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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
77/116

第72話 500VS220 2. 捕獲作戦 前編



―――――――――――――――――――――――

~ノノア視点~



 私はゴブリン達と一緒に、村長に予め指示されていた道を音を出来るだけ出さずに通っている。


 先日の大雨でかなり地面がぬかるみ、沼と言っても可笑しくないぐらいの場所が幾つか出来上がっていた。

 しかし、土地の詳細を隅々まで知っているゴざブリン達にとっては大したことは無さそうね。



 「……あー、此処から先は元々沼地の所が多いので比較的マシな右へ迂回したほうがいいです。」

 「ありがとう。敵の密偵を見つけたら私をつついてくれる?」


 「わかりました。」



 ……と、こんな感じでゆっくりと進んで行った。

 出発してから凡そ30分。


 此処まで何も変化はなかったけど、ゴブリンが私の左腕をトントンとつついた。



 「……どこかしら?」

 「ノノアさんの左前方、少し他より大きな木の直ぐ近くの枝で、木の葉にカモフラージュしている者が数名……恐らく何処へ行くかの指示でしょうか? ともかく、警戒は必須です。」



 私はゴブリンにほんの小さな声で歩きながら居場所を聞く。


 人間より目が長けているゴブリン達はすぐさま敵の詳細を把握した。



 「ここままバッタリ会ってしまっては危険……ゴブリン達ならどうする?」

 「敵の強さがわからない以上、此処は隠れて走っていった方向を確認した方が安全かもしれません。連携が取れやすいように、モーク先生の部隊にも情報を共有した方が良いですね。本当の戦争が控えている中で犠牲を出すのは流石にマズイです。」


 「……素晴らしい案だわ。隠れる場所はどこにする?」

 「このあたりが良さそうです。」


 「……じゃあ皆此処に隠れましょう。いい? 地面はぬかるんでるけど、這いつくばって我慢するのよ。」



 ゴブリンの鋭い洞察と戦略に驚きつつも、私はその案を採用することにした




 私とゴブリン達は、ドロドロになった地面に這いつくばって敵の行動や指示を確認する。

 12月の中旬の地面は氷程ではないけれど、辛いのは辛い。



 泥に這いつくばる行為は不自然な事ではない。

 虫がほとんど居ない泥は全然マシな方ね。

 芋虫が可愛いレベルよ。


 寧ろコレよりキツイ地面に這いつくばらされることだってあるわね。


 例えば……人がメッタ刺しになってこっち見ながら死んでいる所の側だったり、ニョロニョロと素肌に全力で入ってこようとする糞虫の住みかだったり(冗談抜きであるから)。


 ゴブリン達もそこは慣れているらしいね。

 非常時は容姿より生存を最優先に考えるからとか言ってた。


 (……なるほど。司令塔みたいな場所があって、そこに3人居ると。後は実行役が7人……ね)


 敵の口唇を頼りに私は言葉を読み解いていく。

 カルナ言語の読み取りは非常に簡単。

 口の特徴が分かり易いし、種類もあるから言葉が繋がりやすい。


 コレが異世界の言葉なら時間かかるわ……。



 すると、指示が終わったのか三人は別々の方角へ枝を渡って走り去っていった。



 「2人はモーク先生が探索する方角へと行きました。後の一人は……模擬戦争をする場所とは全く違いますね。どうしたんでしょうか?」

 「恐らく、見られていた際の対策ね。敢えて全く違う方角へ行くことによって錯乱させるつもりだろうけど……まさか口唇術まで読まれているとは思わないでしょうけど。」


 「口唇術!? あの人達は何て……。」

 「見られていた対策として、敢えてウソの情報を流している可能性もあるからそれも視野に入れておくけど……言うわね。」



 私は長年の密偵の経験をフルに生かして考える。


 私なら時々ウソの情報を敢えて敵に分かり易いようにバラしたりする。

 そうやらないと何処かで本当の情報が漏れてしまう。


 私はウソの情報を言っている可能性も視野に入れておくべきよと予め伝えておき、そして敵が言っていた言葉を復唱した。



 「……って言う感じね。正直、此処まで防衛に手の込んだ密偵の戦略をウソにするのはないと個人的に思うわ。それが出来るほどの持ち主がいれば、モークの宣戦布告も真っ先に読んで速攻で捕獲しようとしたハズ。」

