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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
83/116

第78話 ワゼリス、友の再起を祈る

※この話には、性的な描写や差別的表現が多く含まれています。

予めご了承下さい。



 模擬戦争から少し経った昼の1時頃。

 兵士とさほど変わらない食事を食べ終えたばかりのワゼリスの元に、伝令が帰ってきた。



 「ワゼリス様! 只今伝令が帰還致しました。どう致しますか?」

 「うむ、勿論通しなさい。」



 ワゼリスは食べ終えた料理の皿を使用人に渡し、伝令を自分の部屋へ通す。

 慌てて来た伝令は息を荒げながら報告した。



 「ノノア様からの伝令です! 数点報告致します! 【ゴブリン軍団】が【朱の騎士団】No.1のアリスを捕獲されました!」

 「……続けて聞こう。」



 ワゼリスは分かっていたつもりの表情で一つ目の報告を特に驚くこともなく聞き、大きな鼻息を出す。

 その鼻息は、安心と悲しげな気持ちを表していた。


 そんな感情を吐き出しつつ、ワゼリスは伝令に報告を続けさせた。



 「はっ! 模擬戦争にて、単独行動で真剣を使用した将ルーサー様が【ゴブリン軍団】に一時捕獲されております!」

 「何!? 真剣だと!? ……しまった。やはり事前にメンバーを変えておくべきだった! ……それで、【ゴブリン軍団】はどうすると?」



 ワゼリスはルーサー捕獲で椅子から立ち上がり、両手で机を叩いた。


 後悔したように独り言を呟くと、ワゼリスは冷静になって伝令に報告を続けさせる。



 「明日の朝に釈放するつもりのようです。『殺す権限は此方には無い。ワゼリス様がお決めください。』との村長からの御言葉のようです。」

 「そうですか……私自らが【グルドの森】に赴いて頭を下げましょう。それで、なにか他にありますか?」


 「はい。【グルドの森】に潜んでいた【ル・レンタン組合専用取引所】の密偵が、本拠地へメッセージを送りました! 阻止することが出来なかったそうです。」

 「何と! 内容は如何に!?」


 「現在、【ゴブリン軍団】はメッセージを送った者に事情を聞いている様子です。村長はワゼリス様に謝りたいと……。」

 



 伝令の思わぬ報告の連続にワゼリスは頭を抱えて悩む。


 まさか密偵に足を救われ、ルーサーが此処まで暴れるなどとは思っても見なかった。



 ただの茶番程度で終わらせるハズの模擬戦争が、こんなシリアスな展開になるなど誰が思ったのだろうか?



 「……なるほど、これは困りましたね……ですが、此方も悪い落ち度があります。追及は致しません。それより、密偵と相対したのは誰という報告は聞いておりますかな?」

 「モーク殿です。」


 「モークですと? あの強力モークタンが何故負けたのでしょうか?」

 「モーク殿の主力技や魔法を、敵の密偵共が無力化してきたという所が大きかったようで……【驚愕する魔力球】ですら、密偵共に弾かれたようで……。」



 ワゼリスは一筋の冷や汗を額から流す。


 【驚愕する魔力球】の恐ろしさは承知している。

 無理矢理弾くなんて芸当はかなり難しい。



 「ハハハハハ! いやはや! どうやら私達は敵の質を舐めておったようですな。正直引き抜きたい位です。伝令殿、本来ならノノアを帰還させる所であったが……急遽変更だ! 今日の所は【ゴブリン軍団】に留まれとお伝えください。」

 「ハッ! 畏まりました、ワゼリス様!」



 伝令はワゼリスの命令を受け取ると、すぐさまノノアの元へ向かった。


 更に来客は続く。



 「ワゼリス様。今度はロガー様とエリス様がお見えです。」

 「通せ。」



 今度はロガーとエリスが入ってきた。



 「ワゼリス様、先日頼まれた要件についでです。」

 「おお。……それで、奴らの本拠地は如何なる場所に?」

 「マンホールです。」


 「……マンホール? 道の真ん中にある丸い奴ですな。このル・レンタンに幾らでもありますよ?」

 「此方をご覧ください。この街の地図を詳細に記入致しました。」


 「何っ! 僅か5日足らずで仕上げたというのか?」



 エリスが持っていた一枚の洋紙を取り出す。



 縦横80センチの地図には、ル・レンタンの街並みや隠し通路などの要所要所が全てとは言わずとも、かなり正確に記入されていた。


 中にはル・レンタンで生まれ育ってきたワゼリスでさえ知らない通路も幾つか書かれていた。 


 あまりの部下の仕事ぶりにワゼリスは驚きを隠せなかった。


 

