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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
82/116

第77話 ルーサーVSエース、



―――――――――――――――――――――――

~奇襲隊隊長・エース視点~



 ふぅ~。


 これで仲間が死ぬってことは無さそうだな。

 さて、どうしよう?



 ……後はどうするか考えていると、ルーサーが動く。



 「死ね! ゴブリン如きが!」



 ルーサーは俺の元へかなり早めに近づき、剣を勢い良く突く。


 この手の攻撃はアイリス先生にみっちり教えてもらった。



 「よっと。それっ。」

 「グッ!」



 俺は襲いかかってきた剣を右によけて回避し、ついでにある程度の力でルーサーの顔面を殴った。


 俺の方がレベルは低い為、大したダメージは与えられない。



 ルーサーは少し退避し、鼻に手を当てて激しく睨み付ける。

 その目つきは強い憎しみと悔しさが俺に伝わるほど籠もっていた。


 呆れながらルーサーに向かっていう。



 「ゴブリンを悪者扱いしないでください。僕達も楽な道を歩いている訳じゃないんで。あと、真剣持つの勘弁してくれませんか?」

 「黙れ! このゴブリンのリーダーが! お前らは俺達に害をなす魔物だろうが!」


 「コッチこそ魔物に害をなす人間じゃないですか。悪い魔物ばかりに注目しすぎです。」

 「ほざくな! このゴミ魔物め!」



 再びルーサーの攻撃。

 俺に向かって剣を数十程振り下ろす。


 (ダメですね。『怒りに身を任せている人間は回避しやすい』ってアイリス先生が言ってましたよ?)


 特に苦労する事もなく全て回避する。

 速度は確かに速いけど、ユッケ先生やアイリス先生ほどではない。




 ユッケ先生は木刀たった一本で。

 アイリス先生は木刀の他に木短刀、木の棒などで凄まじい攻撃の速さを出してきた。


 俺達精鋭30が束になってもボコボコ。



 そんな訓練を普段していたからこそ、この回避が出来た。

 別に石の剣でガードしなくとも、コレくらいはなんてことない。




 ルーサーの剣が降りかかる直前に、俺は僅かな隙を突いて石剣を抜いて襲いかかる。



 「何!?」

 「それっ。」


 「グッ!!!」



 ルーサーの右手を軽く剣で斬る。


 胴体を狙うのは流石にマズい。

 同盟関係にヒビは入れたくない。


 ルーサーは斬られた右手を左手で抑え、5メートルほど後退する。

 赤色の液体がルーサーの右手からドロドロと地面に流れ落ちていた。


 剣を落としてくれれば決着がついたけど……そこまで甘くはなかった。



 「……少し前言撤回だ。ゴミ野郎と馬鹿にしていたが……どうやら相当、ゴミても腕が立つクソ野郎らしい。」

 「余計酷いじゃないですか。……それで、それが何ですか?」


 「フッ……今考えてみると、ここはうってつけの場所だな。……今から本気を見せてやる。」

 「俺は最初からマジでしたよ。此処で死にたくないんで。」


 「【神よ、我に自然の力を与えたまえ。悪しき魔物、我が代理となりて葬りさる! ・雷光の剣】!」



 すると、空から太い雷がルーサーを直撃した。


 死んだ!?と思ったけど、雷は彼の身体を伝って剣に籠もる。

 剣は光り輝く雷光を身に纏わせ、聖剣のような輝きと眩しさを放っていた。


 (すげー。カッコイイ)


 妙に男心をくすぐる魔法に、俺はしばらくの間感心する。



 すると、村長から連絡が入った。


 ……は?魔術?


 それも、魔法から無理やり殺傷力を高めて改良した魔術!?

