冒険者を脅す、山賊の方がまだマシな理由じゃねぇか。

 名前がねぇ人間が必死にいきるために、心汚してまで必死に金奪おうとしてんだ。

 正直哀れというより、同情するぜ。



 まぁ、アイリスって奴がどう転ぼうがレベル以上に厄介な人間って事だ。

 【野蛮道】なのに、どうして愛称が【臆病者】なのかは薄気味悪いけどな。



 俺の攻撃する早さは奴の回避能力に負ける。

 だが、数発当たれば俺の魔力なら何とかなる。


 (覚悟しろアイリス。【魔力球使い】と言われた俺の本気を見せてやろうじゃねぇか!)


 俺は表社会では珍しい魔法【収納魔法】からウィスキーとグラスを取り出し、ストレートで一杯飲みながらそう強く誓った。



―――――――――――――――――――――――



 アイリスが静かな案内人を始めてからおよそ40分が経とうとしていた頃、一行は遂に目的地へとたどり着いた。。


 途中、バルサンの部下達はあらゆる想定に対して警戒していたが何も起こらなかった。


 急襲するメリットがどこにも無かったからである。

 


―――――――――――――――――――――――

―ユッケ視点―



 俺は今、村長と共にクレーターのド真ん中にいる。



 紆余曲折だな。

 何が起こるかわかんないものだ。


 元々俺達が【ル・レンタン組合専用取引所】をハメて虐殺する為に掘ったクレーターが、まさか闘技場に変わるなんて……誰が思った?


 皆が平和的解決を一生懸命目指そうとした結果だ。


 (村長も凄い事考える……総計3500の魔力で濁流使って敵部隊全部を丸ごと滅ぼすなんて、大胆なゴブリンだな)

 


 そろそろアイリスがくる頃だと思うんだが……。


 そんな事を思っていると、アイリスからの報告が入った。



 「村長さん。アイリスがもう直ぐ此処へ来ます。相手は……【ル・レンタン組合専用取引所】のバルサンだそうです。部員全員連れてきた可能性が高いかと。」

 「ほぅ……大将自ら出陣ですか。相当な仲間思いですねぇ。それに、部下からの信頼が非常に厚い。」



 確かに考えればそうだ。

 こんな一大事なタイマン勝負、もしも部下がミスれば仲間からのバッシングは凄まじいものだろう。


 しかし、大将自らが出れば責任は自分と言って組合を存続されられる。

 それに伴い、部下達全員がバルサンを送っている。


 余程バルサンを慕っているのだろう。



 「ユッケ殿。どちらが勝つと思われますか?」



 ゴブリン村長は勝敗を俺に予想させてきた。

 少し悩んだ末に出たテキトーな答えは……。



 「うーん、どっちも負ける。」

 「と、言いますと……引き分けと言うことですな?」


 「……済まん。適当に答えただけだ。」

 「正直私も勝敗がわかりかねます。アイリスとバルサン、ちょっとしたミスでも命取りになりますからな。」



 俺達は勝敗の結果を最後まで読めなかった。


 後はアイリス、頑張れ!と応援するだけである。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

~バルサン視点~



 それからしばらくして、馬車が止まり幹部が到着したと報告した。


 タラップを使って馬車から降り、すぐ近くにいた静かな案内人の近くまで向かう。



 「お待たせ。コレが、闘技場だ。」

 「……随分広いクレーターだな。大した奴らだ。ホントは、此処で俺達をハメるつもりだったんだろ?」


 「そうだ。」



 俺の部下達はザワザワと小言を次々と交わす。

 今度は部下達に向かって案内人のアイリスが一つお願いをした。



 「部下の皆。俺はバルサンとタイマン勝負をする。これからクレーターの中心に向かうが、太い線が引かれた場所から奥は絶対通るな。」

 「罠だったらお前を絶対殺す。バルサン様のご慈悲に感謝しろ!」


 「どうぞ。だが、勝手にそっちが突っ込んできたら周りにいるゴブリン達がお前らに遅いかかる。覚悟しろ。それに、もう少しでスペシャルゲストを呼んである。逃げ場はないぞ?」



 逆に部下を脅してやがる。

 部下達はアイリスのよくわからねぇ威圧感に押された。



 「バルサンさん。中央で村長がお待ちです。」



 俺達はアイリスに連れられる。

 後ろに付いているから、やろうと思えば簡単に首を取れるハズなのに……俺はどうしてやらない?


 (やってはダメという警告みてぇなものが俺の直感から出てるな。まるで運命に操られている気分だ)