 「ワゼリス様、この大通路を左に曲がり……此方の赤色の屋敷の細い脇見を通り、3つ目のマンホールが彼らの拠点です。」

 「何! 確か赤色の屋敷は……呪われた幽霊が住むと噂されてる場所ではないか?」


 「はい。一度中に入れば生きては帰れない屋敷です。どういうわけか、国が取り壊しを拒否していて、手付かずの状態ですね。」

 「……なるほど。それで、どうして此処だとわかりましたか?」


 「街中至る所に部下を昼夜張り込みました。モーク殿の宣戦布告でかなり動揺なされていたようで……マンホールから人間が出て来る所、直ぐに視認出来ました。」



 これで、何時でも彼らの拠点を襲撃出来るようになったのである。


 マンホール程の狭い穴相手では幾ら大勢で攻めでも大して意味がない。しかし、今は特別な事情で最大のチャンスが出来ていた。



 「今夜、【ル・レンタン組合専用取引所】は【ゴブリン軍団】掃討の為に大半の者を送り込むでしょう。その隙を突いて、彼らの本拠地を取りましょう。今が報復の時かと!」

 「少し、考えさせて貰えませんか?」


 「構いません。ワゼリス様の意のままに。」

 「自由にお決めください。我々はワゼリス様のご意志に従います。」



 ワゼリスは目をつぶって両腕を組みながら少しの間動かずに真剣に考える。


 彼の自室内は一気に静けさに支配された。



―――――――――――――――――――――――



 ワゼリスは頭の中で、【ル・レンタン組合専用取引所】に色々やらされた事を思い出していた。

 その中でも特に、とある商人の過去を思い出していた。




 (二年前、突然の来客で口が達者の商人がやってきたのが始まりですなぁ。それが、まさか闇に身を投げ出すとは……)


 ワゼリスが【朱の騎士団】の勢力を拡大している真っ最中だった頃、フレッドと名乗る一人の商人が本拠地にやってきた。



 初期の彼は今の彼とは思えないほどの腕前であった。

 たった一つ口で相手を説得し、納得させ、要求が不満だと直ぐさま察知して別の条件を挟む。


 ……など、素人とは思えないほどの商人の才能があった。

 ベテラン商人であるハズのワゼリスが、素人相手に舌戦で綺麗に負けたのだ。



 (最初は彼を非常に信頼していました。もしかしたら、良い商人となって……【朱の騎士団】の要となるであろうと)


 契約初期の頃の彼は良く働いていた。ワゼリスのそばにいたエリスやロガーでさえも、彼に交渉の全権を与えては?とワゼリスに進言して来た程であった。

 契約してから1ヶ月が経った頃には、彼は商業の全権を握る強力な地位にまで登り詰めていた。


 彼の舌術を自分も身に付けたいと、根っからの商人であるハズのワゼリスが商人の「し」も無いフレッドに教えを請うように土下座した程である。

 実際、ワゼリスのこの舌術もフレッドから教えられた物であった。



 だが、素晴らしい彼がいたのはそこまでだった。

 ワゼリスが信頼していたフレッドは死んでしまったのだ。


 (自尊心に深く溺れてしまったのでしょうな。自分は凄い!天才だ!と、努力を次第に怠った事が、没落の道の始まりだったのでしょう)


 彼は商業の仕事を部下に任せて命令するようになり、次第に荒い人間となってしまった。



 そして、遂に彼は闇の稼業に手を出してしまった。



 さらに欲をかいた彼は、貴族という立場を上手く使って、【朱の騎士団】を極限まで搾り取ろうとした。


 その気になれば、信頼されている王に密告して【朱の騎士団】を潰すことも出来たのである。

 それをしなかったのは単に、自分が大金を数えながら地面に頭を付けて媚びる、哀れな【朱の騎士団】が見たかったからである。


 (アナタが商業全権の力を悪用して……コレまで我々にして来た事、忘れませんよ。利益の横領、略奪の命令、金品の過度徴収……キリがありません)



 ワゼリスがフレッドを殺さなかったのはたった一つ。

 どうか改心して元の「フレッド」に戻ってやり直して欲しかったのだ。


 初期に眩しく輝いていた、あの美しい商人としての本物のフレッドに戻ってきて欲しいのだ。



 ……そんな希望に過ぎない祈りを続けて二年。


 フレッドがどんどんの醜い人間へと成り下がっていくのを、ただただ見ているだけの結果となってしまった。


 (フレッド殿、私はアナタの組合の占領。さらには、アナタを殺そうとしております。どうか、昔のフレッド殿に戻ってはくれないでしょうかな?)


