第70話 アイリスVSアリス 1.勝つか喰われるか
レイアウトを黒に設定しました。
※非常に過激な内容が含まれています。グロ・狂気シーンが苦手な方は此処で閉じてください。
30メートル先に1人の男が両手に短い剣を持って佇んでいた。
男は私を見てこう言った。
「ようこそ。【試練の森】へ。肌寒い歓迎……どうだったかな?」
私は何故だか一筋の冷や汗を垂らす。
「……えっと、アナタの名前は何?」
口を開けづらくなった私の開口一番がこれだった。
私は100メートル程の高度を近くの木と同じ高さまでゆっくり下げた。
すると、彼は頭を右手でポリポリと掻いて困ったような表情をする。
「名前は……無い。20歳になるまでは愛称で呼ばれるから、それを名前の代わりとしよう。俺は【臆病者】と呼ばれている。」
「【臆病者】? ……あの近くにある名前の付いてない村で超有名なあの【臆病者】かな?」
「よく知ってるな。ル・レンタンでも知名度が広がっていたか。」
「……うん、そうだね。【臆病者】ってなんかアレだね?」
「面白いか? 別に本人の目の前で笑っても構わん。」
こんな背筋を凍らすような気分は初めて。
【臆病者】という単語で笑っていられる状況じゃなかった。
すると、彼が右手の短剣を私に向けて質問して来る。
「……さて、俺の簡単な自己紹介は終わった。そっちも名乗るのが礼儀じゃないか? いくら13の少女でも組合に長くいれば礼儀は自然とわきまえているだろ?」
「そ……そうね! 私はアリス。【朱の騎士団】No.1のアリス。主に色んな村からの依頼で魔物や山賊の討伐のリーダーをメインに任されてるよ。」
「アリス、か。じゃあ単刀直入に聞こう。此処へ乗り込んだ理由は?」
「何言っているの? そんなの【模擬戦争】をしに……。」
「いい加減なウソは、いつか自分の身を滅ぼすぞ?」
私は取り敢えずウソで取り繕うとしたけど、彼の目にはごまかせなかった。
彼は簡単な推理をする。
「まず、お前が単独行動なのはどうしてだ? たった1人戦場のド真ん中に立ってどうするつもりだったんだ?」
「そっ……それは私の勝手でしょ?」
「まあ、そもそも決定的な証拠がもう一つある。お前が持っている鎌とクロスボウ。どうみても模擬戦争に使うおもちゃじゃない。殺しに使う本物の武器だ。違うか? 違うならそこの近くの木に向かって、実際にそれを使って証明しろ。」
「くっ……。」
私はアイリスの指した近くの木をチラッと見る。
本物の武器だからどうしようもない。
私の全力ならば余裕で根元ごとバッサリ切り落とせる。
手加減で誤魔化せるとは到底思えなかった。
「これ以上抗っても自分のカスが零れ落ちるだけだぞ? 本当の理由をお聞かせ願おうか。」
言い訳が出来なくなった私は、遂に本当の理由を吐くことにした。
「ニンゲンを食いたい。」
ボソッと小さな声で私はそう呟いた。
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―【臆病者】アイリス視点―
……ひとまずコレで大丈夫か?
《はい。なかなか台本を読むセンスがありますね。》
このセンスを使う場所がこれ以外に思い付かないんだが……。
俺がカッコ良さそうに言っていたセリフは、全てサングラスの台本を感情を足して読んだだけである。
どうやら、アリスには効果てきめんのようだ。
正直、アリスのレベルと俺のレベル差はかなり離れている。
あの時のユッケ程では無いが、それは相手が手加減していたから勝てた。
今回は初手から本気で俺を殺しに来る。
そんな事を思っていると、アリスがかすれた声でボソッと呟いた。
「……ニンゲンを……食いたい。」
小さい声が聞き取れなかった俺は、仕方なくもう一度聞くことにする。
「……済まない。もっとハッキリ言ってくれると助かるんだが……。」
「人間を食いたい! そう言ったの!」
「この世界は勿論の事、異世界でも人間を食べることはやってはならない事だぞ?」
「そんなのどうだっていい! 人間の肉と血が欲しい! だからアナタを殺すの。久し振りの人間をこの手で直接調理して食べてあげるね。」
「『俺はアナタに食べられなくない。他にまだなすべきことがあるから。』と言ったら?」
「手始めに、私の力をちょっと見せてあげる。」
アリスは狂気に等しい笑みを浮かべると、持っていたクロスボウを一発を上に向けて撃った。
……ん?