 人間では魔術は全面禁止じゃ……



 「今度はさっきのようには行かんぞ? 食らえ!」



 俺の思考が混乱していると、ルーサーは剣を地面に刺そうとする。


 嫌な予感を察知し、俺は収納魔法から急いで縄を取り出して木に引っ掛け、直前に地面から離れた。


 その直後、ここら辺の地面一体に電流が流れた。

 ぬかるみの水分がそうしている。


 (危ない……麻痺の耐性が無い俺がマトモに喰らってたら、間違い無く死んでる……)



 木へ登った俺はルーサーを見つめる。

 取り敢えず地面の電流が弱まるまでは降りてはダメかな。


 彼は俺の場所がわかるようだし。



 「隠れて隙を狙う気か? 甘い!」



 やはりバレてる。


 ルーサーは俺に目掛けて剣を空振りする。

 すると、なんと雷を纏った斬撃が俺に向かってきたのだ!


 俺は2つ隣りの木まで移動し、そこの木の枝に、再び収納魔法から取り出した縄を掛ける。


 

 さっきまでいた木は雷の斬撃を食らい、電気の熱で葉を赤色に染める。


 幸いここら辺の木はあまり油分を含んでおらず、しかも弱い火なら直ぐに鎮火した。

 山火事になってもしたら大変だったが、心配し過ぎたらしい。


 

 だけど、当たってはいけないことに変わりは無い。

 麻痺の耐性が無い俺からしたら良くて失神、最悪致命傷だ。


 (不利っすね……コッチは不殺、相手は惨殺。しかもレベルはあっちが高い)


 警戒を強める中、ルーサーは先ほどの斬撃を乱発する。



 「一発だけとは思うなよ! ていやあっ! 死ね! うおりゃあ!」



 次々と襲いかかる斬撃を、俺は木々を伝って回避していく。

 別に難しくは無いのだが、足を滑らせたら終わりという緊張感が有るのと無いのでは大きく違う。


 「落ちても大丈夫」という練習の戯れ言が、本番で通じるハズがないのだ。

 特に慣れている木々を伝っての戦闘は怖い。



 一歩一歩確実に、下手なミスが致命傷……と心に刻みながら、襲いかかる雷を纏った斬撃を回避していく。




 俺は電流が殆どゼロになったぬかるみで降りる。

 木々を伝う恐怖体験はもう勘弁。


 でも……既に数百程の斬撃を回避してきたけど、何故だ?

 どうしてルーサーの魔力が減っていない?



 俺は彼のステータスを見て驚愕する。

 あれほど斬撃を放ったというのに……魔術使用以外は殆ど減っていないのだ。


 経験値を除いたステータスは、この有り様だ。

 



【ステータス】エドワルド・ルーサー


  レベル 95 ランク B-


  体力 1512/1563

  魔力 551/653

  攻撃 1051/1053

  防御 972/993

  早さ 453/483

  速度 6/6.375

 当会心 8.25/10

  回避 17/18

 当回避 15.5/19

 総回避 29.865/33.58

 残血液 4239/4300(2600)




【ステータス】名前無し(現愛称 エース)


  レベル 36 ランク D-


  体力 624/635

  魔力 165/165

  攻撃 534/538

  防御 426/462

  早さ 392/436

  速度 7/7.125

 当会心 6.375/6.375

  回避 45/45

 当回避 47.5/48

 総回避 71.125/71.4

 残血液 3039/3040(980)




 レベル差59。


 本来なら、1分で斬られるハズのステータスの差。

 でも、アイリス先生に教えを頂き……俺はルーサーとマトモに戦えている。



 俺はゴブリンの中で一番最初に、当初のアイリス先生が出した理想の総回避70を超えた。

 大抵の攻撃は回避できる。


 アイリス先生の攻撃の大半は回避できるようになり、先生から直接免許皆伝書を貰った。

 今度は自分が仲間達に教える番になったのである。



 ……話は仕舞い。

 