 ワゼリスは、友の再起を祈った。



―――――――――――――――――――――――



 そして、ワゼリスが口を開いた。



 「わかりました。今夜21時頃、敵の部隊出撃後に本拠地を占領します。夕の19時には全幹部を居間に集結させておいて下さい。私が直接命令を授けます。」

 「「はっ!」」


 「あと、ロガー殿。フレッド殿を今すぐ此処へお呼び出来ませんか?」

 「畏まりました。」


 「あと、万が一の為の死体処理班と兵士数十も呼び寄せ願います。誰も入らないように警備も必要です。」

 「「!!!」」



 ロガーとエリスは身震いを始めた。


 ワゼリスが今まで願っていた彼を、殺すかも知れないと言っている事とさほど変わらなかった。

 どうやって殺すかは知らなくとも、ワゼリスの悲しげな目に、ロガーとエリスは発言する力を失ってしまった。



 ホントはワゼリスだって殺したくはないのだ。誰よりも尊敬していた人間だったから。


 信頼と安心と実績を積み重ねて、商業の全権を彼に任せたのは事実だからである。



 ロガーはワゼリス様に念を押す。



 「……宜しいのですね? 私は構いません。寧ろ、殺しても躊躇いはありません。」

 「私も、ロガー様の意見に賛成です。」

 「まだ殺すと決めた訳ではありません。ラストチャンスを与えました。後は……自分の意志で決めます。」


 「万が一、逃げようとした場合は如何なさいますか?」

 「……殺しても構いません。密偵で後ろから首を切って殺しなさい。彼は武術は嗜んでいません。……苦労は……しないかと。」


 「畏まりました。」



 ワゼリスの決意を受けたロガーとエリスは命令に従った。

 それから彼らは何も言わずに、ワゼリスに礼をして部屋から出て行った。



 「使用人・支度係は居るか?」

 「はい。此方に。」


 「今の話を聞いていたであろう? 今からフレッドを居間に迎え、丁重にもてなす。準備をしておけ。添える花は……赤色のヒガンバナでお願い致します。私も後で居間に行きます。」

 「畏まりました。」



 使用人・支度係は特に怯えることもなく、ワゼリスに頭を下げた後はすぐさま部屋から出て居間へと向かった。


 ワゼリスは使用人が出るまでは複雑な表情をしていたが、しばらく一人になると自分の席に座った。

 そしてテーブルの引き出しの中にある一枚の紙を取り出してしばらく悲しげに見つめた後、それを折り畳んでポケットの中に入れた。


 (そろそろ決心の時ですな)


 そう思いながら、ワゼリスも居間へと向かった。



――――――――――――――――――――――― 



―――――――――――――――――――――――

~料理人視点~



 ワゼリス様から指示された内容を見た私は、冷や汗が止まらなかったのを覚えている。


 アリスですら認めたワゼリス様の手紙には、こう書かれていた。



◆◆◆◆◆

料理長へ



 これは極秘命令です。

 事が漏れれば、我等の組合は消え去ることでしょう。

 決して、誰にも言わぬように。



 ゾンビ牛で一番色が綺麗で上質できめ細やかな脂身を含んだブロックを取り出してください。見える大きな寄生虫は取り除き、小さな寄生虫は抜かずにお願いします。


 料理はローストビーフ、表面が焼けていれば構いません。


 裏に書かれている人物が、今回のターゲットです。

 決して我々だと気付かれてはいけません。


 ローストビーフに合うタレも添えて下さい。




 直前に使いを送り、手紙を渡します。


 手紙が×であれば、この計画は白紙です。

 ミンチ状にした後、この紙と一緒にグリルで中まで完全に焦げになるまで焼いて廃棄して下さい。



 もし手紙に髑髏の絵があれば……問答無用でこの計画を実行してください。

 死体はこちら側が処理します。


 アナタは人間を殺したのではありません。

 何処までも地に落ちていく人間を止めたのです。


 無理であれば、料理を送る役目を使いに任せます。

 


    【朱の騎士団】団長ワゼリス・ダート


◆◆◆◆◆



 私は手紙の裏を見る。


 名前と思われる文字が書かれていた。


 (!!! な……なんですと!?)


 そこにはフレッドと力強く記入されていた。


 (……落ち着くんだ。と……取り敢えず、肉の処理だけは施して置こう。まだ「殺す」と決まった訳じゃない)


 殺すか白紙にするかは、直前まで分からないのだ。


 勇気を持った私は、冷静にゾンビ牛の下処理を施していた。


 (フレッド殿の再起を祈っておられるのでしょうか?「今すぐ殺せ」と言わないのが、最後の慈悲なのは間違いありませんね。フレッド殿、お願いです。ワゼリス様を悲しませないでください)


 そんな思いを託しつつ、私はゾンビ牛の調理に移った。

 下処理は先日に終えてある。


 (このゾンビ牛……大小の白色のウジャウジャした虫が無数に蔓延り、ミルワームがお肉から顔を出し、オマケとばかりにゴキブリの卵と孵化した赤ちゃんや小さなムカデ、蛆ですか……間違い無く数日で死にますね)