 「私もこの戦略がウソとは思えません。この作戦であれば、密偵を捕獲しても進展ナシの可能性が充分考えられます。更に、複数の情報を一つに纏めて本部は情報を把握出来ます。非常に厄介です。」



 私は少し頭を悩ませる。


 (10人全員捕獲しないとキツイわね……本部は勿論の事、実行する密偵も捕まえないとすぐさま敵の本拠地へ言って報告するでしょうね。しかも、模擬戦争が始まるまでには何とか終わらせないといけない。)


 非常に難しいと言うことは間違い無いわ。

 しかし、やらなければいけないのは当然の事。

 私がゴブリン達を引っ張ってやらなければ!


 そう決心した私はゴブリン達に言葉を投げかける。



 「皆、今回の敵は10人全員をこの森から逃がさない事。全員の団結が必要不可欠になってくるわ。互いに励ましあって、そして共に乗り越えて行きましょ! それが、軍隊の強さになるの。」

 「「「はい!」」」


 「いい返事ね。それじゃあ、私達は村長の言われた通りの道に戻るわよ。敵が単体の場合は行動開始ね!」

 「はい! しばらくの間は硬い断層地帯が続くので安心です。」


 「それじゃあ誰か【情報伝達】でモークと本部に伝えてくれないかしら?」

 「私が伝えておきます。」

 


 そして【情報伝達】が終わった私達は、単独になったであろう密偵を捕獲しに向かっていった。



―――――――――――――――――――――――



 一方そのころ、モーク隊も1人の密偵を発見した。

 ノノア隊からの報告によりモーク達も厄介なことになったとわかった。



―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 俺達は近くにいる密偵を少し離れた所で監視しながら伺う。

 当の密偵は服の中に入れていた小さな鞄から、サンドイッチらしきものと異世界の発明である特殊な銀製の「すいとう」に入ったスープを吟味してるね。


 ……うらやましっ!!!



 そんなことは一旦置いといて、ノノア隊から報告が飛んできた。

 何でも密偵が10人ほどいて全員捕まえなきゃ頓挫らしい。


 更にその内の三人は直ぐに情報をル・レンタンの本拠地へ送ることが出来るように本部を作っているらしい。



―――――――――――――――――――――――



 本拠地とは別に本部と言うものを作るには理由があるとノノアは言っている。

 情報の伝達を安全に行う為らしいね。


 ゴブリン達が使っている【情報伝達テレパシー】とは違い、魔法で情報を伝達する紫色魔法の【情報送信テレセント】というものがある。


 この魔法は相手に、魔法を使ってメッセージを送ることが出来る魔法だ。

 僕が【朱の騎士団】でノノアにメッセージを送るために使ったあの伝言を書いたアレとほぼ同じだね!


 ※第63話参照。


 でも、その情報が相手に届くまで魔法を詠唱し続けないといけないらしい。

 かなりの魔力が必要だね!

 しかも詠唱する時間は相手までの距離だとか。



 ゴブリンは例えを出して分かり易くしてくれた。

 例えば此処からル・レンタンのワゼリスの所へ「こんにちは」と送るにはなんと平均20分も詠唱しなければいけない。

 しかも消費魔力は1000を超える。


 コスパ最悪だね。

 ……メッセージ程度で1000はムリ。



 そこで本部を作ることで、実行役は本部にメッセージを送りさえすれば、後は勝手に本部にいる者がル・レンタンにメッセージを送ればいいんだ!