 どうやらルーサーは俺のステータスを見ていたらしく、頭を抱えて笑い飛ばす。



 「ハハハッ! こんな貧相なステータス如きに俺が手こずるとは……」

 「貧相とは酷いじゃないですか。俺だって努力しているんです。積み重ねの時間、年の差が違うだけですから。」


 「黙れ! お前ら魔物如きに何が分かる? 俺はあの時からずっと、お前ら魔物にしてやれられた恨みを一時とも忘れた事はない!」

 「魔物……ッスか。」


 「ああ! そうだ! それが何だ!?」

 「一言訂正しますよ。俺達は魔物って言う一族じゃなくって、ゴブリンって言う一族ッスよ。」


 「黙れ! このクズ野郎が!」



 殺意を激しく持ったルーサーは雷を纏った剣を向けて俺に襲いかかる。


 数度余裕を持って回避し、回避し辛い攻撃は石の真剣で受けきる。

 鍔迫り合い状態でルーサーは俺の真剣に気づく。



 「貴様……模擬戦争の条約を破ったな!」

 「はぁ!? 破ったのはそっちが先じゃないですか!」


 「……寄りによって金属じゃないのか。手っ取り早かったものを。」

 「ゴブリンが金属なんてもの持ってると思ったんですか?」



 俺は会話の後、俺は後ろに後退して距離をとる。彼の力が強く、押し負けるのは確実だった為仕方なくやった。

 石の真剣の耐久性もそろそろ限界だ。


 (そう言えば、邪魔だから収納魔法に入れておいた、石槍があったな)


 此処で俺は石槍の存在に気付く。

 すっかり忘れていた石槍を取り出そうと思ったけど、何か使えないか?と思考を巡らせる。



 しかし、相手は考える時間を与えてくれる訳ではない。



 「逃げるな臆病者! 食らえ!」



 ルーサーは後退した俺に追撃を打つ。


 そう言えばルーサー、攻撃一辺倒だな。

 防御を忘れたのか?と言うほどの攻めの手を次々と打ってくる。


 早々に決着をつけたいのかな?


 (……!?ちょっと待て……早々に決着をつけたい理由は何だ?)


 次々と襲いかかる攻撃を余裕を持って回避し続けていると、ルーサーが左手を胸に当てて少し苦しみだす。



 「ち……くしょう……が。」



 そして、遂にルーサーは地面に右手に持っている剣を放す。

 雷の力が弱まっていたので、俺は感電もしなかった。



 「はぁ……はぁ……はぁ……。」

 「勝負あったッスね。今救急班を呼び出したんで、少し辛抱してください。」


 「はぁ……はぁ……はぁ……。」



 ルーサーは息苦しそうに、俺を恨む目をしている。






 ……しかし、俺には少し腑に落ちない所があった。


 (……おかしい。魔物のカンかな?演技している気がする)


 俺は念の為に奴のステータスを確認する。




【ステータス】エドワルド・ルーサー


  レベル 95 ランク B-


  体力 1791/1843

  魔力 651/753

  攻撃 1462/1652

  防御 840/1006

  早さ 755/1023

  速度 6/6.375

 当会心 8.25/10

  回避 17/18

 当回避 15.5/19

 総回避 29.865/33.58

 残血液 4238/4300(2600)




 特にステータスは変わっていなかった。






 …………仮病!?






 「気付くのが遅いな。食らえ。」

 「バァン!!! バァン!!!」




 その瞬間、俺の右肩と左横腹に衝撃と激痛。

 ……そして、緑色の血が溢れ出す。


 俺はぬかるみの中に倒れた。

 朦朧と激痛に蔓延る意識の中、俺はその黒色の筒を見て必死に声を出す。


 少しでも……人間の武器の……情報を……。




 「な……なに……それ?」

 「裏でアイロンから秘密裏に入手した……一種の殺戮魔法さ。魔物と勝つためなら……何だって使うのが俺の主義でな……。トドメは剣で刺してやる。ズタズタにな!」




 ルーサーは仮病の隙に、収納魔法から黒い筒と持ち手の重なった奇怪なものを取り出していた。

 どうやらそれを俺に2発撃ったらしい。



 俺はテレパシーで武器の詳細を伝えた。

 村長からの返事は来なかった。



 そんな兵器が……と思っていると、ルーサーはすぐ上に居た。

 両手で剣を持ち、今にも俺をズタズタに刺そうとする直前である。




 「冥土の直前に一つささやかな慈悲をやろう。何か言い残すことはないか? そうだな……『お前の言うとおりなる。頼む! 殺さないでくれ!!!』って言うのならば、少しは考えてやっても良いが?」