 3時間強程かけて一通り、目に見える寄生虫は徹底的に処理したが……凶悪なのは間違い無い。


 そんな猛毒を、専用のオーブンに入れて焼いた。

 徹底的に部位を厳選したブロック肉であるため、調理は1時間程で終わるだろう。


 (そろそろワゼリス様はフレッド殿をお呼びしている頃だろう。伝達係曰わく、話し合いをしてから処置をお決めになるという。今は黙って待つしかありませんね。ワゼリス様の御決断を)


 俺は待っている間、もう一つの料理を作ることにした。


 (もし、死に逝く者が出るのなら……最後は上手い者を食べて貰うのが料理人としての意地。後悔して死なせない為のせめてもの救いです)


 (そう言えば、ワゼリスが先日絶賛していた料理のレシピが、コレ以外に色々ありましたね……)


 とある事を思い出し、閃いた私はこの一時間に全ての集中力と魂を料理に注いだ。


 そして、手紙を記入して使用人に渡した。

 目的はワゼリス様である。



―――――――――――――――――――――――








 午後2時。

 ロガーがフレッドに伝えてから1時間弱を経過した頃であった。



 貴族という立場から女とつるんで遅れたフレッドはロガーに土下座され、嫌々ながらも【朱の騎士団】の本拠地へと赴く。


 まさかあのロガーが自分の靴を舐めるなどの芸当どころか、更に頭を地に付けながらお願いして来たのには余りにも衝撃的だったからだ。


 彼にはそれがまたとない優越感だった。



 「あのクソデブが! 人が楽しくメコっている時に無理矢理呼び出しやがって……少しは空気を読みやがれ!」


 ※メコる……貴族が使う【貴族言語】の一種。自分より下の身分の女と性行為を行うということ。


 

 しかし、行きたくなかった彼は今更ながらワゼリスに愚痴を吐いた。


 ついでに言うと直前までメコッていた相手は、裏の奴隷売買で白銀貨5枚という高額で買った17の少女だ。

 その金は、遠い親である王様に嘘を捏ねまくって貰った金だということも付け足そう。



 もうすでに【朱の騎士団】に入っていたのにも関わらずである。



 「お待ちしておりました、フレッド様。ワゼリス様が……。」

 「オイ! 小娘!」


 「何か御不満でも?」

 「入り口前にフツーは待っておくんじゃないのか? 客をわざわざヒントも無しで此処まで歩かせるつもりか? マニュアル通りしか動かない絞りカス女がよ!」


 「も……申し訳ありません!」



 模様柄の白い大扉の目の前に着いたフレッドは、メイド服を着た使用人の女に出迎えられる。


 ……が、出迎えられる場所に不満を抱いた彼は愚痴を吐き出した。



 フレッドは「しめた!」とでも言わんばかりの醜いにやけ顔で使用人の膨らんでいる胸を見ながら大口を叩いた。



 「『申し訳ありません』という言葉て此処を乗り切れると思ってんのか? 誠意を見せたら、まぁ……今回も許してやる。」

 「誠意とは……何でしょうか?」



 使用人の女が少し震えながらフレッドに聞くと、突然フレッドは右手で彼女の左胸をメイド服の上から激しく揉み出した。

 フレッドは、男が羨む柔らかいモフモフした感情と、この距離からでも匂う甘い石鹸の匂いに満足感を満たす。


 こんな所業をやっていても、どうせワゼリスに許されると思っているらしい。



 「キャアッ!!! 止めてください!」

 「おっと、声を上げたらもっと酷い事するぞ? 第一、お前は客である俺様に酷い事をした。そのお返しがこれだ。それに……正直なところ、お前も気持ち良いのではないかな?」


 「……(この屑人間が!毒食ってとっとと死ねばいいのに)。……はい。」

 「おや? 『はい。』の前に何か言いましたかな?」


 「……いいえ、別に。」



 使用人は大きく燃える、怒りと嫌悪感をうっかり零してしまう。



 この使用人はフレッドの対応を数度も経験して来た。

 常に何かと言葉巧みに文句を付けられては、無理矢理胸を揉まされたのだ。


 ワゼリスが彼女を此処へ待たせたのは、他の使用人が心に穴を開けない為。

 慣れている彼女の方が適任だと思ったからだ。


 わざわざワゼリス本人が、彼女に頭を下げて金貨2枚を臨時報酬として渡す程である。



 これまでの復讐の鬱憤とやらが溜まっていたのだろう。


 その全力の愚痴が本人に気付かれそうになった。

 だが小さく呟いたのが幸いし、彼に聞かれることは無かった。



 ……が、フレッドの過激行為はこれで止まらなかった。

 彼は使用人の股に左手をかけようとする。


 (……こんなところで、マジなの!?……このクソデブ、正気!?)