どうして上を撃って……ってえ?
ウワッ!マジかよ!
俺はこんな矢の挙動を初めて見た。
それもそうである。
上に飛ばした矢は、物理法則を全く無視して俺の方向へグニャリと軌道修正して来た!
ギリギリで回避に成功したものの、幸先の悪い事に変わりはなかった。
対処する前に死んでしまっては元も子もない。
矢を放った直後のアリスを見ていた所、一つ違和感を覚えた。
アリスの体から一瞬だけ、黒紫色のオーラが見えた。
(まさか……コイツもあのチンピラと同じか?だったらプランEかもしれんな。手荒過ぎてやりたく無かったのだが……)
俺はアリスの対処方法を、プランCからプランEに処置を切り替える。
その頃、アリスは地面にゆっくりと着地して俺に数回拍手しながらこう言った。
「よくあんな状況で避けたね。褒めてあげる。」
「見た感じ魔法でやったとは思えんな。もしかしてスキルか?」
「せいかーい! 私のスキル【絶対命中】ってゆーものだよ! どんなに下手くそに撃っても自分が思った相手のどこかの体の部位に向かうの。こういうふうにね!」
アリスは追加で一発を後ろに向けて放つ。
後ろへ飛んで行ったハズの矢は、アリスを飛び越えて俺に向かってきた。
今度は左脇腹か。
ん?右肩の挙動だぞ?
俺は注意深く観察し、またもギリギリで左に移動して回避した。
(アリスめ……俺が避ける事をわかってて、途中で当たる場所を急に変えやがった!)
するとアリスは鎌を右手に持ち、俺に飛びつきながら振り下ろしてきた。
死神が持つような黒と紫のその鎌を、俺は両手に持っている出前店長のナイフでしっかりと防御する。
「キィィィン!」
金属同士の激しい衝突音が響き渡る。
……が、分が悪かったのは俺の方だった。
俺が特訓してきて得たものは、積み上げてきたレベルに正攻法で勝てる程の力では無い。
戦闘における技術を極めただけだ。
「……クッ。」
「アハハハハ! 攻撃力は私の方が上かなー! それっ!」
アリスは俺の攻撃力が低い事がわかると、右手の腕力で俺の受けの構えを崩した。
バランスが崩れた俺の体は後ろに倒れる。
その隙にアリスは鎌の先端で俺の腹を刺そうと襲いかかる。
「させるかっ! 【身体強化】!」
「キャアア!」
俺は宙に浮いた状態の中、両足でアリスの左肩を魔法で威力を足して勢い良く蹴る。
ダメージは大きくなかったが、身体を一定時間強化する【身体強化】のお陰で彼女を後ろへ弾き飛ばす事に成功した。
「でも、これならどうかな!」
だが、アリスにはこんな飛ばされている状況でも【絶対命中】は火を噴く。
的外れの場所に矢を2発放った。
背中が地面にベチャリと音を鳴らしながら激突し、起き上がるために左手を地面に付けていた俺は、【身体強化】の力を使って左手だけで空中へ飛ぼうとする。
……が、地面がぬかるんでいたため大した高さまで飛ぶことが出来なくなった。
(……!?そうか、昨日の大雨で地面が……)
昨日を思い出した俺だったが、時すでに遅し。
既に身体が反転し、空中に飛んでいる。
そんな中で俺に向かって飛んでくる二本の矢を、一瞬の時間で素早く分析する。
(左肩と右胸……この状況で2本回避は……)
両手の短剣を駆使して右胸へ飛んでくる矢を素早く切り刻む。
え?
もう一本はどうするって?