 「お……俺を殺すのは……好きにしろ。だが……俺達の仲間である……ゴブリンや先生達を……傷つけるのだけは止めてくれ。」




 俺はそう言うと、ルーサーは激しく激高する。


 俺の意識は此処で消えた。



 直前、村長からは「此処まで良く頑張りました。後はゆっくりお休みください。」という返事が聞こえ、安心して目を閉じた。



―――――――――――――――――――――――




 「クソがぁぁ! クズ野郎の塊である魔物如きが他の者の為に自己犠牲だと? ふざけるな! どうしてこうも俺の思い通りに……外道で、残酷で、ゴミクズのような魔物のようにならん! この正義ぶった魔物共がぁぁぁ!!!」




 ルーサーは両手に握る剣を激しく怒りを込める。




 「死ねぇぇぇ!」




 彼は両手に握る剣を真下に居るエースに刺す。























 ズタズタに刺さなかった。

 いや、そもそも刺せなかった。



 

 「待ちなさい! この外道!」

 「……ヴッ!!!」




 突如、ルーサーの背中に小さな短剣が刺さった。

 あまりの激痛に彼はエースを殺すのを一瞬忘れ、短剣を刺した人物を見つめる。


 (!?何処かで聞いた事があると思えば……あの糞アマめが!!!)