 実行役の詠唱時間は大幅に削減される。

 邪魔される確率も少なからず低くなるってわけだね。


 実行役が死んでも本部が本拠地へ情報を届けられるのが強みらしい。

 使い捨て扱いなのが気に食わないけどね。


 

―――――――――――――――――――――――



 ノノア隊のゴブリンが俺に分かり易く説明していた。



 「……との、ノノア隊からの報告です。厄介ですね。」

 「でも実行役を、【情報送信】とやらが発動して相手に伝わる前に捕獲すれば何とかなるんじゃない?」


 「はい。後、本部さえ蹴散らせば残りは探して捕らえるだけの作業になるかと。実行役はこの森から逃げるしか方法がありませんからね。」

 「とりあえず、あそこの密偵は捕獲って事で良いよね?」


 「はい。逃げる前に捕獲するべきです。密偵が強い時は私達を頼ってください。集団で知恵を絞れば単独に負けません。」

 「りょーかい。【カゲヲアヤツルモノ】!」


 

 俺はゴブリン達と話し合いをした後、スキルを使って食事後の密偵の後ろの木の枝にかかっている影へと移る。

 気付いていないようだ。


 300メートルだろうが、2000メートルだろうが一瞬で移動可能(ホントはちょっと時間かかってるけど)なこのスキルは運用しやすいね。


 何せ敵の背後を突けるのがめちゃめちゃ強いし。

 ズルイし。

 理不尽だし。



 そんな事を思っていると、密偵は最後の一口を頬張る。

 食事が終わり、ガタガタと小さな片付け音が響いている隙に……。


 (今だね)



 「ちょっとゴメンね!」

 「は……? うわぁぁぁぁ!!!」



 密偵に軽く体当たりしてバランスを崩させ地面へ落とす。


 密偵は食事後の片付けで体勢を少しだけ崩していたからね。

 だから、そのチャンスを上手く使って……でっかくなっちゃった体で軽く体当たりしただけ。



 効果はてきめん。

 バランスを崩して地面へと落下した密偵は、着々出来ずに激しく衝突した。


 レベルがそこそこ高いのか、ケガをしている様子は無い。

 でも不意の衝撃はかなり強烈だったのか、口を開けて絶望しかけた表情をしている。



 「仕留めたよー! 捕獲ー!」



 俺がそう言うとゴブリン達は縄を持って、くたばっている密偵をテキパキと両手を後ろへ縛り上げる。



 「本部から数人くるから一旦待機だね。ノノア隊にも一応報告しといて。」



 落とした時に本部に【情報伝達】で捕獲したといっておいた。

 「数人派遣します……それと一つお願いが……。」と村長さんが俺に言ったから大丈夫だね。



 そんな事を思っていると、正気に戻った密偵の男は俺を見ると声を少し荒げた。


 ゴブリンが既に声の音量を大幅に下げる魔法【発声回収】というものによって非常に声が小っちゃく聞こえる。



 「お前は……!!! ……そうか、そう言うことか。」

 「物分かりが早くて助かるよ。あのさ、絶対言うとは思わないんだけど……本部の場所は知ってる? キミって実行役とかなんかっぽいし。」


 「そこまで嗅ぎつけてんのかよ畜生。……本部はあるが場所は知らん。実行役に本部の場所を知らされることはない。教えると逃げるために喋る奴が少なからずいる。」

 「まぁ死ぬことはないから安心してね。僕達の本当の目的を本拠地にバラされたら困るだけだから。用が済んだら直ぐに釈放するね! 多分夜ぐらいじゃない?」


 「そうかい。なかなか情け深い魔物じゃねーか。」

 「えへへ★ それはどーも!」



 捕らえられた者も捕まえた僕が和気あいあいと会話するという戦争では絶対ムリな事をしていた。


 数分後、密偵はやってきた数名のゴブリン達に抵抗する事もなく歩いていった。



 俺はすぐさま部隊のゴブリン達にテレパシーを送った後、平和ボケするような口調でクソ隊長を演じる。



 「ねえねえ、ちょっと先に行っててくれない? 僕は此処で持ってきたお肉でも食べようかと思ってたんだ。見つけたら連絡してきてくれない(……村長の命令で……本部を、潰してくるね)。」

 「……隊長、酷すぎますよ! 僕達を先に行かせて自分は食事な――(モーク先生……お一人で大丈夫ですか?)。」


 「命令に従え(……大丈夫だって!)!」

 「は……はい!」



 テレパシーと会話を同時進行させる、あの村長のマネをしたくてやったけど……。



 ……ムズッ!!!


 所々会話に持って行かれてテレパシーが出ない。

 練習が必要なレベルだねこれ。




 ともかく、ゴブリン達には伝わったようで先に森の奥へと消えていった。


 (さーて、もう少ししたら本部潰しかな?)