……流石にこれは無理。
「ガッ!!!」
左肩に激痛、そして鮮血が後ろの木周辺に飛び散る。
矢は貫通し、後ろの木に刺さっていた。
矢全体に赤と少し黒の混じった、水っ気のある俺の絵の具を残して。
俺は地面に激突する寸前に右手と両足で支え、起き上がった。
その光景を見届けたアリスは狂気の笑みを更に強める。
「やったー★ どうかな? 私が放った銀の矢の味、とてもおいちかった?」
「味の良し悪しより痛いんだが? 強いてそれに答えるなら……金属加工した人工の味はあまり好きじゃないかな。」
「へー。普通はさっきので悶え苦しんじゃう、キモチイイとこが見えるんだけどなー。痛みに耐えるのはみてる側としてはつまんないからね。」
「俺はどっちを見ても滅茶苦茶辛いんだが。まぁ、人の価値観に干渉するつもりは無い。」
アリスは頬を膨らませて不満そうな顔つきをする。
「もう少し別の答えが欲しかった。」とても言いたげな様子だったが、急に話題を変えて質問して来た。
「さっきからずっと思ってたけど、モークって言うデカいモークタンは何処にいるの? デザートとしては美味しそうだから後で食べるつもりだったけど。」
「アイツは模擬戦争の様子を観察している。敵の密偵を探している。詳しい場所は……俺にはわからん。だが……。」
「何なの?」
「お前、モークとの初対面でアイツにクロスボウ撃ったろ?」
「そうだね。……それがどうしたの? アナタにとっては関係の無い事でしょ? まさかお友だち? 友達の心配事程度で私の事恨んでるの? アハハハハハハ!!!」
アリスは腹を抱えながらゲラゲラと狂ったように笑う。
心の底から俺とモークをバカにしている笑いだった。
呆れた俺は捨て台詞を吐くかのように呟く。
「……孤独だな。お前は。」
「……は? なにいってるの【臆病者】? 【臆病者】って言われているアナタもそうじゃないの?」
「……昔はそうだった。少なくとも、2~3年前までは孤独をひた走ってた。」
「今はお友だちが居るからそうじゃないってこと? アハハ! 呑気な人ね!」
「一つお前は勘違いをしている。友達が出来た訳じゃない。一緒に旅をする【仲間】が出来た。和気藹々と共に楽しく過ごす友達とは違い、死線を共に越えていく大切な仲間が出来た。」
「それが何だって言うの?」
「俺の仲間に手を出そうとする奴をみすみす行かせる訳には行かん。今ここで降伏してくれると非常に助かるんだがな。」
「バカね! アナタは空飛べなかったら、飛べちゃえば仲間をデザートに出来るけど?」
俺は小さく微笑んだ。
やっぱりその手を使うんんだな。
でも、村長は俺の裏でサポートしてるな。
「そう思うか? 俺が単身で此処へ来たと? だったらフワッと飛んでみたらどうだ?」
「じゃあそうさせて貰うね! 【飛行】!」
アリスは魔法を使ってゆっくりと上へ上昇する。
俺は色んな所で殺気を薄々感じていた。
誰に弱い殺気をずっと向けてたんだろうか?
そうアリスが理解したのは、近くの木よりも高度が高くなってからだった。
「キ……キャアア!」
数十ヶ所の地点からアリスに向かって矢が放たれた。
弓部門のゴブリンが潜伏していたのだ。
上昇中の為、アリスが出来ることは持っている武器で矢を弾くぐらいである。
アリスに当たった矢は一本。左の横腹である。
これは脅しである。
我慢出来なくなったアリスは【飛行】状態を解除して真っ逆だ。
「【エアープロテクト】! 【衝撃吸収】! 【衝撃盾】!」
しかし、レベル130を超えている彼女は咄嗟に複数の魔法で激突の衝撃を0にまで下げた。
「ウググググヌ! アァァ!!!」
アリスはなんと自力で矢を無理矢理引き抜く。
鏃も引き抜けたようだ。
死にかけたアリスの顔に少女と言うものはなかった。
彼女の手と刺さった横腹は鮮血がベットリと付き、矢は赤く染まっていた。
(おいおい……いくらレベル130でも、13の女の子にそれはキツイぞ?)
当たった一本の矢には血に手紙が括り付けられていた。
アリスは自分の血に少し染まった手紙を見て、かなり動揺していた。
サングラス、何て書いてある?