 ルーサーの目の先には、黒いフードを被った女性が立っていた。




 両軍不殺の使者、【ゴブリン軍団】と【朱の騎士団】の繋ぎ役。


 ノノア・リリーである。




 彼女は誰にも見せた事のない静かなる鬼の形相の怒りを込み上げながらルーサーを見つめる。

 それを見たルーサーは動揺を少し隠すように大きく振る舞った。



 「誰かと思えば……あの糞アマかよ。ハハハッ! お前如きの女程度に、俺は倒される奴じゃない。とっとと消え失せろ、余興の邪魔だ。」

 「余興? 何の余興かしら?」


 「ゴブリンを殺す。俺にとってそれが「余興」だ。……それとも何だ? ゴブリンの血と臓器が刺す度にドロドロ流れていくのを、見ていたいのか?」

 「それが余興? ワゼリス様がゴブリンを殺す許可を取ったのかしら?」


 「黙れ!!! 兎に角、俺は今からコイツを殺す。」

 「もう遅いわよ。前を見てみなさい。」



 ルーサーはノノアの言うとおり前を見る。



 すると、普通の人間がエースの治療を終えていた。

 収納魔法から取り出したであろう緑色の液体のを彼の負傷部分にかけ、残りをビン毎飲ませていた。


 ルーサーの真後ろまで来て、気付かれずにエースを移動させたこの人物。

 彼は心の中で恐怖を抱いていた。



 人間はエースをゆっくりと寝かせ、「これでよし。」と独り言を言った後、ルーサーに向かって自己紹介する。



 「ああ、初めまして。俺の名はユッケ。一応、このゴブリンの先生だ。……で、お前がやったのか?」

 「ああ、そうだ。【朱の騎士団】からゴブリンを殺せと命令が出た。殺す、殺されるのは世の常。実際、彼も石の真剣を持っていた。殺そうとした事は詫びる。」



 ルーサーはユッケとノノアが手を組んでいるとは思っても見ないようだった。


 ある意味、一瞬の幻想である。

 「こうならないであってくれ!」という、最悪の可能性を排除しようとする考えだ。


 そこへ、ユッケが現実へ叩きおとす。



 「??? ノノア、ワゼリスはそんな事言っていたか? 」

 「とんでもないわ。ワゼリス様はそんな戯れ言を申すような人ではない。」


 「……お前の言っている事、ノノアは嘘だってよ。何か言いたいことは?」

 「い……一体何者なんだ? どうしたら俺の真後ろでゴブリンを気付かれずにそこまで移動できる?」


 「俺は一応……魔物って言った方が正しいのかな? さっきのはちょっとした小手業の魔法を使っただけだ。」

 「何!?」



 魔物という単語を聞いてルーサーは激しく動揺する。

 コレに気付いたユッケは更に続ける。

 煽る事でルーサーの本性をあぶり出していく。



 「おかしいなー? ノノアが言うには、滅んでしまえばいい程恨んでる根っからの魔物バスターって聞いたんだが……そんな奴が、自分より強そうな魔物をみた瞬間怖じ気付くのか? 弱い魔物ばかり憎んで殺すのは、復讐じゃなくて只のエゴそのものだ。」

 「ワゼリス様の命令に背いた……この反逆者! 己の罪を自覚しなさい!」


 「黙れ! この人に化けた魔物が! ついでに……アマ! お前も殺してやる!」

 「ほー。その勇気に答えてやる。」

 「覚悟なさい!」


 「【神よ、我に自然の力を……】」



 本性を出したルーサーはユッケに向かって全力の魔術を詠唱する。


 ホントは詠唱中を叩けばすぐに決着がつくのだが、彼の心を折らなければ同じことをしでかすだろう……とユッケは考えていた。



 そこでユッケは、ノノアに一つ質問をする。



 「ノノア、やるのか? 俺一人でも余裕だぞ?」

 「本当は【朱の騎士団】が処理する所だけど……気絶させるにはどうしたらいいか……。」


 「なるほど、俺にすこし考えがある。お前にはテレパシーで作戦通りに動く。それで良いな?」

 「わかった。」


 「よーし、決まりだ。」



 ノノアは大きく頷くと、ユッケは先に防御魔法をノノアに与える。



 「【身体強化大】、【エアープロテクト++】、【冥王のハーデスアイ】!」

 「ちょっと! これはやり過ぎ!」


 「充分過ぎる方が安全だ。人を死なせたらサポート失格だぞ?」



 ユッケが与えた魔法の詳細は以下の通りである。

 ノノアにとっては寧ろ困るほどの性能であった。

 とんだありがた迷惑である。




■■■■■■■■■■■■■■■

 【身体強化大】

 攻撃、防御が大幅に上昇する。

 早さ、回避も多少上昇する。


 黄色魔法レベル5。



■■■■■■■■■■■■■■■

 【エアープロテクト++】

 攻撃を受けるとダメージを大幅に減らす。

 また、クリティカル(会心)を受ける確率を半減する。

 使用中、体力が少しずつ回復する。魔力次第で回復量が変化する。


 緑色魔法レベル5。


 

■■■■■■■■■■■■■■■

 【冥王の目】

 攻撃を受けると、確率で相手の攻撃力と防御力を下げる。

 レベルが相手より高いと、更に状態以上をランダムで追加。更に相手の攻撃力と防御力を下げる確率が高くなる。

 相手を睨んだ場合、確率で威圧状態になる。

 魔力が高いほど、持続時間が長くなる。ただし、コストがかなり大きい。

 

 黒色魔法レベル6。




 これだけの魔法を掛けたノノアはもう、ルーサーの知っているノノアではない。



 

 「【……我が代理となりて葬りさる! ・雷光の剣】!】」



 それでも彼は魔法、いや……魔術を詠唱した。



 すると、空から太い雷がルーサーを直撃する。


 雷は彼の身体を伝って剣に籠もる。

 剣は光り輝く雷光を身に纏わせ、聖剣のような輝きと眩しさを放っていた。


 (……正直カッコイイ)