 俺は村長の返事を待つことにした。



 ……やっぱりお肉食べたくなってきたからついでにたーべよ!



―――――――――――――――――――――――



 そのころ、モークが捕獲した密偵を連れて行ったゴブリン達は非常事態に陥っていた。



 「クソっ……どうして【月光】が此処にいるんだよ!!!」

 「そんなのしるかよ! 早く村長に頼んで救援を……。」



 そんなことをしている間にも、【月光】と呼ばれる黒い大蜘蛛はゴブリン達に足払いで吹っ飛ばす。



 「ギャアアア!!!」



 吹っ飛ばされたゴブリン達は木にぶつかってピクリとも動けなくなった。


 そう思った密偵は迫り来る巨大な黒の鋼鉄に冷静さを失っていく。



 「……おいおい、勘弁してくれよ!」



 大蜘蛛はゴブリン達にやった足払いを密偵に向けて襲いかかった。



 「畜生!!! 裏の人間の足を舐めんじゃねーぞ!」



 密偵は何時も鍛えていた自慢の両足を必死に上下に動かす。

 全力で死にたくないという感情が勝ってしまったのである。










 「……ゼェ……ゼェ……何とか凌いだぜ。」



 凌げたのはいいものの、両手はまだ解けないのだ。

 寧ろ、解ける素振りすら見せることはなかった。

 


 獲物を何時も縛り上げていたゴブリン達の技術。

 ユッケでさえ全力を出さないと千切れなかった縄の強靭な材質。



 密偵にとって、無理矢理解くのは時間のムダであった。


 (両手防がれたんじゃあ詠唱もできねぇし……確か本部の場所がわかるように先日木に示したとか言ってたよな?)


 俺は近くの木を片っ端から調べていく。



 (何処か……何処かに手掛かりがあるはずだ。)


 さっきから妙な化け物の視線を薄々密偵は感じるが、何もして来ないからいつの間にかそれを無視して調べていった。



―――――――――――――――――――――――

―【臆病者】アイリス視点―



 アリスの戦闘から帰ってきた俺は戦闘から外れる事になった。


 流石に両手無くしてしまったら戦闘の話では無く、ユッケから一時ドクターストップをかけられるハメとなった。



 ゴブリンの洞窟の側に建設されたそこそこ大きな建物が作戦を遂行する俺達の本部である。

 中は大小のテーブルとイス、ちょっとした花の飾り付けが置かれている簡素な内装だ。


 そこにゴブリン達の書いた地図や槍、剣や回復薬などの物が既に整っており、軍事的な作戦会議っぽくなっている。



 その建物を守るかのように、ダークゴブリンのボスが連れてきた内の一部の魔物達が連携を維持しながら守っている。


 その中にいるゴブリンは僅か10名。


 洞窟の中でアリスの治療をしている者達と飯を作る者達、後は模擬戦争で目を光らせているゴブリン軍団を覗いた人達だ(ノノア、モーク隊も実質別働隊と思っていい)。


 その内の5名程は本部を潰すための作戦で呼ばれたメンバーであり、残りの5名は情報を纏めるために残っている。



 つい先ほど……ゴブリン2名を背中に乗せて、帰ってきた【月光】が凄く申し訳無さそうに戻ってきた。

 軽く足払いしたつもりが、ゴブリン達にとってかなり強烈な一撃だったそうだ。



 ……だろうな。

 【月光】が使う足払いは牽制程度なのだが……下手に食らえば俺でも体力は半分根こそぎ持って行かれる。


 この森は出てくる魔物のレベルが異常極まりないのだ(もしかしたら殆ど俺のせいかもしれないが……)!