《「はじめましてアリスさん。私、ゴブリンを束ねる差出魔物のゴブリン村長と申します。突然ですが、アナタは既に狙われております。モーク殿の元へは決して行かせません。一度目は警告として、ワザとこの一本目以外は外すよう弓隊には伝えました。次は……御覚悟を。」とカルナ言語でそう書かれております。》
うわぁ……キッツ。
俺でもイヤだな。その手紙。
手紙の内容を知った俺はちょっとアリスに同情した。
あちらこちらから殺気が漂ってくる。
マジで殺す気じゃないか?とも思える程だった。
アリス本人は恐怖を退けようと、紙をバリバリ破って荒い息を吐く。
落ち着こうと頑張っているが、怖すぎて焦っているのだろう。
「ハァ……ハァ……。や……やるじゃないの。私を此処まで追い詰めた戦いは初めて。」
「そうか。なら、やることは一つしかないよな?」
「アナタを殺して、骨まで頂いてあげる。森の中へ逃げても、誰かが見張っている気がする。だから……正々堂々勝負する! でも、その前に回復の時間を取らない? お互いにさ。」
「構わん。しばらく待ってやる。」
アリスは覚悟を決めると、収納魔法の中から瓶に入った黄緑色の液体を一気に飲み干す。
すると、ドロドロ血が流れていた横腹は緑色の光と同時に塞がっていった。
回復薬と推察出来る。
確か……液体の色で回復量が違ったな。
《青、紫、赤、緑、黄緑色、金、虹です。虹に近付く程性能が高くなります。》
……てことはかなり優秀な奴か。
金持ちにしか買いづらいやつだったな。
別に俺は緑草でもやっていけるけど。
そんな事を思っているとアリスは準備が整ったようだ。
アリスはふぅと溜め息を吐き、目を瞑る。
「……勝負っ!」
アリスはカッと目を開くと、収納魔法から 刃渡り30センチの両手剣を構える。
そして全力の速度で俺に向かって突進し、両手剣で乱舞する。
(早い!……でも、捌ききれんほどでは無い)
俺は連続で襲いかかる斬撃を両手のナイフでギリギリで捌く。
回避し辛い攻撃は後ろの木にぶつからないように後ろへ移動していく。
暇がある時にユッケの【剣舞】、【大剣舞】をナイフで捌いていた経験が此処で活かされている。
だが、拮抗したのは僅か数十秒の間であった。
相手は本気で挑んでいる。
彼女の戦闘技術は通常では考えられない攻撃だった。
それも、ユッケも俺も「それはないだろ。」と言いたくなるようなものだった。
「くらえっ!」
何とアリスは両手に持っていた両手剣を左に持ち、素手であるはずの右手で俺の左肩のケガに指を入れたのだ!
そして、左手の両手剣で俺の目を狙う。
アリスの左手は俺の両手に匹敵する。
俺は両手をそこへ使うしかなかった。
回避しても次の攻撃を休まずしてくるだろう。
両手剣は俺の両目から数センチメートル離れている。
力を緩めれば平気で刺さる距離だ。
アリスは俺のケガした傷の中に指を数本無理矢理入れ、グリグリと中をほじくっている。
白色の硬い物質や鮮血の管をアリスは指で弾いたりもした。
ケガからはほじくる度に赤黒い色をドロドロと流している。
雷撃にも劣らないバリバリと痺れるような激痛を左肩が鳴らしている。
耐えられない程ではないがかなり痛い。
いや……これ普通の人はムリだろ。
俺のガマンを間近で見たアリスは目を見開く。
「へー、凄いね。此処までやられてもへーきだなんて。……もしかして、【野蛮道】の人間?」
「【野蛮道】というものがどういうことかは知らん。何だそれ?」
「……うーん、まぁいいや。それより、これ痛い?」
「マジで痛いから抜いてくれない? やろうと思えば、今からお前より強い魔物を呼ぶぞ?」
「そう。……ならその前にキミを仕留めるね。もう少しほじってアナタの胆力を見てみよっかなー。」
アリスはそう言うと、指を更に激しくグリグリとほじくる。
(この野郎……幼少期に相当ひどい目に合ったな。オマケにこの表情……)
俺はほじくっているアリスの顔を若干恨むような目つきで見つめる。
「あぁ……凄い! キモヒイイ! もっと……もっと弄りたい!」
当の本人は物凄く気持ちよさそうな表情で俺のケガに指を入れて動かしまくっている。
こんなグロく、無惨な行為のどこが快感だと言うのだろうか……。
俺には一ミリも理解出来なかった。
そう言う趣味はそう言う趣味同士だとわかるらしいのだが……。
涎まで垂らすその姿はあのモークを連想とさせる。
ユッケ戦の褒美でモークに干し肉の極を渡したあの時もコイツにほぼ近い表情をしてたな。