 そんな中、俺は地面に敷かれた太い線に気付く。

 そこは、クレーターの中心がそこそこ見える半径50メートル程の場所だった。



 「お前らは此処で待て。絶対に勝ってくる。」

 「お待ちくださいバルサン様! 万が一アナタが居なくなるのは、我々の壊滅を示します! せめてお供を……。」


 「俺の顔に泥を塗るつもりか? 敵に約束しちまったものは、表でも裏でも最後まで通さないと行けねぇ。お前ら、頼む。」

 「「「!!!」」」



 部下達は俺の発言に驚き、何も言い返さなかった。

 俺は最後に言うつもりで言葉を投げかける。



 「最後までタイマン勝負を見て敵対勢力のアイツらに言ってやれ。これがル・レンタンの闇社会でトップを生きた俺達のボス、バルサン様だってな!」

 「「「御武運をお祈りしております、バルサン様!!!」」」



 部下達は全員土下座をして俺に忠誠心を見せた。

 俺は微笑みながら、遠くで待っていたアイリスに……



 「済まない、時間を食わせた。」

 「構わん。どうしてお前らがル・レンタンでトップだったかが理解出来た。」



 アイリスは「付いて来い。」と言って俺を案内させた。

 部下達全員は太い線を越えることなく、土下座したままであった。











 クレーターの中心では、老いぼれたゴブリンとただならぬ気配を漂わせている若者がいた。



 「【試練の森】……いや、【グルドの森】へようこそおいでくださいました。」

 「テメーが俺達に手紙を送った、ゴブリン村長で間違いないな?」



 俺は老いぼれゴブリンに聞いてみる事にした。

 老いぼれゴブリンはにこやかな笑みをしながら答えた。



 「はい。間違いは御座いません。」

 「(今考えればらゴブリン村長っていうのも変な名前だな……。)果たし状に明記されたタイマン勝負とやらの件……引き受けよう。お前らの相手はこの俺だ。アイリスがお前らの選出か?」


 「はい。」

 「バルサン、俺はアイリス・オーリアという。」

 「さっきも言ったとおりバルサンだ。宜しく。」



 俺とアイリスは片手でガッチリと腕を組み……返せなかった。


 そう言えば手が無いんだったな。



 「……すまん。ゴブリン村長、アイリスの両腕が無いのはタイマン勝負にはかなりのハンデだ。それでもいいのか?」

 「義手ならありますが……バルサン殿はそれでもかまいませんか?」


 「後で文句言われても困る。構わん。」

 「アイリス殿。コレを。」

 「ありがとう。」



 アイリスはゴブリン村長が隣にいる若者に義手を持たせ、若者がそれをアイリスに装着させる。



 「殴って掴むという所行は出来ませんが……殴ることは可能です。」



 用は木の棒を装着した感じと言うことか。

 その程度なら何とかなる。


 そして俺は、肝心のルールをゴブリン村長に聞いた。



 「オイ、村長。ルールを教えろ。」

 「畏まりました。素手と魔法が可能です。魔法での回復は構いませんが……道具類の回復や攻撃は禁止です。収納魔法を使って道具を取り出すのも禁止です。」


 「つまり、武器や道具は問答無用で禁止ってことか?」

 「はい。こちらの箱の中に武器を全て置いて下さい。箱の中身は後ほど全て返却します。」



 俺とアイリスは近くの箱の中にドカドカと武器を入れる。


 特にアイリスが収納魔法を使えるのには驚いた。

 そんな事を気にしながらも、俺は隠し武器なども箱の中に入れていく。


 収納魔法の中に入っている物も全部だ。



      短刀 28本 

      毒針 100針以上

      大剣 2つ

       盾 2つ

 珍しい賢者の杖 2本

 アイロン製拳銃 4丁

イミルミア製拳銃 2丁



 村長と若者は俺の武器に驚愕していた。

 特にイミルミア製の拳銃を出した時には若者は衝撃だった。


 (ほぅ……イミルミア製の拳銃の意味を知っているのか。若者は時代の先に何処までも追い付くじゃねぇか)



 一方のアイリスは少なすぎた。



 禍々しい色の短刀 2本

       魔剣 1本



 たったこれだけ。


 (【野蛮道】にしては少な過ぎる。かといって此処まできて武器を隠し持つとは到底思えん。殺すなら幾らでも道中に隙を付いて襲ってくるハズ)


 俺は多少疑いながらも、一応俺も念の為に武器は隠し持っている。


 (果物ナイフ数本如きで身を守れる保証は無いがな)


 そして俺達が武器を置き終え、最後に村長が一言。



 「ではこれより、【ゴブリン軍団】代表・アイリス・オーリアと【ル・レンタン組合専用取引所】代表・バルサンのタイマン勝負を始めます! 勝者こそが正義! それが戦争です! アイリス、バルサン。宜しいかな?」

 「おう。勝ったら俺達の傘下に入れ。負けたら言うこと聞いてやる。」

 「おう。勝ったら俺達の言うことを聞け。負けたら喜んで傘下に入ろう。」


 「その心意義や良し! 両者、構え!」



 俺は事前に発動準備の魔法をある程度掛けておく。

 アイリスは構えの姿勢から怖じ気づく事もなく俺を観察する。



 「始め!」

 「アイリス、食らえ! 【魔力球】!」


 ゴブリン村長の元、俺は魔法をアイリスに撃った事により始まった。



―――――――――――――――――――――――



 こうして【グルドの森】では、【ゴブリン軍団】と【朱の騎士団】と【ル・レンタン組合専用取引所】の運命をかけたタイマン勝負が始まった。



 武器や道具禁止、勿論回復扱いの緑草も使用禁止である。

 しかし、回避特化した人間と耐久が高い人間がそんなタイマン勝負をしたらどうなるか?


 これから、長い長い戦闘が始まる予感を誰もが感じていた。


 

 まさか、アイリスとバルサン至上、人生で最も長いタイマン勝負になろうとは……。



―――――――――――――――――――――――



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