 妙に男心をくすぐる魔法に、ユッケも少しの間感心する。


 そんな子供心を押しつぶし、彼は皮肉たっぷりの言葉をルーサーに投げかけた。



 「無理矢理魔法を魔術に改造したのか。……人間の醜い部分が露骨に出ているな。」

 「黙れ! こうでもしないと強い奴に勝てないからな!」


 「ズルして勝って嬉しいか? 俺はちっともそうは思わんぞ? 寧ろ退屈でしかない。こんな事を繰り返していたら、いつか身を滅ぼすぞ?」

 「何を言っている? 栄光を掴むためだ! こうやって魔物を仕留めるようにな! 死ねぇぇぇ! 【一刀雷断】!」



 ルーサーはほとんど全ての魔力を込めた雷を剣に纏わせ、空を高く飛んで一回転しながらユッケに襲いかかる。


 ユッケはルーサーの顔を上目で見て、ピクリとも動かない。

 受けてやると言っているような態度をルーサーに伝えた。


 それに応える形で、ルーサーはユッケの右肩を狙って全力で振り下ろした。



 ユッケの肩に全力の雷と刃が襲いかかる!



 「ガアァァァァ!!!」



 しかしユッケに傷一つ付けられず、逆に衝撃の反動でルーサーが後ろに飛ばされた。


 防御力6000の怪物にダメージが通らなかったのである。



 「化け物が! 食らえ!」

 「ノノア、出番だ。」

 「わかったわ。」


 「フン! 糞アマは引っ込んでろ!」



 しかしルーサーは懲りずにユッケを攻める。



 チャンスとばかりにユッケはノノアに命令した。

 ノノアがルーサーの背後に近付く。

 しかしユッケの命令を聞かないハズもなく、ルーサーは振り向いてノノアに襲いかかる。



 「あら? アナタどうしたのかしら? 全然効いてないけど?」

 「なんだ? どうして俺の攻撃と防御が落ちている?」


 「それよりも、ユッケさんに背後を取らせても良いの? ユッケさん今からアナタを気絶させるらしいけど?」

 「何っ! グウッ!!!」



 攻撃力と防御力が落ちたルーサーは背後から無理矢理羽交い締めにされる。


 暴れるルーサーだが、レベル差がゆうに100を超える相手から力技で振り抜くのは無理な話である。

 タダの悪足掻きそのものであった。



 「な……何をする!」

 「んー、ちょっとしたアトラクションだ。」

 「ユッケ、私も興味があるから教えて。」


 「わかった。今からちょっとしたフライト旅行をルーサーと一緒に楽しんでくる。3分ぐらい後には戻ってくるから大人しくゴブリン呼んで待っててくれ。あと、そこから少し離れてくれ。」

 「??? えーっと……取り敢えずわかったわ。」



 ノノアが戸惑いながら頷くと、すぐさまユッケから10メートルほど離れる。

 そして、ユッケは恐怖のカウントダウンを始めた。




 「10……9……8……7……」

 「ま……待て! ふ、フライト旅行とはなんだ?」


 「6……5……4……」

 「野郎! 後で絶対殺してやる!」


 「3……2……1……」

 「く……クソオォォォォ!!!」


 「ゼロ。この世ならざる生き地獄のフライト旅行、只今出発!」




 すると、ユッケはルーサーを羽交い締めにしたまま垂直で一気に空を飛び上がる。


 ノノアはユッケの飛び立つ風圧で仰け反る。


 (嘘……ルーサー、ユッケの同伴ご苦労様)