 使用人が右手で、背中に隠していた銀製の果物ナイフに手をかける。








 すると、白い大扉が突然開いた。

 ギギギギギ……という軋む音と同時に、扉の奥から赤いターバンを着たふくよかな男が出迎える。


 ワゼリス本人のご登場である。



 彼はフレッドを悲しそうな目で見つめる。



 「フレッド殿、そんな所でウチの使用人に手を出すのはお止めいただきたい。彼女、果物ナイフでアナタを殺すつもりでしたよ?」

 「何!?」

 「…………。」



 フレッドは彼女を睨みつけると、楽しんでいた左手を即座に引いて警戒する。

 ……が、フレッドは使用人がナイフを持っているのに気づかなかった。



 彼女は呆れてフレッドを視界から外す。


 (……ザマミロ。ナイフで刺されるよりも酷い死に方をしてらっしゃい)


 長年積もった本音を隠しながら。



 「使用人、下がっても構いません。」

 「畏まりました。ワゼリス様。」



 ワゼリスの命令で彼女は礼をすると、すぐさま引いて何処かへ去っていった。


 









 居室には、兵士は誰もいなかった。

 フレッドから見た感じは、居るのはワゼリスと自分自身だけである。


 ……が、実際はそうでなかった。


 (万が一、フレッドが私を殺そうとした場合は……天井裏から数十人の暗殺者の餌食です)


 ワゼリスは万が一の為に刺客を用意していた。

 フレッドが彼を殺せば、更に【朱の騎士団】を駒にすることが出来るからである。




 しかし、一方のフレッドはというと……。


 (ワゼリス……折角彼女の秘部を狙おうと思っていたのに……クソデブ如きが!とっととこんな飲み会終わらせてやる!)


 ……と、ワゼリスが予想していたものとは全く別の方向。

 「早く帰って女とメコりたい。」という事だけだった……。


 (女、女、女ですか……性の過剰要求は王政の仕事にも影響しますぞ?)


 ワゼリスは頭を抱え込んだ。

 自分の中のフレッドに対する点が、段々下がって行くのを感じた。






 いざ、会談である。



 広々とした居室に、王座の椅子まで敷かれたレッドカーペット。


 その途中、ひっそりと置かれた縦横1メートル50センチの高級木材テーブル。


 それぞれ金と銀の装飾が施された高級木材椅子2つ。

 対になっている。


 テーブルの真ん中の両端には赤色のヒガンバナが1、2輪の合計3輪、細長い白色の陶器に水を入れて飾っていた。



 「フレッド殿、此方にお掛けください。」

 「……チッ。」



 フレッドは舌打ちをしながら金の装飾が施された高級木材椅子、ワゼリスは残った銀の椅子に着席する。


 ワゼリスから見る景色は、ちょうど王座前からを見ている感じだ。

 逆にフレッドから見た視線は、ワゼリスが普段部下達を命令している側を見ている。


 (なるほど。部下が私を見るのはこういう感じですか……これはとでも興味深い経験ですな)


 (ほぅ……【朱の騎士団】の王になった気分だ。ワゼリスも粋なことをする。でもお前は今、前にいた所に俺がいるんだぞ?ハッハッハ!)


 両者、違った目線で今の椅子から見える状況に感想(優越感)を心の中で述べていた。



 こんな状況の中、最初に言葉を出したのはワゼリスである。



 「フレッド殿。アナタとこうやって一対一で対話するのは随分久し振りですね。」


 (この野郎……わざわざその為だけに俺様を呼び出したのか?組合の長の癖に随分暇こいてやがんだな……。ってことは、コレは少々ウザったらしく話しそうだ。何かテキトーな理由を付けて早々に退出しなければ……)


 「そ……そうでしたかなぁ……。何時ほどでしたかな?」


 (思考を探る以前に、明らかに面倒くさそうな顔をしていますね……これは長時間掛かってから決めた方が良さそうですな)


 「確か……丁度一年程前かと。」



 両者は真の狙いを隠しながらも、なかなか出来なかった(しなかった)対話をする。


 だがフレッドの思考を丸々読めるワゼリスは、彼の考えが筒抜けであった。



 「ほー、それはそれは随分長い間でしたねぇ。ところで、お身体もその間に太ったりしまして?」


 「ハハハ! そう言えば……フレッド殿のヒリついた毒舌具合も、一年前より鋭くなりまして?」

 「おやおや、遂にいびりの反撃が出来るようになりましたかな?」


 「「ハハハハハ!!!」」



 このように、時々相手を腹立たせるいびりも忘れることなく話は進めていった。






 「談話の最中、失礼致します。料理をお持ちしました。」

 「うむ、ご苦労。」



 数十分が経過したところに、白色のコックの服装で料理長が居室の脇から銀製のワゴンを引いて入ってきた。


 ワゴンには皿があり、中身は銀製のクロッシュという蓋で見えなくなっていた。


 (素晴らしいタイミングですなぁ料理長。丁度話のタネが色々尽きかけていた所です)


 ワゼリスが料理長に感謝していると、フレッドが料理長を一瞬だけ見つめてワゼリスに言う。



 「おや? ワゼリス、宜しいのですかな?」

 「構いません。私が呼び出しましたので、これくらいのもてなしは必須です。是非ともご賞味ください。」


 「朝昼は職務の都合で採れなかった故、有り難い。とでも気が利きますなぁ。」

 「商人たるもの、他人の気を遣うのは当然の義務ですぞ?」


 (だったら、人が楽しくメコッている最中に呼び出すな!このバカタレが!それに、今何時だと思ってやがる……午後3時だぞ?)