……まぁ、あれは薄々理解出来る。
その表情を見て、「買いたい!」となるかは人それぞれだが。
激痛に耐えることおよそ5分。
俺の左肩がどうなっているかは見たくもない。
実は少し前に俺でもヤバい位凄まじい激痛の後、突然何も感じなくなった。
何か痛みを伴う部分が死んだ気がする。
アリスはケガから数本の指を抜き、それを舌を出してペロリと数度も舐めた。
どうして満悦したとろけ顔になるのかは知らん。
「はぁ……はぁ……。此処まで行っちゃったの凄い。はじめて……神経まで弄っちゃった★ 何だか凄く痺れちゃってる。毒を舐めた気分。」
満足したアリスは右手で収納魔法から何かを取り出す。
さっき持っていた鎌だ。
「悪いけど……正々堂々の勝負をするって言ったけど……もうやる気失せた。私は一刻も早く……食べたい! だからじゃあね!」
「そう言うと思って事前に用意してたよ!」
「!!! いつの間に!?」
ハッとなったアリスは後ろを見ながらそう驚愕した。
そこには、氷の魔力球と火の魔力球それぞれ100程が浮いていた。
俺だってアリスの攻撃を我慢し続けていただけではない。
アリスが左肩に快感を抱いている隙に、彼女の後ろ辺りで魔法を発動準備にしていた。
発動準備とはその名の通り、何時でも発動できるように準備しておくことである。
通常なら、発動するのは基本的に直後である。
発動準備は通常より2割ほど多い魔力を予め使用する事で、後は詠唱者の好きなタイミングで発動できる。
タイミングが重要だが、逆に使いこなせば便利になる。
魔力の消費が高くて頻発しずらいのが欠点なのだが。
アリスは回避する事もなく、少し変わった方法でこの魔力球を凌いだ。
「【魔力球立方体】!」
アリスは両手を広げてそう詠唱すると、自分がすっぽり入る大きさ程の光る立方体が現れて包み込んだ。
正直聞いたことも見たこともない。
だが、その隙にアリスの手からは脱出することに成功した。
飛んできた魔力球の内、青は当たる前に沈んでいった。
赤は光る立方体に激突し、燃え上がる。
しかしそれだけ。
赤色の魔力球も跡形無く消えていった。
全ての魔力球が消えた直後にアリスは魔法を解除する。
(時間によって魔力をゆっくり消耗するタイプの奴っぽいな)
「上手いじゃない。アナタのレベルって幾つなの?」
アリスは俺が逃げた事には気付いていたようだ。
そして俺のレベルを尋ねてくる。
「41だ。」
俺はそう言ってステータスをアリスに見せた。
ステータスが分かった所で戦闘に響くものではないだろう。
【ステータス】名前無し(現愛称 アイリス・オーリア)
レベル 41 ランク C
体力 683/801
魔力 192/316
攻撃 416/442
防御 201/249
早さ 703/755
速度 8.125/8.625
当会心 8.75/9.125
回避 56/56
当回避 56/56
総回避 80.64/80.64
残血液 3320/4000(200)
経験値 89265/500000000
次 89265/94000(4735)
「ええ……。レベル41のステータスじゃない……。」
アリスはかなりガッカリしている。
自分が手こずっている敵が自分のレベルの3割ほどだからだ。
「……でも、回避はそうなんだね。スキルじゃなかったんだ。やっぱり【野蛮道】なんだ。」
アリスはそう言うと自分で納得しているような表情をする。
ずっと置いてけぼりされているけど、【野蛮道】って何だろうか?
今度ユッケに聞いてみよう。
俺はアリスを挑発する事にした。
(そろそろ頃合いかな?適度……なのかどうかはわからんが……取り敢えず戦ってみた。やっぱり真っ向勝負じゃあまだアリスには敵わない)
「アリス。こんなレベル40程度を倒せないのは恥ずかしいだろ? 早く殺してみたらどうだ? 【絶対命中】とやらはそんなものじゃないだろ?」
「黙れ! モークタンみたいなウジ虫をペットにしている弱虫に指図されるほどの私じゃない!」
ちょっとカチンときた俺はついついこう言ってしまった。
言ってはいけない言葉とはわかっていたのだが……。
「何でこんな子供が出来たのか……親の顔が見てみたい。」
「お前……。私の親をバカにしたなぁ! もう許さない! 今回ばかりは生きたまま喰ってやる!」
アリスは戦闘態勢に入ってしまった。
ちょっと言い過ぎだが、アリスの冷静な思考を崩すことが出来た。
(さて、最終段階のプランEを実行しようか)
俺はそう決心した。
※脱字修整。