 彼女はユッケの飛んだ上に向かって敬礼をした。








 ユッケは真上に向かって飛び続ける。

 その速度、秒速500メートル。


 これ以上早くするとレベル90のルーサーは余りの風圧で弾け飛ぶ。



 ……とは言え、今まで人類が体験したことのないこの風圧にルーサーはと言うと



 「ギャアァァァァァ!!!」



 特に外傷も無いのに、断末魔の叫びを轟かせていた。


 そして、僅か16秒で上空8000メートル付近に到達する。

 普通ならこれで終わりなのだが……。


 生徒をケガさせた彼の醜い思考ではもう少し恐怖が必要と、とんでもない宣告を言い放つ。


 

 「お……下ろして……くれ……。」

 「ああ、下ろすの? じゃあ下ろすね。」


 「い……今じゃな……ウワアァァァァ!!!」



 ユッケは羽交い締めを解除する。

 ルーサーは上空8000メートルからのスカイダイビングに挑戦された。



 「1……2……3……4……」



 ユッケは目をつぶって一秒ずつ独り言を呟く。



 「24……25……26……27……28……29……30っと。」



 30秒数え終えたユッケは超高速でルーサーを助けに向かう。


 ルーサーの重さは鎧込みで72キロ。

 空気抵抗ありでの計算上では、この地点でルーサーは凡そ1400メートル程落ちている事になる。



 更にユッケはワザと余裕を持って助けにむかった。

 そして、ルーサーはようやくスカイダイビングを終えた。


 再びルーサーを抱えるまでの時間は50秒。

 結果として、2500メートルも落とされた事になる。


 (……流石にトラウマ物かな?これくらいにしてやろう)


 ユッケはルーサーの様子を見て慈悲を与えた。



 若い顔からは涙と鼻水で溢れかえっており、口からは泡を吹き、やつれていた。


 更に小便を漏らしていた。


 上から下に落ちるときに股間がゾワッとする、あの男性特有の感覚をずっと味わされ続けた結果である。



 そして、ユッケは高速で地上へと降り、ノノアが呼んだゴブリン達の横にルーサーを地上スレスレで落とした。


 そして、ゴブリン達に指示する。



 「ルーサーを個人収容部屋まで連れていけ。エースは身体に入った弾の破片の処理がまだだ。至急救急を頼む。」



 それを見たノノアは物凄く辛辣な顔をしながらユッケにこう言った。



 「……何したの?」

 「えーっと……フライト旅行。」


 「気になるから細かく話して。」



 ユッケはノノアにルーサーとのフライト旅行を詳細に語る。



 「……小便漏らす気持ちが理解出来るわ。私でも無理よ。」

 「い……一番効率良さそうかなーって。」


 「……アナタも畜生ね。」

 「いや、幾らエースの作戦とは言っても……まさか銃を使ってくるとは思わないだろ?」


 「バァン!!!」



 ユッケはルーサーから銃を徴収し、少し遠くの木めがけて一発放つ。


 弾はユッケの狙っていた木のド真ん中に命中した。



 「おお! コレは珍しい。イミルミア製の銃だな。だが、弾は研究員がよく使うアイロン製の処刑専用魔力弾だ。コレが魔物専門だったら、本気でエースは死んでたかも。」

 「何が違うの?」


 「イミルミア製の銃とアイロン製の銃は何か違うの?」

 「アイロン製は量産しやすい。イミルミア製は殆ど流通しないが、魔力弾の補正……つまり、素人でも滅茶苦茶狙いやすくなる。俺は銃の腕はイマイチだぞ?」


 「私にはよく分からない代物ね。」

 「もうすぐ、世間一般常識になるかもな。」


 「???」


 それを聞いたノノアは首を傾げていた。








 かくして、模擬戦争は遂に終わりを迎えた。

 ルーサーの暴走が起こったが、アイリス達はなんとか乗り越える事ができた。


 次に来るのは……模擬戦争とは違う、血が多く流れる本当の戦争である。


 【ル・レンタン組合専用取引所】の密偵による活躍で、情報が漏れてしまった今……果たしてどう対処するのだろうか?

※ルーサーのステータスを弱体化しました(ナークプルとの差が大きかった為)。

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