 「そ……そう言う所も商人の気遣いですか。とても頭が下がる思いですなぁ。」


 (此方が女と寝ているから1時間遅れたのでしょう?人のこと言える立場ですかな?)


 「しかし、幾多の駆け引きがあって個人的にはとても面白い職業と感じております。組合の長は……色々と厄介事があって大変ですねぇ。」



 中々周囲では吐き出せない純粋な思いと、愚痴にしか出せない思いが次々とこの両者の間で交差する。


 そんな状況の狭間に置かれている料理長は、複雑な感情を無理矢理押し殺し、クロッシュを開けて料理の説明を始めた。



 「此方、とある村から採れた冬カボチャのスープです。」

 「……おや? 前回のパーティーの時に出した冬カボチャとは違うのですかな?」

 「おお! お気づきになられましたか! どうやらこのカボチャは先日、料理長自らが新しい取引先で頂いた一品でして……私も今日初めてお目にかかる一品です。」



 ワゼリスがついつい饒舌になろうとしたその時、フレッドは目を開いて睨みつけるように料理長に質問した。



 「……ワゼリス殿、このカボチャは一体どこから採れたんですかな? 私が採れた産地とやらを知りたがる性格だというのは……料理長もワゼリスもご存知で?」


 (料理長……万が一の時は頼みましたぞ)


 「ええ……よく存じております。」

 「私が……お答えしましょう。」



 ワゼリスの願いを胸に背負い、料理長が産地の説明を始めた。



 「その……先日、心優しいゴブリン村から助けられた恩がありまして……それで、仲良くなって取引し始めたんですが……何か御不満でも?」

 「……。」

 「ほぅ。それは初耳ですなぁ。魔物にも優しい心をお持ちの方がおられるのですか。」


 「えぇ!取引先で頂いたこのスープが別格でして……私も感動致しました!」



 そして陽気な表情になった料理長はワゼリスとフレッドの目の前に、そのスープの入った一枚銀貨7枚の皿を置く。


 フレッドは産地がゴブリン村と聞いて、そのスープを見て苛立っている。

 それを見たワゼリスはフレッドに聞いてみることにした。



 「フレッド殿、どういたしましたか? さっきから顔が穏やかでは――」



 するとその時、フレッドは皿の返しを両手で持ち、料理長に向かってちゃぶ台返しをしてしまった!


 皿に入ったアツアツのスープの大半は料理長にかかり、皿はちゃぶ台返しの勢いで前へと転び……地面に落ちて綺麗に割れた。


 パリーンという割れた音と、



 「う……うわあぁぁぁぁ!!!」



 という、熱さを我慢出来ずに地面に這いつくばって悶え始める。

 スープの平均温度64℃が体全体に掛かったのだ。



 「!? 使用人! 冷えたタオルを持って来い! 料理長が火傷するぞ!」



 慌てたワゼリスは机に用意されていたタオルやナプキンを料理長に与え、使用人に冷えたタオルを用意させた。


 それからすぐに、使用人達が冷えたタオルで料理長に掛かったスープを拭き、割れた皿を箒と魔法で片付けた。



 1分後、料理長が冷えたタオルで火傷した部分を抑えていた。

 ワゼリスの迅速な対応により、事は比較的マシな結果で終わった。


 しかし、ワゼリスの表情は晴れることは無かった。


 (何たること……一口も食べずに、ただ価値観の偏見と魔物による差別だけで拒絶。挙げ句の果てに料理長にまで八つ当たりするとは……昔商人であったフレッドも、遂に此処まで落ちたか……)



 「フレッド殿! 何故こんな事を!? 幾らなんでもやり過ぎでは?」

 「言ったろ? 俺は産地を気にするって? 低俗な魔物が作ったカボチャなんか一口も喉を通すバカが何処にいる! 貴族はこんな毒物食わん! そこら辺にいる飢えた人間が食う代物じゃねーか!!!」


 「せめて一口は手を付けるべきでは? 味の文句はそれからでも宜しいかと――」

 「黙れ、ワゼリス! 俺にこんな低俗極まりないスープを飲めと言うのか? こんな思考を持ったゴミがお前のとこの料理長? バカバカし過ぎて呆れる。お前も飲んだら同罪と見なすぞ!」