 「それにしても村長。わざわざ一番強い【月光】を使う必要も無かったんじゃないか?」

 「別に他でも良かったのですが、戦闘しようとすると面倒でしてなぁ。それに、敵の密偵を十分怯ませられますし……少しやりすぎたのは流石に今後の反省点でしょう。やはり初見というものは恐ろしいものですな……若いうちに経験しておくものです。」

 「グァァ! グァァァァ!(ごめんなさい。ちょっとやり過ぎちゃいました……)」


 「いえいえ、此方こそ申し訳ありません。ですが、敵を足払いだけで怯ませたのは流石ですな!」

 「グァァ!(褒めてくれてありがとうございます)」



 実は村長、初めて戦争の指揮をとっている。


 今まで、人間が無力なゴブリン達を痛めつける虐殺とほとんど変わらなかったのに対して、今回は模擬戦争とは言えマトモに対等な立場で戦っているのだ。



 「……まぁゴブリン達が死んでいないから次へ進もうか。ワザと逃がした敵の密偵は何処へ?」

 「ユッケからの情報によれば……このあたりで彷徨いています。周りの木の面を綿密に調べていますね。」



 村長は四方1メートルの地図の真ん中の左側あたりを指で指し、そこを中心に指で円を描く。



 「彷徨いてる? それに、木を調べて何するんだ?」

 「幾多の可能性がある故まだ分かりません。ですが、本部の場所について何か手掛かりを知っているのは間違いありませんなぁ。すぐにわかるでしょう。」


 「そうか。……ところで、アリスの容体は?」

 「つい今し方、出血が止まったとの報告が救急隊から来ました。今は収用個室(一人専用の牢屋)の中で眠っており、医療係が控えております。かなりの出血量で一時は心配でしたが……ひとまず安心ですね。」


 「なら安心だな。……だが、しばらくすれば例の【禁断症状】にしばらくの間苦しむ事だろう。俺も出来る限りのサポートはしないとな。」

 「それはとても心強いですなぁ。」



 村長は穏やかな目で俺を見つめる。

 恐らく皆がイメージしているであろう、狂気と殺戮に満ちた魔物とは打って変わったこの表情。

 おっとりとしたイメージを最初に持てる人間など想像できもしない。

 俺だって最初は魔物を勝手に敵視してたな。


 知略に関しては怪物の権化そのものなのだが。

 ……まぁ、それは個人特徴の習わしだ。

 


 そんな事を思いながら俺は敵の密偵の行動を待っていた。

 モークも肉か何か食べて待ちくたびれているだろう。



―――――――――――――――――――――――



 逃げた密偵の男はある一つの木に彫った文字を見つけた。


 偶然とも言える確率を素早く当てれた事に男は感激した。

 全身から勢いとやる気が数段増すようなあの感覚が染み渡っていく。


 そんな喜びの感情の後、冷静になって読むと、そこには【X33,Y28地点付近の木に場所記入】と書かれていた。


 (そうか!あの時の地図の座標か!徹夜で軽く記憶しておいた甲斐があったぜ!数字が1違うと実寸は100メートルずれる事を考えるとして、確か……俺がいるところはX31,Y33だから……よし!)


 密偵はすぐさま木に書かれた場所へと向かった。



 540メートル程の距離は密偵にとっては苦労しなかった。

 途中泥濘に足をとられながらも、10分程で木に書かれていた地点【X33,Y28】へと辿り着いた。


 早速密偵は辺りの木を片っ端から調べる。

 限られた範囲の中から木を見つけるのはすぐ出会った。


 書かれていた木には【ハートマーク】と書かれていた。


 (ハートマーク?もしかして、俺達がとある場所をハートと誤解して笑ったヤツか。ハートマークの場所はX29,Y26!)


 ハートマークの場所がわかった俺はすぐさまその場所へ駆け込んだ。






 ……そんな彼の奮闘を上空で見ていた、人間のような魔物―ユッケ―はほくそ笑んでいた。


 少し姿が透けて見えるのは気のせいではない。

 スキル【分身】の能力で、本物のユッケはノノアと行動中である。


 (……ほう。ハートマークねぇ……。)



 《アイリス、敵の本部が分かった。ハートマークに見える何かがゴブリン達の地図にも載っている筈だ。密偵が本部に到着次第、モークが殴り込む。捕獲するゴブリン5名と、念の為に【月光】を送るように頼む。》



 ユッケはサングラスで情報を共有させた。

 

 (両手を縛られてる状態で此処まで辿り着けたのは素晴らしい根性だが、もう少し周りを警戒するべきだな)


 悪役に近い悪魔の笑みで敵の密偵をじっくり評価しているユッケであった。



―――――――――――――――――――――――

※タイトル修正

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