 フレッドが料理長を侮辱している事に、内心かなり腹を立てるワゼリスだが……


 (これ以上長引かせると天井で待ち伏せしている暗殺者が殺しそうですね……。此処は自分が謝る方が最善の一手……)


 後の事を考えたワゼリスは冷静に対処する事を決め、仕方なく謝る事にした。

 この地点で、フレッドの評価はもう決まっていたと言っても過言ではなかった。



 「……申し訳ありません。私の指導不足です。」

 「フンッ! 明日までにはその料理長を路上へ歩かせてやれ。さもなくば……貴族である俺様が王に直訴してこの組合をバラバラにしてやる!」



 路上へ歩かせてる……つまり、クビにしろと言っているのである。


 料理長はそれを聞いてフレッドにしがみついた。



 「そ……それだけはお許しを!」

 「フンッ! くどい! しがみつくな!」


 「グッ……ヴッ……ガハァッ!!!」



 フレッドは右足にしがみつく料理長の腹を数度も蹴り上げた。


 我慢出来なくなった料理長はフレッドから手を離して悶える。

 火傷した所に蹴りを入れられたのが我慢出来なかったようだ。


 (これは……私の知っていたフレッド殿ではありません。所詮は旧友の仲でしたね……)


 フレッドが料理長を殴っている間、ワゼリスはポケットの中から少ししなびれた赤色の彼岸花を、1輪だけ刺さっている瓶の中に追加で1輪入れた。

 しなびれた彼岸花をワゼリスは酷く悲しい目で見つめていた。


 これで、瓶の中に入っている彼岸花は合わせて4輪になった。

 コレが何を意味するのかは……ワゼリスと影で見ていた使用人しか分からない。



 「料理長、私の料理も下げなさい。今度はフレッド殿を怒らせない料理をお願いします。」

 「わ……分かりました。直ぐに持って参ります!」



 料理長はワゼリスのスープも下げると、ワゴンと一緒に居室の脇へと消えていった。



―――――――――――――――――――――――

~料理長視点~



 いやはや、まさかフレッド殿が此処までするとは……。


 ワゼリス殿はどの様な決断を下されたのでしょうか?



 ワゴン車をゴロゴロと動かしながら、調理場へと戻っていると……後ろから誰かが付いて来た。

 振り返ると、手紙を持った使用人・伝達係がそこにいた。



 「料理長殿、ワゼリスからの手紙です。この手紙の内容の指示に従うように。何かあれば、調理場に駐在する使用人にご連絡下さい。」

 「……そうですか。お勤めご苦労様です。」



 伝達係は俺が手紙を受け取るのを確認すると、何処かへ向かっていった。


 (間違いなく、フレッドの処理の結果ですな。調理場で開けましょう)


 私はワゴン車の上に手紙を置くと、何事も無かったかのように移動し始めた。






 「お帰りなさいませ。料理長殿。」

 「うむ。」



 調理場へと戻った私は使用人に軽い挨拶を交わした後、すぐさま手紙を読んだ。






◆◆◆◆◆

料理長へ






 手紙の裏を確認してください。




 


    【朱の騎士団】団長ワゼリス・ダート


◆◆◆◆◆






 手紙の指示通り、裏を確認する。


 (ワゼリス様のご勇断、しかと受け取りました)


 すると、使用人が質問をして来た。



 「私が行きましょうか?」

 「いや、ワゼリス様のご勇断を断る訳にも行きません。此処は私が責任を持って提供します。」


 「畏まりました。応援しています。」



 わざわざワゼリス様から受け取ったこの指令……コレを目前に逃げるのはどうかという感情の方が強かった。




 その後私は、美味しそうに焼きあがった物体をグリルから取り出した。


 そして、予め時間を掛けて作った特製ソースを上からかけた。


 (完成だ。果たしてどうやって騙し通すのか……)


 私は少し考えた後、この料理をワゴンの上に置いて調理場を出た。



―――――――――――――――――――――――











 フレッドとワゼリスがとある会話で盛り上がっていたその時、居室の脇から再び料理長がワゴンを引いてやって来た。



 「失礼します。お食事を持って参りました。」

 「……よく考えましたかな?」

 「来たか。早く此処へ持って来い。」



 ワゼリスは心配そうに、フレッドは不機嫌そうな顔でワゴンに乗っている銀色のクロッシュがかぶさった皿を見つめる。


 料理長は急いでワゴンで料理を運び、テーブルの中央辺りに付けた。


 そして、皿をワゼリスとフレッドの目の前に置いてクロッシュを開く。


 中はソースの掛かったローストビーフに、【朱の騎士団】が運営する農場で採れた新鮮な彩りのある野菜たち。

 そして、最後まで脂を美味しく食べるように小皿にはレモン汁や異世界からのトッピングである【マヨネーズ】なども用意されていた。



 「ほぉ~。ローストビーフですか。」

 「うむ、なかなか美味しそうな見た目をしている。……で、この牛はどこで採れたものなのだ?」



 皮肉にもフレッドは相手がウソを付いているか本当の事を言っているのか分かるのだ。



 ウソと虚実に溢れた貴族社会で、上手く生き抜いてきた証とも言えるのだろう。

 その点に置いてはワゼリスよりも遥かに優れていた。


 ……もっとも、その見抜ける能力を他に使うべきでは?と言われればそれまでである。


 

 「……はい。此方はル・レンタン郊外に生息していた黒毛和牛の霜降りをローストビーフに致しました。自然豊かな環境で人の手に縛られずに育っておりまして……通常の飼育では味わえない、飽きない脂身が特徴です。」

 「ローストビーフに掛かっているこのソースは一体?」


 「そちらは、一片銅貨2枚するイミルミア帝国カリス村産の天然赤ニンニクを贅沢に使用し、細かく刻んだ特製ガーリックソースです。」


 ※赤ニンニク……ニンニクの中でも、最も風味や香りが飛び抜けて高いもの。希少なため高値で取引される。


 「……ふむ。ウソは言ってないな……。」

 「フレッド殿。料理長殿があなたを怒らせない為に考えたのです。余計な詮索はせずに、今度こそ食べてから物を申しては?」


 「……頂くとしよう。」



 遂にフレッドは切れ味が非常に高いナイフを持った。


 そして、上手くナイフとフォークを駆使してぶつ切りに切っていく。


 肉からそこそこの量の血がででいるが、フレッドは全く気にしなかった。



 (ふぅ~。血のお陰で中の寄生虫も赤に染まって見づらくなりましたな……これは……私も食べてはあの世行きですな)


 ワゼリスはフレッドの様子を見てヒヤヒヤしながらも、用意された寄生虫入りのローストビーフを切る。

 よーく見ると、肉の断面から白色の動く物体が「コンニチハ」しているのだ!


 料理長が敢えて霜降りを選んだのは、そう言った寄生虫を同化して隠すためでもあった。



 そんなヤバイ代物を、遂にフレッドは口に頬張ってしまった……。


 (フレッド殿……終わりましたね)


 (フレッド……また来世ではまた素晴らしい人となって戻ってきてくだされ……)


 料理長とワゼリスは、フレッドに最期の別れとも言わんばかりに追悼の意を心に込める。



 対してフレッドは……。



 「おお! このきめ細やかな脂身と独特な風味をかき鳴らすローストビーフとのコラボレーションがまた素晴らしい! 今まで味わった事のない一品ですな。また、何かこのプチプチした弾け飛ぶ何かがまた癖になって興味が湧きますぞ。」

 「素晴らしい最後の評価に感謝いたします。フレッド殿。」


 「いやはや! 料理長、前回の料理からの挽回。クビの件は少しお預けですかな。」

 「フレッド、素晴らしい判断ですなぁ。」



 ……とワゼリスや料理長を褒めながらローストビーフを、ナイフでぶつ切りにしては食べてゆき……遂には完食してしまった。






 完食後、料理長からデザートとして焼き菓子が振る舞われたのだが、どうもフレッドは度々お腹を少し気にしていた。



 「フレッド殿、焼き菓子は要らないのですかな?」

 「ああ、どうやら俺は腹一杯らしい。そろそろ退出させて貰おう。」


 「此処からでる前に、あなたに一つ言っておかねばならぬ事が御座います。」



 そう言うと、ワゼリスは右手を上に上げた。


 天井裏から40名程の黒いフードを被ったもの達に、フレッドは囲まれてしまったのだ!


 フレッドは仰天した後、ワゼリスに憎しみの目を抱く。



 「……!? ワゼリス! お前……。」

 「私も直前までアナタの事を信じておりました。……ですが、最初の一品をアナタは手を付けなかった。挙げ句の果てに、商人としてあってはならぬ無意味な暴力をしてしまった。違いますかな?」


 「オイ! 俺達は昔から中の良い契約相手だろ!? なぁ?」

 「そうですね……あの頃のアナタは……この組合をカモにして色んな悪行を積み立てるとは到底思えませんがね……あの頃のフレッドは死んでしまったのです。」


 「き……貴様あぁぁぁぁ!!! ……ゴフッ!」



 フレッドが大きな奇声を上げた直後、彼は口から血を吐いて倒れ込んでしまった。



 「捕らえろ。個人刑務部屋に放り込んでおけ。」



 ワゼリスの命令で、数名程の刺客は一気に倒れたフレッドを担架に運んで向かっていった。


 残りは颯爽と何処かへ消えていった。


 (寄生虫で長い間もがき苦しんだ後、明日の審判……皆の目の前で処刑されるでしょうな)


 フレッドの目元には、旧友を思う悲しい一筋の涙が流れていた。











 これは友再起を願った、団長の物語である。



※前書きに述べたように、表現の事情でレイアウトを黒に変更しました。

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